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英語の電話は、かける前に台本を書く|聞き取れない前提で組み立てる

ヘッドセットとノートパソコンが置かれた机

英語の電話が苦手という人は多いのですが、同じ人が会議はなんとかこなせていたりします。差は英語力ではありません。電話には、画面も資料も表情もチャットもない。手がかりが音だけになるので、難易度が跳ね上がります。

この記事では、フレーズを増やすのではなく、聞き取れない前提で設計します。かける前に3行書く。それだけで、かなり変わります。

電話が会議より難しいのは、文字がないから

まず、何が難しいのかをはっきりさせます。ここを取り違えると、対策の方向がずれます。

字幕もチャットも使えない

オンライン会議なら、字幕を出せます。聞き取れなければチャットに書いてもらえます。資料が画面に出ているので、話の流れも追えます。電話にはこれが全部ありません。音声だけで、しかも回線の質が悪いことがある。会議で使っていた道具が丸ごと使えないので、同じ人でも電話だけ極端に苦手になります。これは能力の問題ではなく、条件の問題です。だから、電話だけが極端にできないことを気に病む必要はありません。むしろ、条件が厳しい場であることを前提に、準備と逃げ道を用意しておくほうが実務的です。会議で使っていた道具が使えないなら、別の道具を持ち込むか、そもそも会議に移す。この記事はその両方を扱います。

相手の名乗りは、いちばん速く読まれる

電話の冒頭、相手は自分の名前と会社名を名乗ります。ここが最速で、しかも固有名詞です。知らない単語が知らない速さで来るので、聞き取れないのが普通です。そして冒頭で聞き取れないと、そのあとずっと「誰と話しているのか分からない」状態で進むことになり、集中力が削られます。ここは最初から聞き返す前提で構えてください。構えておくと、聞き取れなかったときに焦らずに済みます。逆に「一度で聞き取らなければ」と思っていると、聞き返すこと自体に抵抗が出て、分からないまま進めてしまう。冒頭の名乗りは聞き取れなくて当然、と決めておくのが、いちばん実害が少ないです。

沈黙が、対面より重い

顔が見えないので、黙っていると相手には「聞こえていない」のか「考えている」のか判断できません。数秒の無音で、相手が Hello? と確認してきます。それでさらに焦る。会議なら画面の中でうなずけますが、電話では声を出さないと存在しないのと同じです。考えていることを声に出す習慣が、電話ではより効きます。Let me check. や One moment, please. を挟むだけで、相手は待ってくれます。資料を探している時間も、黙っていると不安にさせるので、I’m looking at the file now. と実況しておくといい。日本語の電話でも「少々お待ちください」と言いますが、あれと同じ役割です。

かける前の30秒で3行だけ書く

こちらからかける場合、準備できる時間があります。使ってください。書くのは3行です。

1行目(名乗り)
This is Kenji Sato from ABC Corporation.

2行目(用件を1文で)
I’m calling about the delivery date for order 〔番号〕.

3行目(相手にしてほしいこと)
Could you tell me when it will ship?

1行目は、自分の名前と会社だけ

名乗りに肩書きや部署を足すと長くなり、最初から噛みます。名前と会社名の2つで十分です。相手が聞き取れなかった場合に備えて、会社名のつづりを言えるようにしておくと安心です。相手から「もう一度お願いします」と言われたら、ゆっくり区切って繰り返してください。ここで焦って早口になると、二度目も伝わりません。

2行目は、用件を1文に圧縮する

I’m calling about 〜 の形が使いやすいです。about のあとに名詞を置くだけなので、文法で迷いません。注文番号や案件名のような固有の情報は、必ずこの行に入れてください。相手はそれを聞いて、資料を探しに行きます。逆にここが曖昧だと、相手が状況を把握するまでに何往復もかかります。about のあとに動詞を続けたくなったら、いったん名詞に言い換えてください。the delay of the shipment、the invoice for last month のように名詞で止めるほうが、口に出しやすく崩れにくいです。案件名を英語でどう言うか分からない場合は、社内で使っている呼び方をそのまま言って構いません。相手も同じ名前で管理しています。

3行目は、相手にしてほしいことを動詞で

いちばん抜けやすいのがここです。状況を説明して終わると、相手は「で、何をすればいいのか」と考えます。Could you tell me 〜 / Could you send me 〜 / Could you check 〜。この形で、こちらが何を求めているかを最初に示してください。電話は記録が残らないので、用件が曖昧なまま切ると何も進みません。

名乗りから用件までの型

実際の流れを、こちらからかける場合と受ける場合で分けて置きます。

場面 使う表現
名乗る This is 〔名前〕 from 〔社名〕.
取り次ぎを頼む May I speak to 〔相手〕, please?
用件を言う I’m calling about 〜.
不在のとき When is a good time to call back?

