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図解・インフォグラフィックの副業|「きれいにして」ではなく「選んで」と言われている

棒グラフと折れ線グラフが並んだ資料をペンで確認している手元

デザインの副業で、単価を上げたいときに向かう先のひとつが図解です。文章や数字を、図やグラフにして分かりやすくする。資料デザインの回で扱った案件の中にも、この作業は含まれています。

ただ、図解にはほかのデザイン作業にない責任があります。形を選び間違えると、読む人が受ける印象が事実とずれるからです。きれいに作れば済む仕事ではありません。

この記事では、図解・インフォグラフィックの案件を分解します。扱うのは、依頼の本当の中身、公式が挙げる注意点、主題の絞り方、形の選び方、印象を歪めるデザイン、単位と出典、受注時に決めること、時間と金額の決め方、つまずく場所です。作図ソフトの操作は扱いません。

グラフに関する記述は総務省統計局「なるほど統計学園」、相場はクラウドワークスが発注側に公開しているページを一次情報にしています。

図解の依頼は「きれいにして」に見えて「選んで」と言われている

まず、依頼の中身を整理します。

渡されるのは、たいてい数字か文章

図解の案件で渡されるのは、表の数字か、説明の文章です。「これを図にしてください」という依頼になります。完成形のイメージが添えられていることは、あまりありません。

つまり、どの形にするかは、こちらが決めることになります。棒グラフか、折れ線か、円グラフか。図にするなら、四角を並べるのか、矢印でつなぐのか。この判断が入るから、単価が上がります。

逆に、完成形が細かく指定されている案件は、作業の依頼です。指定どおりに作るだけなので、判断は要りません。その分、単価も上がりません。どちらの案件かを、依頼文の段階で見分けてください。判断を求められている案件のほうが、割に合います。

選ばずに作ると、作り直しになる

渡された数字をそのまま円グラフにして出す。指示どおりに全部の項目を1枚に載せる。こうした作り方をすると、たいてい「分かりにくい」と返ってきます。

相手は理由を言葉にできません。「なんとなく伝わらない」としか言えない。だから修正の往復が増えます。この往復を減らすには、最初に形の選択を説明しておくしかありません。

往復が増えると、時間あたりが崩れます。1点5,000円の案件で3往復すれば、それだけで1時間以上が消える。修正の回数は、単価より収支に効きます。減らす工夫に時間を使うほうが、結果として得です。

選んだ理由を添えると、往復が減る

納品時に一行添えます。「増減の傾向を示したいとのことでしたので、折れ線グラフにしています」。形を選んだ理由を書いておくと、相手は評価の軸を持てます。

軸がないまま見ると、色や飾りの好みの話になります。軸があれば「傾向は伝わるが、もう少し直近を強調したい」といった、内容の話になる。修正の質が変わります。

書き方は1行で足ります。「◯◯を示すため、△△の形にしています」。長い説明は読まれません。1点につき1行、納品のメールに並べるだけで、相手の見方が変わります。

だから、根拠を持って選ぶ必要がある

好みで選んだ形では、理由を書けません。そこで使えるのが、公的な機関が公開している基準です。

総務省統計局が「なるほど統計学園」というサイトで、グラフの作り方を公開しています。誰でも読める資料で、根拠として引用できます。次の章から、その中身を見ていきます。

公的な機関の資料を根拠にする利点は、相手が反論しにくいことではありません。こちらも相手も、同じものを見て話せることです。好みの応酬にならず、書かれていることを確認する話になります。

公式が挙げているグラフ作成の注意点

まず、前提として書かれている一文があります。

「印象が実態とずれる」という警告

「グラフの作り方(上級編)」のページは、こう始まります。「統計データを理解するのにグラフは大変有効な手段ですが、誤ったグラフを作成してしまうことで、そのグラフから受ける印象が実態とずれてしまう場合があるため、グラフを作成するには様々な注意が必要です」。

図解の仕事が持つ責任が、この一文に表れています。作り手の選択で、受け手の印象が変わる。それが事実からずれることがある、と公式が明言しています。

挙げられている5つの注意点

同じページは、注意点を5つに分けています。「統計データを正しく読み取る」「主題を明らかにする」「的確なグラフを選択する」「デザインを工夫する」「補足事項の記載」。

1つ目については「グラフを作成するには、前提として統計データを正しく読み取る必要があります。また、グラフの特徴を理解し、使い方に慣れることも大切です」と説明されています。

