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議事録をAIに作らせる前に決めること|会議を3種類に分け、残すのは4項目だけにする

会議の録音をAIに渡せば、文字起こしも要約も数分で終わります。そこまでは、いまやどのツールでもできます。ところが実際に運用を始めると、別の問題が出てきます。出てきた議事録が長すぎて誰も読まない、録音してよいか毎回迷う、そして法律で作成が定められている議事録と、ただの会議メモが混ざる。

この3つは、ツールを変えても解決しません。議事録は何のために残すのか、そして録音してよい会議とよくない会議はどこで分かれるのかを先に決める必要があります。この記事では、その決め方と、決定事項だけを残す型を説明します。

この記事でわかること

  • 会議を3種類に分け、録音してよいものとそうでないものを先に決める方法
  • 議事録に残すのは4項目だけという型と、AIに渡す指示の書き方
  • 株主総会や取締役会の議事録が会社法で別に定められていること。備置きの年数と、AIの出力をそのまま使えない理由

ムダの現状:作る手間は減ったが、読む手間が増えた

文字起こしと要約を自動化した会社で、よく起きる変化があります。議事録を作る時間は大幅に減った。ところが、その議事録が読まれなくなった。

原因ははっきりしています。AIが作る議事録は、会議で話されたことを網羅しようとするからです。60分の会議から3,000字の要約が出てくる。人が書いていたころは、要らない話を落として400字にまとめていた。その取捨選択が消えたことで、読む側の負担が増えています。

議事録を読む人が知りたいのは4つだけ

会議の後に議事録を開く人が探しているものを並べると、次の4つに収まります。

探しているもの なぜ必要か 機械に作れるか
決まったこと 自分の仕事が変わるか判断する 候補は作れる。確定は人
誰が、いつまでに 自分の担当かを確かめる 候補は作れる
決まらなかったこと 次に何を持ち込むか決める 作れる
なぜそう決めたか 半年後に経緯を辿る 要約はできるが精度が落ちる

逆に言えば、誰が何を発言したかの逐語的な記録は、ほとんどの会議で不要です。必要なのは、後述する法定の議事録と、後から経緯を検証する可能性が高い会議だけです。

機械に渡せる部分と、人に残す部分

工程 中身 誰がやるか
録音・文字起こし 音声をテキストにする 機械
4項目の抽出 決定・担当・保留・理由を拾う 機械。候補を出す
決定事項の確定 本当に決まったかを判断する 人。議長
公開範囲の判断 誰まで見てよいかを決める 人
法定議事録の作成 法令の要件を満たす形にする 人。AIの出力を流用しない

3つ目の「決定事項の確定」が、この仕組みで最も重要です。会議では「では、その方向で」という曖昧な終わり方がよくあります。AIはそれを決定として拾いますが、実際には決まっていないことがあります。ここを人が判断しないと、決まっていないことが決定として記録されます。

スキームの全体図:会議を3種類に分ける

会議を3種類に分ける 分けてから、録音の可否を決める A 法定の議事録が要る会議 株主総会・取締役会 AIの出力を流用しない。法令の要件で作る B 決定を残す会議 部門の定例・プロジェクトの進行 録音してよい。4項目だけ残す C 記録を残さない会議 人事の面談・評価・相談 録音しない。メモも本人の手元に留める Bだけを自動化する 全部を自動化しようとしない AとCは、別の扱いにする 法定議事録の備置き ・取締役会の議事録等は本店に10年間 ・株主総会の議事録も本店に10年間 出典: 会社法 第369条・第371条・第318条

この3分類が、この記事の中心です。すべての会議を同じ仕組みに乗せようとすると、必ずどこかで破綻します。Bだけを自動化し、AとCは別扱いにしてください。

必要なツールと費用(2026年9月22日時点)

必要なもの 用途 費用の考え方
会議ツールの録音機能 音声の取得と文字起こし 既存の契約に含まれる場合が多い。確認する
生成AI 4項目の抽出 各社の料金表を確認日つきで参照する
議事録の置き場所 検索でき、権限を分けられる場所 既存の共有ドライブで足りる
会議の棚卸し 3分類の振り分け 0円。半日で終わる

専用のツールを導入する前に、いま使っている会議ツールの機能を確認してください。文字起こしまでは標準で備わっていることが多く、追加で必要なのは4項目を抽出する部分だけという場合があります。

