
HubSpotでメールを一斉配信したら、自分宛のテストは届いたのに、社外の人には届いていない。あとで聞いたら迷惑メールフォルダーに入っていた——。
文面を直しても、画像を減らしても、この症状は直りません。原因は本文ではなく、差出人の名乗り方にあるからです。
そして、この記事でいちばんお伝えしたいのはここです。根本的な対処である「Eメール送信ドメインの接続」は、HubSpotの無料版では使えません。Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Content HubのいずれかのStarter以上が必要です。無料版のまま打てる手と、有料版でないと打てない手は、はっきり分かれています。
この記事では、その線引きをはっきりさせたうえで、上から順に切り分けられる形で3つの原因を解説します。
先に結論:確認するのは3つだけです
- 差出人アドレスを確認(verify)したか……未確認だと差出人がHubSpot側のドメインに書き換わります。無料版でも直せます
- Eメール送信ドメインを接続したか……接続しないとDKIM署名が自社ドメインになりません。Starter以上の機能です
- GmailとYahoo!の受信要件を満たしたか……2024年2月から、SPFかDKIMのどちらかが必須になりました
上から順に見れば5分で切り分けられます。1だけなら今すぐ直せます。2で止まった場合は、プランの話になります。
前提:HubSpotのメールは、あなたのドメインから出ていません
まず、多くの人が誤解している点から整理します。
HubSpotのマーケティングEメールは、あなたの会社のメールサーバーから送られているわけではありません。HubSpotのメール配信基盤から送られています。差出人欄に info@example.co.jp と表示されていても、それは「そう名乗っている」だけで、実際に送信しているのはHubSpot側のサーバーです。
受信側(GmailやOutlook)は、この「名乗り」が正しいかどうかを機械的に検証します。検証に使うのが、SPF・DKIM・DMARCという3つの仕組みです。名乗ったドメインと、実際に送ってきたサーバーや電子署名のドメインがそろっていれば「本人だ」と判定し、ずれていれば「なりすましかもしれない」と判定します。
つまり、届かない・迷惑メールに入るという症状は、ほとんどの場合「名乗り」と「実体」がずれていることが原因です。本文の書き方や画像の枚数は、その次の話になります。
設定の有無で、受信側からの見え方はこう変わります
言葉だけだと分かりにくいので、図にしました。上が何も設定していない状態、下が送信ドメインを接続した状態です。
DNSにCNAMEレコードを置くことで、HubSpotがあなたのドメインの名前で署名できるようになります。メールの中身がHubSpotを経由することは変わりませんが、受信側から見た「名乗り」と「署名」がそろいます。
原因1:差出人アドレスが「未確認」のままになっている
いちばん多く、いちばん簡単に直せるのがこれです。
HubSpotでは、マーケティングEメールの差出人に使うアドレスについて、「そのアドレスが自分のものであること」を事前に確認する手順があります。この確認を済ませていないアドレスから送ると、HubSpotは差出人欄を自動的に書き換えます。書き換え先はHubSpotが管理しているドメインで、〜hs-domain.com のような見慣れない文字列になります。
受信した相手からすると、知らない会社のドメインから知らないメールが届いたように見えます。開封率が落ちるだけでなく、迷惑メール報告につながることもあります。
この確認は無料版でもできます
ここは重要な線引きです。差出人アドレスの確認(verify)は、HubSpotのすべての製品・すべてのプランで利用できます。無料版を使っている方でも、今すぐ実施できます。
逆に言うと、無料版で打てる「差出人まわりの手」はここまでです。この次に出てくる送信ドメインの接続は、無料版では画面自体が出てきません。「設定を探しても見つからない」と感じたことがある方は、探し方が悪かったのではなく、そのプランでは使えない機能を探していた可能性があります。
差出人アドレスを確認する手順(全プランで使えます)
確認の入口は、設定画面ではなくEメールの編集画面の中にあります。ここが分かりにくいところなので、順に書きます。
- 左メニューの「マーケティング」から「Eメール」を開きます
- 新しくEメールを作成するか、作りかけの下書きを開きます
- エディター上部にある「受信トレイのコンテンツ」(受信トレイでの見え方を編集する箇所)をクリックします