数字を読めないまま図にするな、ということです。渡された表の意味が分からないなら、聞いてから作る。ここを飛ばすと、そもそも選択の判断ができません。

この5つが、そのまま納品の基準になる

実務では、この5つをチェックリストとして使えます。主題は1つに絞れているか。形は的確か。デザインで誤った印象を与えていないか。単位と出典を書いたか。

公式が挙げている項目を通した、と言えること自体が納品物の価値になります。これは資料デザインの回で書いた、公式の基準で読みやすさを語る話と同じ構造です。

チェックリストは、自分の作業手順にも組み込みます。作り終わったら上から順に確認する。毎回やると、抜けがなくなるだけでなく、作る前から意識するようになります。後で確認する項目が分かっていると、最初からその形で作るからです。

主題は1つに絞る

5つのうち、実務でいちばん効くのがこれです。

公式の記述

「主題を明らかにする」の項目には、こう書かれています。「グラフ化する目的や、グラフで何を表現するかをはっきりさせましょう。また、一つのグラフでたくさんの事柄を示そうとするとかえって分かりにくくなることがあります。グラフ一つにつき主題は一つに絞りましょう」。

1つのグラフに1つの主題。単純なルールですが、依頼される図解の多くは、これを破っています。渡される表には、たいてい複数の観点が入っているからです。

渡された表を、そのまま図にしない

たとえば、年度別・地域別・商品別の売上が1つの表になっているとします。これを1枚のグラフにすると、何を見ればいいのか分かりません。

ここで必要なのが、相手に聞くことです。「この図で、いちばん伝えたいことは何でしょうか」。年度による変化なのか、地域の差なのか、商品の構成なのか。1つに決めてもらえば、形は自動的に決まります。

相手が決められないこともあります。そのときは、こちらが候補を出します。「この表からは、年度の変化と地域の差が読み取れます。どちらを主題にしましょうか」。選択肢にすると、決めてもらえます。白紙で聞くより、はるかに早い。

分けて作る提案もできる

伝えたいことが3つあるなら、3枚に分ける提案をします。「1枚にまとめるより、3枚に分けたほうが伝わると思います」。

枚数が増えるので、単価も上がります。これは値上げの口実ではなく、公式が挙げている方針に沿った提案です。「グラフ一つにつき主題は一つに」と書かれていることを添えれば、根拠のある話になります。

予算が決まっていて増やせない場合もあります。そのときは、主題を1つに絞ってもらう。枚数を増やすか、載せる内容を減らすか。この2つしか道がないことを、先に伝えておきます。両方を断られた状態で作ると、必ず修正が来ます。

聞くタイミングは、着手の前

主題の確認は、作り始める前に済ませます。作った後に聞くと、作り直しになるからです。

見積もりの段階で聞くのがいちばん良い。「この図で伝えたいことを1つに絞るとすれば、どれになりますか」。この質問ができる人は、作業者ではなく相談相手として見られます。

この質問には、副次的な効果もあります。相手自身が整理できていないことに気づく場合があるからです。整理を手伝った時点で、関係が変わります。次の相談も、こちらに来るようになります。

どの形にするかの対応表

主題が決まれば、形は選べます。公式が用途を整理しています。

公式が示している対応

「グラフの種類」のページは、それぞれの特性を説明しています。絵グラフは「同形の絵を並べ、量の大小を比較する」。棒グラフは「棒の高さで、量の大小を比較する」。折れ線グラフは「量が増えているか減っているか、変化の方向をみる」。

円グラフは「全体の中での構成比をみる」。帯グラフは「構成比を比較する」。ヒストグラムと箱ひげ図は「データの散らばり具合をみる」と説明されています。

伝えたいこと 公式が挙げている形
量の大小を比べる 棒グラフ、絵グラフ
増減や変化の方向 折れ線グラフ
全体の中での構成比 円グラフ、帯グラフ
データの散らばり ヒストグラム、箱ひげ図
2つの変量の相関 散布図
地域別の比較 統計地図

上級編には、さらに種類がある

「グラフ作成の基本」のページには、より専門的な形も一覧で載っています。パレート図は「全体に対する各項目の構成比の集中度合いを示す」、ローレンツ曲線は「集中の度合いを示す。所得格差を見るときなどに使用される」。

レーダーチャートは「いくつかの変量をまとめて比較する」、散布図は「2つの変量の相関関係を示す」、バブルチャートは「2つの変量の相関関係に加えて円の面積で3つ目の変量を表す」、統計地図は「地図を模様や色(濃淡)で塗り分けたり、地図上にグラフを重ねたりする」と説明されています。

