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営業リストの重複をどう潰すか|法人番号を軸にした名寄せと、情報を失わない統合の手順

重複を放置すると、何が起きるか

営業リストの重複は、放っておくと必ず増えます。複数のデータ源から集めれば混ざりますし、手入力でも表記が揺れます。

そして重複は、見えにくい形で損をします。

起きること 損の中身
同じ会社に2回アプローチする 相手にとっては反復。管理していない会社だと判断される
断られた記録が片方にしか無い もう一方の行から、断られた相手に再度送ってしまう
件数が実態より多く見える 母集団を実際より大きく見積もり、計画が狂う
成果の数字が薄まる 返信率の分母が膨らみ、改善の判断を誤る

とくに2つ目が重いです。断られた事実は、重複したもう一方の行には残りません。そして重複に気づいていないので、誰も照合しません。

この記事では、重複を潰す手順と、そもそも作らない設計を書きます。専用のツールを前提にせず、スプレッドシートでも回せる形にしています。

名寄せの4段階1 キー法人番号を最優先にする2 正規化法人格・全半角記号を揃える3 判定支店と本社を分けるか決める4 統合履歴を足し属性は新しい方よくある失敗社名だけで突き合わせて、同名の別会社をまとめてしまう古い行を消して、そこにあった断りの記録ごと失う法人番号を数値で読み込み、指数表記に化けて照合できない重複そのものより、重複を消す作業で情報を失うほうが痛い。消す前に、何を残すかを決めておく。そして入口で作らない設計のほうが、後から潰すより安い。

名寄せの4段階と、よくある失敗。3つとも実際に起きる。

照合のキーを1つ決める

最初にやることは、何が一致したら同じ会社とみなすかを決めることです。ここを決めずに作業を始めると、途中で基準が変わります。

法人番号を最優先にする

国税庁が公表している13桁の法人番号は、法人ごとに1つです。表記の揺れがないので、照合のキーとして最も確実です。

リストに法人番号が入っていないなら、先に付与する作業をしたほうが、結果的に速く終わります。法人番号公表サイトから都道府県単位でCSVをダウンロードし、社名と所在地で突き合わせます。

法人番号は必ず文字列として扱う

13桁の数値として表計算ソフトに読み込むと、指数表記に化けて照合できなくなります。先頭の0が落ちることもあります。読み込みの時点で「文字列」を指定してください。化けてから直すのは手間です。

法人番号が無い相手をどうするか

個人事業主、法人格のない団体、支店単位の行。これらには法人番号が付きません。

このときは、代替のキーを決めます。優先順位は次のとおりです。

  1. Webサイトのドメイン。表記の揺れがなく、会社と1対1に近い
  2. 代表電話番号。ハイフンや市外局番の表記を揃えれば使える
  3. 正規化した社名+所在地の市区町村。最後の手段

3つ目を単独で使うのは避けてください。同名の会社は珍しくありません。市区町村まで一致しても、別の会社であることがあります。

法人番号を付ける作業の手順

付与の作業自体は、次の順で進めます。

  1. 対象エリアの都道府県分を、法人番号公表サイトからCSVでダウンロードする
  2. 読み込み時に、法人番号の列を文字列に指定する
  3. 公表データ側にも、正規化した社名の列を作る。自社リスト側と同じ処理をかける
  4. 正規化した社名と、所在地の市区町村で突き合わせる
  5. 1対1で一致した行だけを確定させ、1対多になった行は別に出す

5つ目が重要です。同じ市区町村に同名の法人が複数ある場合、自動で確定させてはいけません。この行は目で確認します。

付与率は、はじめは7割から8割程度に収まることが多いです。残りは個人事業主か、社名の表記が大きく違うか、すでに商号が変わっている会社です。100パーセントを目指さず、付いた分だけ確実に使ってください。

キーは1つに絞らない

実務では、複数のキーで段階的に照合します。まず法人番号で一致するものを確定し、残った行をドメインで照合し、さらに残った行を社名で照合する。

この順にすると、確実なものから確定していくので、判断が必要な行が減ります。

社名を突き合わせる前にやること

社名で照合する場合、そのまま比べても一致しません。表記の揺れを先に吸収します。

揺れる場所は決まっている

揺れ 例 処理
法人格の位置 株式会社◯◯/◯◯株式会社 法人格を取り除いた列を作る
法人格の表記 株式会社/(株)/(株) 同上。括弧の全角半角も揃える
全角と半角 ABC商事/ABC商事 英数字を半角に統一
スペース ABC 商事/ABC商事 すべて除去
記号 ABC・商事/ABC商事 中黒、ハイフン、長音を除去または統一
旧字体 髙橋/高橋 置換表を作る。件数が少なければ手で直す

