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営業リスト作成をAIでやる方法|プロンプトの型と、出てきた企業を実在確認する手順

AIで置き換わる工程と、置き換わらない工程

営業リスト作成をAIで効率化しようとして失敗する原因は、ほぼ1つに集約されます。リスト作成を「ひとかたまりの作業」として丸ごとAIに投げてしまうことです。

営業リスト作成は、実際には性質の違う5つの工程でできています。このうちAIが効くのは前半だけです。後半は、AIに任せた瞬間に品質が崩れます。

1. ターゲットの条件を決める業種・エリア・規模・除外条件AIが効く2. 条件に合う企業を探す候補の母集団を広げるAIが効く3. 実在するか確かめる法人番号・公式サイトで照合AIは不可4. 連絡先を埋める電話番号・問い合わせ窓口AIは不可5. 重複を消して並べ替える名寄せ・優先順位づけ半分効く工程3と4を飛ばしたリストは、架電の段階で必ず破綻する

営業リスト作成の5工程。AIに任せてよいのは1・2と、5の一部だけ。

なぜ工程3と4を飛ばすと破綻するのか

大規模言語モデルは、学習したパターンにもとづいて「それらしい文字列」を生成します。企業名も電話番号も、この仕組みの上では同じ「文字列」です。実在する企業名によく似た架空の社名、桁数は正しいが実在しない電話番号が、堂々と出力されます。しかも出力の見た目は、正しいものと区別がつきません。

ここを検証せずに架電に入ると、「おかけになった電話番号は現在使われておりません」が続きます。1件あたりは短い時間でも、リスト全体では相当な時間が消えます。さらに悪いのは、番号が実在して別会社につながってしまう場合です。相手には迷惑がかかり、こちらの記録も汚れます。

つまりAIは、リスト作成の工数を減らすのではなく、探索の範囲を広げるために使う道具だと考えるのが正確です。裏取りの工数はむしろ増えます。それでも、自分では思いつかなかった業種・エリア・企業カテゴリが候補に上がってくる価値のほうが大きい、という判断で使います。

実際に使うプロンプトの型

ここが本題です。プロンプトは長く書けばよいというものではなく、出力形式の固定と除外条件の明示と推測の禁止の3点が入っているかどうかで、後工程の手間が変わります。

基本形:候補企業を洗い出す

まず、母集団を広げるためのプロンプトです。Web検索に対応したモード(ChatGPT・Claude・Geminiのいずれもこの機能を持ちます)で実行してください。検索を使わないモードで実行すると、学習データの記憶だけで回答が組み立てられ、架空企業の混入率が上がります。

あなたは法人向けの新規開拓を担当する営業のリサーチ担当です。
以下の条件に合う企業の候補を洗い出してください。

【条件】
- 業種:(例:従業員向けの研修サービスを提供している会社)
- エリア:(例:東京都23区内に本社があること)
- 規模:(例:従業員50名以上300名以下)
- 除外:(例:上場企業、人材派遣を主業とする会社)

【出力形式】
以下の列のみを持つ表で出力してください。列は増やさないこと。
企業名 | 本社所在地(市区町村まで) | 公式サイトURL | 該当理由(30字以内)

【厳守事項】
- Web検索で実際に確認できた企業のみを挙げてください。
- 電話番号・メールアドレス・担当者名は出力しないでください。
- 条件に合うか確信が持てない企業は、含めずに省いてください。
- 該当が少ない場合、数を揃えるために条件を緩めないでください。
  代わりに「この条件では N 件しか見つからなかった」と報告してください。

候補を洗い出すプロンプト。カッコ内は自社の条件に置き換えて使います。

厳守事項の4行が、なぜ必要なのか

この4行は、どれも実際に起きる失敗への対策です。順に説明します。

「電話番号・メールアドレスを出力しないでください」を入れる理由は、これがAIの最も危険な出力だからです。前章のとおり番号は捏造されます。しかも表に埋まっていると、確認済みのように見えてしまう。最初から出させないほうが安全です。連絡先は工程4で公式サイトから取ります。

「担当者名を出力しないでください」は、法令上の理由です。後述のとおり、企業の代表者名や担当者名は個人情報にあたります。取得の必要がない段階で個人情報を集めない、というのが原則です。

