
英語の会議で順番に自己紹介することになる。名前と会社名と役職を言って、Nice to meet you で終わる。無難に済んだ気はするけれど、そのあと誰からも話を振られない。
これは英語の問題ではありません。自己紹介で伝えるべき情報が入っていないだけです。30秒の中身を入れ替えます。
名前と肩書を言っても、誰も覚えていない
一巡の自己紹介は、思っているより聞かれていません。
10人いたら、覚えられるのは2人
順番に名乗っていく形式では、聞き手は自分の番の準備をしています。しかも初めて聞く名前が続くので、記憶に残りません。ここで丁寧に経歴を話しても、届く量は変わりません。長さと記憶量は比例しないと考えたほうがいいです。
役職名は、相手の基準と違う
日本の役職名を英語に置き換えても、相手の会社の同じ語とは範囲が違います。Manager と名乗っても、何人見ているのか、何を決められるのかは伝わりません。相手にとって役職名は、判断材料としてほとんど機能していない情報です。
Nice to meet you の後が空白になる
挨拶で終わると、聞き手には「この人に何を聞けばいいか」が残りません。だから話が振られない。振られないまま会議が進み、最後まで一度も発言しないことになります。英語会議の相槌は増やしても意味がないで書いたとおり、発言しないと参加していない扱いになります。自己紹介は、その最初の分かれ目です。
自己紹介が実際に担っている機能
目的を「覚えてもらうこと」から変えます。
| よくある目的 | 実際に必要な機能 |
|---|---|
| 名前を覚えてもらう | 呼び方を1つ指定する |
| 経歴を伝える | 今回の案件での担当を伝える |
| 役職を伝える | 決められる範囲を伝える |
| 印象をよくする | 自分に振っていい話題を示す |
相手は「誰に何を聞くか」を決めている
会議中に質問が出たとき、誰に振るかを進行役は瞬時に判断します。その判断材料は、自己紹介で聞いた内容です。担当範囲が入っていれば振られますし、入っていなければ飛ばされます。好かれるかどうかより、索引として機能するかどうかです。
「振っていい話題」を先に出す
自分から話し出すのが苦手なら、振ってもらう設計にするほうが早いです。「納期と生産の制約についてはこちらで答えられます」と言っておけば、その話題のときに指名されます。指名されてから話すほうが、割り込むより何倍も楽です。
長く話すほど、機能は落ちる
経歴を足すほど、肝心の担当範囲が埋もれます。30秒を超えたあたりから、聞き手は次の人に意識を移します。要素を4つに絞って、それ以外は入れないでください。
30秒の型
入れる要素は4つだけです。順番も固定します。
組み立ての例
I’m handling the delivery schedule for this project.
I can confirm timelines up to the end of this quarter; anything beyond that I’ll need to check internally.
If anything comes up about production capacity, please send it my way.
4文です。読み上げて25秒前後になります。経歴も前職も入っていませんが、会議で必要な情報はすべて入っています。
「持ち帰りになる範囲」も言ってしまう
決められないことを先に言うと弱く見える気がしますが、逆です。範囲が明確な人のほうが信頼されますし、その場で即答を求められて困る事態も減ります。あとから「実は決められません」と言うより、最初に線を引くほうが印象は良くなります。
用意しておいて、読み上げていい
その場で組み立てる必要はありません。4文を書いておいて、順番が来たら読む。内容が同じなら、読み上げでも構いません。英語に自信がないときほど、書いたものを読むほうが安定します。緊張で崩れるのは、即興で作ろうとするからです。
肩書は訳さず、担当範囲を言う
役職名の直訳を探すのは、時間の無駄になりがちです。
| 日本の役職 | 直訳の問題 | 代わりに言うこと |
|---|---|---|
| 課長 | 範囲が会社ごとに違う | 何人・何を見ているか |
| 主任 | 対応する語がない | 担当している工程 |
| 部長 | 決裁権の想定がずれる | どこまで決められるか |
| 担当 | 情報量がゼロ | 案件名と役割 |
相手が知りたいのは、決裁の範囲
