
商談が進んだら、見積を出します。この作業をHubSpotの中で完結させると、誰にいつ出したか、相手が見たかどうかまで記録に残ります。
ただ、紙やExcelの見積に慣れていると戸惑う仕様がいくつかあります。公開したあとの編集には「取り消し」が必要で、署名済みのものは削除できません。
そして、日本の商習慣との差もあります。押印欄、社判、税の表示。ここを整えずに出すと、先方の経理で止まります。
この記事では、仕様と日本での実務を扱います。
先に結論:出したあとの扱いに癖があります
- 公開済みの見積を直すには、承認の前に「取り消し&編集」が必要です。
- 署名済み・承認済み・支払い済みの見積は削除できません。記録として残ります
- 承認方法は「印刷して署名」「電子署名」「署名なしで承認」の3つ。日本の実務では1つ目を選ぶ場面が多くなります
対象プランの表記は変わることがあります。自分のアカウントで開けるかを必ず確認してください。
前提:ヘルプの製品名が変わっています
最初に、正確を期すために書いておきます。
見積に関する公式ヘルプのページには、更新日の時点で対象として「Revenue Hub Professional, Enterprise」と記載されていました。あわせてコアシートの割り当てが必要とも書かれています。
製品名の表記は移り変わります
HubSpotは製品の構成や名称を見直すことがあります。記事や他社の解説で見た名前と、いま自分の画面に出ている名前が一致しないことがあります。
この媒体で繰り返し書いているとおり、確実なのは自分のアカウントで開いてみることです。見積の作成画面が開くかどうかで判断してください。
開けない場合、どこで詰まるか
作成のボタンが出てこない、もしくは途中でプランの案内が出ます。その画面に書かれている製品名とプラン名を控えてください。
申し込むときに必要なのは、その2つです。記憶や伝聞で契約すると、別の製品を買うことになります。
公開したあとは「取り消し」が要ります
ここが、紙の見積と感覚が違う部分です。
公式には、下書きの見積は編集でき、公開済みの見積は「取り消し&編集」のオプションで承認前に編集できると記載されています。
「公開」は相手に見える状態のことです
公開すると、共有用のリンクが有効になります。相手がいつでも開ける状態です。
その状態のまま中身を書き換えられると、相手が見ている内容と食い違います。だから、いったん取り消してから直す仕組みになっています。
金額を直すときは、必ず連絡を添える
取り消して直すと、相手が前に見た内容と変わります。黙って差し替えると、相手は気づかないか、気づいて不信感を持ちます。
「先ほどお送りした見積に誤りがあり、修正版をお送りします」。この一文を添えるだけで、印象がまったく違います。
承認されたあとは直せません
相手が承認したあとは、取り消して編集する形にはなりません。条件が変わったら、新しい見積を作り直します。
これは正しい設計です。承認された内容が後から変わるほうが、よほど問題になります。
削除できない見積があります
公式には、署名済み・承認済み・支払い済みの見積は削除できないと記載されています。
記録として残す設計です
相手が承認したという事実は、あとから消せません。取引の証跡だからです。
整理のために消したくなっても、この種の見積は残る前提で考えてください。一覧が増えるのは、削除ではなく絞り込みで対処します。
復元できないものもあります
あわせて、オンライン決済または電子署名が有効な状態で削除された見積は復元できないとも書かれています。
つまり、消せるものの中には消したら戻らないものが含まれます。削除の前に、内容を書き出すか、画面を保存しておいてください。
承認方法は3つから選びます
公式には、承認方法として「印刷して署名」「電子署名」「署名なしで承認」の3つが挙げられています。
| 方法 | 向いている場面 |
|---|---|
| 印刷して署名 | 押印や社内回付が必要な相手 |
| 電子署名 | 先方も電子で完結できる場合 |
| 署名なしで承認 | 金額が小さく、口頭で決まる取引 |
決済を使うなら電子署名が必要です
公式には、HubSpotの決済機能を使用する場合は電子署名が必須と記載されています。
見積から決済まで一気に進める設計にするなら、承認方法は電子署名で固定になります。ここは選べません。
日本では「印刷して署名」が現実的な場面が多い
相手の会社に稟議や押印の慣習が残っていると、電子署名で完結できません。紙に出して回すことになります。
それ自体は問題ではありません。大事なのは、どの方法で承認されたかが記録に残ることです。
日本の商習慣との差
ここが、この記事でいちばん実務的な部分です。
1. 押印欄をどうするか
海外発のツールなので、押印を前提にした欄は標準では意識されていません。先方の経理が求める場合、対応が必要です。
方法は2つ。テンプレートに欄を作るか、承認後に自社の書式で正式な見積書を別途発行するか。
後者を選ぶ会社も多い。HubSpotの見積は商談の進行管理として使い、正式書類は従来どおり出す。この割り切りは現実的です。
2. 税の表示を先に決める
税抜で出すか、税込で出すか。社内で統一していないと、案件ごとに変わります。
先方から「税込ですか」と聞かれた時点で、1往復増えます。どちらを主に表示するかを決めて、書式に固定してください。
3. 見積番号の管理
