
準備はしている。ツールも試した。記録も取り始めた。でも、まだ1件も納品していない。
この状態が数か月続く人は珍しくありません。理由は能力ではなく、「練習と本番の境目」が決まっていないことにあります。境目がないと、いつまでも練習を続けられてしまう。
この記事では、最初の1件を出すまでに何を用意して、どこで線を引くかを書きます。用意するのは3点だけです。それ以上は、1件目には要りません。
各プラットフォームの仕様やルールは変わるため、応募の前にご自身で公式ヘルプをご確認ください。
止まっている理由は、たいてい3つのどれか
まず、自分がどこで止まっているかを特定します。対処が違うからです。
| 止まり方 | 口に出る言葉 | 実際の原因 |
|---|---|---|
| 準備が終わらない | 「もう少し慣れてから」 | 終わりの条件を決めていない |
| 品質が不安 | 「まだ人に出せる水準じゃない」 | 比べる相手を間違えている |
| 時間が読めない | 「納期に間に合うか分からない」 | 1件やってみていない |
3つとも、1件作ってしまえば同時に解けます。準備の終わりが決まり、水準がわかり、時間が測れる。
逆に、1件も作らないまま準備を続けても、この3つは1つも解けません。だから最初の1件なのです。
用意するのは3点だけ
① 見せられるもの1つ
いちばん重要です。そして、ここでつまずく人が多い。
「架空の依頼」で作ってよい
実績がないから見せるものがない、という順番で止まります。でも、最初の1つは自分で依頼を想定して作ればいいのです。
やり方はこうです。
- 受けたい仕事の募集文を、実際に3件読む(応募はしない)
- そこに書かれている条件で、自分に発注したと仮定する
- その条件どおりに1本作る
2番目が要点です。自分で条件を決めると甘くなります。実在の募集文の条件をそのまま使ってください。文字数、形式、納期の目安。これで「実務と同じ制約で作ったもの」になります。
作るのは1つ。ただし完成させる
3つ作って中途半端にするより、1つを納品できる状態まで仕上げてください。「納品できる状態」とは、自分で通して確認し終わっている状態です。
確認のやり方は、扱う仕事によって違います。文章なら事実確認とAIっぽい言い回しの除去、動画なら目視での通し再生、文字起こしなら数字と固有名詞の聞き直し。それぞれ別の記事で詳しく書いています。
架空だと明示する
1つだけ守ってください。応募の際にこれを出すときは、「これは練習で作ったもので、実際の依頼ではありません」と書き添える。
実績があるように見せると、そこで信用を失います。そして、正直に書いても不利にはなりません。むしろ「この条件で作ってみました」と書けること自体が、準備している証拠になります。
② 自分の手順書1枚
①を作りながら、同時にこれを書きます。あとから思い出して書くと、抜けます。
書くのは2列だけ
| 工程 | かかった分 |
|---|---|
| 依頼内容を読む・不明点を洗う | 10分 |
| 調べる | 30分 |
| 構成を作る | 8分 |
| 本文を作る | 35分 |
| 事実確認と直し | 45分 |
| 納品前チェック | 10分 |
| 合計 | 138分 |
この表があると、③の応募文に「1本あたり約2時間20分で作れます」と書けます。これが書けるかどうかで、応募文の説得力がまったく変わります。
時間の測り方そのものはAI副業は何から始めるかに、集計を自動にする手順はスプレッドシートの集計をAIに任せるに書きました。
手順書は、2件目で効く
1件目は手順書がなくても作れます。でも2件目のとき、手順書があると思い出す時間がゼロになります。
そして3件目以降、この手順書が「どこを自動化するか」の判断材料になります。いちばん長い工程が一目でわかるからです。
③ 応募文の型1つ
毎回ゼロから書くと、応募が面倒になって止まります。型を1つ作ります。
入れる5要素
- 募集文のどこを読んだか(1文。テンプレートを送っていないことが伝わる)