正規化した列は、別に作る

元の社名を書き換えないでください。正規化は照合のための作業で、表示や送信に使う社名は元のままが正しいからです。

「社名」の列の隣に「社名(照合用)」の列を作り、そこに正規化した値を入れます。送信時に照合用の社名を使うと、「株式会社」が抜けた宛名で送ることになります。

正規化の処理は、順番がある

置換の順番を間違えると、意図しない結果になります。次の順で処理してください。

  1. 全角の英数字を半角に変換する。先にこれをやらないと、後の置換が片方だけに当たります
  2. 括弧付きの法人格を、正式名称に展開する。(株)を株式会社に戻す
  3. 法人格を除去する。株式会社、有限会社、合同会社、一般社団法人など
  4. スペースと記号を除去する。中黒、ハイフン、ピリオド
  5. カタカナの長音を統一する。除去するか、残すかを決めて揃える

2番目を飛ばして3番目をやると、「(株)」が残ります。括弧付きは、除去の対象文字列として別に書かないと当たりません。

どこまで削るか

削りすぎると、別の会社が一致してしまいます。たとえば「ABC商事」と「ABCシステム」は別ですが、「商事」「システム」まで削ると同じになります。

削るのは法人格と記号とスペースまで。事業内容を表す語は残してください。

支店・部署をどう扱うか

ここが、名寄せで最も判断が分かれる部分です。

同じ会社の本社と支店を、1つにまとめるべきか、別々に持つべきか。正解は商材によって変わります。

分ける場合と、まとめる場合

判断 こういう商材 理由
支店ごとに持つ 拠点単位で導入が決まるもの。地域密着のサービス 支店長が決裁者になる。本社に送っても回らない
本社にまとめる 全社一括で導入するもの。情報システム系 支店に送ると本社に転送されるだけ

判断がつかない場合は、分けて持ったうえで、親子の関係を列で持たせます。後からまとめるのは簡単ですが、まとめたものを分けるのは元データが無いとできません。

親子の持たせ方

「親法人番号」の列を作り、支店の行に本社の法人番号を入れます。これで支店単位でも、本社単位でも集計できます。

法人番号は本社にしか付かないため、支店の行には独自の識別子を振ります。連番で構いません。

部署は行にしない

同じ拠点の中の部署違いは、行を分けないでください。行が増えるだけで、重複と区別がつかなくなります。

部署は接触履歴の中で持ちます。「いつ、どの部署の誰に、何を送ったか」という形です。

どちらの行を残すか

重複が見つかったら、統合します。ここで「新しいほうを残す」という単純なルールにすると、情報を失います。

項目ごとに残す基準を変える

項目 どちらを残すか
社名・所在地・電話番号 取得日が新しいほう。古い情報は変わっている可能性がある
担当部署・担当者 取得日が新しいほう。ただし古いほうも履歴として残す
接触履歴 両方を足す。どちらかを捨てない
断られた記録 両方を足す。1件でもあれば、その事実を残す
取得元・取得日 両方を残す。どこから来た行かは後で使う

接触履歴と断られた記録は、足し算です。片方を選ぶ項目ではありません。

統合する前に、元データを別に保存する

統合作業は元に戻せません。作業前のリストを、日付を付けて別ファイルに保存してください。

判定を間違えて別の会社をまとめてしまった場合、元データが無いと復元できません。そして間違いは、たいてい数週間後に発覚します。

統合を保留する選択

判断がつかない行を、その場で決めなくても構いません。「保留」という状態を作ってください。

保留にした行には、片方を送信対象から外す印を付けます。これで二重送信は防げますし、情報は両方残ります。

そして保留の行は、次にその会社と接触したときに確定させます。実際に電話やメールでやりとりすれば、同じ会社かどうかは分かるからです。机上で判定できないものを、机上で決めようとしないこと。