名前と用途を知っているだけで、提案の幅が変わります。相手が知らない形を提案できると、それだけで専門性が伝わります。

提案の言い方

形を提案するときは、目的から入ります。「3つの項目を同時に比べたいとのことでしたので、レーダーチャートはいかがでしょうか。総務省統計局の解説では、いくつかの変量をまとめて比較する形とされています」。

自分の好みではなく、用途と公式の説明で語る。これなら、相手も判断できます。押しつけにもなりません。

提案は2案までにします。3案以上出すと、相手が選べなくなる。推奨を1つ決めて、理由を添え、代案を1つ添える。これが、決めてもらいやすい形です。

迷ったら、いちばん単純な形にする

凝った形は、読み手に前提知識を要求します。箱ひげ図やローレンツ曲線は、見慣れていない人には読めません。

読み手が誰かを確認して、迷うなら棒グラフか折れ線にする。正確に読めない図は、きれいでも意味がありません。資料デザインの回で書いた「読む人の状況を先に聞く」のと同じ判断です。

凝った形を使うなら、読み方の注記を添えます。「縦軸は◯◯、横軸は△△を表しています」。1行の説明があるだけで、読める人の範囲が広がります。形を変えるより、説明を足すほうが早い場合もあります。

作る前に、この順で決める 1 渡された数字の意味を、分かるまで聞く 2 主題を1つに絞る(複数なら、枚数を分ける) 3 主題に合う形を選ぶ(大小・変化・構成比・散らばり) 4 誤った印象を与えないデザインにする 5 単位と出典を書く
色をつけた2と3が、単価を決める工程

デザインを変えると、印象が変わる

4つ目の注意点です。ここは、やってはいけないことの話になります。

公式が挙げている例

「デザインを工夫する」の項目には、こう書かれています。「グラフは、縦横の比率を変えたり、波形で省略したり、デザインを変えることで、見る人に与える印象が変わってきます。誤った印象を与えない、適切なデザインを考えましょう」。

縦横の比率と、波形での省略。この2つが具体例として名指しされています。どちらも、実務でよく使われる手法です。

名指しされているということは、それだけ起きやすいということでもあります。悪意がなくても、見栄えを整える過程で起きます。グラフの枠を資料の形に合わせて縦長にした、というだけで、変化の見え方は変わります。

縦横の比率で、変化の見え方が変わる

同じ数字でも、グラフを縦に引き伸ばせば変化が大きく見え、横に広げれば緩やかに見えます。意図的にやれば、印象の操作になります。

依頼する側から「もっと伸びているように見せてほしい」と言われることもあります。ここは断るか、別の方法を提案する場面です。公式の記述を引いて「比率を変えると印象が実態とずれる可能性があるとされています」と伝えれば、角も立ちません。

代案も用意しておきます。色で直近を強調する、伸びた分の数値を注記で添える、該当期間だけを拡大した図を別に作る。強調したい気持ちは正当です。やり方を、誤解を生まない形に置き換えるだけです。

波形の省略も、名指しされている

棒グラフの途中を波線で省略して、差を大きく見せる手法です。軸の途中を省くので、見た目の差が実際の差より大きくなります。

使うなら、省略していることが一目で分かる形にしてください。省略の印を小さくすると、気づかれずに誤解を生みます。そして、そもそも省略が必要かを考える。数字の差が小さいなら、小さく見えるのが正確です。

省略した場合は、注記も添えます。「縦軸は◯から始めています」。書いてあれば、読む人が自分で補正できます。隠すのではなく、明示する。これが誠実な見せ方の基本です。

色も同じ項目に書かれている

公式は続けて「また、色使い、目盛、単位、説明文字などの表現も工夫し、理解しやすいグラフを作成しましょう」と書いています。

色は、意味を持たせるほど注意が要ります。赤と緑だけで良し悪しを表すと、読めない人がいます。これは資料デザインの回でも書いたとおりで、色に加えて形や文字でも区別をつけるのが基本です。

色数も絞ります。系列が5つも6つもあると、凡例と図を往復しないと読めません。主題に関係ない系列は、灰色でまとめる。見せたいものだけに色をつけると、主題が1つに絞れているかの確認にもなります。

単位と出典を書く

5つ目の注意点は、忘れられやすい部分です。

補足事項の記載について

「補足事項の記載」には、こう書かれています。「グラフは表示するデータの単位や定義を明確にしないと、見る人に正確な情報が伝わりません。数値の単位を記載し、曖昧な定義や注意事項がある場合は必ず補足説明を付けましょう」。

