
HubSpotをStarterに上げて数か月。請求額を見て「思っていたより高い」と感じたことはないでしょうか。あるいは「コンタクトを整理したのに、請求が変わらない」と首をかしげたことは。
どちらも同じ仕組みから来ています。HubSpotの課金対象は、保存しているコンタクトの総数ではなく「マーケティングコンタクト」の数だからです。そして、この数は放っておくと勝手に増えます。
さらに厄介なのが、減らしても請求にすぐ反映されない点です。対象から外した時点ではなく、次の更新日を待つ必要があります。
この記事では、数え方・増える経路・外す手順・反映のタイミングを順に整理します。
先に結論:押さえるのは3点です
- 課金されるのはマーケティングコンタクトだけ。それ以外のコンタクトは、何件保存していても課金対象になりません
- フォーム・インポート・ワークフロー・チャットの4経路で自動的に増えます。気づかないうちに上限に近づきます
- 対象から外しても、反映は次の更新日。請求日の直前に慌てて整理しても、その月の請求は下がりません
この区分はMarketing Hubの Starter・Professional・Enterprise の仕組みです。無料ツールのみで使っている場合、そもそも請求が発生しません。
前提:課金対象は「保存件数」ではありません
HubSpotのコンタクトには2種類あります。
マーケティングコンタクトは、マーケティングメールや広告の対象にできるコンタクトです。こちらが契約数としてカウントされ、料金に影響します。
マーケティング対象外のコンタクトは、CRMにデータとして保存されているだけのコンタクトです。レコードは普通に残りますし、検索もできますし、取引にも紐づけられます。ただしマーケティングメールは送れません。そして課金対象になりません。
つまり、名刺交換しただけの相手や、過去に一度だけ問い合わせがあった相手を大量に保存していても、それ自体は料金を押し上げません。押し上げるのは「メールを送る対象にしている数」だけです。
削除する必要はありません
ここを取り違えて、請求を下げるためにコンタクトを削除してしまう例があります。もったいない対応です。
削除すると、そのコンタクトに紐づいていた活動履歴、取引、メモも一緒に失われます。数年後に再び接点ができたとき、過去のやりとりが何も残っていない状態になります。請求を下げたいだけなら、削除ではなく「マーケティング対象から外す」で足ります。データはそのまま残ります。
勝手に増える4つの経路
マーケティングコンタクトは、手で設定しなくても増えます。公式に挙げられている経路は次の4つです。
| 経路 | どういうときに増えるか |
|---|---|
| フォーム送信 | HubSpotのフォーム、外部フォームから送信があったとき |
| インポート | CSVを取り込むとき。設定で切り替えられます |
| ワークフロー | 自動化のアクションで設定されたとき |
| チャットフロー | サイトのチャットから会話が始まったとき |
この中でいちばん多いのがフォーム送信です。資料請求フォームや問い合わせフォームを設置していると、送信のたびに1件ずつ積み上がります。月に数十件の問い合わせがある会社なら、1年で数百件になります。
次に効いてくるのがインポートです。展示会で集めた名刺を一括で取り込む、過去の顧客リストを移行する。こうしたときに数百件が一度に増えます。ここは設定で回避できるので、後の章で扱います。
フォームからの流入を具体的に数えてみる
自社の数字に置き換えると、規模感がつかめます。
| 月のフォーム送信数 | 1年で増える件数 | 1,000件に届くまで |
|---|---|---|
| 10件 | 120件 | 約8年 |
| 30件 | 360件 | 約2年9か月 |
| 80件 | 960件 | 約1年 |
問い合わせが月に10件程度なら、当面は気にしなくて大丈夫です。月30件を超えるあたりから、整理の運用を組み込んでおく価値が出ます。広告を回していて月80件以上になるなら、最初から設計に入れてください。
この表はフォームだけの計算です。ここにインポートが乗ると、一度の取り込みで数百件が加算されます。実際に上限へ押し上げるのは、たいていインポートのほうです。