- 左側のサイドバーに「送信者アドレス」のドロップダウンが出ます
- ドロップダウンの中の「メールアドレスを追加」をクリックします
- 使いたいアドレスを入力し、「所有権を確認」をクリックします
- 「確認メールを送信」を実行します
- そのアドレスの受信箱に確認メールが届くので、本文の「承認」をクリックします
承認まで終わると、そのアドレスは差出人として選べるようになり、書き換えは起きなくなります。作業自体は3分ほどで終わります。
つまずきやすい2点
1つ目は、確認メールの宛先です。確認メールは入力したアドレス本人に届きます。info@ や support@ のような共有アドレスを差出人にしたい場合、そのメールボックスを実際に開ける人が作業する必要があります。自分のアドレスで確認しても、共有アドレスは使えるようになりません。
2つ目は、確認が「アドレス単位」だという点です。info@example.co.jp を確認しても、sales@example.co.jp は別に確認が要ります。差出人を使い分ける予定があるなら、最初にまとめて確認しておくと後の手間が減ります。ドメインごとまとめて扱えるのは、次に説明する送信ドメインの接続のほうです。
原因2:Eメール送信ドメインを接続していない(Starter以上の機能です)
差出人アドレスの確認まで済ませても、迷惑メール判定が続くことがあります。次に見るのがここです。
差出人アドレスの確認は、あくまで「この宛先を差出人に使ってよい」とHubSpotに伝える手続きです。受信側から見た電子署名(DKIM署名)のドメインは、これだけでは自社ドメインになりません。署名まで自社ドメインでそろえるには、Eメール送信ドメインの接続という別の設定が必要です。
この機能が使えるプラン
Marketing Hub / Sales Hub / Service Hub / Content Hub の Starter・Professional・Enterprise。無料ツールのみのアカウントは対象外です(2026年9月12日時点、HubSpot公式ナレッジベースで確認)。
ここが、HubSpotの導入支援を手がける会社の記事ではあまり強調されない部分です。「DKIMを設定しましょう」という手順記事はたくさんありますが、その手順を実行できるのが有料プランからだという前提は、無料版から始めた人にとってはかなり大きな話です。設定画面を探し続けても見つからないのは、あなたの操作が悪いからではありません。
送信ドメインを接続する手順とDNSレコード4本
Starter以上のアカウントをお持ちの方向けに、手順を書きます。作業はHubSpot側とDNS側の2か所にまたがります。
HubSpot側の画面遷移
- 右上の歯車アイコンから「設定」を開きます
- 左メニューの「コンテンツ」から「ドメインとURL」を選びます
- 「Eメール送信」のタブに切り替えます
- 「送信ドメインを接続」をクリックします
- 差出人に使いたいメールアドレスを入力します(ここからドメイン部分が読み取られます)
- 接続するドメインの内容を確認します
- DNSプロバイダーの自動認証に進むか、手動でレコードを追加する方式を選びます
自動認証に対応しているDNSプロバイダーなら、画面の案内に沿ってログインするだけでレコードが入ります。対応していない場合は、表示されたレコードを手作業でDNSに追加します。
DNSに追加するレコードは4本です
| 目的 | 種類 | 本数 |
|---|---|---|
| DKIM(電子署名) | CNAME | 2本 |
| SPF(送信元の許可) | TXT | 1本 |
| DMARC(扱いの指定) | TXT | 1本 |
DKIMだけCNAMEが2本なのは、鍵の入れ替えに備えた構成だからです。1本だけ入れて終わりにすると認証が通りません。表示された2本とも入れてください。
すでにルートドメイン(example.co.jp)にDMARCレコードがある場合、サブドメインはその設定を引き継いだものとして扱われます。既存のDMARCを消して入れ替える必要はありません。
反映を待つ時間の目安
DNSレコードの反映には、通常10分から70分かかります。長いときは48時間ほどかかることもあります。HubSpotの画面で「確認」を押すのは、レコードを追加してから20分以上たってからにしてください。
反映前に確認を押すと失敗表示になりますが、設定が間違っているとは限りません。ここで慌ててレコードを消したり作り直したりすると、かえって切り分けが難しくなります。時間を置いてもう一度押すのが正解です。