自社に採番のルールがあるなら、それと合う形にしておいてください。会計ソフト側の記録と突き合わせるときに効きます。
番号が合わないと、あとから「この入金はどの見積のものか」を追えなくなります。最初の1件目で決めておく話です。
件数が少ないうちは、番号を手で管理しても回ります。ただ、年をまたいだときに崩れやすい。年度の頭に、採番の規則を見直す日を作っておいてください。
共有はリンクで行います
公式には、公開済みの見積を購入者と共有でき、「リンクをコピー」機能で見積のURLを共有できると記載されています。
PDFを送る文化との差
日本では、メールにPDFを添付する形が一般的です。リンクだけ送ると、相手が戸惑うことがあります。
とくに、先方が社内で回覧する場合。リンクを開けない人がいると、そこで止まります。
最初はリンクとPDFの両方で送る
相手の環境が分かるまでは、両方を送っておくのが無難です。リンクなら開いたかどうかが記録に残り、PDFなら確実に回覧できます。
数回やりとりすれば、その会社がどちらを好むか分かります。以降はそれに合わせてください。
有効期限を必ず入れる
公式には、見積の有効期限に関する項目があり、有効期限に基づいて絞り込めると記載されています。
期限は、相手のためではなく自社のため
期限を入れると、切れたものを一覧で抽出できます。これが追いかけのきっかけになります。
期限のない見積は、いつまでも宙に浮きます。そして、忘れられます。
期限の長さは、業種で決める
原価が動きやすい業種なら短く、検討に時間がかかる業種なら長く。ただし、3か月を超える期限は、実質的に期限がないのと同じです。
1〜10人の会社なら、1か月を基本にして、必要なら延長するのが扱いやすい。延長のたびに連絡する口実にもなります。
出す前のチェック5項目
金額を含む書類なので、出す前の確認を型にしておいてください。
- 宛先の会社名と担当者名……前の案件のまま残っていないか
- 金額と数量……単価×数量の計算が合っているか
- 税の表示……税抜か税込か、表記が統一されているか
- 有効期限……入っているか、現実的な長さか
- 自分で開いてみる……共有リンクを自分で開き、相手の見え方を確認する
チェックは、作った人以外が見るのが理想です
自分で作った見積の金額ミスは、自分では見つかりません。2人以上いる会社なら、出す前にもう1人が見る形にしてください。
見るのは30秒で構いません。金額の桁と、宛先の会社名だけ。この2つが、いちばん事故が大きい箇所です。
1人の会社なら、作ってから出すまでに一度離れてください。お茶を入れて戻ってから見ると、さっき見えなかったものが見えます。
5つ目を省かないでください
作成画面で見えているものと、相手が開いたときの見え方は違います。スマートフォンで開かれることも多い。
金額の桁が折り返している、項目名が途中で切れている。こういう見え方の問題は、自分で開かないと分かりません。
商品ライブラリを先に作る
見積を作るたびに、品名と単価を手で入力していませんか。ここを先に整えると、作成時間が半分以下になります。
最初に登録するのは5つで足ります
全部の商品を登録しようとすると、そこで止まります。直近1年で実際に売れたものを、上位5つだけ登録してください。
残りは、必要になったときに足します。売れていないものを先に登録しても、使われません。
単価が案件ごとに変わる場合
受託や工事のように、毎回金額が違う業種もあります。その場合は、単価をゼロで登録しておいて、見積のたびに入れてください。
金額が入らなくても、品名が統一されるだけで価値があります。「サイト制作」「ウェブ制作」「ホームページ制作」が混在しなくなります。
表記が統一されると、集計ができます
1年たつと、どの商品が何件出て、何件決まったかを数えられます。手入力だと、この集計ができません。
提案の内容を見直すときに、この数字が判断材料になります。よく出しているのに決まらない商品は、価格か説明のどちらかに問題があります。
見積と取引のつなぎ方
見積は、取引に紐づけて使います。ここを理解していないと、金額の管理が二重になります。
取引の金額は、見積から入れる
取引にも金額の欄があります。見積を作ったら、その金額を取引側にも反映させてください。
手で両方に入れると、片方を直し忘れます。見積を修正したのに、取引の金額が古いまま。これが起きると、売上の見込みがずれます。
見積を出した時点で、ステージを進める
取引のステージに「見積提出」を置いている会社は多い。見積を公開したら、その場でステージを動かしてください。
この記事で何度も書いているとおり、別の作業にすると忘れます。見積の公開とステージの更新は、1つの動作にしてください。
1つの取引に複数の見積を出すこともあります
条件を変えて2案出す、値引き後の版を出す。この場合、取引は1つのままで、見積が複数ぶら下がります。
取引を分けないでください。分けると、案件数が実態より多く見えます。成約率の計算も狂います。
断られたあとにやること
見積を出して、決まらなかった場合。ここに記録の価値があります。
見積は消さないでください
前述のとおり、承認されたものは消せません。そして、決まらなかったものも消さないほうがいい。
半年後に同じ相手から相談が来たとき、前回いくらで出したかが分かります。これがないと、毎回ゼロから見積もることになります。
断られた見積こそ、あとで効きます
