
AIで作った画像を、SNSに上げていいのか。年賀状に使っていいのか。子どもの作品に使っていいのか。この記事は、文化庁が公表している資料をもとに、AIで作ったものを使う前に何を確認すればよいかをまとめたものです。
先に結論を3つ書いておきます。1つ目。「作る」ことと「使う」ことは、別に判断されます。家で作って見るだけなら問題なくても、ネットに上げると話が変わります。2つ目。「知らなかった」が通らない場合があります。文化庁の資料に、AIでは既存の作品を認識していなくても侵害になることがある、と明記されています。3つ目。上げる前の確認は、画像検索で足ります。3分で終わります。
この記事は、文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日・文化庁著作権課)で確認した記述にもとづいています。個別の判断は事案によって変わるため、実際に問題が起きた場合や判断に迷う場合は、弁護士など専門家にご相談ください。
「作る」と「使う」で判断が変わる
ここが、この記事でいちばん大事なところです。多くの人が混同しています。
作るだけなら、範囲が広い
文化庁の資料には、こう書かれています。「生成AIによる生成自体は、個人が私的使用の目的で生成する場合(著作権法第30条第1項)や企業・団体等の内部において、権利者から許諾を得て利用することを前提に、検討の過程において生成する場合(同法第30条の3)は、これらの権利制限規定の範囲内であれば、権利者の許諾なく適法に行うことができます」。
つまり、自分や家族が見るためだけに画像を作るのは、権利制限規定の範囲内であれば許諾なくできる、ということです。作ること自体を怖がる必要はありません。
使う段階で、範囲が狭くなる
問題はここからです。同じ資料は続けてこう書いています。「これに対して、AI生成物の利用(インターネットでの配信、複製物の譲渡等)については、権利制限規定の範囲外となる場合が多いと考えられます」。
SNSへの投稿、ブログへの掲載、印刷して配る、販売する。これらは「利用」にあたり、範囲外になる場合が多いとされています。だから資料は、「AI生成物の生成自体は適法に行える場合でも、生成物を更に利用しようとする場合は、著作権侵害を生じさせないか確認することが必要です」と結んでいます。
作った時点では何も起きず、公開した瞬間に判断の枠組みが変わる。ここを知らないと、「作れたのだから使っていいはず」と考えてしまいます。
| 場面 | 扱い | この記事の判断 |
|---|---|---|
| 作って自分で見る | 私的使用の範囲 | 確認は不要 |
| 家族に見せる | 私的使用の範囲 | 確認は不要 |
| SNSに投稿する | 範囲外の場合が多い | 確認してから |
| 印刷して配る | 範囲外の場合が多い | 確認してから |
侵害になる2つの条件
では、何が問題になるのか。文化庁の資料は、条件を2つ示しています。
類似性と依拠性
資料にはこう書かれています。「著作権侵害の要件としては、既存の著作物との『類似性』及び『依拠性』の双方が必要です」。
類似性は、できあがったものが既存の作品と似ているかどうか。依拠性は、その既存の作品をもとにして作られたかどうか。この2つがそろって初めて侵害になります。逆に言えば、どちらか一方でも欠ければ侵害にはならないということです。
そして資料は、実務的な指針も示しています。「既存の著作物との関係で『類似性』がないAI生成物については、その利用について、著作権法上、特段の許諾を得ることは不要です」。つまり、似ていなければ大丈夫、という判断ができます。
だから、似ていないかを確認する
文化庁の資料は、一般の利用者向けの項目として、「生成物の利用に先立って、既存の著作物と類似した生成物となっていないか確認」を挙げています。確認の方法として括弧書きで示されているのが、「インターネット検索(文章検索・画像検索)の活用など」です。
特別な道具は要りません。画像検索にかけてみる。これが、公的な資料に書かれている確認方法です。手順は後半に書きます。
ここで押さえておきたいのは、確認は「絶対に大丈夫」を証明するためのものではないということです。似ているものが見つからなかったからといって、この世のすべての作品と照合したわけではありません。それでも、明らかに似ているものを公開してしまう事故は、この一手間でほとんど防げます。
知らなかった、が通らない場合
ここが、AIならではの注意点です。従来の感覚と違います。
認識していなくても侵害になりうる
