
送信ボタンを押したあとで気づいた。自分の名前を入れてしまった。会社の資料を貼ってしまった。子どもの学校名を書いてしまった。この記事は、すでに入れてしまった人が、何をどの順番で消せばいいかをまとめたものです。作業は5分で終わります。
先に結論を3つ書いておきます。1つ目。消す順番があります。メモリを先に見て、そのあと会話を消します。逆にすると、記憶の出どころが分からなくなります。2つ目。アーカイブは削除ではありません。サイドバーから消えるだけで、データは残っています。3つ目。多くの場合、アカウントごと消す必要はありません。アカウント削除は元に戻せず、別の面倒も起きます。
この記事の手順と仕様は、OpenAIの公式ヘルプで確認した内容です。画面の名称は更新されることがあるので、見つからないときは設定の中を探してみてください。
まず落ち着いて、状況を分ける
作業に入る前に、何を入れてしまったのかを整理します。対応の重さが変わります。
3つに分けて考える
自分だけの情報(自分の氏名、住所、電話番号、生年月日)。これは、消す作業をすれば基本的に片がつきます。他人の情報(家族や同僚の名前、学校名、勤務先)。これも消しますが、加えてその人に伝えるかどうかの判断が入ります。会社の情報(顧客データ、未公開の契約条件、取引先名)。これは自分で判断せず、上司か情報システム部門に報告してください。
3つ目だけは、扱いが違います。会社が個人データを扱う場合のルールは法令で決まっていて、会社としての対応が必要になることがあります。黙って消して終わりにしないでください。報告が遅れるほど、あとで問題になります。仕事で使うときの線引きは別の記事にまとめています。
「漏れた」わけではない
もう1つ、落ち着くために書いておきます。個人情報を入力したこと自体は、その情報が誰かに見られた、ということではありません。入力した内容はあなたのアカウントの中にあります。不特定の人が閲覧できる状態になったわけではありません。
気をつけるべきは、この先です。会話が履歴に残り続けること。設定によってはAIの改善に使われること。メモリとして覚えられ、今後の回答に反映されること。止めるべきはこの3つで、どれも操作で対処できます。パニックになって手当たり次第に触るより、順番にやるほうが確実です。
手順1:メモリを先に確認する
最初にやるのは、会話を消すことではありません。メモリの確認です。順番を間違えると、あとで探せなくなります。
なぜ先にメモリなのか
ChatGPTには、会話の中からあなたの情報を覚えておくメモリという仕組みがあります。そして公式ヘルプには、「チャットだけを削除しても、そのチャットから別途作成された保存済みメモリが削除されるとは限りません」と書かれています。
つまり、会話を先に消すと、記憶だけが残ったうえに、その出どころが分からなくなります。先にメモリを見て、該当する項目があれば消す。そのあとで会話を消す。この順番です。
もう1つ、メモリを先に見ておく理由があります。自分が入れたつもりのない情報が記憶されていることがあるからです。会話の流れで何気なく書いたこと、別の相談のついでに触れたこと。一覧で見て初めて「これも覚えられていたのか」と気づきます。今回の件を機に、全部の記憶を一度見ておくと安心できます。
確認のしかた
設定を開いて「パーソナライズ」を選び、「メモリ」を選びます。「メモリの概要」や「保存したメモリ」といった項目があれば、覚えられている内容を一覧で確認できます。表示される内容は、プランや地域によって違うことがあります。
項目が見つからないときは、直接聞いても構いません。公式ヘルプにも、自分について何を記憶しているか尋ねることができる、と書かれています。
「あなたが私について記憶している内容を、箇条書きで全部教えてください。推測や補足は書かず、実際に記憶している項目だけを並べてください。」
一覧から、消したい項目を個別に削除できます。全部まとめて消したい場合は、「削除してメモリをオフにする」を選ぶと、概要に出ている記憶を消したうえでメモリ自体を止められます。ただし、メモリをオフにしても過去のチャットは残ります。だから次の手順が必要です。
手順2:会話を削除する(アーカイブでは消えない)
メモリを片づけたら、会話そのものを消します。ここで多くの人がつまずく点があります。
アーカイブは削除ではない
ChatGPTには「アーカイブ」という機能があります。これは会話をサイドバーから見えなくするだけで、削除ではありません。公式ヘルプにも、アーカイブされたチャットは他の保存済みチャットと同じ保持ルールに従う、と書かれています。