決まらなかった見積は、見返されないまま埋もれます。ところが、この情報がいちばん使えます。
同じ相手から再度相談が来たとき。似た条件の別の会社に出すとき。前回の内容がそのまま下敷きになります。
とくに、値引きの履歴は必ず残してください。一度出した条件は、次回も期待されます。誰にいくらで出したかを覚えていないと、相手のほうが正確に覚えている、という事態になります。
失注の理由を1行残す
取引側に失注理由の項目を作っておき、そこに1行だけ残してください。予算、時期、他社に決定、連絡が取れなくなった。
とくに「時期」は重要です。時期が理由の失注は、将来の見込み客です。半年後に見返すリストが作れます。
金額の傾向を見る
1年ほどたつと、出した見積の金額と、決まった金額の傾向が見えます。いくらを超えると決まりにくいか。
この線が分かると、提案の組み立てが変わります。感覚ではなく、自社の実績から線を引けるようになります。
見積が開かれたかを見る
共有リンクで出す利点が、ここにあります。相手が開いたかどうかが分かります。
開かれていない=まだ見ていない
催促する前に、まずここを見てください。そもそも開かれていないなら、内容の問題ではありません。
メールが埋もれている、迷惑メールに入っている、担当者が不在。原因はこちら側では分かりませんが、「まだ見ていない」という事実は分かります。
開かれているのに返事がない場合
こちらは、内容を検討している段階です。金額か、条件か、社内の調整か。
この状態で「ご覧いただけましたでしょうか」と聞くと、相手は少し困ります。見たことは分かっているからです。
代わりに、「ご不明な点があればお答えします」と書いてください。答える姿勢を示すほうが、返事が来ます。
何度も開かれている場合
これは良い兆候です。社内で回覧されている可能性があります。
このタイミングで、追加の判断材料を1つ送ってください。似た規模の会社での進め方、納期の見通し。決裁者が見ている前提で、材料を足します。
ただし、見すぎないこと
開封の記録は便利ですが、気にしすぎると動けなくなります。1日に何度も確認するようなら、見る頻度を決めてください。
提出の翌営業日と、3営業日後。この2回で十分です。
まとめ
見積の機能は、出したあとの扱いに癖があります。
- 公開済みの見積は、承認の前なら「取り消し&編集」で直せます。黙って差し替えず、連絡を添えてください
- 署名済み・承認済み・支払い済みは削除できません。記録として残ります
- 承認方法は3つ。決済を使う場合は電子署名が必須です
- 押印・税表示・採番は、日本側の事情に合わせて先に決めてください。
- 有効期限を必ず入れる。切れたものを抽出できるのが、いちばんの価値です
対象プランの表記は変わることがあります。自分のアカウントで作成画面が開くかを、先に確認してください。
そして、機能が使えるかどうかより先に決めるべきことがあります。自社の見積は、どの書式で、誰の承認を経て、いつまで有効なのか。ここが決まっていれば、どのツールを使っても運用は回ります。決まっていないなら、ツールを入れても案件ごとにばらつきます。
よくある質問(FAQ)
公開した見積を直せますか
承認の前なら直せます。公式には、公開済みの見積は「取り消し&編集」のオプションで承認前に編集できると記載されています。相手が見ている内容と食い違わないよう、いったん取り消す仕組みです。
見積を削除できますか
署名済み・承認済み・支払い済みの見積は削除できません。またオンライン決済または電子署名が有効な状態で削除された見積は復元できないと記載されています。削除の前に内容を控えてください。
承認方法は選べますか
「印刷して署名」「電子署名」「署名なしで承認」の3つから選べます。ただし、HubSpotの決済機能を使用する場合は電子署名が必須と記載されています。
押印が必要な取引先にはどうしますか
テンプレートに欄を作るか、承認後に自社の書式で正式な見積書を別途発行する形になります。後者を選ぶ会社も多く、HubSpotの見積は商談の進行管理として使い、正式書類は従来どおり出す、という割り切りは現実的です。
どのプランで使えますか
更新日の時点で、公式ヘルプには対象として「Revenue Hub Professional, Enterprise」と記載され、コアシートの割り当てが必要とされていました。製品名や構成の表記は変わることがあるため、自分のアカウントで作成画面が開くかを確認してください。
見積を出したあと、相手が見たか分かりますか
共有リンクで出していれば、開かれたかどうかが分かります。開かれていないなら内容の問題ではないので、催促の前にそこを確認してください。何度も開かれている場合は社内で回覧されている可能性が高く、追加の判断材料を1つ送るタイミングです。
1つの取引に見積を複数ぶら下げてもいいですか
問題ありません。条件を変えて2案出す、値引き後の版を出す。この場合、取引は1つのままで見積が複数ぶら下がります。取引を分けると案件数が実態より多く見え、成約率の計算も狂います。
相手にはどう送りますか
公開済みの見積は、リンクをコピーして共有できます。ただし日本では添付ファイルで送る慣習が強いため、相手の環境が分かるまではリンクとPDFの両方を送っておくのが無難です。
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