- その条件で作ったものへのリンク(①。練習で作ったものだと明記)
- 1件あたりの所要時間(②から出す)
- AIを使うかどうか(後述)
- 確認したいこと1〜2点(募集文に書かれていない条件)
長く書く必要はありません。むしろ長いと読まれません。5要素が入っていれば、10行で足ります。
AI利用は、応募の時点で書く
これは省かないでください。プラットフォームによってAI利用の方針が違い、募集文に書かれていないこともあります。
書き方はこれで足ります。
作業の一部でAIを使用します(構成の叩き台と初稿の作成)。事実確認と最終的な文章は自分で行います。AIの利用について制限がありましたら、応募の段階でお知らせください。
先に言っておけば、あとで揉めません。各社の方針はAIライティング副業のやり方に整理しています。
応募文の実例
型だけ示しても書きにくいので、10行の実例を出します。そのまま使えるものではなく、要素の並びを見るためのものとして読んでください。
はじめまして。募集内容を拝見しました。「専門用語を使わず、初めての人にも分かる書き方で」という点に合わせて書けると思い、応募しました。
同じ条件を想定して1本作ってみましたので、こちらをご覧ください。(リンク)
※これは練習として自分で作ったもので、実際の依頼ではありません。工程ごとに時間を測っており、1本あたり2時間20分ほどです。やり取りや修正を含めると3時間程度を見込んでいます。
作業の一部でAIを使用します(構成の叩き台と初稿)。事実確認と最終的な文章は自分で行います。AIの利用に制限がありましたら、この段階でお知らせください。
2点、確認させてください。
・参考にしてよい情報源の指定はありますか
・納品の形式にご指定はありますか
この10行に、5要素が全部入っています。
| 要素 | 対応する箇所 | これがないと |
|---|---|---|
| 募集文を読んだ証拠 | 1段落目の引用部分 | テンプレートを送っていると見られる |
| 作ったものへのリンク | 2段落目 | 実力の判断材料がない |
| 所要時間 | 3段落目 | 納期の相談ができない |
| AI利用の申告 | 4段落目 | あとで発覚すると問題になる |
| 確認したいこと | 5段落目 | 着手後に手戻りが起きる |
最後の段落は、2点までにしてください。多いと「手がかかりそう」と見られます。本当に着手できない点だけを聞きます。
書かないほうがいいこと
- 長い自己紹介 — 経歴より、作ったものを見せるほうが速い
- 「頑張ります」「精一杯」 — 判断材料になりません
- 「初心者ですが」 — 書かなくても分かりますし、書くと不安にさせます
- 値下げの申し出 — 1件目でここを削ると、2件目以降も上げにくくなります
3つめは迷うところですが、実績がないことは、作ったものを見せれば伝わります。わざわざ不安を足す必要はありません。
ここで線を引く:練習と本番の境目
3点がそろったら、次の1件から本番です。「もう少し慣れてから」はここで終わりにします。
境目を、条件ではなく日付で決める
「納得できる水準になったら」という決め方は機能しません。水準はいつまでも上がるからです。
日付で決めてください。「今週の日曜までに3点を用意して、翌週の月曜に1件応募する」。これなら終わります。
3点が完璧でなくても応募してください。応募して落ちても、失うものはありません。応募しないと、何も分かりません。
1件目の選び方
| 選ぶ基準 | 理由 |
|---|---|
| 自分が詳しい分野 | 詳しくない分野は確認が終わらず、時間が読めない |
| 納期に余裕がある | 1件目は必ず想定より時間がかかる |
| 分量が小さい | 大きい案件で詰まると、取り返しがつかない |
| やり取りの条件が明記されている | 曖昧な募集は1件目に向かない |
1件目は、金額で選ばないでください。1件目の目的は「通して終わらせること」で、収入ではありません。
高い案件に応募して落ち続けるより、小さい案件を1件やり切るほうが、次につながります。手順書に実際の数字が入るからです。