文化庁の資料には、一般の利用者が確認すべき情報として、こう書かれています。「生成AIを利用する場合、仕組み上、学習データに含まれる既存の著作物と類似した生成物が生成されることがあり、また、生成AIを利用しない場合と異なりAI利用者が既存の著作物を認識していなくても、生成・利用が著作権侵害となることがあります」。
自分で絵を描く場合、見たことのない作品に似せることはできません。しかしAIは、あなたが知らない作品を学習している可能性があります。だから、「そんな作品は知らなかった」と言っても、それだけでは免れないことがあるということです。
これは怖い話に聞こえますが、裏を返せば確認する意味があるということでもあります。知らないものを避けるには、調べるしかありません。だから画像検索が推奨されているのです。
逆に、依拠性が認められやすくなる場合
もう1つ、重要な記述があります。「生成AIへの指示(プロンプト)として既存の著作物そのものを入力した場合や、既存の著作物の題号(タイトル)、キャラクター名などの特定の固有名詞を入力した場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させる間接事実となり、依拠性が認められやすくなると考えられます」。
つまり、作品名やキャラクター名を入れて作らせると、「知っていた」証拠として扱われうるということです。「◯◯風に」「△△っぽい絵で」と頼むのは、この意味で危ない頼み方になります。具体的にどう言い換えるかは、後半に書きます。
プロンプトを残しておく
資料は、対策も示しています。「依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれます」。
何をどう頼んで作ったかを残しておけば、特定の作品を意識していなかったことを説明する材料になります。スマホのメモに、作った日付と使った言葉を貼っておくだけで十分です。削除するより、残すほうが有利に働く場面がある。この記事の他のテーマとは逆なので、覚えておいてください。
上げる前にやる3つの確認
ここからが実作業です。SNSに上げる、印刷して配る、といった場面の前にやってください。3分で終わります。
1. 画像検索にかける
作った画像を、そのまま画像検索にかけます。スマホなら、検索アプリのカメラアイコンから画像を選ぶだけです。似た画像が大量に出てきたら、いったん止まってください。
見るべきは、「構図と要素がそっくりな1枚があるかどうか」です。同じジャンルの絵がたくさん出てくるのは当然で、問題ではありません。問題になるのは、特定の1作品と見分けがつかない場合です。文章を作った場合も同じで、特徴的な一文をそのまま検索にかけます。
2. キャラクターやロゴが入っていないか見る
作った画像の中に、既存のキャラクター、企業のロゴ、商品のパッケージ、有名な建築物が入り込んでいないかを見ます。AIは、指示していないものを勝手に描き込むことがあります。
特に、背景の看板、服のマーク、小物の形。画面の端まで拡大して確認してください。意図せず入った要素でも、公開すれば自分の責任になります。人物の顔が実在の人に似ていないかも、あわせて見ておくと安心です。
文字が入っている場合も見てください。AIが描く文字は、既存のロゴを崩した形になっていることがあります。読めない文字列であっても、元になった形が残っていれば指摘を受ける可能性があります。文字を入れたいなら、AIに描かせず、あとから自分で載せるほうが確実です。
3. 利用規約を確認する
3つ目は、法律とは別の話です。文化庁の資料も、一般の利用者が確認すべき情報としてAIサービスの利用規約を挙げ、こう書いています。「AIシステム・サービスにおいては、利用規約等の当該システム・サービスの利用上のルールにおいて、著作権侵害のおそれがある利用方法を禁止又は制限している場合があります(他人の著作物を入力することの禁止等)。あらかじめ、利用しようとするAIシステム・サービスの利用規約等を確認し、これに従って利用することが必要です」。
法律上は問題なくても、そのサービスの規約で禁止されていることがあります。特に、商用利用の可否は規約で定められています。作ったものを販売する予定があるなら、必ず規約を読んでください。
やってはいけない頼み方
確認を減らすには、そもそも危ない頼み方をしないことです。具体的に書きます。
作品名・キャラクター名を入れない
前述のとおり、題号やキャラクター名を入れると、依拠性が認められやすくなると資料に書かれています。「◯◯という漫画の絵柄で」「△△というキャラクターに似た」という頼み方は避けてください。
代わりに、特徴を言葉で説明します。「線が太くて、色数が少なくて、背景が単色のイラスト」「水彩絵の具で塗ったような、にじみのある風景画」。こう頼めば、特定の作品を指していません。表現したいものは、たいてい特徴の組み合わせで言えます。