原因3:GmailとYahoo!の受信要件を満たしていない
3つ目は、HubSpotの外側の話です。2024年2月1日から、Googleは送信者に対する要件を引き上げました。Yahoo!もほぼ同じ内容の要件を出しています。要件を満たさないメールは、受信を拒否されるか迷惑メールに振り分けられます。
要件は送信量で2段階に分かれます。
| 項目 | 1日5,000通未満 | 1日5,000通以上 |
|---|---|---|
| SPF・DKIM | どちらか1つ | 両方 |
| DMARC | 不要 | 必須(p=noneでも可) |
| ワンクリック登録解除 | 不要 | 必須 |
| 迷惑メール率 | 0.3%未満を維持(目安は0.1%未満) | |
| TLS接続 | 必須 | |
1〜10人の会社であれば、ほとんどが1日5,000通未満に収まります。つまり求められるのは「SPFかDKIMのどちらか」です。ここでHubSpotの話に戻ると、送信ドメインを接続すればSPFとDKIMの両方が入ります。無料版で接続できないということは、この要件をHubSpot側の設定で満たす手段がないということでもあります。
迷惑メール率は0.3%を超えないように保つ
数字も見ておきます。迷惑メール報告の割合は0.3%以上にしないこと、目安としては0.1%未満に保つことが求められています。1,000通送って3通報告されると0.3%です。思っているより小さい数字です。
名刺交換しただけの相手や、数年前のリストにまとめて送ると、この線はすぐに超えます。配信対象を絞ることは、マナーの話であると同時に、届きやすさを保つための実務でもあります。
5分で切り分ける手順
ここまでの3つを、順番に確認できる形に並べました。上から進めてください。
2まで終わって症状が変わらず、3が画面に出てこない場合、無料版の範囲ではやれることをやり切った状態です。そこから先は設定ではなくプランの話になります。
無料版のまま、今日できること
「Starterに上げるのはまだ早い」という段階でも、できることはあります。現実的な順に挙げます。
差出人アドレスを確認して、独自ドメインのアドレスを使う
前述の手順で差出人アドレスを確認します。これだけでも、差出人欄がHubSpot側のドメインに書き換わる事態は避けられます。無料のフリーメール(Gmailなど)を差出人にするより、自社の独自ドメインのアドレスを確認して使うほうが、受信側の心証は良くなります。
一斉配信の通数を落とし、対象を絞る
DKIMがそろっていない状態で大量に送ると、迷惑メール報告が積み上がり、ドメイン全体の評判が下がります。回復には時間がかかります。無料版のあいだは、直近で接点のあった相手に絞って、少ない通数で送るほうが安全です。
重要な連絡は一斉配信に載せない
請求や納期のような、届かないと困る連絡は一斉配信ではなく個別のメールで送ってください。HubSpotのマーケティングEメールは、あくまで「届かないことがある」前提の配信経路です。無料版ではその前提がさらに強く効きます。
無料版のメールにはHubSpotのブランドが入ります
あわせて知っておきたい点です。無料ツールで送るEメールには、HubSpotのブランド表示が入ります。これを外せるのはStarter以上です(2026年9月12日時点の公式料金ページで確認)。取引先向けの案内を送る場合、この表示が気になることはあります。
Starterに上げるかどうかの判断基準
プランの話に踏み込みます。金額は改定されることがあるので、記事末の公式ページで最新の金額を確認してください。
料金(2026年9月12日時点・HubSpot公式の料金ページ)
| プラン | 最低利用料金 | 含まれるコンタクト |
|---|---|---|
| 無料ツール | 0円(2ユーザーまで) | — |
| Marketing Hub Starter | 1シートあたり月額840円〜2,400円 | マーケティングコンタクト1,000件 |
| Marketing Hub Professional | 月額96,000円〜106,800円(コアシート3件込み) | マーケティングコンタクト2,000件 |
公式の料金ページには、プランごとに2つの金額が併記されています。請求期間(月次契約か年間契約か)と、そのときのキャンペーンで変わるためです。どちらが自分に適用されるかは表示だけでは判断できないので、実際の請求額は申し込み画面で確認してください。この記事では公式ページに出ていた両方の金額を範囲として載せています。