1件目を出す前に、必ず確認すること
応募の前に、作業そのものとは別に確認しておく項目があります。ここを飛ばすと、受注してから困ります。
① 会社の規則を先に読む
副業が認められているか、届出が要るか。これは応募より前です。受注してから確認して「できませんでした」となると、相手にも迷惑がかかります。
就業規則のどこを見るか、届出の要否といった副業の一般論は、このメディアでは扱っていません。ここでは、AIと作業時間の話に絞ります。
② やり取りの手段を決めておく
プラットフォーム内のメッセージだけか、メールも使うか。ここが決まっていないと、連絡が分散して見落とします。
1件目のうちに、副業用のメールアドレスを1つ用意しておくと後が楽です。私用と混ざらず、経費の区分でも有利になります(AI副業の確定申告と経費)。
③ 断る条件を先に決める
意外に思われるかもしれませんが、これが効きます。1件目は「もらえるなら何でも」と思いがちですが、受けてはいけない案件があります。
| こういう募集 | なぜ避けるか |
|---|---|
| 作業内容が具体的に書かれていない | 着手してから想定と違うことが判明する |
| 納期が異常に短い | 1件目は必ず想定より時間がかかる |
| 先に登録料や教材費が必要 | 公的機関が注意喚起している型に当たる |
| プラットフォーム外での直接取引を求められる | トラブル時の保護が受けられない |
| 「テスト」が無報酬で分量が多い | テストの範囲が明記されているかを見る |
3つめについては、消費者庁が実際に注意喚起を出しています。判断材料は生成AI副業が「稼げない」と言われる理由にまとめました。
この5つを先に決めておくと、迷ったときに即断できます。迷っている時間がいちばんもったいない。
納品したあとにやる3つ
1件目は、納品して終わりではありません。むしろここからが、2件目を速くする作業です。
① 手順書に、実際の数字を書き込む
練習のときと、実際の案件で、どこが違ったか。たいていは「やり取り」と「修正対応」が増えています。
この差分を書いておくと、2件目からの見積もりが現実に合うようになります。「1本あたり2時間20分」が「実際には3時間」だった、という数字を持っているかどうかで、次の応募文が変わります。
② 実績として使ってよいかを確認する
納品のタイミングで聞いておくのがいちばん自然です。
今回の成果物について、実績として掲載させていただくことは可能でしょうか。難しい場合は、案件の種類と分量のみの記載に留めます。
後から聞き直すより、この場で聞くほうが手間がありません。断られても、「案件の種類と分量」だけなら書けることが多いです。
③ 見落とした項目を、チェックリストに足す
修正の依頼が来たら、それは次回のチェック項目です。「指定の形式と違った」「数字が1つ間違っていた」。何を見落としたかを1行書いて、確認リストに足してください。
同じ種類の見落としを2回やったら、注意不足ではなく手順に穴があります。手順のほうを直します。
1件目でやりがちな失敗
想定より時間がかかることを、想定していない
これは全員がやります。1件目は、練習で作ったときの1.5倍から2倍かかると思ってください。
理由は、練習にはなかった工程が入るからです。依頼主とのやり取り、指定の形式への変換、確認の返信待ち。作業そのもの以外の時間が発生します。
だから、納期に余裕がある案件を選びます。
途中で確認せず、最後にまとめて出す
1件目でいちばん怖いのが、方向性の取り違えです。全部作ってから「そういう意味ではなかった」となると、まるごとやり直しです。
対策は単純で、作り始めてすぐ、方向性だけ確認することです。
着手しました。「初めての人がつまずく3点を先に挙げて、そのあとで手順を並べる」という構成で進めていますが、認識は合っていますでしょうか。違っていればこの段階で修正します。
この1通で、やり直しのリスクがほぼ消えます。相手にとっても、途中経過が見えるのは安心材料です。
