
HubSpotでメールを送る前に、宛先をリストでまとめる。ここで最初に聞かれるのが「動的と静的、どっちを選べばいいですか」です。
画面では小さな選択肢にしか見えませんが、この1クリックで、配信の宛先が「配信ボタンを押した瞬間まで変わり続ける」か「作った時点で固定される」かが決まります。
選び間違えると、送ったつもりの人に届いていなかったり、送るつもりのなかった人に届いたりします。しかも送信後に気づきます。
この記事では、2種類の違い・判断基準・作成手順・そして静的リストが静かに減る現象までを扱います。
先に結論:迷ったらこう選んでください
- 「条件に当てはまる人にずっと送りたい」→ 動的リスト。条件を満たした人が自動で入り、外れた人が自動で出ます
- 「この日のこの顔ぶれに送りたい」→ 静的リスト。作った時点のメンバーで固定されます
- 一斉配信の宛先は、基本的に静的リストのほうが事故りません。誰に送ったのかが後から確定できるからです
リストの作成自体は、すべての製品とプランで使えます。ワークフローによる自動化はProfessional以上です。
2種類のリスト:動くリストと、止まっているリスト
言葉で書くと1行で終わりますが、実務では大きな違いになります。
| 動的リスト(アクティブ) | 静的リスト | |
|---|---|---|
| メンバー | 条件で自動更新 | 作成時点で固定 |
| 新しく条件を満たした人 | 自動で入る | 手で足す |
| 条件から外れた人 | 自動で出る | 残ったまま |
| 向く用途 | 継続的な絞り込み | 特定の配信の宛先 |
動的リストは「条件そのもの」です
動的リストは、名簿というより「この条件に当てはまる人、という問い合わせ文」だと考えると理解しやすくなります。中身は常に最新の答えに置き換わります。
「東京都の既存顧客」という動的リストを作れば、新しく東京都の顧客が増えれば勝手に入り、解約した人は勝手に出ます。名簿を更新する作業が要りません。
静的リストは「その日の名簿」です
静的リストは、作った瞬間に写真を撮るようなものです。あとで条件に当てはまる人が増えても、自動では入ってきません。
不便に見えますが、「あのとき誰に送ったか」を確定できるのが強みです。
配信直前に宛先が増減する、という事実
ここがいちばん伝えたい点です。
動的リストを一斉配信の宛先にすると、配信が実行される瞬間のメンバーに送られます。リストを作った時点でも、下書きを書いていた時点でもありません。
増えるのも減るのも起きます
増える側は、まだ想像しやすいかもしれません。「資料請求した人」という動的リストなら、下書きを書いている間に請求した人も宛先に入ります。多くの場合これは望ましい挙動です。
問題は減る側です。条件から外れた人は自動的にリストから出ていきます。「今月中に商談していない人」のような条件だと、配信直前に商談が入った人が抜けます。
送ったつもりでいたのに届いていない、という状況は、こうして生まれます。しかも、あとから「誰が抜けたか」を確かめる手段がありません。動的リストは常に最新の状態しか持っていないからです。
どちらを選ぶかの判断基準
用途別に整理します。
| やりたいこと | 選ぶもの |
|---|---|
| 月例のお知らせを既存顧客に送る | 静的(毎回作り直す) |
| セミナー申込者にリマインドを送る | 静的 |
| いま何人が条件を満たすか眺める | 動的 |
| 追客が止まっている人を見つける | 動的 |
| 配信停止の人をまとめて外す | 動的 |
実務では「動的で見つけて、静的にして送る」
この2段構えが、いちばん事故が少ない使い方です。
- 動的リストで条件を組み、対象になる人を眺める
- 顔ぶれを確認して、条件を微調整する
- 送ると決めたタイミングで、その中身を静的リストにコピーする
- 静的リストを宛先にして配信する
ひと手間増えますが、「今回は誰に送ったのか」が記録として残ります。クレームや問い合わせがあったときに、その人が対象に入っていたかを即答できます。
動的リストを静的リストにコピーする手順
前章の2段構えを実際にやる方法です。難しくありません。