「気づいたら上限が近い」が起きる理由
4経路のうち3つは、日々の運用の中で自然に発生します。意識して操作した記憶がないまま数字が動くので、上限に近づいていることに気づくのは、たいてい警告が出たときです。
そして警告が出てから整理を始めても、次章以降で説明するとおり請求への反映は次の更新日です。つまり気づいた時点では、その期の請求はもう確定していることになります。月に一度は数字を見る習慣をつけてください。
いま何件使っているかを確認する
確認の場所は、コンタクト画面ではなくアカウント設定の側にあります。
- 画面右上のアカウント名をクリックします
- 「アカウントと請求」を開きます
- 左のサイドバーから「マーケティングコンタクト」を選びます
ここに、契約している件数と、現在使っている件数が並びます。まずこの数字を見てから、整理するかどうかを決めてください。上限に余裕があるなら、急いで作業する必要はありません。
見るべきは「残り何件か」ではなく「増える速さ」
残件数だけを見ていると、判断が遅れます。先月と今月の差を見てください。月に何件のペースで増えているかが分かれば、上限に到達する時期が読めます。
たとえば1,000件の契約で現在600件、月に50件ずつ増えているなら、残りは8か月です。8か月後に慌てるのではなく、今のうちに月50件の内訳を確認するほうが手間がかかりません。フォームからなのか、インポートからなのかが分かれば、打つ手が決まります。
マーケティング対象から外す手順(2通り)
外す方法は2つあります。まとまった件数を整理するときと、数件だけ対応するときで使い分けます。
方法A:まとめて整理する(アカウントと請求の画面から)
- 画面右上のアカウント名から「アカウントと請求」を開きます
- 左のサイドバーで「マーケティングコンタクト」を選びます
- 「連絡先の整理」をクリックします
- チェックボックス、セグメント、フィルターのいずれかで対象を選びます
- 「続行」を押します
- 「変更をスケジュール」を押して確定します
最後のボタンが「実行」ではなく「変更をスケジュール」である点に注目してください。ここに、次章で説明する反映タイミングの話が現れています。
方法B:数件だけ対応する(コンタクト一覧から)
- 左メニューの「CRM」から「コンタクト」へ移動します
- 対象のコンタクトのチェックボックスをオンにします
- 一覧の上部に出る「その他」メニューを開きます
- 「マーケティング対象外のコンタクトに設定」を選びます
- 確認のダイアログで確定します
普段の運用ではこちらのほうが早いです。退職した担当者、配信停止された相手、明らかに営業対象でない相手を見つけたら、その場で外しておくと数字が膨らみません。
外しても、請求は次の更新日まで下がりません
ここがいちばん誤解されるところです。
マーケティング対象から外す操作は、即座に反映されません。次回の更新日に反映されます。だから画面のボタンも「変更をスケジュール」という表現になっています。
この仕様から導かれる実務上の結論は1つです。整理は、請求日の直前ではなく、前もってやってください。
請求額に驚いてから作業を始めると、その効果が出るのは次の期です。1か月分は確実に払うことになります。逆に言えば、今日のうちに外しておけば、次の更新日から効きます。先送りするほど損が積み上がる構造です。
外していい人・外してはいけない人の見分け方
件数を減らすこと自体が目的になると、本来メールを送るべき相手まで外してしまいます。判断の基準を決めておいてください。
| 外していい | 外さないほうがいい |
|---|---|
| 配信停止の手続きをした相手 | 過去1年に開封や反応がある相手 |
| メールが不達で返ってくる相手 | 商談中・見積もり提出済みの相手 |
| 退職済みと分かっている担当者 | 既存顧客で継続の可能性がある相手 |
| 自社の社内メンバーやテスト用 | 年に数回でも案内を出す相手 |
迷ったら「最後の接点から2年」で切る
基準を決めかねるときは、最終接点日を使ってください。2年間まったく反応がない相手は、メールを送っても開かれない可能性が高く、むしろ迷惑メール報告のリスク側に寄ります。