既存の画像を入れて「似せて」と頼まない
手元にある画像を入力して、それに似たものを作らせる使い方があります。文化庁の資料は、この点についてこう書いています。「『入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる』といった目的で入力を行う場合は、『享受』目的が併存している場合に当たるとして、同条が適用されない場合があります。このような場合には、生成AIへの入力に伴う著作物の複製等について、権利者の許諾を得ることが必要です」。
つまり、他人が作った画像を入れて「これに似せて」と頼むのは、入力の段階から許諾が必要になる場合があるということです。自分で撮った写真や、自分で描いた絵なら、この問題は起きません。
「自分で撮った写真を添付します。この写真をもとに、水彩画のような雰囲気のイラストを作ってください。特定の作家や作品の画風には寄せないでください。人物の顔は、実在の人に似せないでください。」
特徴で頼む言い方
作品名を使わずに雰囲気を伝える言い方を、そのまま置いておきます。カッコの中を置き換えてください。
「(子どもの誕生日カード)に使うイラストを作ってください。特徴は、線が太い、色は3色まで、背景は単色、人物は描かない、という条件でお願いします。特定の作家名・作品名・キャラクター名には寄せないでください。ロゴや文字は入れないでください。」
要点は3つです。条件を特徴で並べること。特定の作家や作品に寄せないよう明示すること。ロゴや文字を入れさせないこと。3つ目は、前の章で書いた写り込みを防ぐためです。作る段階で塞いでおくと、確認が軽くなります。
意図して似せようとしない
文化庁の資料は、一般の利用者に対して「既存の著作物と類似したものを意図した生成は行わないといった、著作権侵害を生じさせない取組みが望まれます」と書いています。
言い換えると、似せようとしていないなら、多くの場合は問題になりません。偶然似てしまう可能性に備えて確認はしますが、最初から似せようとしなければ、そもそも当たる確率が下がります。当たり前のようですが、ここが出発点です。
もう1つ、実務的な話をします。「有名な作品に似せたい」という動機そのものを疑ってください。多くの場合、本当にやりたいのは「あの雰囲気を出したい」ことのはずです。雰囲気は特徴の組み合わせで作れます。特定の作品を指名する必要は、実はほとんどありません。
家庭の中なら大丈夫な範囲
最後に、安心して使える範囲をはっきりさせておきます。怖がって何もしないのは、もったいないからです。
私的使用の範囲
文化庁の資料は、一般の利用者についてこう書いています。「個人が生成AIを利用する場合、AI生成物を『個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)』を目的とする場合であれば、仮に生成物に既存の著作物との類似性及び依拠性があったとしても、権利者の許諾は必要なく、生成物の生成や私的な鑑賞などが可能です」。
つまり、自分と家族の中で楽しむ分には、類似性と依拠性があったとしても許諾は要らないということです。試しに作ってみる、家族に見せる、スマホの壁紙にする。この範囲なら、確認なしで使えます。
学校の授業も範囲内
もう1つ、同じ資料に書かれています。「学校その他の教育機関において、教員・生徒が、授業の過程において利用することを目的とする場合であれば、同様に、その目的の範囲内でAI生成物を生成して授業に利用することには、原則として権利者の許諾は必要ありません」。
ただし、これは授業の過程での利用に限った話です。学校の作品展に出す、コンクールに応募する、学校のサイトに載せる。こうした場面は授業の範囲を超えるので、別の判断が要ります。子どもの課題でAIを使う場合の線引きは、文部科学省のガイドラインをもとにした記事にまとめています。
迷ったら、外に出さない
判断がつかないときの原則を書いておきます。家の中にとどめておけば、ほとんどの問題は起きません。SNSに上げたい、印刷して配りたい、売りたい。この段階で初めて、3つの確認が必要になります。
そして、確認しても不安が残るなら、使わないという選択をしてください。AIで作った画像は、いくらでも作り直せます。1枚に固執する理由はありません。迷ったものを外に出さない。これが、いちばん確実な予防策です。
仕事で使う場合は、もう一段の確認が要ります。会社としてAIで作ったものを公開するなら、社内の規定と、契約しているサービスの規約の両方を見てください。個人の判断で公開して問題が起きると、責任は会社に及びます。仕事でAIを使うときの確認の順番は、別の記事にまとめています。
まとめ