そして「また、どういったデータを元にしているのか分かるよう、出典元の資料名等も記載しましょう」と続きます。

この2つは、図の外に置く情報です。だから忘れられます。図が完成すると、仕事が終わった気になるからです。単位と出典まで入れて納品物、と決めておいてください。

単位の抜けは、事故につながる

「1,200」とだけ書かれたグラフを見て、円なのか人なのか件なのかが分からない。作った本人には自明でも、読む人には分かりません。

千円単位なのか、百万円単位なのかも同じです。ここを省くと、桁を読み違えられます。納品前のチェックに、単位の確認を必ず入れてください。

期間や対象の範囲も同じです。「2024年度」「全国」「20代のみ」。何を数えた数字なのかが分からない図は、使えません。公式が「曖昧な定義や注意事項がある場合は必ず補足説明を付けましょう」としているのは、この部分です。

出典は、相手に聞いて書く

データの出どころは、こちらでは分かりません。相手に聞いて、書ける形で提供してもらいます。

「出典として記載する文言をいただけますか」と聞くだけです。この質問をする人は、多くありません。聞くこと自体が、信用の材料になります。

相手が自社のデータを使っている場合は、「自社調べ」と書くのか、調査の名称を入れるのかも確認します。公開する資料なら、ここは相手の判断が必要な部分です。こちらで勝手に決めないでください。

納品物のチェックリストにする

単位、定義の補足、出典。この3つを納品前の確認項目として固定します。

そして納品時に伝えます。「単位と出典の記載欄を設けてあります。出典の文言が決まりましたら差し替えてください」。抜けを指摘する形ではなく、枠を用意する形にすると、相手も動きやすくなります。

枠を用意するときは、仮の文言を入れておきます。「出典:◯◯(要確認)」。空欄だと、埋め忘れたまま公開されることがあります。目立つ文字を入れておけば、気づかれます。

受注時に決める5項目

ここまでを踏まえて、受注時に決めることを整理します。

  • 主題:この図で伝えたいことを1つに絞ると何か
  • 読み手:誰が見るか。専門的な形を読めるか
  • 点数:何枚作るか。主題が複数なら分けるか
  • 納品形式:画像か、編集できる形か
  • 単位と出典:誰が用意するか

4つ目が、後の依頼を左右する

画像で納品すると、数字が変わったときに作り直しになります。編集できる形で渡せば、相手が自分で直せる。

どちらにするかは、相手の運用によります。毎月更新する図なら、編集できる形のほうが喜ばれます。資料デザインの回で書いた「更新しやすい形で納品する」のと同じ判断です。

編集できる形で渡すときは、相手の環境で開けるかを確認します。こちらの道具でしか開けない形式だと、渡しても使えません。一般的なソフトで開ける形にするか、画像と併せて渡すのが安全です。

3つ目は、見積もりの根幹

1枚いくらで受けるなら、枚数を決めないと金額が出ません。そして主題を絞る過程で、枚数が増えることがあります。

だから、見積もりは主題の確認の後に出します。「伝えたいことを整理したうえで、必要な点数をご提案します」と伝えて、順番を作ってください。

先に予算だけ聞いておくのも手です。「ご予算の目安をいただければ、その範囲で点数をご提案します」。点数を調整できる案件なら、予算内に収められます。金額を後出しして断られるより、先に枠を知るほうが早い。

書面に残す

5項目とも、文字で残します。特に主題は、言葉にして確認をもらう。「この図の主題は『地域別の差』という理解でよろしいでしょうか」。

主題の合意が取れていれば、修正の話も主題に戻れます。「主題は地域差でしたので、年度の情報は省いています」と説明できる。

主題が途中で変わることもあります。その場合は、作り直しになることを伝えてください。「主題を年度の変化に変える場合、形から選び直すことになります」。変更の影響を数字で示すと、相手も慎重になります。

1点にかかる時間と、金額の決め方

図解そのものの相場は、公開されている範囲では見つかりませんでした。近い分野の数字を参考にします。

参考になる相場

クラウドワークスの発注相場では、指定モチーフの線画イラストが30,000円から・10日前後、コミュニケーションツール用のアイコンデザインが30,000円から・10日前後とされています。

どちらも図解とは別の作業ですが、1点ものの制作として、この水準が目安になります。ただし図解は1点の重さが案件によって大きく違うので、そのまま当てはめることはできません。

実際、数字を3つ並べるだけの図と、工程を10段階で示す図では、作業量が何倍も違います。1点いくら、という値付けが合わない分野です。だから、次の項の工数からの逆算が要ります。