コンタクト一覧のフィルターで「最終アクティビティー日」を条件に絞り込めます。2年より前で絞った結果をそのまま一括で外すのが、いちばん手早い整理です。
外してもデータは残ります
念のためもう一度書いておきます。外してもレコードは消えません。名前も会社名も電話番号も、過去のやりとりも残ります。再びメールを送りたくなったら、マーケティングコンタクトに戻せます。戻すと、そのぶん件数は増えます。
そもそも増やさない運用
減らす作業より、増やさない仕組みのほうが手間がかかりません。3つ挙げます。
インポート時のチェックボックスを外す
これがいちばん効きます。単一ファイルのインポートでは、詳細オプションの中に「これらのコンタクトをマーケティングコンタクトに設定」というチェックボックスがあります。展示会の名刺や、古い顧客リストを取り込むときは、ここをオフにしてください。
オフで取り込んでおけば、データはCRMに入りつつ、課金対象にはなりません。あとでメールを送りたい相手だけを選んで、マーケティング対象に戻せます。
注意点が1つ。複数ファイルを同時に取り込むインポートでは、この切り替えができません。大量に取り込むときこそ、1ファイルずつのインポートを選んでください。
フォームを用途で分ける
問い合わせフォームと、資料請求フォームを1つにまとめている場合、見直す価値があります。「商品について聞きたい」人と「採用について聞きたい」人が同じフォームから入ってくると、後者もマーケティングコンタクトとして積み上がります。
用途ごとにフォームを分けておくと、どの流入が件数を押し上げているかも分かるようになります。
月に一度、数字を見る日を決める
月初でも月末でもかまいませんが、日付を決めて「アカウントと請求」のマーケティングコンタクト画面を開く習慣にしてください。5分で終わります。
先月との差を見て、増え方が想定より速ければ、その月のうちに手を打てます。年に一度しか見ないと、気づいたときには上限を超えて追加購入が必要な状態になっています。
30分で終わる棚卸しの手順
「一度ちゃんと整理したい」という方向けに、実際の作業順を書きます。件数が数千件でも30分ほどで終わります。
手順1:現在地を控える(3分)
アカウントと請求のマーケティングコンタクト画面を開き、契約件数と使用件数をメモしてください。作業後にどれだけ減ったかを比べるためです。あわせて次の更新日も控えます。ここが効果の出る日です。
手順2:不達のコンタクトを外す(5分)
コンタクト一覧のフィルターで、メールのバウンス(不達)に関するプロパティーを条件にして絞り込みます。届かないアドレスに送り続けても意味がないうえ、送信元の評判を下げます。ここは迷わず全件外して問題ありません。
手順3:配信停止した相手を外す(5分)
配信停止の手続きをした相手は、そもそもマーケティングメールが送られません。それでも件数にはカウントされます。課金だけ発生して効果がゼロの状態なので、ここも優先して外してください。
手順4:最終接点が2年より前を外す(10分)
「最終アクティビティー日」を条件に、2年より前で絞り込みます。件数がいちばん多く出るのがここです。一覧をざっと眺めて、明らかに外したくない相手(既存顧客や取引中)がいないかだけ確認してから、まとめて外します。
不安なら1年ではなく2年で切ってください。基準を緩くしても、たいていの会社では十分な件数が出ます。
手順5:社内とテスト用を外す(5分)
自社のメールアドレス、テスト送信用に作ったダミー、退職した社員のアドレス。ドメインで絞り込むと一度に見つかります。意外とここに数十件たまっています。
手順6:結果を控えて、次回の日付を決める(2分)
作業後の使用件数をメモし、手順1の数字と比べます。そして次に棚卸しする日をカレンダーに入れてください。半年に一度で十分です。日付を決めないと、次は上限の警告が出たときになります。
Starterの1,000件で足りるのか
Marketing Hub Starterには、マーケティングコンタクトが1,000件含まれます(2026年9月22日時点の公式料金ページ)。Professionalは2,000件です。
1〜10人の会社にとって、1,000件という数字はどう見るべきか。実感に近い目安を書きます。