導入手順:残す項目を4つに絞る

Step 1:定例会議を棚卸しして、3つに振り分ける

まず、社内で定例的に開かれている会議を一覧にします。会議名、頻度、参加者、時間の4列で十分です。カレンダーの定期予定を書き出せば、半日で作れます。

そのうえで、A・B・Cに振り分けます。判断の基準は次のとおりです。

Aは、法令で議事録の作成が定められている会議です。株主総会と取締役会がこれにあたります。Bは、決定事項が発生し、それを参加していない人に伝える必要がある会議です。部門の定例、プロジェクトの進行会議がここに入ります。Cは、個人の評価や処遇、健康、人間関係に関わる会議です。人事面談や相談の場がこれにあたります。

迷ったらCに入れてください。後からBに移すのは簡単ですが、一度録音してしまったものは戻せません。

Step 2:残す4項目を決める

Bの会議について、議事録に残すのは次の4項目だけにします。

項目 書き方 分量の目安
決まったこと 1件1行。主語と述語を省かない 3件から5件
誰が・いつまでに 氏名と日付。部署名だけにしない 決定ごとに1行
決まらなかったこと 何が足りなくて決まらないかも書く 1件から3件
そう決めた理由 却下した案と、その理由を1行 重要な決定のみ

4項目目は、半年後にいちばん価値が出ます。「なぜこの方式にしたのか」を後から辿れると、同じ議論を繰り返さずに済みます。却下した案を書き残すのが要点です。採用した案だけでは、検討の幅が伝わりません。

Step 3:AIへの指示を書く

文字起こしから4項目を抽出させる指示は、次の形にします。ここで重要なのは、抽出してほしいものを書くだけでなく、してほしくないことを明示することです。網羅するなという指示が無いと、AIは会議の流れを順に並べた長い要約を返します。

以下は会議の文字起こしです。次の4項目だけを抽出してください。
会議で話されたことを網羅しないでください。
1. 決まったこと
   結論が出たものだけを書く。「検討する」「持ち帰る」は決定に含めない。
   1件1行。主語と述語を省略しない。
2. 誰が、いつまでに
   決定ごとに、担当者の氏名と期限を書く。
   発言から特定できない場合は「担当者が特定できていません」と書く。
3. 決まらなかったこと
   議題に上がったが結論が出なかったものを書く。
   何が足りなくて決まらなかったかが分かる場合は、それも書く。
4. そう決めた理由
   重要な決定について、却下された案とその理由を1行で書く。
   文字起こしに理由が出ていない場合は、この項目を空にする。
守ること:
- 文字起こしに無いことを補わない
- 発言者の意図を推測して言い換えない
- 数値・日付・固有名詞は、文字起こしのとおりに書く
- 「その方向で」「検討します」のような曖昧な終わり方は、決定に入れず
  3の「決まらなかったこと」に入れる
【文字起こし】
(ここに貼る)

最後の指定が効きます。会議では「では、その方向で」と言って終わる場面がよくあり、AIはそれを決定として拾います。曖昧な終わり方を保留側に寄せると、議事録を見た議長が「これは決めたはずだ」と気づいて確定させる流れが生まれます。逆は起きません。

用語の一覧を、指示に添える

自社の製品名、略語、取引先の社名は、文字起こしの段階で誤変換されます。そのままAIに渡すと、誤った固有名詞が決定事項に入ります。

対策は単純で、頻出する固有名詞の一覧を作り、指示文の末尾に添えることです。20語もあれば十分です。「次の語は、文字起こしで誤変換されている可能性があります。文脈から判断して正しい表記に直してください」と書き、一覧を貼ります。

この一覧は、運用しながら育ててください。議事録を確認した議長が誤変換を見つけたら、その語を追加する。3か月も回せば、ほとんどの誤変換が消えます。最初から完璧な一覧を作ろうとしないのが要点です。

Step 4:議長が確定させてから配る

AIの出力は下書きです。そのまま配らないでください。議長が次の3点を確認してから配ります。

1つ目、決定事項が本当に決まったものか。2つ目、担当者と期限が埋まっているか。3つ目、社外や他部署に出してはいけない内容が混ざっていないか。

この確認は、会議の直後5分で終わります。確認する人を決めずに自動配信にすると、決まっていないことが決定として流れます。そこから戻すほうが、はるかに手間がかかります。

Step 5:録音データの保存期間を決める

文字起こしが済んだら、元の音声をいつまで残すかを決めてください。決めずに置くと、共有ドライブに数年分の会議音声が蓄積します。容量の問題より深刻なのは、誰がいつでも過去の会議を聞ける状態が残り続けることです。発言のしにくさは、ここから生まれます。

議事録が確定した時点で音声を消す運用が、最も単純です。経緯の検証が必要な会議だけ、期間を決めて残す。残す場合は、アクセスできる人の範囲も同時に決めてください。

配る先は、参加者だけにしない

議事録の価値は、会議に出ていない人に届いて初めて生まれます。参加者だけに送る運用だと、決定事項が部門の外に伝わりません。

配布先は、会議ごとに固定で決めてください。そして関係する部署の責任者を必ず入れること。後から「聞いていない」という話が出る原因の多くは、配布先が参加者に閉じていることにあります。