- 動的リストを開き、一覧の表示を確認します
- すべて選択のチェックボックスをオンにします
- 表の上に出る操作メニューから、リストへの追加を選びます
- 追加先として、新しい静的リストを作成します
- 名前に日付を入れて保存します
ここで大事なのは、コピーする直前に一覧を眺めること。「あれ、この人まだ入っているのか」「この会社は今回対象外だな」という気づきは、名簿の形で並べて初めて出てきます。条件式を見ているだけでは分かりません。
件数を必ずメモしてください
静的リストを作ったら、その時点の件数を記録しておきます。配信の直前にもう一度開いて、件数が変わっていないかを確認するためです。
前章で触れたとおり、静的リストはマージによって減ることがあります。「作ったときは120人、送る直前は117人」と分かれば、間に何かが起きたと気づけます。記録がないと、減ったことにも気づけません。
毎月同じ配信をするなら、複製が早い
月例のお知らせのように、毎回ほぼ同じ条件で送る場合は、前月の静的リストを作り直すより、動的リストを1つ用意しておいて、毎月そこからコピーするほうが手間が少なくて済みます。
コピー元の動的リストは1つだけ。送るたびに、日付を付けた静的リストが1つずつ増えていきます。3か月分もたまれば、配信履歴として十分な記録になります。
リストを作る手順
- 左メニューの「CRM」から「セグメント(リスト)」を開きます
- 「セグメントを作成」をクリックし、「手動」を選びます
- セグメント化する対象(コンタクト、会社など)を選び、次へ進みます
- 名前を編集し、必要ならフォルダーに入れます
- フィルターを追加して、条件を組み立てます
- 次へ進み、詳細設定で動的か静的かを選びます
- 保存すると処理が始まります
動的・静的の選択は、最後の詳細設定の中にあります。条件を組むことに気を取られて、ここを既定のまま通過してしまうのがよくある失敗です。保存を押す前に、この項目だけは必ず見てください。
名前の付け方を決めておく
リストは放っておくと増えます。半年後に「これ何のリストだっけ」となるのを防ぐため、名前の頭に種別を入れることをおすすめします。
たとえば「【動】東京都の既存顧客」「【静】2026-09 月例メール宛先」のような形です。一覧で並んだときに、動くリストなのか固定なのかが一目で分かります。日付を入れておくと、古い静的リストの掃除も楽になります。
フィルターは250件まで。でも3つを超えたら設計を疑う
1つのリストに追加できるフィルターは最大250件です。上限としてはかなり余裕がありますが、実務で3つを超えたら、いったん手を止めて考え直してください。
条件が増えるのは、プロパティーが足りていない合図
「東京都または神奈川県または千葉県、かつ、業種が製造業または卸売業、かつ、最終接点が6か月以内」。こういう条件を毎回組んでいるなら、その組み合わせ自体をプロパティーにしたほうが早いです。
「営業エリア」という選択式のプロパティーを1つ作って「首都圏」という値を入れておけば、リストの条件は1つで済みます。条件が複雑なリストは、作った本人以外には解読できません。
条件は「and」と「or」の混在に注意
複数のフィルターを組むとき、どこまでが「かつ」でどこからが「または」なのかを見誤ると、想定の何倍もの人数が入ります。保存する前に、必ず件数を見てください。
想定より桁が1つ多い、または極端に少ない場合、条件の組み方が間違っています。人数は、条件が正しいかどうかを教えてくれる唯一のサインです。
よく使う条件の型を3つ持っておく
毎回ゼロから条件を考えると時間がかかります。1〜10人の会社で実際に使う型は、だいたい3つに収まります。
| 型 | 条件の組み方 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 接点の新しさ | 最終接点日が◯日以内/以前 | 追客、掘り起こし |
| 段階 | ライフサイクルや取引の有無 | 案内の出し分け |
| 属性 | 業種・地域・規模 | 内容の出し分け |
この3つを組み合わせれば、たいていの宛先は作れます。4つ目の軸を足したくなったら、それは新しいプロパティーが必要という合図だと考えてください。
