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ライバーの経費はどこまで?|品目リストではなく、判断の順番を持つ

机の上に広げたレシートを電卓と一緒に仕分けている女性の手元

「ライバー 経費になるもの」で検索すると、経費項目の一覧が出てきます。機材、通信費、衣装代、家賃、美容代。表になっていて、◯や△が並んでいます。

その一覧は参考になりますが、同じ品目でも、人によって経費になったりならなかったりします。だから一覧を覚えても、自分の場合が判断できません。

この記事では、品目ではなく判断の順番を作ります。国税庁が示している要件をそのまま使うので、一覧にない品目が出てきても自分で判断できるようになります。なお、税額に直結する個別の判断は税務署や税理士に確認してください。この記事は考え方の整理です。

品目リストでは決まらない理由

まず、なぜ一覧では足りないのかを確認します。

同じ品目でも、人によって変わる

たとえば照明です。配信のためだけに買って、配信のときだけ使う人にとっては、配信のための支出です。一方、部屋の照明を兼ねていて、配信していない時間も点けている人にとっては、生活の支出と混ざっています。

衣装も同じです。配信でしか着ないものと、普段も着るもので扱いが変わります。通信費も、配信にしか使わない回線と、生活と共用の回線では違います。

つまり、決まるのは品目ではなく、使い方と記録です。一覧の◯や△は、あくまで「そうなりやすい」という目安であって、自分の場合の答えではありません。

国税庁が示しているのは、品目ではなく要件

国税庁のタックスアンサー「やさしい必要経費の知識」では、必要経費に算入できる金額として2つが挙げられています。「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額」と、「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」です(確認日2026年9月22日)。

品目の一覧は出てきません。代わりに、収入を得るために直接必要だったか、業務上の費用か、という要件が示されています。

そして家事関連費については、必要経費となるのは「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られ」るとされています。ここが判断の核です。

だから必要なのは、説明できる記録

要件に「明らかに区分できる場合」と書かれている以上、区分を示せるかどうかが分かれ目になります。示すのは記録です。

記録といっても、難しいものではありません。いつ買ったか、いくらだったか、何に使ったか。そして、生活と混ざっている場合は、どういう基準で分けたか。この4つが書いてあれば足ります。

逆に言えば、領収書だけあっても、何に使ったかを説明できなければ弱いです。レシートは捨てずに取っておいて、そこに一言メモを書く。これが最初の一歩になります。確定申告そのものの判断基準は確定申告の記事にまとめています。

判断の順番を4ステップにする

ここからが本題です。品目ではなく、順番で判断します。

品目ではなく、この順番で見る 1 配信のために必要だったか なければ配信できなかった、と言えるか 2 生活と混ざっていないか 混ざっていなければ、そのまま全額 3 混ざっているなら、分けられるか 時間・面積・回数など、基準を1つ決める 4 記録が残っているか 日付・金額・用途・分けた基準の4つ 4まで通れば経費に入れられる。どこかで 止まったら、止まった場所を直せばいい 止まりやすいのは3と4 分ける基準を決めていない レシートはあるが用途を書いていない あとから思い出せない 要件は「明らかに区分できる場合」。 区分を示すのは記録なので、買った日に 一言書くのがいちばん効く
品目ではなく、4つの質問を順に通す
質問 通る例 止まる例
配信に必要か 配信用のマイク 気分が上がる服
混ざっていないか 配信専用の回線 家族と共用の回線
分けられるか 面積で按分できる 基準を決めていない
記録があるか 用途まで書いてある レシートだけある

①その支出がなければ、配信できなかったか

最初の質問です。その支出がなかった場合、配信そのものが成立しなかったか、あるいは明らかに質が落ちたか。

マイクや照明、配信に使うアプリの利用料は、ここで通ります。一方、「配信のモチベーションのために買った服」は、この段階で止まります。気持ちが上がることと、業務上必要であることは別だからです。

この質問は厳しめに答えてください。あとから説明する相手は自分ではないので、自分に甘い基準は役に立ちません。

判断に迷ったら、その支出を他人に説明する場面を想像してみてください。「これは何のために買いましたか」と聞かれて、配信のどの場面で何に使ったかを答えられるなら通ります。答えに「気分が上がるから」が混ざるなら、そこで止まっています。