Professionalには、月額とは別に1回限りの導入支援費が360,000円かかります。これは任意ではなく必須です。「とりあえずProfessionalにしておく」という判断がしにくいのは、この初期費用があるためです。
上げる価値があるのはこういう場合です
- 取引先や見込み客に、毎月まとまった数のメールを送っている
- 迷惑メールに入っているという指摘を、実際に受けたことがある
- 自社ドメインの評判を、これから長期的に育てていきたい
- メール本文からHubSpotのブランド表示を外したい
まだ上げなくてよい場合
- 送っている相手が、社内と数十人の既存顧客に限られている
- 配信が月に1回あるかないかで、届かない実害がまだ出ていない
- そもそも差出人アドレスの確認をまだやっていない(まずそれを先にやってください)
判断の分かれ目は「送信量」ではなく「届かないことで失うものがあるかどうか」です。月に数十通でも、それが商談中の相手への案内なら、迷惑メールに入る損失は月額より大きくなります。
まとめ
HubSpotのメールが届かない・迷惑メールに入る問題は、本文ではなく差出人の名乗り方の問題です。確認する順番は決まっています。
- 差出人アドレスの確認……未確認だと差出人がHubSpot側のドメインに書き換わります。全プランで対応でき、3分で終わります
- Eメール送信ドメインの接続……DKIM用のCNAME2本、SPFとDMARCのTXT各1本をDNSに追加します。Starter以上の機能で、無料版では使えません。反映は20分以上待ってから確認します
- GmailとYahoo!の受信要件……1日5,000通未満ならSPFかDKIMのどちらか、5,000通以上なら両方とDMARCが必要です。迷惑メール率は0.3%を超えないようにします
無料版のまま使い続けるなら、1と配信対象の絞り込みをやり切ることが現実的な対処になります。そのうえで届かない実害が出ているなら、Starterへの切り替えを検討する段階です。設定を探し続けても見つからないときは、探し方ではなくプランを先に確認してください。
よくある質問(FAQ)
無料版でもDKIMは設定できますか
できません。DKIMの設定はEメール送信ドメインの接続に含まれており、この機能はMarketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Content HubのStarter以上が対象です。無料ツールのみのアカウントでは、設定画面自体が表示されません。無料版で打てるのは差出人アドレスの確認までです。
差出人アドレスの確認と、送信ドメインの接続は何が違いますか
確認は「このアドレスを差出人に使ってよい」とHubSpotに伝えるアドレス単位の手続きで、電子署名のドメインは変わりません。接続はDNSにレコードを置いてドメイン単位で権限を渡す設定で、DKIM署名が自社ドメインになります。受信側の認証に効くのは接続のほうです。
DNSレコードを入れたのに確認が通りません
まず時間を置いてください。反映には通常10分から70分、長いと48時間かかります。追加から20分以上たってから確認を押すのが目安です。時間をおいても通らない場合は、DKIM用のCNAMEが2本とも入っているかを見てください。1本だけだと通りません。
すでにDMARCを設定しています。入れ替える必要はありますか
ルートドメインにDMARCレコードがある場合、サブドメインはその設定を引き継いだものとして扱われます。既存のDMARCを消す必要はありません。HubSpotが表示したレコードと既存の設定が衝突する場合は、DNSを管理している担当者と内容を突き合わせてください。
Gmailのアドレスを差出人にしても大丈夫ですか
差出人アドレスの確認自体はできますが、おすすめしません。フリーメールのドメインは送信者側で認証を整えられないため、受信側の判定で不利になります。自社の独自ドメインのアドレスを確認して使ってください。
本文や画像を変えれば改善しますか
認証がそろっていない状態では、本文を変えても根本的には変わりません。ただし認証を整えたうえでなお迷惑メールに入る場合は、配信対象の鮮度と迷惑メール報告率を先に見てください。1,000通で3通の報告が上限の目安です。
参考にした公式ドキュメント
HubSpotは無料で始められます
コンタクト管理・フォーム・メール配信・商談管理を1つにまとめたCRMプラットフォームです。Eメール送信ドメインの接続はStarter以上の機能ですが、コンタクト管理やリスト、差出人アドレスの確認は無料の範囲で試せます。プランごとの違いと料金は公式サイトでご確認ください。