役職名を聞く目的は、この人に言えば決まるのかを知ることです。それなら、最初から決められる範囲を言えば足ります。「金額は本社の承認が必要ですが、日程はこちらで決められます」。この1文のほうが、どんな役職名より役に立ちます。
名刺の英語表記と、口頭は別でいい
名刺に英語の役職が印刷されていても、口頭では担当範囲を言ってください。名刺は記録のためのもので、会議中の判断には使われません。両方が一致していないと気になるかもしれませんが、問題になったことはまずありません。
チームの人数は、言うと効く
「8人のチームを見ています」のような数字が入ると、規模感が伝わります。役職名は解釈が必要ですが、人数は誰が聞いても同じです。数字は翻訳が要らない情報なので、自己紹介に向いています。
名前を聞き取ってもらう
名前が伝わらないと、そのあと指名されません。
呼んでほしい形を、自分で指定する
フルネームを言ったあとに、短い形を1つ指定してください。相手は発音に自信がないと、名前を呼ぶこと自体を避けます。呼び方が決まっていれば、会議中に指名されやすくなります。指定するのは、相手が言いやすい音で構いません。
英語風の名前に変える必要はない
別名を用意する人もいますが、必須ではありません。自分の名前の一部を短くするだけで足ります。ただ、同じ音が複数いる場合や、相手の言語で別の意味になる場合は、変えたほうが円滑なこともあります。どちらを選んでも構いませんが、一度決めたら統一してください。
表記も一致させる
メールの署名、会議ツールの表示名、名刺。この3つで表記がばらばらだと、同一人物だと気づかれません。姓名の順序も統一してください。順序を変えること自体は問題ありませんが、資料ごとに違うと混乱します。
オンラインなら、話す前に済ませる3つ
オンラインの会議では、自己紹介の前に効く準備があります。
| 準備 | 効果 |
|---|---|
| 表示名を整える | 名乗らなくても伝わる |
| 担当を表示名に入れる | 質問を振られやすくなる |
| 最初にチャットへ1行 | 音声で話せなくても残る |
表示名に担当を入れる
「Kenji Sato (Delivery)」のように、名前の後ろに担当を足します。会議中ずっと表示されるので、自己紹介より長く効きます。進行役が誰に振るか迷ったとき、この表示が判断材料になります。設定は開始前に済ませてください。
入室直後にチャットへ1行
音声での自己紹介が苦手なら、チャットに書いておく方法があります。担当と、答えられる範囲を1行。文字なので聞き返されず、記録にも残ります。音声で言ったうえで、同じ内容をチャットにも置くと、なお確実です。
カメラは、判断材料が増えるほうを選ぶ
顔が見えると覚えてもらいやすくなりますが、回線が不安定なら音声を優先してください。聞き取れない状態で映っているより、音がはっきりしているほうが会議への貢献は大きいです。どちらかを選ぶなら、音です。
まとめ
自己紹介は、覚えてもらう時間ではなく、索引を作る時間です。
- 順番に名乗る形式では、名前と肩書はほとんど残らない
- 相手が決めているのは「誰に何を聞くか」
- 入れるのは4つ。呼び方・担当・決められる範囲・振っていい話題
- 役職の直訳は探さない。人数と決裁範囲で言う
- 呼んでほしい形を自分で指定し、表記を3か所でそろえる
- オンラインは、表示名に担当を入れておくほうが長く効く
4文を書いておいて、順番が来たら読む。それで、会議中に指名される回数が変わります。
よくある質問
初対面でないときも同じ内容でいいですか
案件が変われば担当も変わるので、担当と決裁範囲の部分は言い直してください。名前の部分は省いて構いません。すでに知っている相手には、今回の役割だけ伝われば十分です。
経歴を聞かれたらどうしますか
聞かれてから答えてください。自己紹介に先回りして入れると、肝心の担当範囲が埋もれます。聞かれるということは相手が知りたがっているので、そのときに話すほうが届きます。
趣味や出身地を入れる場面もありますか
懇親の場ならあります。ただ、議題のある会議の冒頭では省いて構いません。場の性質で切り替えてください。迷ったら、前の人が話した内容に合わせるのが安全です。
発言の機会がないまま会議が終わりそうです
自己紹介で「この話題なら答えられます」と言っておくと、進行役が拾ってくれることがあります。それでも来なければ、終了後にメールで1つ補足してください。当日中なら記録に残ります。
4文を丸暗記すべきですか
暗記より、手元に置いて読むほうが確実です。覚えようとすると、飛んだときに戻れません。読んでいると分かっても、内容が明確なら問題視されません。