②生活と混ざっていないか

1つ目を通ったら、次は混ざり具合です。配信でしか使わないものなら、ここで終わりです。そのまま全額を経費にできます。

配信専用のマイク、配信用に借りた場所、配信でしか着ない衣装。これらは混ざっていないので、判断が簡単です。

混ざっている代表が、家賃、電気代、通信費、スマホ本体です。配信にも使うし、生活にも使う。この場合は3つ目に進みます。

ここで有効なのが、最初から混ざらない形にしておくことです。配信用の回線を分ける、配信でしか使わない端末を用意する、配信用のカードを1枚作る。手間は増えますが、3つ目の判断そのものが不要になります。

ただし、分けるために余計な契約を増やすと、支出そのものが増えます。混ざったまま区分するのと、分けて契約するのと、どちらが安いかは先に比べてください。

③混ざっているなら、分けられるか

ここが家事関連費の話です。分けるには基準が要ります。基準は、時間、面積、回数のどれかで作るのが一般的です。

通信費なら、配信に使った時間と、それ以外の時間の比。家賃なら、配信に使っている場所の面積と、家全体の面積の比。どの基準を使うかより、根拠を説明できるかのほうが大事です。

そして、基準は一度決めたら変えないでください。月によって有利なほうに変えると、根拠として弱くなります。按分の作り方そのものは、別の記事で詳しく扱います。

混ざるもの 分ける基準 記録するもの
通信費 使った時間の比 月の配信時間
家賃・電気代 使う面積の比 間取りと面積
スマホ本体 使った時間の比 配信に使う割合
衣装 着た回数の比 配信で着た回数

④記録が残っているか

最後が記録です。ここが抜けていると、1から3を通っていても弱くなります。

書くのは4つ。日付、金額、用途、分けた基準。レシートの裏に一言でも構いませんし、表計算に1行足すだけでも構いません。大事なのは、買った日に書くことです。1か月後には理由を思い出せません。

そして、レシートそのものは捨てないでください。感熱紙は時間がたつと消えるので、スマホで撮って残しておくと安心です。

家事関連費の「50%」の正しい読み方

ここは、誤解されやすい部分です。正確に押さえておくと、判断が変わることがあります。

通達に書かれている判定

所得税基本通達45-2には、こう書かれています。「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする(確認日2026年9月22日)。

ここまでを読んで、「50%を超えないと経費にできない」と理解している解説をよく見ます。ですが、条文にはこの先があります。

そもそもこの50%は、家事関連費のうち「主たる部分が業務の遂行上必要」かどうかを判定するための基準です。経費に入れられる上限や下限を決めた数字ではありません。ここを取り違えると、入れられるものまで外してしまいます。

50%以下でも、入れられる場合がある

同じ45-2の続きです。「ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。」

つまり、50%という数字は「主たる部分かどうか」の判定に使われるもので、50%以下だから一律に駄目、という話ではありません。明らかに区分できるなら、その部分を入れて差し支えない、と書かれています。

これは実務上、けっこう大きい違いです。配信に使う割合が3割の回線でも、区分が明らかにできるなら、その3割は検討の対象になります。もちろん、区分の根拠を示せることが前提です。

「明らかに区分できる」とは何か

では、どうすれば明らかに区分できるのか。同じ通達の45-1に、判定の考え方が書かれています。

「主たる部分」や「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定するとされています。

総合勘案、と書かれているとおり、ひとつの数式で自動的に決まるものではありません。だからこそ、自分がどういう考え方で分けたかを記録しておくことに意味があります。数字そのものより、その数字の出どころが説明できるかです。

金額で扱いが変わる線がある

もうひとつ、知っておくと買い方が変わる線があります。金額による扱いの違いです。

10万円未満は、その年に全額

国税庁のタックスアンサー「減価償却のあらまし」では、使用可能期間が1年未満のもの、または取得価額が10万円未満のものについて、「その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とします」とされています(確認日2026年9月22日)。

つまり、10万円未満の機材は、買った年にまとめて経費にできます。多くの配信機材はこの範囲に収まります。

逆に、10万円以上になると話が変わります。ここを知らずに買うと、思っていたのと違う扱いになります。

10万円以上20万円未満は、3年に分ける方法がある

同じページに、一括償却資産の説明があります。取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件の下で、「その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額をその業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することができます」とされています。