「確信が持てない企業は省いてください」がないと、モデルは条件に近いだけの企業を混ぜてきます。件数が減っても、後で外す手間のほうが高くつきます。

「数を揃えるために条件を緩めないでください」は、最も効く1行です。「50社挙げてください」と件数を指定すると、モデルは指定件数を満たそうとして条件から外れた企業や架空の企業を足します。件数を指定するのではなく、条件に合うものだけを出させ、足りなければ足りないと言わせる。この設計にすると、出力の信頼度が明確に上がります。

ツールの使い分け

3つのツールで同じプロンプトを流すと、挙がってくる企業が部分的にしか重なりません。検索の実装も学習データも違うためです。これは欠点ではなく、使い方があります。

使い方 やること 狙い
横に広げる 同じプロンプトを3ツールに投げ、出力を1枚に結合する 1ツールでは漏れる候補を拾う。重複は工程5で潰す
縦に深める 1ツールで条件を少しずつ変えて複数回実行する エリアや規模の刻み方を変え、母集団の輪郭を掴む
相互チェック Aが出した企業リストをBに渡し、条件に合うか判定させる 明らかな条件違反を機械的に落とす(実在確認の代わりにはならない)

相互チェックの限界

別のAIに検証させる方法は、条件違反を落とすには有効ですが、実在確認にはなりません。検証側のモデルも、実在しない企業を「実在する」と判定することがあります。実在の確認は、次章の方法で人間が行ってください。

スクレイピングを指示するプロンプトは使わない

「営業リスト作成 AI」で検索すると、Webサイトから情報を自動収集させるプロンプトを配布している記事が出てきます。これらは使わないことをおすすめします。多くのサイトの利用規約が自動収集を禁止しており、規約違反になる可能性があるためです。また、サーバーに負荷をかける形での収集は、業務妨害と評価される余地もあります。

企業情報を機械的に取得したい場合は、次章の公的データベースや、提供元が公式に用意しているAPIを使ってください。無料で、規約上の問題もなく、そして精度は自動収集よりはるかに高くなります。

AIが出した企業は、そのままでは使えない

AIが挙げた候補を、実在する企業のリストに変換する工程です。ここを機械的に回せるかどうかで、リストの実用性が決まります。

手順1:国税庁の法人番号公表サイトで照合する

国税庁が運営する法人番号公表サイトで、商号・所在地・13桁の法人番号(基本3情報)を無料で検索・確認できます。ここに存在しない商号は、そもそも法人として登記されていない可能性が高い、と判断する材料になります。

候補が数十社を超えるなら、1件ずつ検索するよりダウンロード機能を使うほうが速く終わります。同サイトでは、公表対象の法人の基本3情報を全件データとしてCSV形式・XML形式でダウンロードできます。前月末時点の最新情報が、全国分または都道府県・国外の単位別に取得できる形です。名称や所在地の変更、登記記録の閉鎖などを反映した差分データも別途配布されています。

実務では、対象エリアの都道府県分だけをダウンロードしてスプレッドシートに置き、AIが出した企業名を照合するのが現実的です。全国分は件数が多く、表計算ソフトでは扱いきれない場合があります。

照合するときの注意

商号は表記ゆれで一致しません。「株式会社」が前か後か、全角か半角か、「(株)」と略されているか。照合の前に、両方から法人格の表記を取り除いて比較すると一致率が上がります。スプレッドシートなら、SUBSTITUTE関数を入れ子にして「株式会社」「有限会社」「合同会社」を空文字に置換した列を作り、その列同士で突き合わせます。

手順2:公式サイトの実在と、事業内容の一致を見る

法人として実在しても、AIが挙げた理由(該当理由の列)が正しいとは限りません。公式サイトを開いて、次の3点を確認します。

  • サイトが生きているか。ドメインが失効している、最終更新が数年前で止まっている場合は、優先度を下げます
  • 事業内容が条件と一致しているか。AIは社名や業種分類から推測することがあり、実際の事業とずれる場合があります
  • 問い合わせ窓口の形式。フォームのみか、電話番号が記載されているか、メールアドレスが公開されているか。ここで得た情報が、そのままアプローチ手段の選択につながります

手順3:連絡先は、必ず公式サイトから取る

電話番号と問い合わせ先は、AIの出力からではなく、開いた公式サイトからコピーします。この一手間を省かないでください。工程全体で最も事故が起きるのがここです。

代表電話しか記載がない場合、それをそのまま記録します。部署直通の番号を推測で組み立てるようなことはしません。また、代表者名や担当者名が載っていても、この段階では取得しないという判断があり得ます。理由は次章で説明します。