つまり、消したつもりでアーカイブしていた場合、データは残ったままです。設定からアーカイブ済みのチャットを確認できるので、そこに該当の会話がないか見てください。「サイドバーから消えた=消えた」ではありません。
削除すると、どうなるか
正しく削除した場合、公式ヘルプにはこう書かれています。「削除済みチャットは、すでに匿名化されてアカウントとの関連付けが解除されている場合、またはセキュリティ上もしくは法的な理由で保持する必要がある場合を除き、30日以内にOpenAIのシステムから完全に削除されます」。
即座に消えるのではなく、30日以内、という点を押さえてください。そして、削除したチャットは復元できません。残しておきたいやり取りが同じ会話に含まれている場合は、必要な部分をコピーしてから消してください。
音声を吹き込んでいた場合
マイクアイコンから音声で入力していた場合も、対処は同じです。公式ヘルプによると、音声入力の音声はそのチャットが履歴にある限り保持され、チャットを削除すると関連する音声クリップも30日以内に削除されます。
ただし、例外として、以前にモデルの学習のために音声を共有していて、その音声クリップがすでにアカウントから切り離されていた場合は、この限りではないと書かれています。音声を使っている方は、設定のデータコントロールで「音声録音を含める」もオフにしておいてください。
手順3:共有リンクと設定を確認する
ここまでで会話は消えました。あと2つ、見落としやすい場所を確認します。
共有リンクを作っていないか
その会話を誰かに見せるために共有リンクを作っていた場合、元の会話を消してもリンクが残っていることがあります。設定の中に共有リンクの一覧があるので、開いて確認してください。不要なものは削除します。
リンクは、URLを知っている人なら誰でも開けます。社内のチャットに貼った、家族に送った、SNSに投稿した。心当たりがあれば、その先も確認してください。なお公式ヘルプによると、共有リンクにはメモリの情報は含まれません。共有されるのは会話の中身だけです。
学習の設定を確認する
最後に、設定のデータコントロールで「すべての人のためにモデルを改善する」がオフになっているか確認します。オンのままだと、今後の会話が引き続きAIの改善に使われます。
ここで1つ、はっきりさせておきます。今からオフにしても、すでに入力した内容が学習に使われたかどうかを遡って取り消すことはできません。オフにするのは、これから先のためです。過去の分を心配し続けるより、今後の入力を減らすほうが実効性があります。設定の詳しい場所と、オフにしても残るものは別の記事に書いています。
| 操作 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| メモリを削除 | 記憶が消える | 元の会話は残る |
| 会話を削除 | 30日以内に完全削除 | 復元できない |
| アーカイブ | 非表示になるだけ | 削除ではない |
| 学習をオフ | 今後は使われない | 過去は遡れない |
アカウントごと消すべきか
「不安だからアカウントごと消したい」と考える方もいます。判断材料を書いておきます。
公式が先に別の選択肢を案内している
OpenAIの公式ヘルプは、アカウント削除のページの冒頭で「アカウントを削除する前に、他の選択肢をご検討ください」と書いています。支払いを止めたいだけ、メールアドレスを変えたいだけ、会話を消したいだけなら、アカウントを削除しなくても対応できる、という案内です。
この記事の手順1から3まで済ませたなら、会話もメモリも消えています。そのうえでアカウントまで消す必要があるかは、冷静に考えてください。アカウントの削除は元に戻せません。
削除したときに起きること
公式ヘルプによると、アカウントを削除するとそのアカウントでOpenAIのサービスにアクセスできなくなり、データは30日以内に削除されます(法令により保持が求められる場合などを除く)。同じメールアドレスで新しいアカウントを作れるのは、削除から30日経過後です。
そして、見落としやすい注意があります。アカウントを削除しても、Apple App StoreやGoogle Play経由で契約している有料プランは自動ではキャンセルされません。公式ヘルプに明記されています。有料プランを契約している方は、先にそちらを解約してから削除してください。消したつもりで課金だけ続く、という事態を避けるためです。
サインインできないときの窓口
パスワードが分からない、ログインできない、という状態でも削除の依頼はできます。公式ヘルプには、サインインできない場合はプライバシーポータルから本人確認済みの削除リクエストを送る、と案内があります。