| 使い方 | 1,000件で足りるか |
|---|---|
| 既存顧客へのお知らせが中心 | 十分に足ります |
| 月に数十件の問い合わせを育てる | 2〜3年は足ります |
| 展示会で年に数百枚の名刺を集める | 1〜2年で届きます |
| 広告で大量に集客する | すぐ届きます。設計から見直しが要ります |
上から2つに当てはまる会社なら、上限を心配するより「増える経路を把握しているか」のほうが重要です。下2つに当てはまるなら、最初から整理の運用を組み込んでおいてください。
上限を超えたらどうなるか
上限に近づくと、HubSpotの画面に警告が表示されます。超えた場合は、追加のマーケティングコンタクトを購入するか、対象を外して件数を下げることになります。
ここで思い出してほしいのが反映タイミングです。外す操作の効果は次の更新日からなので、上限を超えてから外しても、すぐには枠が空きません。追加購入で急場をしのぐ判断が必要になることがあります。
つまり、上限管理は「超えてから対応する」では間に合わない設計になっています。だから前章の「月に一度、数字を見る」が効いてきます。
なお料金は改定されることがあるので、実際の契約件数と金額は公式の料金ページと、自社の「アカウントと請求」画面で確認してください。
まとめ
HubSpotの請求が想定より高いと感じたとき、見るべきはマーケティングコンタクトの数です。
- 課金対象はマーケティングコンタクトだけ。保存しているコンタクトの総数ではありません。削除ではなく「対象から外す」で足ります
- フォーム・インポート・ワークフロー・チャットの4経路で自動的に増えます。いちばん多いのはフォーム送信です
- 外しても反映は次の更新日。請求日の直前に整理しても、その期には効きません。前もって外してください
- インポート時のチェックボックスをオフにするのが、いちばん手間のかからない予防策です。複数ファイル同時インポートでは切り替えられません
月に一度、5分だけ数字を見る日を決めてください。それだけで、請求書を見て驚く状況はほぼなくなります。
よくある質問(FAQ)
コンタクトを削除すれば請求は下がりますか
マーケティングコンタクトの数が減れば下がりますが、削除する必要はありません。「マーケティング対象外に設定」するだけで課金対象から外れます。削除すると活動履歴や紐づいた取引も失われるので、まず対象外設定を検討してください。
外したのに請求が変わりません
反映は次回の更新日です。操作した時点では変わりません。画面のボタンが「変更をスケジュール」となっているのはそのためです。更新日がいつかは「アカウントと請求」の画面で確認できます。
対象外にしたコンタクトには何も送れなくなりますか
マーケティングメールなど、一部のツールの対象外になります。一方でレコード自体は残るので、個別のメールのやりとりや、取引への紐づけ、検索は通常どおりできます。
インポートで増やさない方法はありますか
単一ファイルのインポートなら、詳細オプションの「これらのコンタクトをマーケティングコンタクトに設定」をオフにできます。複数ファイルを同時に取り込むインポートではこの切り替えができないので、件数が多いときこそ1ファイルずつ取り込んでください。
無料版でもこの区分はありますか
マーケティングコンタクトの区分は、Marketing Hubの Starter・Professional・Enterprise の仕組みです。無料ツールのみで使っている場合、そもそも請求が発生しないため、この数を気にする必要はありません。
どのくらいの頻度で見直すべきですか
月に一度で十分です。見るのは残件数だけでなく、先月との差です。月あたりの増加ペースが分かれば、上限に到達する時期が読めます。年に一度しか見ないと、気づいたときには追加購入が必要な状態になっています。
参考にした公式ドキュメント
HubSpotは無料で始められます
コンタクト管理・フォーム・メール配信・商談管理を1つにまとめたCRMプラットフォームです。マーケティングコンタクトの課金はStarter以上の話で、無料ツールのみの利用では請求が発生しません。プランごとの違いと料金は公式サイトでご確認ください。