列設計:あとから足せない項目を先に決める

リストの列は、あとからいくらでも足せるように見えて、実際には足せない列があります。「収集した時点でしか取れない情報」です。これを最初に設計しておかないと、数か月後にリストを見返したときに判断ができなくなります。

列 役割 あとから足せるか
企業名 識別の主キー —
法人番号 表記ゆれに影響されない真の主キー。重複判定にも使う 足せる(手間は増える)
所在地 エリア分けと重複判定 足せる
公式サイトURL 再確認の入口 足せる
問い合わせ形式 フォーム/電話/メールのどれが使えるか 足せる
取得日 情報の鮮度。古い行を機械的に外す判断に使う 足せない
取得元 どのAI・どの検索・どのデータベースから来た行か 足せない
抽出条件 どの条件で拾った行か。条件ごとの当たり外れを後で振り返れる 足せない
ステータス 未着手/アプローチ済/NG/保留 足せる
NG理由 断られた理由。次回の除外条件になる 足せる

太字の3列が、後から絶対に復元できない列です。取得日がないと、その電話番号がいつ時点のものか分かりません。取得元がないと、どのやり方が良い候補を出したのかを検証できません。抽出条件がないと、条件Aと条件Bのどちらが当たったのかが分からないまま、次回も同じ精度で作ることになります。

逆に、列を増やしすぎるのも失敗します。従業員数、資本金、設立年、売上規模といった属性は、埋めるコストが高いわりに使われないことが多い。実際にアプローチの可否や優先順位を変える列だけを持ち、判断に使わない列は持たないのが原則です。

重複を潰す

複数のAIから候補を集め、既存のリストと合わせると、必ず重複が出ます。重複を放置すると、同じ会社に別の担当者から二重にアプローチする事故が起きます。相手からの信用を最も速く失う類の事故です。

何をキーに重複と判定するか

優先順位は明確です。法人番号があればそれを使います。13桁の数字で、表記ゆれの影響を受けません。手順1の照合で法人番号を取れているなら、重複判定はこの列だけで終わります。

法人番号が取れていない行は、正規化した企業名と所在地の組み合わせで判定します。正規化とは、比較を邪魔する差分をあらかじめ取り除くことです。スプレッドシートでは、次の順に処理します。

  • 法人格の表記を消す。「株式会社」「有限会社」「合同会社」「(株)」「(株)」を空文字に置換する
  • 全角と半角を揃える。ASC関数で半角に寄せると、英数字とカタカナの差分が消えます
  • 空白を消す。スペースの有無で一致しない行が相当数あります

この3つを施した列を「照合キー」として作り、COUNTIF関数で自分自身を数えます。値が2以上の行が重複候補です。完全自動で消さず、必ず目視で1度確認してください。同じ商号で別法人(支店ではなく別会社)というケースが実際にあります。

重複を「消す」のではなく「印をつける」

重複行を削除してしまうと、どちらの取得元から来た行だったのかが失われます。削除ではなく、重複フラグの列を立てて残すほうが後で役に立ちます。どの取得元が重複を多く生んでいるかが分かれば、次回はその経路を減らせます。

集める前に確認しておく法令

リスト作成の段階で関係する法令は、実務上2つです。深追いはしませんが、知らずに進めると後戻りできない部分だけ書きます。

個人情報保護法:法人の情報と、人の情報は別物

法人名・所在地・代表電話番号は、法人そのものの情報であり、個人情報にはあたりません。一方で、法人の代表者名や、取引先の担当者名は個人情報に該当します(個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)を参照)。個人事業主の場合は、屋号と本人が結びつくため、事業者情報がそのまま個人情報になる場合があります。

実務上の意味はシンプルです。担当者名を集めるなら、取得の時点で利用目的を意識する必要が生じます。逆に、法人名と代表電話だけのリストであれば、この論点は発生しません。前章のプロンプトで担当者名を出力させないようにしたのは、この理由です。必要になった段階で、必要な分だけ取得する。それが最も手戻りの少ない進め方です。

特定電子メール法:メールを送る段になってから効いてくる

集めたリストにメールを送る場合、特定電子メール法のオプトイン規制がかかります。原則として、あらかじめ同意を得ていない相手に広告・宣伝のメールを送ることは禁止されています。

ただし例外があり、自己の電子メールアドレスをインターネット上で公表している団体、および営業を営む個人に対しては、同意なしに送信できるとされています(総務省・消費者庁「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」)。企業サイトに問い合わせ用のアドレスが載っている場合が、これにあたります。