「最終接点日」は最も使い回しが効きます
条件を1つだけ覚えるなら、これです。最後にやりとりした日から何日たったか。追客の漏れも、掘り起こしの対象も、休眠顧客の抽出も、すべてこの軸で作れます。
日数の決め方に正解はありませんが、商談の平均期間の半分を目安にすると実感に合います。商談が決まるまで平均2か月かかる商材なら、30日で切ると「そろそろ動くべき案件」が並びます。
静的リストはマージで中身が減ります
見落とされがちな挙動を1つ。
重複したコンタクトをマージ(統合)すると、統合されて消えた側のレコードは、静的リストから取り除かれます。マージ自体は正しい作業なのですが、その副作用として静的リストの人数が減ります。
配信の直前にマージ作業をしない
実務上の対処はこれです。宛先の静的リストを作ったあとに重複整理をすると、宛先が減ります。順番を逆にしてください。重複整理を先に済ませ、そのあとで配信用の静的リストを作ります。
月例配信をしているなら、「毎月◯日に重複整理、その翌日に宛先リスト作成」のように順番を固定しておくと、この事故は起きません。
配信前チェックの5項目
宛先リストができたら、送信ボタンを押す前にここを見てください。所要5分です。
とくに大事なのは1と2です
3以降は一般的な配信前チェックですが、1と2はリストの仕組みを知らないと思いつきません。宛先の種別と件数。この2つを見る習慣をつけるだけで、この記事で挙げた事故はほぼ防げます。
ワークフローが使えない無料版で、リストをどう使うか
HubSpotの自動化にあたるワークフローは、Professional以上の機能です。無料版やStarterでは使えません。
そのぶん、リストが「半自動」の役割を担います。全部は自動化できませんが、探す手間はほぼゼロにできます。
作っておくと効く動的リスト3つ
- 【動】最終接点から30日以上……追客が止まっている人。週1回眺めるだけで漏れが減ります
- 【動】フォーム送信あり・商談なし……問い合わせたのに商談に進んでいない人。取りこぼしが見えます
- 【動】配信停止・不達……送ってはいけない人。配信前にここを確認する習慣にします
これらは条件を1回組むだけで、あとは自動で最新になります。ワークフローのように「勝手に何かをしてくれる」わけではありませんが、「勝手に最新の一覧になっている」だけでも十分に価値があります。
通知の代わりに、見る日を決める
自動通知が使えない以上、人間側で頻度を決めるしかありません。週に1回、決まった曜日に上の3つを開く。これだけで、無料版でも追客の抜けはかなり防げます。
無料版でのリストの限界も知っておく
リストは便利ですが、できないこともあります。「リストに入ったら自動でメールを送る」「担当者に自動で通知する」といった動作は、リスト単体ではできません。それはワークフローの領域です。
つまり、リストは「一覧を最新に保つ」ところまでを担当します。そこから先の行動は人がやります。この線引きを理解しておかないと、「リストを作ったのに何も起きない」と感じることになります。
1〜10人の会社であれば、実はこれで十分に回ります。自動で送られないほうがいい場面も多いからです。相手や状況を見て、人が判断して送る。件数が少ないうちは、そのほうが成果につながります。
増えすぎたリストを片付ける
1年も運用すると、リストは数十個になります。放置すると、どれを使えばいいか分からなくなり、結局その場で新しく作ることになります。
半年に一度、3つの基準で捨てる
- 日付が入った静的リストで、3か月以上前のもの……配信履歴は別に残るので、リスト自体は消してかまいません
- 人数が0人のまま動いていない動的リスト……条件が現実と合っていません
- 名前を見ても用途が分からないもの……分からないなら、誰も使っていません
消す前に、そのリストがメール配信で使われていないかだけ確認してください。使用中のものを消すと、配信の設定側でエラーになります。
リストを増やす前に決めておく3つのこと
リストは1つずつ作れてしまうので、決め事がないまま増えます。前の章の「片付ける」話に入る前に、増やす側のルールを3つだけ決めてください。あとからの整理が要らなくなります。