ただし、分類Cに近い内容が混ざる会議では、配布先を広げる前に内容を確認してください。決定事項だけを残す型にしていれば、この確認は数十秒で終わります。

現場の合意の取り方:録音への抵抗にどう答えるか

会議の録音を始めると言うと、反対が出ます。多くは道具への抵抗ではなく、発言のしにくさへの懸念です。

反対の中身 背景 答え方
言いたいことが言えなくなる 発言が逐語で残る不安 残すのは4項目だけで、誰が何を言ったかは記録しないと示す
音声が後から使われないか 保存期間と閲覧範囲が不明 確定後に消す運用と、残す場合の範囲を先に決めて開示する
評価に使われないか 発言量が測られる懸念 発言量や回数の集計は行わないと明言する

「誰が言ったか」は残さないと決める

いちばん効くのは、議事録の型そのもので答えることです。4項目のどこにも、発言者の名前は入りません。入るのは、決定の担当者としての氏名だけです。

この違いを説明してください。誰が何を主張したかは残さない。誰が何をやるかは残す。この線を最初に引いておくと、議論の場での発言は自由なまま、実行の責任だけが明確になります。

録音の開始は、毎回口頭で伝える

録音を始めるときは、毎回その場で「録音します」と伝えてください。案内メールに書いてあるから省略する、という運用にしないこと。参加者が毎回同じ顔ぶれであっても、省略しないでください。伝え続けることが、この仕組みが隠れて動いていないことの証明になります。

手間に見えますが、この一言があるかないかで、参加者の受け取り方が変わります。特に社外の参加者がいる会議では、開始前に伝えて、異議がないことを確認してから始めてください。

失敗パターンと限界:法定の議事録は別物

会社法が定める議事録には、別の要件がある

分類Aの会議については、法令が議事録の作成を定めています。AIの出力をそのまま流用してはいけない理由が、ここにあります。

会社法第369条第3項は、取締役会の議事について、法務省令で定めるところにより議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならないと定めています。同条第4項は、電磁的記録で作成した場合について、法務省令で定める署名または記名押印に代わる措置をとらなければならないとしています。

さらに同条第5項は、取締役会の決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する、と定めています。議事録の記載が、法的な推定につながるということです。AIが拾い損ねた異議が記録から落ちると、実体と違う推定が働きかねません。

株主総会についても、会社法第318条第1項が、法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならないと定めています。

備置きの年数も定められている

作成した議事録の保管についても定めがあります。会社法第371条第1項は、取締役会設置会社は取締役会の日から十年間、議事録等をその本店に備え置かなければならないとしています。株主総会についても、第318条第2項が株主総会の日から十年間、本店への備置きを定めています。同条第3項は、支店への写しの備置きについて五年間と定めたうえで、電磁的記録で作成している場合の例外を置いています。

つまり、分類Aの議事録は作り方も保管期間も法令で決まっているため、Bの会議と同じ運用に乗せることはできません。分類Aは、従来どおり人が作成し、法令の要件を確認したうえで保管してください。自社の機関設計によって適用される規定が異なるため、判断に迷う場合は専門家に確認することを勧めます。

録音そのものが向かない場面

法定議事録とは別に、録音を避けるべき場面があります。分類Cに入れた会議がそれですが、境界が曖昧なケースもあります。

たとえば、部門の定例会議の中で、特定の社員の勤務状況や体調が話題に上ることがあります。会議そのものはBでも、その場面だけは記録に残すべきではありません。議長が「ここからは録音を止めます」と言って中断できる運用にしておいてください。止められる仕組みがないと、話題そのものが避けられるようになり、必要な情報が共有されなくなります。

取引先との商談を録音する場合も、社内会議とは別の配慮が要ります。相手方の同意なく録音して、その内容を社内で共有することの是非は、取引の性質や相手との関係によって判断が分かれます。開始前に伝え、異議がないことを確認してから始めてください。

この仕組みが向かない場合

会議の目的が「決めること」ではなく「共有すること」である場合、議事録の自動化はあまり効きません。決定事項が発生しないため、4項目のうち3つが空になります。この場合はむしろ、その会議を資料の配布に置き換えられないかを検討するほうが効果があります。

また、専門用語や固有名詞が多い会議では、文字起こしの精度が落ちます。誤変換が4項目に紛れると、決定事項そのものが間違って伝わります。用語の一覧を用意して指示に添えるか、精度が上がるまでは人の確認を厚くしてください。