自動で統合しない

照合の結果は、一致・不一致の2つではありません。「おそらく同じ」という中間が必ず出ます。

この中間を自動で処理すると、別会社をまとめる事故が起きます。中間は一覧に出して、目で確認してください。件数はそれほど多くなりません。

接触履歴を失わずに統合する

履歴の扱いは、名寄せで最も間違えやすい部分です。

履歴は別の表に持つ

1行に「最終接触日」「最終接触手段」だけを持つ設計にすると、統合のときに片方が消えます。

そうではなく、接触履歴を別の表にして、会社の識別子で紐づけます。

会社の表
  会社ID / 法人番号 / 社名 / 所在地 / 取得元 / 取得日

接触履歴の表
  履歴ID / 会社ID / 日付 / 手段 / 相手 / 結果 / 備考

2つの表に分ける。統合は会社IDの付け替えで済む。

この形にすると、統合は履歴の会社IDを付け替えるだけになります。履歴そのものは1件も失われません。

スプレッドシートでも同じ設計ができる

専用のツールが無くても、シートを2枚に分ければ同じことです。会社の表と履歴の表を別シートにして、会社IDで参照します。

1枚のシートに全部を詰め込むと、1社に複数の履歴を持てません。持とうとすると行が増えて、それが重複に見えます。

履歴に何を書くか

履歴の表の「結果」の列は、書き方を決めておかないと使えません。自由記述にすると、集計も検索もできなくなります。

結果 意味
未到達 電話がつながらない、メールがエラーで戻った
到達・反応なし 届いたが返事がない
断り(今回) 今回は不要。将来の接触は妨げられていない
断り(恒久) 今後連絡しないでほしい。恒久的に除外する
前向き 資料希望、日程調整に進んだ

「断り」を2つに分けているのが要点です。この2つを同じ扱いにすると、再接触してよい相手まで失います。逆に混ぜると、連絡しないでほしいと言った相手に送ってしまいます。

備考の列には、相手が言ったことをそのまま書きます。要約すると、後から区別がつかなくなります。

統合の記録も残す

「どの行とどの行を、いつ、なぜ統合したか」を残してください。

後から「この会社の情報がおかしい」となったとき、統合の記録が無いと原因を追えません。統合した側のIDを、統合された側の行に残しておく形で足ります。

重複を作らない入口の設計

後から潰すより、入口で作らないほうが安く済みます。

追加する前に照合する

新しいリストを追加するとき、既存のリストと照合してから足します。足してから名寄せする運用にすると、必ず溜まります。

手順は単純です。新しいリストに法人番号を付与し、既存の法人番号と突き合わせ、一致した行は既存の行に情報を足す。一致しなかった行だけを追加する。

追加前の照合を、誰がやるか決める

手順を決めても、担当を決めていないと飛ばされます。リストを追加する権限を持つ人を限定するのが、いちばん確実です。

全員が自由に追加できる状態だと、照合を通らない行が必ず混ざります。追加は1人か2人に絞り、他のメンバーは追加依頼を出す形にしてください。

件数が多くて回らないなら、追加専用のシートを別に用意します。そこに貯めておいて、担当者がまとめて照合してから本体に入れる。入口を1本にすることが目的なので、人数より経路の数を減らしてください。

取得元を必ず記録する

どのデータ源から来た行かを残しておくと、重複が発生しやすい組み合わせが分かります。

たとえば、2つの公開データを使っていて、そこに重なりがあると分かれば、片方を先に処理する順番を決められます。

入力の形式を固定する

手で追加する場合、入力の形式がばらつきます。

項目 決めておく形式
法人格 前株か後株か、正式名称のまま入れる
電話番号 ハイフンあり・なしを統一。市外局番を省略しない
URL httpsから始める。末尾のスラッシュの有無を統一
日付 年月日をすべて4桁2桁2桁で。和暦を混ぜない

形式を決めても守られないなら、入力規則で制限してください。スプレッドシートにも入力規則の機能があります。

名寄せをいつ回すか

2つのタイミングで回す

  1. 新しいリストを追加するとき。追加の直前に照合する。これが基本
  2. 定期的に全件。月に1回、既存分も含めて照合する

2つ目が要るのは、手入力や後からの編集で、既存分の中にも重複が生まれるからです。追加時の照合だけでは拾えません。

全件の照合は、件数で頻度を変える

数百件なら月1回で十分です。数千件を超えるなら、週1回にしたほうが、1回あたりの確認件数が減って楽になります。

溜めると、判断が必要な中間の行が増えます。まとめて確認するのは、思ったより時間がかかります。

名寄せに時間をかけすぎない

最後に、この作業の位置づけについて書いておきます。

名寄せは、やりすぎると成果につながらない作業です。完璧なリストを作ることが目的ではなく、二重送信と記録の喪失を防ぐことが目的だからです。

判断に迷う行が全体の数パーセントなら、そこに時間をかけるより保留にして先に進んだほうが、成果は出ます。1日かけて10件の判定をするより、その日に50社へ送るほうが価値があります。