1. 名前の頭に、動的か静的かを書く
この記事でここまで使ってきた【動】【静】の書き方を、そのまま名前に入れてください。一覧の画面では、動的か静的かがひと目では分かりません。開いて確かめる手間が、リストの数だけ発生します。
そのうえで、静的リストには日付を入れます。「【静】2026-03 展示会フォロー」のような形です。静的リストは中身が止まっているので、いつ時点のものかが分からないと使えません。日付が入っていれば、古くなったものを消す判断も一瞬で終わります。
2. 上限があることを前提にする
作れるリストの数には上限があります。具体的な数はプランによって違い、公式の製品・サービスカタログに記載されています。上限に達すると、それ以上は作れません。
1〜10人の会社で日常的に上限へ達することは多くありませんが、「配信のたびに使い捨てのリストを作る」運用をしていると、想像より早く積み上がります。配信の絞り込みが毎回変わるなら、リストを増やすのではなく、同じリストの条件を見直すほうが健全です。
3. 誰が作るかを決める
複数人が思いつきで作ると、似た名前のリストが並びます。「エリアで絞ったリスト」が3つある、という状態です。どれが最新か分からないので、結局また新しく作られます。
人数が少ないうちは、作るのは1人、他の人は「こういう条件で作ってほしい」と依頼する形が確実です。依頼する側にとっても、条件を言葉にする過程で「本当に新しいリストが要るのか」が整理されます。
この3つを最初に決めておくと、半年後の片付けがほとんど発生しません。捨てる作業より、増やし方を決めるほうが先です。
まとめ
動的と静的の違いは、選択肢の見た目以上に大きな差です。
- 動的は条件そのもので、配信の瞬間まで増減します。減った人を後から追う手段はありません
- 静的は作った時点で固定されます。一斉配信の宛先は、こちらのほうが事故りません
- 動的で見つけて、静的にして送る。この2段構えが実務では最も安全です
- 静的リストはマージで中身が減ります。重複整理を先、宛先リスト作成を後にしてください
- ワークフローが使えないプランでは、動的リストが半自動の役割を担います。週1回見る日を決めてください
まずは作りかけのリストを開いて、動的か静的かを確認するところから始めてください。意図と違っていることが、意外とあります。
よくある質問(FAQ)
動的と静的、あとから変更できますか
変更の可否については公式ヘルプに明確な記載を見つけられなかったため、断定は避けます。実務上は、迷ったら新しく作り直すほうが確実です。条件が同じなら作成は数分で終わります。
一斉配信の宛先はどちらがいいですか
静的リストをおすすめします。動的リストを宛先にすると、配信が実行される瞬間のメンバーに送られるため、下書き中に条件から外れた人には届きません。誰に送ったかを後から確定できる点でも静的が有利です。
リストは無料版でも使えますか
リストの作成自体は、すべての製品とプランで利用できます。自動化のワークフローはProfessional以上なので、無料版やStarterでは動的リストが「半自動」の役割を担うことになります。
静的リストの人数が勝手に減りました
重複コンタクトのマージが原因の可能性があります。マージで統合されて消えた側のレコードは、静的リストから取り除かれます。配信用のリストを作ったあとに重複整理をすると宛先が減るので、順番を逆にしてください。
フィルターは何個まで組めますか
1つのセグメントに追加できるフィルターは最大250件です。ただし実務では3つを超えたら設計を見直すことをおすすめします。条件が複雑なリストは、作った本人以外には解読できません。
リストが増えすぎて管理できません
名前の頭に種別を入れてください。「【動】」「【静】」と日付を付けるだけで、一覧の見通しがよくなります。そのうえで半年に一度、3か月以上前の静的リスト、0人のまま動かない動的リスト、用途が分からないものを整理してください。
参考にした公式ドキュメント
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