
「スキルアップした方がいいのはわかっているけど、何から手をつければいいかわからない」。そう感じている20代は、実は少なくありません。
パーソル総合研究所の調査では、20代前半の70%が、過去1年間に「成長を実感している」と回答しています。この記事では、転職市場で評価されやすい資格と、その選び方・勉強時間の目安を、実際のデータをもとに整理します。
20代前半の70%が「成長を実感」している
パーソル総合研究所「働く10,000人成長実態調査」(全国15〜69歳の有職者10,000人を対象に毎年2〜3月実施)によると、20代前半の学習・自己啓発の実施率は、過去5年間で微増傾向にあり、他の年代と比べて最も高いという結果が出ています。また、20代前半の70%が、過去1年間に「成長を実感している」と回答しており、仕事選びの重視点としても、社会貢献や知識・スキルが得られるといった「自己成長」に関する項目が上昇傾向にあります。
マイナビが実施した調査でも、20代〜60代で自己投資を行っている人のうち、最も回答を集めたのが「資格取得のための自己投資」でした。つまり、20代のうちから学び続けること自体は、すでに多くの人が実践している、特別なことではないアクションだといえます。問題は「何から始めるか」が見えていないことなのではないでしょうか。
実際、Google トレンドで検索の推移を確認すると、「資格 20代」という検索は、この1年間ほぼ途切れることなく、安定して高い水準で検索され続けています。一時的なブームではなく、多くの20代が継続的に「資格を取った方がいいのか、何を取ればいいのか」と検索し、悩んでいるテーマだということがうかがえます。
資格は何から取ればいい?

20代の転職市場で評価されやすい資格として、業種を問わず求人票に登場しやすい日商簿記2級・FP(ファイナンシャル・プランナー)2級・宅地建物取引士(宅建士)の3つが代表格として挙げられます。まずは3つを比較した表で全体像をつかんでから、それぞれの特徴を見ていきましょう。
| 資格 | 勉強時間の目安 | 合格率の目安 | 受験料 | 受験資格 |
|---|---|---|---|---|
| 日商簿記2級 | 150〜300時間 | 統一試験11.9〜28.8%、ネット試験34.6% | 5,500円 | なし(誰でも受験可) |
| FP2級 | 150〜300時間 | 学科44〜59%、実技48〜69% | 学科・実技合わせて8,000円台が目安 | FP3級合格 または実務経験2年以上 |
| 宅建士 | 300〜400時間 | 18.7%(2025年、合格ライン33点) | 8,200円 | なし(誰でも受験可) |
こうして並べると、FP2級は他の2つに比べて合格率が高く、受験しやすい資格であることがわかります。ただし、受験資格に制限があるため、未経験からすぐに挑戦できるわけではありません。一方、宅建士は合格率20%を切る年もあり、3つの中では最も難易度が高い部類に入ります。
日商簿記2級
経理・会計職の求人票では、「日商簿記2級以上」が応募条件として明記されることが多く、職種を問わず「数字が読める人材」として評価されやすい資格です。勉強時間の目安は150〜300時間程度、期間にすると4〜6ヶ月が一般的とされています。受験料は5,500円(税込)です。
試験形式は、年3回実施される「統一試験(ペーパー試験)」と、随時受験できる「ネット試験(CBT方式)」の2種類があります。直近10回の統一試験の合格率は11.9〜28.8%で推移している一方、2025年4月〜12月のネット試験の合格率は34.6%と、ネット試験の方が合格しやすい傾向がうかがえます。働きながら勉強するなら、自分の都合で受験日を選べるネット試験の方が、スケジュールを立てやすいでしょう。
FP2級
金融業界への転職では評価されやすい一方、経理職への転職では簿記2級ほど直接的な強みにはなりにくい傾向があります。学科試験の合格率は44〜59%、実技試験の合格率は48〜69%と、簿記2級・宅建士と比べて合格しやすいのが特徴です。
ただし、FP2級を受験するには「FP3級に合格していること」または「2年以上の実務経験」のいずれかが必要になるため、未経験からいきなり2級を受けることはできません。まず3級から取得するルートを検討しましょう。3級はFP2級よりさらに合格率が高く、初めての資格挑戦としても始めやすい難易度です。
宅建士(宅地建物取引士)