取り次ぎを頼むときは、相手の名前を先に言う

May I speak to Mr. Smith, please? のあとに、自分の名乗りを続けます。順番が逆でも通じますが、先に「誰に用があるか」を言うほうが、交換台の相手は動きやすい。担当者名が分からない場合は、部署や用件で伝えます。I’d like to talk to someone in the purchasing department. のように、部署名を言えば回してもらえます。誰に取り次いでほしいかが曖昧だと、その確認だけで数分かかります。

不在だったときに、こちらから次を決める

相手が不在の場合、He is not available right now. と返ってきます。ここで I’ll call again. とだけ言って切ると、また同じ時間にかけて不在、を繰り返すことになります。When is a good time to call back? と聞いて、時間を決めてください。あるいは、折り返しを頼む。Could you ask him to call me back? に続けて、自分の電話番号をゆっくり伝えます。数字は特に聞き取られにくいので、区切って2回言うくらいでちょうどいいです。

切るときは、決まったことを繰り返す

電話は記録が残りません。切る前に、決まったことを1文で復唱してください。So, you will send the revised quotation by Friday. Is that correct? これで認識のずれをその場で潰せます。そして通話後すぐ、同じ内容をメールで送る。この二段構えにしておくと、あとで「言った言わない」になりません。英語の電話に不安があるほど、この復唱とメールは効きます。

聞き取れないときの3手

聞き取れないのは前提です。問題は、聞き取れなかったあとにどうするかです。

手順 言い方 効くとき
1 もう一度 Could you repeat that? 一度で聞き逃した
2 ゆっくり Could you speak more slowly? 速さが原因
3 つづり Could you spell that for me? 名前・固有名詞

聞き取れなかった 1 もう一度言ってもらう 同じ速さで返ってくることがある 2 ゆっくり話してもらう 速さが原因ならここで解決する 3 つづりを言ってもらう 名前・社名・番号はこれが確実 3手で駄目なら、メールに切り替える 粘るより、書面にしたほうが速い

2回目は「ゆっくり」を足す

Could you repeat that? だけだと、同じ速さで同じ言い方が返ってくることがあります。相手に悪気はなく、こちらが聞き逃しただけだと思っているからです。2回目は Could you speak more slowly, please? と、速さの問題であることを伝えてください。英語を母語とする人は、意識すれば速度を落とせます。言われない限り気づかないだけです。

固有名詞は、つづりを聞いてしまう

人名、社名、地名、注文番号。ここは何度聞いても分からないことがあります。Could you spell that for me? と聞けば、一文字ずつ言ってくれます。数字なら、Could you say the number again, digit by digit? と頼むと、1つずつ区切ってくれます。これは英語力の問題ではないので、遠慮する場面ではありません。むしろ、聞き間違えたまま進めるほうが相手にとっても困ります。

3手で駄目なら、メールに切り替える

3回聞き返しても分からないときは、粘らないでください。Could you send me the details by email? と頼んで、書面にしてもらう。電話で20分粘るより、5分で切ってメールを待つほうが、結果的に速い。電話でなければならない内容は、実はそれほど多くありません。切り替えの判断ができる人のほうが、仕事は進みます。

留守番電話に残す型

抜けやすいのがここです。かけた先が留守番電話につながると、準備なしでは高い確率で失敗します。

Hello, this is Kenji Sato from ABC Corporation.

I’m calling about the delivery date for order 12345.

Could you call me back at 〔電話番号をゆっくり〕?
Again, that’s 〔もう一度〕.

Thank you.

名前と番号は2回言う

留守番電話は聞き返せません。相手は録音を1回聞いて、こちらにかけ直すかどうかを決めます。名前と電話番号は、必ず2回繰り返してください。番号は数字を1つずつ区切って読みます。日本の番号にかけてもらう場合は、国番号から伝えます。ここを省くと、かけ直せません。名前は、一度言ってからつづりを足すと確実です。Kenji Sato、K-E-N-J-I、S-A-T-O のように区切る。相手にとっては初めて聞く音なので、日本語の名前は特に聞き取りにくいと考えておいてください。メールアドレスを残す場合も同じで、記号の読み方を含めてゆっくり言います。