納品して終わりにする
納品したら、手順書に実際の数字を書き込んでください。練習のときと、実際の案件で、どこが違ったか。
たいていは「やり取り」と「修正対応」が増えています。その分を含めた時間が、2件目からの見積もりになります。
2件目で足すもの
1件目を終えたら、次に足すのはこの順です。先に全部そろえようとしないでください。
| 順番 | 足すもの | 理由 |
|---|---|---|
| 2件目 | 実績としての見せられるもの(1件目の納品物) | 依頼主の許可が取れた範囲で。架空のものより強い |
| 3件目 | 納品前チェックリスト | 1件目で見落とした項目を入れる |
| 5件目 | いちばん長い工程の自動化 | 手順書に数字が5件ぶんたまってから |
| 10件目 | ポートフォリオのまとめ | ここで初めて「まとめる」意味が出る |
1件目の納品物を実績として見せる場合は、必ず依頼主に確認してください。公開できない案件もあります。「実績として掲載してよいか」を納品時に聞いておくと、後から聞き直す手間がなくなります。
まとめ
最初の1件を出すまでに用意するのは3点だけです。
- 見せられるもの1つ。実在の募集文の条件で、架空の依頼として作る。練習で作ったものだと明記する
- 自分の手順書1枚。工程と所要時間の2列。①を作りながら書く
- 応募文の型1つ。募集文のどこを読んだか/作ったものへのリンク/所要時間/AI利用の申告/確認したいこと
そして、境目は日付で決めてください。「納得できる水準になったら」では終わりません。3点が完璧でなくても応募する。落ちても失うものはありません。
1件目は金額で選ばず、自分が詳しい分野で、納期に余裕があって、分量が小さいものを選ぶ。目的は収入ではなく「通して終わらせること」です。
よくある質問
実績がないのに応募していいのでしょうか
問題ありません。募集する側も、全員が実績豊富な人ばかりだとは思っていません。大事なのは、「この条件で作るとこうなります」を見せられることです。それが①の見せられるもので、架空の依頼で作ったものでも成立します。実績があるように偽るのだけは避けてください。
何件応募すればいいですか?
件数の目安は書きません。プラットフォームや分野で大きく変わるので、意味のある数字が出せないからです。代わりに提案できるのは、5件応募して1件も反応がなければ、応募文か①を見直すという区切りです。数を増やす前に、中身を変えるほうが早いことがあります。
AIを使っていると書くと、不利になりませんか?
プラットフォームの方針によります。禁止している場合は、書いても書かなくても応募すべきではありません。禁止していない場合、先に申告したことで不利になるより、後から発覚するほうが問題が大きいです。各社の公式の方針は事前に確認してください。
1件目の報酬はいくらが妥当ですか?
この記事では金額に触れません。分野・分量・プラットフォームで大きく変わり、一律の目安が意味を持たないからです。単価の考え方は、姉妹サイトのWebライター副業の文字単価の相場のように、分野ごとに調べたものを参考にしてください。1件目に関しては、金額より「終わらせること」を優先することをおすすめします。
練習で作ったものが、自分でも良くないと感じます
それでも出してください。比べる相手を間違えている可能性が高いです。比べるべきは「プロの完成品」ではなく、「その募集文が求めている水準」です。募集文を読み返して、そこに書かれている条件を満たしているかだけ確認してください。満たしていれば出せます。
途中で「できない」と分かったらどうしますか?
早く伝えてください。納期の直前に言うのがいちばん迷惑がかかります。着手して2〜3割の段階で違和感があれば、その時点で相談する。相手にも対処する時間が残ります。1件目でこれができると、次につながることもあります。
今週の日曜までに、3点をそろえる
手順書に入れる「工程ごとの所要時間」は、記録の付け方を決めておくと1件目から取れます。最初の30日の進め方をまとめた記事も参考にしてください。