不動産業界では必須級の国家資格で、資格手当の対象になっている企業も多くあります。勉強時間の目安は300〜400時間、期間にすると4〜6ヶ月程度です。2025年の試験では、合格ライン33点に対して合格率18.7%(合格者45,821人)という結果でした。国家資格であるため、転職市場での信頼性は民間資格より高い傾向にあり、不動産業界以外でも「継続的に学習をやり切れる人材」というアピール材料になります。
3つとも、勉強時間の目安はおおむね150〜400時間の範囲に収まるという共通点があります。1日1時間の学習を続けた場合、150時間なら5ヶ月、400時間なら1年強で射程に入る計算です。もっと手軽に始めたい場合は、ITパスポートや簿記3級のように、2〜3ヶ月程度で取得できる入門資格から始めるという選択肢もあります。
目的別の選び方
資格選びで最初に迷うのは、「汎用性で選ぶか、業界特化で選ぶか」という点です。
まだ目指す業界が固まっていない、あるいは今後転職の可能性がある場合は、汎用性の高い簿記2級・FP2級・TOEICから検討するのが無難です。どの業界に進んでも、一定の評価を得やすいという利点があります。
一方、すでに目指す業界が決まっている場合は、業界特化の資格から検討する方が効率的です。不動産業界なら宅建士、IT業界なら基本情報技術者、医薬品販売なら登録販売者、というように、志望業界で評価される資格は業種によって異なります。求人票で「歓迎条件」として挙げられている資格を、実際に3〜5件ほど確認してみると、志望業界で何が評価されやすいかが具体的に見えてきます。
英語力については、TOEIC600点以上を持っていると、大手企業や海外取引のある企業への転職で、書類選考の段階から英語力をアピールできます。将来的に海外展開のある企業や、外資系企業を視野に入れている場合は、優先的に検討する価値があります。
ここで、資格選びでよくある失敗パターンにも触れておきます。一つは、「何となく評価されそうだから」という理由だけで、目的の異なる資格を並行して手を出してしまい、どれも中途半端なまま学習が止まってしまうケースです。150〜400時間という勉強時間は、決して短くありません。まずは1つに絞り、取得し終えてから次を検討する方が、結果的に近道になります。
もう一つは、資格を取ったこと自体をゴールにしてしまい、実際の転職活動や社内アピールにつなげられていないケースです。資格は、取得した事実だけでなく、「なぜその資格を取ったのか」「どう仕事に活かせるのか」を自分の言葉で説明できて初めて、評価につながります。学習を始める前に、「この資格を、志望する仕事のどの場面で使うのか」を一文でよいので言語化しておくと、面接でも説得力のある説明がしやすくなるでしょう。
学習スケジュールの立て方
「勉強時間150〜400時間」と言われても、実際に日々どれくらい確保すればいいのか、ピンとこない人も多いのではないでしょうか。ここでは、簿記2級を例に、具体的な逆算スケジュールを紹介します。
簿記2級の勉強時間の目安は150〜300時間です。仮に中間の200時間を、半年(24週)で確保するとすると、1週間あたりの学習時間は8〜9時間、1日に換算すると1〜1.5時間程度になります。平日は通勤時間や昼休みを使って30分、休日にまとめて2〜3時間、という配分であれば、無理なく積み上げられる範囲です。
学習の進め方としては、最初の1〜2ヶ月はテキストを1周読んでインプットの土台を作り、残りの期間は問題演習と過去問を繰り返す、という比率が一般的です。特に、簿記2級はネット試験であれば随時受験できるため、「試験日から逆算する」のではなく、「問題演習で合格ラインに安定して届くようになったタイミングで申し込む」という進め方も可能です。統一試験(年3回)より、自分のペースを優先しやすいという点でも、働きながらの学習と相性がよいでしょう。
宅建士のように試験日が固定されている資格の場合は、逆に「試験日から逆算したスケジュール」が必須になります。目安として、300時間を4ヶ月で確保するなら週18〜19時間、6ヶ月で確保するなら週12〜13時間が必要です。試験日の1〜2ヶ月前には、テキスト学習を終えて過去問演習に専念できるよう、早めに学習をスタートさせることをおすすめします。
資格以外のスキルアップという選択肢
資格取得だけがスキルアップではありません。今の仕事で担当している業務を、数字で説明できる形に言語化しておくことも、立派なスキルアップの一つです。「売上を増やした」ではなく「新規顧客獲得数を前年比130%に伸ばした」というように、実績を定量化しておくと、転職活動でも、社内でのキャリア面談でも、説得力のあるアピールができます。