ツールを替えても直らない問題

文字起こしの精度や要約の質に不満があるとき、別のツールを試したくなります。ただ、次の3つはツールを替えても直りません。

1つ目、会議で結論が出ていないこと。決まっていないものは、どんなツールでも決定として書けません。2つ目、担当者が決まっていないこと。会議の場で「誰がやるか」を言わずに終われば、抽出のしようがありません。3つ目、参加者が多すぎて発言が重なること。音声そのものが分離できていなければ、精度は上がりません。

議事録の自動化を始めると、この3つが数字として見えるようになります。それは仕組みの失敗ではなく、会議の問題が可視化されただけです。ツールを替える前に、会議の終わり方を変えられないかを検討してください。

効果の測り方

数字 測り方 いつ見るか
議事録の作成時間 会議終了から配布までの作業時間 導入前後で比較
議事録の文字数 配布したものの字数を数える 毎月
担当者が空欄の割合 決定のうち担当が特定できない件数 毎月

2つ目の文字数は、短いほど良い数字です。目安は1回の会議あたり400字から600字。ここが1,000字を超えているなら、網羅しようとしている可能性があります。指示文の「網羅しないでください」が効いているかを確認してください。

3つ目が、実は会議そのものの質を示します。担当者が特定できない決定が多い会議は、決めたつもりで誰も動かない会議です。議事録の自動化は、この問題を可視化します。数字が高いまま続くなら、直すべきは議事録ではなく会議の進め方です。

まとめ

議事録の自動化でつまずくのは、すべての会議を同じ仕組みに乗せようとするからです。会議は3つに分かれます。法令で議事録の作成が定められている会議、決定を残す会議、記録を残さない会議。自動化するのは2つ目だけです。

残す項目は4つに絞ります。決まったこと、誰がいつまでに、決まらなかったこと、そう決めた理由。AIへの指示では「網羅しない」ことと、「その方向で」のような曖昧な終わり方を決定に入れず保留側に寄せることを明示します。出力は下書きとして扱い、議長が5分で確定させてから配ります。

合意は、型そのもので取ります。4項目のどこにも発言者の名前は入らない。誰が何を主張したかは残さず、誰が何をやるかだけを残す。録音の開始は毎回口頭で伝える。そして、株主総会や取締役会の議事録は会社法に別の定めがあり、作成の方法も本店への備置きの年数も決まっています。この分類は、従来どおり人が作ってください。

よくある質問

会議ツールの要約機能をそのまま使ってはいけませんか

使って構いませんが、出てくる要約が網羅型になっていないかを確認してください。話された内容を順に並べる形式だと、読む負担が残ります。4項目に絞れるなら標準機能で十分です。絞れない場合に、文字起こしだけを取り出して別途抽出する形になります。

人事面談を録音して記録に残したいのですが

この記事の分類ではCにあたり、自動化の対象から外すことを勧めています。評価や処遇、健康に関わる内容が含まれ、録音されている状態では本人が率直に話せなくなるためです。記録が必要な場合は、話した内容ではなく合意した事項だけを、双方が確認できる形で残してください。

取締役会の議事録もAIで下書きを作ってはいけませんか

下書きの参考にすること自体を禁じる趣旨ではありませんが、そのまま完成版にはできません。会社法は法務省令で定めるところにより作成することを求め、書面の場合は出席した取締役及び監査役の署名または記名押印を定めています。また、議事録に異議をとどめない取締役は決議に賛成したものと推定されるため、記載の正確さが法的な意味を持ちます。自社の機関設計に応じた要件は専門家に確認してください。

録音データはどれくらい残すべきですか

議事録が確定した時点で消す運用が最も単純です。経緯の検証が必要な会議だけ、期間を決めて残してください。残す場合は、アクセスできる人の範囲も同時に決めます。期間を決めずに置くと、共有ドライブに数年分の音声が蓄積し、後から整理するのが困難になります。

文字起こしの精度が低くて使えません

まず、マイクの位置と発言の重なりを確認してください。複数人が同時に話す場面が多いと、精度は大きく落ちます。そのうえで、自社で頻出する専門用語や製品名の一覧を用意し、指示文に添えてください。それでも精度が上がらない会議は、当面この仕組みの対象から外す判断も必要です。

議事録が短すぎると言われた場合は

誰から言われたかを確認してください。会議に出ていなかった人が「経緯が分からない」と言うなら、4項目目の「そう決めた理由」を厚くします。会議に出ていた人が言うなら、多くの場合は自分の発言が載っていないことへの違和感です。発言者名を残さない設計であることを、あらためて説明してください。

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