15万円のものを買った場合、3年かけて5万円ずつ、という形です。今年の経費を増やしたくて買ったのに、今年に入るのは3分の1だけ、ということが起きます。

取得価額 扱い
10万円未満 その年に全額
使用可能期間1年未満 その年に全額
10万円以上20万円未満 3年で3分の1ずつ(一括償却)
それ以上 耐用年数に応じて計算

買う前に、金額を確認する

この線を知っていると、買い方が変わります。9万8千円と10万2千円では、扱いがまったく違います。

とはいえ、金額を基準に機材を選ぶのは本末転倒です。必要なものを買うのが先で、扱いは後からついてきます。知っておく意味は、買ったあとに慌てないことです。

なお、青色申告をしている場合には、別の特例が用意されていることがあります。自分に適用があるかどうかは、税務署か税理士に確認してください。

経費にならないと明記されているもの

入れられないものも、はっきり書かれています。ここは覚えておくと迷いません。

生計を一にする家族に払うもの

タックスアンサーには、「生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません」と書かれています(確認日2026年9月22日)。

実家に住んでいて、家族に家賃を払っている場合が該当します。実際にお金を渡していても、経費にはできないという扱いです。

ここは間違えやすいところです。払っているかどうかではなく、誰に払っているかで決まります。

なお「生計を一にする」かどうかは、同居しているかどうかだけで決まるものではありません。自分の状況がこれに当たるかどうかは、税務署に確認するのが確実です。

税金や罰金

同じページに、所得税や住民税は必要経費にならない、罰金、科料および過料などは必要経費にならない、と書かれています。

一方で、業務用資産の購入のための借入金など、業務のための借入金の利息は必要経費になる、ともあります。税金は駄目で、業務のための利息は入る、という区別です。

細かく見えますが、これらは「自分で判断しなくていい」部分です。書かれているものは、そのとおりにすれば済みます。判断が要るのは、書かれていない品目のほうです。

だから、調べる順番としては、まず明記されているものを確認して除外し、残ったものに4つの質問を当てる、という流れになります。最初から全部を自分で判断しようとすると、時間がかかります。

迷ったら入れない、が常に正解とは限らない

最後にひとつ。迷ったら入れないほうが安全、と考える人は多いです。気持ちは分かりますが、入れないことで損をしている場合もあります。

とくに、さきほどの45-2のただし書きを知らずに、50%以下だからと全部あきらめているケースです。区分が明らかにできるなら、検討する余地があります。

大事なのは、入れるか入れないかを勘で決めないことです。4つの質問を順に通して、止まった場所を記録しておく。そのうえで、判断がつかないものを相談してください。

「節税のために買う」をやめる

最後に、この記事でいちばん伝えたいことです。

経費にしても、現金は減っている

経費という言葉には、なぜか「実質無料になる」ような響きがあります。実際には違います。

10万円のものを買って全額を経費にできたとしても、手元から10万円は出ています。減るのは、その分にかかる税金であって、支出そのものではありません。買わなければ、そのお金はそのまま残っていました。

だから、年末に「経費を増やすために何か買おう」と考えるのは、順番が逆です。必要だから買う。その結果として経費になる。この順番でないと、手元のお金は減り続けます。

記録のコストも足して考える

もうひとつ、見落とされるのが手間です。経費に入れるには、記録が要ります。品目が増えるほど、記録も増えます。

月に数百円のものを10個記録するより、必要なものだけを記録するほうが続きます。続かない記録は、あとで一気に思い出す作業になって、結局あきらめることになります。

金額の小さいものは、まとめて扱える形にしておくと楽です。配信用のものだけを1枚のカードで買う、という方法もあります。明細がそのまま記録になります。

それと、記録は月に1回まとめる日を決めておくと続きます。毎日やろうとすると抜けますし、年に1回にすると思い出せません。月末に30分だけ、と決めておくのがちょうどいいです。

判断がつかないときの相談先

この記事は考え方の整理なので、個別の判断はできません。迷ったときは、次の順で確認してください。

まず、国税庁のタックスアンサーで該当する項目を探す。次に、所轄の税務署に電話して聞く。税務署は無料で答えてくれますし、確定申告の時期以外なら比較的つながります。そして、事業の規模が大きくなってきたら税理士に相談する。

聞くときは、4つの質問に答えた結果を持っていってください。「これは経費になりますか」より、「配信にしか使っておらず、記録もこうあります。この場合はどう扱いますか」のほうが、具体的な答えが返ってきます。