読書による学習も有効な手段です。移動時間や家事の合間などのスキマ時間を使えば、まとまった学習時間が取れない日でも、少しずつインプットを進められます。
資格・スキルアップのインプットに使えるサービス
どちらも無料体験の範囲で解約すれば費用はかかりません。対象タイトルはサービス内で変動するため、気になる本があるかは実際にアプリ内で検索して確認してください。
今日からできること
ステップ1(今夜):自分の志望業界を仮決めする
まだ明確な志望業界がなくても構いません。今の時点で「気になる」業界を1つ、仮でよいので決めてみましょう。あわせて、今の仕事の実績で数字にできそうなものが1つでもないか、5分だけ振り返ってみてください。
ステップ2(今週中):志望業界の求人票を5件確認する
気になる業界の求人票を実際に5件ほど眺めて、「歓迎条件」の欄にどんな資格が挙げられているか、共通点を探してみてください。同じ資格が複数の求人票に登場していれば、その業界で実際に評価されている資格だと判断できます。
ステップ3(今月中):1つの資格に絞って学習を開始する
汎用性重視なら簿記2級・FP2級・TOEIC、業界特化型ならその業界で評価される資格を1つ選び、まずは入門書を1冊読み終えるところから始めてみましょう。あわせて、自分の生活の中で確保できそうな学習時間を、1週間単位で書き出しておくと、学習スケジュールの立て方セクションで紹介した逆算がしやすくなります。
まとめ
パーソル総合研究所の調査によると、20代前半の70%が過去1年間に成長を実感しており、学習・自己啓発の実施率も他の年代より高い水準にあります。資格選びに迷ったら、汎用性重視なら簿記2級・FP2級・TOEIC、業界特化型なら志望業界の求人票で評価されている資格を確認し、まず1つに絞って学習を始めることが、無理のないスキルアップの進め方です。勉強時間の目安は150〜400時間と幅がありますが、1日1〜1.5時間の学習を半年ほど続ければ射程に入る資格がほとんどです。完璧な計画を最初から立てようとせず、まずは求人票を眺めるところから、小さく始めてみてください。
資格以外も含めた自己啓発全体の実態(実施率・平均時間・効果・つまずく5つの壁)は、20代のスキルアップガイドで公的統計から整理しています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 20代で成長を実感している人はどれくらいいますか?
パーソル総合研究所「働く10,000人成長実態調査」(全国15〜69歳の有職者10,000人対象)によると、20代前半の70%が過去1年間に成長を実感していると回答しています。
Q2. 20代の転職に評価されやすい資格は何ですか?
業種を問わず評価されやすい資格として、日商簿記2級・FP2級・宅地建物取引士(宅建士)の3つが代表格として挙げられます。いずれも勉強時間の目安は150〜400時間程度です。
Q3. FP2級はいきなり受験できますか?
いいえ。FP2級を受験するには「FP3級に合格していること」または「2年以上の実務経験」のいずれかが必要です。未経験からの場合は、まずFP3級から取得する必要があります。
Q4. どの資格から手をつければいいか迷います。
志望業界が固まっていない場合は、汎用性の高い簿記2級・FP2級・TOEICから検討するのが無難です。志望業界が決まっている場合は、その業界の求人票で「歓迎条件」に挙げられている資格を確認し、業界特化型の資格を優先しましょう。
Q5. もっと手軽に始められる資格はありますか?
ITパスポートや簿記3級であれば、勉強時間の目安は2〜3ヶ月程度で、比較的手軽に始められます。まずこうした入門資格から始めて、学習の習慣をつけるのも一つの方法です。
Q6. 資格以外にできるスキルアップはありますか?
今の仕事の実績を数字で言語化しておくことも有効なスキルアップです。「売上を増やした」ではなく「新規顧客獲得数を前年比130%に伸ばした」のように定量化しておくと、転職活動でも説得力のあるアピールができます。
Q7. 簿記2級、FP2級、宅建士の中で一番合格しやすいのはどれですか?
合格率だけで見ると、FP2級(学科44〜59%、実技48〜69%)が最も合格しやすい傾向にあります。ただし受験資格に制限があるため、未経験からはFP3級を先に取得する必要があります。
Q8. 働きながらでも資格の勉強時間は確保できますか?
簿記2級(150〜300時間)を半年で取得する場合、1日あたり1〜1.5時間程度の学習で射程に入ります。通勤時間や昼休みに30分、休日にまとめて2〜3時間、という配分であれば、無理なく継続しやすいペースです。