時間を決めて取り組んでください。全件の照合に月1時間、それ以上かかるなら入口の設計に問題があります。

作業した記録を残す

いつ、何件を照合して、何件を統合したか。これを残しておくと、重複の発生率が見えます。

発生率が上がっているなら、入口の設計に問題があります。名寄せの頻度を上げるのではなく、入口を直してください。

リストの作り方そのものについては、営業リスト作成をAIでやる方法と営業リストをスクレイピングで作っていいのかで扱っています。

まとめ

  • 重複で最も痛いのは、断られた記録が片方にしか無く、もう一方から再度送ってしまうこと
  • 照合のキーは法人番号を最優先。無いならドメイン、代表電話、最後に正規化した社名+市区町村。社名単独では判定しない
  • 法人番号は必ず文字列として読み込む。数値にすると指数表記に化けて照合できない
  • 社名の正規化は別の列に作る。元の社名は書き換えない。削るのは法人格と記号とスペースまで
  • 支店をまとめるかは商材次第。判断がつかないなら分けて持って、親子を列で持たせる。まとめたものは分けられない
  • 統合では項目ごとに基準を変える。属性は新しいほう、接触履歴と断られた記録は両方を足す
  • 履歴は別の表に持つ。会社IDで紐づければ、統合はIDの付け替えで済み、履歴が消えない
  • 「おそらく同じ」の中間は自動処理しない。目で確認する。件数は多くない
  • 追加の直前に照合する運用にする。足してから名寄せすると必ず溜まる

名寄せは、重複を消す作業ではありません。情報を失わずに1つにまとめる作業です。消すことが目的になると、断られた記録から先に消えていきます。

よくある質問

社名が完全に一致していれば、同じ会社と判断してよいですか

同名の会社は珍しくないので、社名単独では判定しないでください。法人番号があればそれを使います。無い場合は、Webサイトのドメイン、代表電話番号、最後の手段として正規化した社名と所在地の市区町村を組み合わせます。市区町村まで一致しても、別の会社であることがあります。

法人番号はどこで取得できますか

国税庁の法人番号公表サイトで、商号・所在地・13桁の法人番号を無料で検索できます。都道府県単位のCSVもダウンロードできるので、件数が多いなら落として突き合わせるほうが速いです。読み込むときは必ず文字列を指定してください。数値として扱うと指数表記に化けます。

支店は本社と同じ行にまとめるべきですか

商材によります。拠点単位で導入が決まる商材なら支店ごとに持ち、全社一括で導入する商材なら本社にまとめます。判断がつかないなら、分けて持ったうえで親子の関係を列で持たせてください。後からまとめるのは簡単ですが、まとめたものを分けるのは元データが無いとできません。

重複した行は、どちらを消せばいいですか

項目ごとに基準を変えてください。社名や電話番号などの属性は取得日が新しいほう、接触履歴と断られた記録は両方を足します。とくに断られた記録は、1件でもあればその事実を残してください。片方を選ぶ項目ではありません。

自動で名寄せするツールを使ってもいいですか

一致・不一致がはっきりしている行は自動で構いません。問題は「おそらく同じ」という中間です。ここを自動で処理すると、別会社をまとめる事故が起きます。中間は一覧に出して目で確認してください。件数はそれほど多くなりません。

名寄せはどのくらいの頻度でやればいいですか

新しいリストを追加する直前に照合するのが基本です。加えて、月に1回は既存分も含めて全件を照合してください。手入力や後からの編集で、既存分の中にも重複が生まれるためです。数千件を超えるなら週1回にしたほうが、1回あたりの確認件数が減って楽になります。

1枚のスプレッドシートで管理していますが、問題ありますか

1社に複数の接触履歴を持てないのが問題です。持とうとすると行が増えて、それが重複に見えます。会社の表と履歴の表を別シートに分けて、会社IDで参照してください。この形にすると、統合は履歴の会社IDを付け替えるだけになり、履歴が1件も失われません。

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