相談先 向いている内容 費用
タックスアンサー 基本的な扱い 無料
所轄の税務署 自分の場合の確認 無料
税理士 継続的な相談 有料

まとめ

経費は、品目では決まりません。使い方と記録で決まります。

  • 同じ品目でも人によって変わる。配信専用の照明と、部屋の照明を兼ねたものでは扱いが違う
  • 国税庁が示しているのは要件。「総収入金額を得るために直接要した費用」「業務上の費用」。家事関連費は「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られ」る
  • 判断は4つの順番で。①配信のために必要だったか ②生活と混ざっていないか ③混ざっているなら分けられるか ④記録が残っているか
  • 止まりやすいのは③と④。分ける基準を決めていない、レシートはあるが用途を書いていない
  • 45-2の「50%」には、ただし書きがある。50%以下であっても、必要である部分を明らかに区分できる場合には、その部分を必要経費に算入して差し支えない、と書かれている
  • 45-1では「総合勘案して判定する」とされている。数式で自動的に決まるものではないので、分けた考え方を記録しておく
  • 10万円未満(または使用可能期間1年未満)は、その年に全額。10万円以上20万円未満は、一定の要件の下で3年間に3分の1ずつという方法がある
  • 経費にならないと明記されているものがある。生計を一にする親族に支払う地代家賃、所得税・住民税、罰金・科料・過料など
  • 経費にしても現金は減っている。減るのは税金であって支出ではない。必要だから買う、の順番を守る
  • 記録のコストも足して考える。続かない記録は、結局あきらめることになる

今日できるのは、今月のレシートを集めて、それぞれに用途を一言書くことだけで十分です。品目の一覧を覚えるより、4つの質問を持っているほうが長く使えます。個別の判断は、税務署や税理士に確認してください。

よくある質問(FAQ)

美容代や服は経費になりますか

使い方によります。配信でしか着ない衣装で、私服として使っていないなら、業務のための支出として説明しやすくなります。一方、普段も着るものは生活と混ざるので、区分できるかどうかの話になります。美容代は、配信のためだけに必要だったと説明するのが難しい場合が多いです。4つの質問を順に通して、①か②で止まるなら入れないほうが無難です。最終的な判断は税務署か税理士に確認してください。

家賃は何割まで入れられますか

割合の上限が決まっているわけではなく、配信に使っている部分を明らかに区分できるかで決まります。面積で分けるのが一般的で、配信に使っている場所の面積と家全体の面積の比を使います。通達45-2では、50%以下であっても明らかに区分できる場合は算入して差し支えない、とされています。ただし総合勘案して判定するとも書かれているので、根拠を記録したうえで税務署に確認してください。

10万円を少し超える機材を買ってしまいました

取得価額が10万円以上20万円未満なら、一定の要件の下で、3年間にわたって3分の1ずつ必要経費に算入する方法があります。今年に全額は入りませんが、なくなるわけではありません。青色申告をしている場合は別の特例が用意されていることもあるので、自分に適用があるかを税務署か税理士に確認してください。

レシートをなくしてしまいました

まず、クレジットカードや電子決済の明細が残っていないかを確認してください。日付と金額と相手先が分かる記録があれば、手がかりになります。そのうえで、いつ・何のために・いくら使ったかを自分で記録に残しておいてください。ただし、レシートがない状態が常態化すると説明が難しくなるので、次からは撮影して残す運用にしてください。感熱紙は時間がたつと消えます。

どこまで細かく記録すればいいですか

日付、金額、用途、分けた基準の4つが書いてあれば十分です。それ以上細かくすると続きません。むしろ大事なのは、買った日に書くことです。1か月後には理由を思い出せなくなります。金額の小さいものが多いなら、配信用のものだけを1枚のカードで買うと、明細がそのまま記録になります。

税務署に聞くのは怖くないですか

相談は無料で、聞いたこと自体で不利になることはありません。むしろ、判断がつかないまま自己流で処理するほうがあとで困ります。聞くときは「これは経費になりますか」ではなく、「配信にしか使っておらず、記録もこうあります。この場合はどう扱いますか」と具体的に聞いてください。確定申告の時期は混むので、それ以外の時期のほうがつながりやすいです。

品目を覚えるより、判断の順番を持つ

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