注意すべきは、この例外が外れる条件があることです。そのアドレスと並べて「特定電子メールの送信をしないように求める旨」が公表されている場合、例外は適用されません。サイトに「営業目的のメールはお断りします」と書かれていれば、そのアドレスには送れないということです。リストを作る段階で、公式サイトを見たときにこの記載の有無を確認し、列に記録しておくと、後工程で迷わずに済みます。

メール本文の記載事項や、配信停止の導線の作り方など、送信側の実務は範囲が広いため、この記事では扱いません。メール営業のカテゴリで別途書きます。なお、作ったリストで架電する段階の話はテレアポの受付突破で扱っています。

まとめ

営業リスト作成にAIを使うときの要点を、もう一度整理します。

  • AIが担えるのは「条件を決める」「候補を探す」まで。実在確認と連絡先の取得は人間が行う
  • プロンプトには、出力形式の固定・除外条件・件数を指定しないことを必ず入れる。連絡先と担当者名は出力させない
  • 実在確認は国税庁の法人番号公表サイトで行う。無料で、CSVのダウンロードもできる
  • 連絡先は必ず公式サイトから取る。AIの出力からコピーしない
  • 取得日・取得元・抽出条件の3列は、後から復元できない。最初から持つ
  • 重複判定のキーは法人番号が最優先。無い場合は正規化した企業名と所在地で判定し、削除ではなくフラグを立てる
  • 担当者名は個人情報にあたる。必要になるまで取得しない

AIを入れてもリスト作成の総工数はさほど減りません。減るのは「候補を思いつく」ための時間で、増えるのは「裏を取る」時間です。それでも、自分の知識の範囲外にある企業まで候補に入るようになる点で、導入する価値があります。この分担を最初に理解しておけば、期待外れになることはありません。

よくある質問

AIに件数を指定してはいけないのはなぜですか

件数を指定すると、モデルはその数を満たそうとして、条件に合わない企業や実在しない企業を出力に足すことがあるためです。件数を指定せず「条件に合うものだけを挙げ、少なければ少ないと報告してください」と指示すると、出力の信頼度が上がります。母集団を増やしたい場合は、件数を増やすのではなく条件のパターンを変えて複数回実行してください。

無料のAIでも営業リストは作れますか

候補を洗い出す用途であれば、無料で使える範囲でも実行できます。ただしWeb検索に対応したモードで実行することが前提です。検索を使わない状態では、学習データの記憶だけで回答が組み立てられ、実在しない企業が混ざる割合が上がります。いずれの場合も、実在確認の工程は省略できません。

AIが出した電話番号をそのまま使ってはいけませんか

使わないでください。桁数が正しく、見た目には本物と区別がつかない番号が生成されることがあります。使われていない番号であれば工数の無駄で済みますが、実在する別の会社につながった場合は相手に迷惑がかかります。電話番号は必ず公式サイトから取得してください。

法人番号公表サイトのデータはどのくらいの頻度で更新されますか

全件データは前月末時点の情報として提供されています。これに加えて、新規の法人番号指定や、名称・所在地の変更、登記記録の閉鎖などを反映した差分データも配布されており、こちらで自分のリストだけを更新できます。リストを継続的に使う場合は、差分データで自分のリストを更新する運用にすると鮮度を保てます。

Webサイトから自動で情報を集めるプロンプトは使えますか

おすすめしません。多くのサイトが利用規約で自動収集を禁じており、規約違反となる可能性があります。またサーバーへ負荷をかける形での収集は別の問題を生みます。機械的に企業情報を取得したい場合は、国税庁の法人番号公表サイトのような公的データベースや、提供元が公式に用意しているAPIを使ってください。精度の面でも自動収集より優れています。

担当者名は集めておいたほうが有利ではないですか

担当者名は個人情報にあたるため、取得すると利用目的の特定など、法人情報だけを扱う場合には生じない配慮が必要になります。アプローチの初手が代表電話や問い合わせフォームであれば、担当者名がなくても進みます。実際に必要になった段階で、必要な分だけ取得するほうが、管理の負担が小さくなります。

重複を自動で削除してはいけないのはなぜですか

同じ商号でも別法人であるケースが実際にあり、自動削除では正しい行まで消える可能性があるためです。また削除すると、その行がどの取得元から来たのかという情報も失われます。重複フラグの列を立てて残しておけば、どの経路が重複を多く生んでいるかが分かり、次回の収集を改善できます。

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