用件は1文だけにする

長いメッセージは最後まで聞かれません。用件は1文、こちらが何を求めているかも1文。それ以上の詳細は、折り返しの電話かメールで話せば十分です。録音は30秒以内を目安にしてください。慣れないうちは、話す前に紙に書いておくと、言い直しが減ります。途中で言い間違えても、録音し直せないことが多いので、そのまま続けてください。言い直したうえで最後まで言い切れば、内容は伝わります。焦って切ってしまうと、名前だけ残って用件が入っていない録音になり、相手は判断できません。最後まで言い切ることを優先してください。

残したあと、同じ内容をメールで送る

留守番電話だけで待つのは効率が悪いので、同じ内容を短いメールで送っておきます。件名に案件名を入れておけば、相手は録音を聞く前にメールで気づきます。電話とメールを競わせるのではなく、電話で気づかせてメールで詳細を渡す、という役割分担にすると、やり取りが速く終わります。

電話でやらないことを決める

最後に、そもそも電話を使うかどうかの判断です。ここを決めておくと、苦手な場面を減らせます。

内容 電話 理由
急ぎの確認 向く その場で終わる
数字・日程の確定 向かない 記録が残らない
仕様の説明 向かない 図と文字が要る
謝罪・関係の修復 向く 声のほうが伝わる

数字が絡む話は、電話で確定させない

金額、数量、日付。この3つは電話で決めないでください。聞き間違いが起きやすく、しかも記録が残りません。電話で話すのは構いませんが、最後に「メールで確認を送ります」と伝えて、書面で確定させる。この運用にしておけば、聞き取りに自信がなくても実害が出ません。英語だからではなく、日本語でも同じことをしている会社は多いはずです。

逆に、謝るときは電話のほうがいい

納期が遅れた、こちらのミスで迷惑をかけた。こういう場面では、メールより電話のほうが伝わります。声には、文面に出ない部分が乗ります。英語が拙くても、先に電話を入れたという事実が相手に残る。文面を完璧にするより、早く声で伝えるほうが効く場面があります。この場合も、通話後に要点をメールで送ってください。

会議に置き換えられないかを考える

相手と時間を合わせられるなら、電話ではなくオンライン会議にしてしまう手もあります。会議なら字幕が使え、チャットで文字を送れます。手がかりが増えるぶん、難易度が下がります。字幕の出し方は英語の会議についていけないとき、聞き取りを鍛える前にやることにまとめました。電話でなければならない理由がないなら、道具の多い場に移すのが合理的です。

まとめ

電話が苦手なのは、英語力ではなく手がかりの少なさが原因です。

  • 電話には字幕もチャットも資料もない。会議より条件が厳しいのは当然
  • かける前に3行書く。名乗り/用件を1文/相手にしてほしいこと
  • 聞き取れないときは、もう一度 → ゆっくり → つづり、の3手
  • 3手で駄目ならメールに切り替える。粘るより速い
  • 留守番電話は、名前と番号を2回。用件は1文。30秒以内
  • 数字と日程は電話で確定させない。通話後にメールで残す

英語の電話がうまくなる前に、電話でやることを減らす。この順番のほうが、実務では早く楽になります。

よくある質問

相手の名前が最後まで聞き取れませんでした

つづりを聞いてください。Could you spell your name, please? で解決します。それでも分からない場合、通話後に相手の会社のサイトで担当者名を確認するか、メールの署名で確認します。分からないまま Mr. や Ms. を付けずに進めるのは失礼ではないので、無理に推測して間違った名前で呼ぶほうを避けてください。

かかってきた電話に出るのが怖いです

受ける側は準備ができないので、難易度は上がります。まず、最初に言う文を1つだけ決めて、電話の横に貼っておいてください。Hello, this is 〔名前〕 speaking. これだけあれば、最初の数秒は乗り切れます。用件が複雑そうなら、Could you send me the details by email? で切り替えて構いません。

電話中にメモを取ると聞き逃します

文章で書こうとすると必ず止まります。書くのは、数字と固有名詞だけにしてください。それ以外は、通話後すぐに思い出して書きます。可能なら、通話中に復唱して確認するほうが、メモより確実です。

録音してもいいですか

相手の同意なしの録音は、社内規程や相手先の方針に触れることがあります。まず自社のルールを確認してください。そのうえで録音するなら、冒頭で断ります。同意が取れない場合は、通話後すぐにメールで内容を確認する方法に切り替えてください。

国際電話で回線が悪いときはどうしますか

我慢して続けないでください。The line is not very clear. Could I call you back? と言って、かけ直すか、オンライン会議のリンクに切り替えます。回線が原因の聞き取りにくさを、自分の英語力の問題だと受け取ってしまう人が多いのですが、別の問題です。

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