その際、アカウントに登録されているメールアドレスか電話番号を確認できる必要があります。どちらにもアクセスできない場合は、所有権の審査についてサポートに問い合わせる流れになります。なお、会社が管理しているアカウント(Business・Enterprise・Edu)は、自分では削除できません。所属する組織に問い合わせてください。
やらなくていいこと、次から防ぐこと
最後に、やらなくていいことと、同じことを繰り返さないための仕組みを書きます。
入れてしまったのが他人の情報だったとき
家族や同僚、友人の情報を入れてしまった場合、消す作業に加えて、本人に伝えるかどうかの判断が入ります。判断の目安を書いておきます。
名前だけ、あるいは関係性が分かる程度(「同じチームの人」「長女の担任」)なら、消せば実害はほとんどありません。一方、連絡先、住所、健康に関すること、収入や家庭の事情まで書いていた場合は、伝えておいたほうがよい範囲です。相手が知らないところで自分の情報が外部サービスに送られていた、という状態は避けるべきだからです。
伝え方は、事実だけで十分です。「AIに相談したときに、あなたのことを名前つきで書いてしまった。消したけれど、伝えておく」。隠して、あとから別の形で知られるほうが、関係にとっては悪い結果になります。
やらなくていいこと
過去のすべての会話を読み返して探す。心当たりのある会話だけで十分です。すべてを点検しようとすると、時間がかかるわりに見落とします。アプリを削除する。アプリを消してもアカウントのデータは残るので、意味がありません。「学習された分を取り消す」方法を探す。そのような操作は用意されていません。
そして、過度に自分を責めないこと。入力欄は何でも受け付ける作りになっていて、警告も出ません。多くの人が同じことをしています。大事なのは、気づいた時点で正しい順番で対処することと、次から仕組みで防ぐことです。
次から防ぐ仕組み
気をつける、という決意では防げません。手順にしてください。1つ目、名前や会社名が出てくる相談は、最初から一時チャットで始める。履歴に残らず、メモリも作られないので、消す作業そのものが不要になります。
2つ目、送信前に置き換える癖をつける。会社名は「A社」、人の名前は「担当者A」「長女」、金額は「金額1」。慣れると30秒です。3つ目、判断基準を1つ持つ。「この文章を、知らない人が立っているエレベーターの中で声に出して読めるか」。読めないなら、その部分を書き換えてから送ります。
送る前に自分でチェックする
置き換えが面倒なときは、AIに手伝わせる方法もあります。ただし、その文章には具体的な情報がまだ入っているので、この作業は必ず一時チャットで行ってください。通常のチャットでやると、確認のために入れた文章そのものが履歴に残ります。
「次の文章の中から、個人が特定できる情報を探して一覧にしてください。そのうえで、『A社』『担当者B』のような記号に置き換えた文章を作ってください。内容の評価や提案は書かないでください。文章はここから:」
一覧を出させるのが要点です。自分では気づかなかった箇所が挙がってきます。駅名、店名、学校名、曜日と時間帯の組み合わせ。これらは単体では個人情報に見えませんが、いくつか重なると生活が特定できる情報になります。何が引っかかるのかを一度見ておくと、次から自分で判断できるようになります。
使い分けを決めておく
もっと単純に、用途で分ける方法もあります。残っても困らない相談は通常のチャット。料理、言葉の言い換え、調べもの。人や会社が出てくる相談は一時チャット。仕事、家族、お金、健康。
この2つに分けておくと、そもそも消す場面がほとんどなくなります。今回の件をきっかけに、この線引きを決めてしまってください。対処より、設計のほうが楽です。
家族で同じアカウントを使っている場合は、もう一段の工夫が要ります。誰が何を入れたか分からなくなるうえ、記憶が混ざるからです。可能なら、使う人ごとにアカウントを分けてください。分けられない事情があるなら、少なくとも「人の名前は入れない」を家のルールにしておくと、混ざったときの被害が小さくなります。
お子さんが使っている場合は、設定と家庭のルールを先に決めておくほうが確実です。年齢の条件、保護者がやっておく設定、話し合いの進め方は、子どもにChatGPTを使わせる前の記事にまとめています。
まとめ
個人情報を入れてしまったときは、順番にやってください。メモリを確認して消す。会話を削除する。共有リンクと学習の設定を確認する。この3つで5分です。逆順にすると、記憶の出どころが分からなくなります。
