
聞き返しのフレーズは知っている。1回目は言える。2回目も、なんとか言える。3回目で言えなくなって、分からないまま会議が進む。
これは表現の数の問題ではありません。何回まで聞き返していいかが分からないので、使うのをためらうだけです。
聞き返せないのは、フレーズを知らないからではない
表現集を20個覚えても、会議で使う数は変わりません。
2回目までは言える人が多い
1回聞き返すのは、ほとんどの人ができます。問題は3回目です。同じ相手に3回聞き返すと、迷惑をかけている感覚が強くなって、そこで止まります。止まったあとは、分からないまま黙ることになる。表現の種類を増やしても、この心理は変わりません。
回数の上限を決めていないから、毎回迷う
聞き返すたびに「これで何回目か」「まだ聞いていいか」を判断しています。この判断に使う時間が、次の発言を聞き逃す原因にもなります。先に上限を決めておくと、判断が要らなくなります。
フレーズ集は3つの状況を混ぜている
全部聞こえなかったときと、一部だけ分からないときと、聞こえたが意味が分からないとき。この3つは対処が違うのに、同じ一覧に並んでいます。どれを使うか迷う原因になります。
3つの「聞き取れない」は、対処が違う
まず、自分がどれなのかを分けます。
| 状態 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 全部聞こえない | 速度・音質・訛り | 速度か音質を変えてもらう |
| 一部が抜けた | 1語だけ拾えなかった | 聞こえた部分を復唱して埋める |
| 聞こえたが分からない | 用語・前提の知識 | 会議中に解決しない。後で処理 |
全部聞こえないなら、条件を変えてもらう
同じ内容をもう一度言ってもらっても、同じ速度なら同じ結果です。繰り返しではなく、速度を落としてもらうか、チャットに書いてもらうかを頼んでください。条件が変わらなければ、2回目も聞き取れません。
一部が抜けただけなら、全部は要らない
最初から言い直してもらうと、相手の時間を使いますし、こちらも聞き取れた部分をもう一度処理することになります。抜けた1語だけを聞けば済みます。これがいちばん効率のいい聞き返し方です。
意味が分からないのは、聞き返しでは解決しない
音は聞こえているのに内容が分からない場合、原因は用語や前提の知識です。何度繰り返してもらっても分かりません。その場では「あとで確認します」と伝えて、会議後に調べるほうが早いです。会議を止めても、全員の時間が減るだけです。
いちばん使うのは「一部だけ」の聞き返し
実際の会議で多いのは、この形です。
組み立ての例
So the review is with the Osaka team — and who else?
I got everything except the last number. How many units?
どれも、聞こえた部分を先に言ってから、欠けた1点を指しています。相手は1語だけ答えればよく、5秒で終わります。
復唱すると、ずれも見つかる
聞こえた部分を口に出すと、こちらの理解が相手に伝わります。間違って聞き取っていた場合、そこで訂正されます。聞き返しと確認を同時にやっている形になるので、1回で2つ片づきます。
数字と日付は、必ず復唱する
聞き取れた気がしても、数字と日付だけは復唱してください。ここを間違えると影響が大きい部分です。「15日ということでよろしいですか」と確認するのは、聞き返しではなく確認なので、回数に数えなくて構いません。
聞き返しの回数を配分する
上限を決めておくと、迷いがなくなります。
| 相手 | 1回の会議での目安 |
|---|---|
| 同じ相手に連続で | 2回まで |
| 同じ相手に会議全体で | 3回まで |
| 会議全体で(相手を問わず) | 5回程度 |
| 数字・日付の確認 | 回数に数えない |
連続2回を超えたら、方法を変える
同じ相手に2回続けて聞き返して、まだ分からない場合、3回目も同じ結果になります。そこで「チャットに書いていただけますか」に切り替えてください。方法を変えるのは、あきらめることとは違います。
上限に達したら、記録して後で回収する