AIで作ったものを扱うときの原則は、「作る」と「使う」を分けて考えることです。文化庁の資料によれば、私的使用の目的で生成すること自体は権利制限規定の範囲内であれば許諾なく行えますが、インターネットでの配信や複製物の譲渡といった利用については、範囲外となる場合が多いとされています。
侵害の条件は2つ、類似性と依拠性です。そして、AIでは既存の作品を認識していなくても侵害となることがあると明記されています。だから、外に出す前に確認する意味があります。
確認は3つ。画像検索にかける。キャラクターやロゴが写り込んでいないか拡大して見る。サービスの利用規約を確認する。3分で終わります。
そして、危ない頼み方をしないこと。作品名やキャラクター名を入れない。これらを入力すると、知っていた証拠として扱われ、依拠性が認められやすくなると資料に書かれています。代わりに、線の太さや色数といった特徴を言葉で説明してください。最後に、迷ったものは外に出さない。作り直せるのだから、固執する必要はありません。
最後に、迷ったときの考え方を1つ。判断に迷う場面は、たいてい「似ているかどうか」で悩んでいます。そこで止まらずに、まず作り方を思い出してください。特定の作品を名前で指定して作らせたのか、そうでないのか。この違いが、いちばん大きく効きます。名前を出して作らせたものは、上げる前に止まってください。そうでないなら、上げる範囲を狭くすれば多くは収まります。そして、迷ったまま公開しないこと。下書きのまま置いておけば、あとから判断できます。個別の判断は事案によって変わるので、仕事で使う場合は社内の担当に確認してください。家庭の中で見せるだけなら、ここまで気にする必要はありません。外に出すときだけ、この順番を思い出してください。
よくある質問(FAQ)
AIで作った画像をSNSに上げてもいいですか?
上げる前に確認してください。文化庁の資料には、生成自体は私的使用の範囲なら許諾なく行えるが、「AI生成物の利用(インターネットでの配信、複製物の譲渡等)については、権利制限規定の範囲外となる場合が多いと考えられます」と書かれています。画像検索で既存の作品と似ていないかを確認し、キャラクターやロゴの写り込みを見て、サービスの利用規約も確認してください。
自分で作ったものなのに、なぜ問題になるのですか?
AIは、あなたが知らない作品を学習している可能性があるためです。文化庁の資料には「生成AIを利用しない場合と異なりAI利用者が既存の著作物を認識していなくても、生成・利用が著作権侵害となることがあります」と明記されています。自分で絵を描く場合と違い、「知らなかった」だけでは免れないことがある、ということです。だから公開前の確認が推奨されています。
何をどう確認すればいいですか?
文化庁の資料は、確認方法として「インターネット検索(文章検索・画像検索)の活用など」を挙げています。作った画像をそのまま画像検索にかけて、構図と要素がそっくりな1枚がないかを見てください。同じジャンルの絵が多く出るのは問題ありません。文章の場合は、特徴的な一文を検索にかけます。
「〇〇風に描いて」と頼むのはだめですか?
作品名やキャラクター名を入れるのは避けてください。文化庁の資料には「既存の著作物の題号(タイトル)、キャラクター名などの特定の固有名詞を入力した場合は、AI利用者が既存の著作物を認識していたことを推認させる間接事実となり、依拠性が認められやすくなると考えられます」とあります。代わりに「線が太くて色数が少ないイラスト」のように、特徴を言葉で説明してください。
家族に見せるだけなら大丈夫ですか?
大丈夫です。文化庁の資料には「個人が生成AIを利用する場合、AI生成物を『個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(私的使用)』を目的とする場合であれば、仮に生成物に既存の著作物との類似性及び依拠性があったとしても、権利者の許諾は必要なく、生成物の生成や私的な鑑賞などが可能です」と書かれています。試しに作る、家族に見せる、壁紙にする。この範囲なら確認は不要です。
作ったときのプロンプトは消したほうがいいですか?
残しておいてください。文化庁の資料には「依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれます」と書かれています。何をどう頼んで作ったかが残っていれば、特定の作品を意識していなかったことを説明する材料になります。日付と使った言葉をメモに貼っておくだけで十分です。
迷ったものは、外に出さない
この記事は一般的な考え方を紹介したもので、個別の判断は事案によって変わります。実際に問題が起きた場合や判断に迷う場合は、弁護士など専門家にご相談ください。文化庁の資料は下のリンクから読めます。