途中で引っかかりやすいのが、アーカイブは削除ではないという点です。サイドバーから消えても、データは保存済みチャットと同じ扱いで残ります。設定からアーカイブ済みを確認してください。そして、削除した会話は復元できないので、必要な部分は先にコピーしてください。
アカウントごと消す必要は、多くの場合ありません。公式ヘルプ自身が、削除の前に他の選択肢を検討するよう案内しています。どうしても消す場合は、App StoreやGoogle Playの有料プランを先に解約してください。アカウントを消しても、そちらは自動では止まりません。
最後に、会社の情報を入れてしまった場合だけは、自分で判断せず上司か情報システム部門に報告してください。黙って消して終わりにすると、あとで大きくなります。そして次からは、人や会社が出てくる相談を一時チャットで始める。これだけで、消す作業そのものがなくなります。
最後に、消したあとの時間についても書かれています。公式ヘルプに「削除済みチャットは、すでに匿名化されてアカウントとの関連付けが解除されている場合、またはセキュリティ上もしくは法的な理由で保持する必要がある場合を除き、30日以内にOpenAIのシステムから完全に削除されます」と書かれています。30日以内、です。押した瞬間に消えるわけではありません。ただし、アカウントの画面からはすぐ見えなくなります。だから、急ぎで人に見せない状態にしたいなら、削除で間に合います。そのうえで、完全に消えるまでには時間がかかると知っておいてください。
そして、アカウントごと消すかどうかの判断についても一文あります。「アカウントを削除する前に、他の選択肢をご検討ください」とのことです。先に別の手を見てください、と書かれています。この記事で見たとおり、メモリを消す、会話を消す、共有リンクを消す、学習をオフにする。手は4つあります。入れてしまったものが1件なら、アカウントを消す必要はほとんどありません。消すと、ほかのやりとりも全部なくなります。順番として、まず4つを試してください。
よくある質問(FAQ)
個人情報を入れてしまいました。もう漏れていますか?
入力したこと自体は、その情報が誰かに見られたということではありません。入力内容はあなたのアカウントの中にあり、不特定の人が閲覧できる状態にはなっていません。気をつけるべきは、会話が履歴に残ること、設定によってはAIの改善に使われること、メモリとして覚えられることの3つで、どれも操作で対処できます。
会話を消せば、それで終わりですか?
会話を消す前に、メモリを確認してください。公式ヘルプには「チャットだけを削除しても、そのチャットから別途作成された保存済みメモリが削除されるとは限りません」と書かれています。先にメモリを見て該当項目を消し、そのあとで会話を削除する。この順番です。逆にすると、記憶の出どころが分からなくなります。
アーカイブしました。これで消えていますか?
消えていません。アーカイブは会話をサイドバーから見えなくするだけで、削除ではありません。公式ヘルプにも、アーカイブされたチャットは他の保存済みチャットと同じ保持ルールに従う、と書かれています。設定からアーカイブ済みのチャットを確認して、該当の会話があれば削除してください。
削除したら、すぐに消えますか?
すぐではありません。公式ヘルプによると、削除済みチャットは、すでに匿名化されている場合やセキュリティ上・法的な理由で保持が必要な場合を除き、30日以内にシステムから完全に削除されます。また、削除したチャットは復元できないので、残しておきたいやり取りが同じ会話に含まれている場合は、先にコピーしてください。
不安なのでアカウントごと消したほうがいいですか?
多くの場合、必要ありません。公式ヘルプ自身が、アカウント削除の前に他の選択肢を検討するよう案内しています。会話とメモリを消せば、目的はほぼ達成されます。どうしても消す場合は、App StoreやGoogle Play経由で契約している有料プランを先に解約してください。アカウントを削除しても、そちらは自動ではキャンセルされません。
会社の情報を入れてしまいました。どうすればいいですか?
自分で判断せず、上司か情報システム部門に報告してください。会社が個人データを扱う場合のルールは法令で決まっており、会社としての対応が必要になることがあります。黙って消して終わりにすると、報告が遅れた分だけあとで問題が大きくなります。消す作業自体は、報告したうえで指示に従って進めてください。
対処より、次からの設計のほうが楽
人や会社が出てくる相談は、最初から一時チャットで始めれば、消す作業そのものが不要になります。設定の場所と、オフにしても消えないものはChatGPTに学習させない設定の手順にまとめています。