5回使い切ったあとに分からない箇所が出たら、メモに残して会議後に確認します。その場で無理に聞かず、確実に後で回収する。回収の手順が決まっていれば、聞き返せなかったことが問題になりません。
使わなかった回数は、繰り越さない
前半で聞き返さなかったからといって、後半に多く使えるわけではありません。後半は参加者の集中も落ちているので、むしろ聞き返しにくくなります。分からない箇所は、出た時点で聞くほうがいいです。
聞き返さずに済ませる手
口頭で聞き返す以外の方法を持っておくと、回数を節約できます。
チャットに書いてもらう
固有名詞、数字、日付は、チャットに書いてもらうのがいちばん確実です。「後で使うので、この数字をチャットにいただけますか」と頼めば、たいてい応じてもらえます。音声で3回聞くより早く、記録にも残ります。
字幕で拾う
字幕を出している場合、聞き逃した語だけ目で確認できます。ただし固有名詞と数字は崩れやすいので、その2つは字幕を信じないでください。オンライン会議で字幕を出しても追えないで書いたとおり、字幕は拾うために使うものです。
他の人の反応で補う
自分だけが分からないとは限りません。他の参加者が確認の質問をするのを待つと、そこで解決することがあります。ただし待ちすぎると議題が進むので、5秒待って誰も聞かなければ自分で聞いてください。
拾えなかった箇所を当日中に回収する
聞き返せなかった箇所を放置すると、次の会議まで分からないままになります。
会議中は、記号だけ書く
分からなかった箇所を、メモに印だけ付けておきます。内容を書こうとすると、次の発言を聞き逃します。印と、その前後で聞こえた語を1つ書く。これで、あとで思い出せます。
終了後30分以内にメールを1本
「本日の件で1点だけ確認させてください」で始めて、分からなかった箇所を質問します。会議直後なら、相手も内容を覚えています。翌日以降になると、相手も思い出す手間がかかるので、当日中が原則です。
録画があるなら、その部分だけ聞き直す
全部を見返す必要はありません。印を付けた箇所の時刻だけ聞き直せば足ります。1か所あたり1分もかかりません。聞き直しても分からなければ、それは用語の問題なので、調べるか質問してください。
まとめ
聞き返しは、表現の数ではなく回数の管理です。
- 聞き返せないのは、何回まで聞いていいか分からないから
- 3つの状態に分ける。全部/一部/意味が分からない
- 全部なら、繰り返しではなく速度か手段を変えてもらう
- 一部なら、聞こえた部分を復唱して、欠けた1点だけ聞く
- 意味が分からないのは、その場では解決しない。後で処理する
- 上限の目安は、同じ相手に連続2回、会議全体で5回程度
- 数字と日付の確認は、回数に数えない
- 拾えなかった箇所は、当日中にメール1本で回収する
回収の手順が決まっていれば、その場で聞けなくても困りません。それが分かっていると、かえって聞き返しやすくなります。
よくある質問
何度も聞き返すと、能力を疑われませんか
聞き返しの回数より、内容を取り違えたまま進めるほうが問題になります。ただ、同じ相手に連続で聞き続けると相手の負担になるので、2回で方法を変えてください。手段を変えるのは、能力の問題とは別に見られます。
相手が早口なのに、速度を落としてと言いにくいです
速度ではなく、こちらの環境を理由にする方法があります。「回線が不安定で聞き取りにくいので、もう少しゆっくりお願いできますか」。相手を責めない形なので、頼みやすくなります。
聞き返したのに、また聞き取れませんでした
同じ方法で3回目をやらないでください。チャットに書いてもらうか、後で確認する形に切り替えます。3回目で聞き取れる確率は高くないので、方法を変えるほうが早いです。
全員の前で聞き返すのに抵抗があります
チャットで個別に聞く方法もあります。ただし、自分が分からない箇所は他の人も分かっていないことがあるので、全体に聞くほうが場の役に立つこともあります。数字や日付の確認は、全体に聞いたほうが安全です。
聞き取りが伸びれば、聞き返しは要らなくなりますか
減りますが、ゼロにはなりません。回線の質、訛り、専門用語。これらは英語力とは別の要因です。母語の会議でも聞き返しは起きます。技術として持っておくほうが実用的です。