工数から決める

以下は、数字が支給された状態から3点の図を作る場合を置いた本メディアの想定モデルで、統計ではありません。

前提として、数字は相手から支給されるものとします。データを探すところから頼まれる場合は、別の工程が加わります。調査は図解とは別の仕事です。含まれるかどうかを、受注時に確認してください。

工程 時間 備考
数字の読み込みと確認 60分 意味が分かるまで聞く
主題の整理と提案 45分 何枚に分けるかを決める
形の選定とラフ 60分 3点分
作図 180分 1点60分の想定
単位・出典・確認 30分 チェックリストを通す

6時間15分で、手取りから逆算する

合計は6時間15分です。時間あたりの目標を3,000円に置くと、必要な手取りは18,750円。システム利用料と消費税を考えると、税抜で約21,900円の見積もりになります。3点なら1点あたり7,300円ほどです。

この計算を先にしておくと、提示された金額が見合うかを即座に判断できます。「1点5,000円で3点」と言われたら、この案件は受けない、という判断ができる。

断るときも、工数を示せます。「読み込みと主題の整理を含めると6時間ほどかかるため、この金額では難しいです」。根拠を添えて断ると、次の依頼で条件を調整してもらえることがあります。黙って断ると、それで終わります。

前半の2時間が、単価を作っている

表を見ると、作図は180分で全体の半分以下です。前半の「読み込み」と「主題の整理」に105分かかっています。

ここを省くと、作業だけの仕事になります。そして作業だけなら、安い人に流れる。テロップの回で書いた構造と同じで、判断を含まない作業は代わりが効きます。

逆に言えば、前半に時間をかけた案件ほど、後半が速くなります。主題と形が決まっていれば、作図は迷いません。前半の105分は、後半を短くする投資でもあります。

つまずく場所は5つに決まっている

この分野でつまずくのは、ほぼ5つです。

つまずく場所 公式に書かれていること
渡された表をそのまま図にする グラフ一つにつき主題は一つに絞る
数字の意味を確かめない 前提として統計データを正しく読み取る
比率や省略で差を強調する 誤った印象を与えないデザインを考える
単位を書き忘れる 数値の単位を記載する
出典を入れない 出典元の資料名等も記載する

1・渡された表をそのまま図にする

いちばん多い失敗です。表の項目を全部載せると、何を見ればいいか分からない図になります。

公式は「一つのグラフでたくさんの事柄を示そうとするとかえって分かりにくくなることがあります」としています。載せないものを決めるのが、図解の仕事です。

捨てた情報は、別の図にするか、注記に回します。捨てる=無視するではありません。「年度別の内訳は別図でご用意できます」と添えると、追加の依頼にもつながります。

判断に迷ったら、図を見せる相手が誰かに戻ります。決裁する人が見るのか、現場の人が見るのか。知りたいことが違えば、残す情報も変わります。主題を決めるときに、読み手もセットで確認してください。

2・数字の意味を確かめない

分からないまま作ると、選ぶ形を間違えます。累計なのか単月なのか、実数なのか率なのか。ここを取り違えると、図の意味が変わります。

聞くのは恥ずかしくありません。「この列は累計でしょうか、それとも各月の数値でしょうか」。正確に作るための質問は、信用を上げます。

むしろ、聞かずに作って間違えるほうが問題です。数字を取り違えた図は、公開されると相手の信用に関わります。自分の作業の話ではなく、相手のリスクの話として考えてください。

3・比率や省略で差を強調する

相手から求められることもある場面です。ですが公式は、縦横の比率と波形での省略を名指しして、誤った印象を与えないよう求めています。

断り方は、公式を引くのがいちばん角が立ちません。「印象が実態とずれる可能性があるとされています」。そのうえで、色や注記で強調する代案を出します。

それでも求められる場合は、相手の判断として記録を残します。メールで「ご指示のとおり縦軸を調整しています」と書いておく。公開後に問題になったときに、経緯が残ります。

4・単位を書き忘れる

作った本人には自明なので、抜けやすい項目です。納品前のチェックリストに入れて、機械的に確認してください。

特に、千円単位や百万円単位は要注意です。桁の誤解は、金額の誤解に直結します。

パーセントと実数の取り違えも同じです。「20増えた」が20件なのか20パーセントなのかで、意味がまったく違う。単位は、図の中と軸の両方に書くと確実です。

グラフの題名にも単位を入れておくと、さらに安全です。「月別の売上(千円)」。図だけが切り取られて別の資料に貼られることがあります。そのときに単位が残っているかで、誤解の起きやすさが変わります。

5・出典を入れない

公式は「どういったデータを元にしているのか分かるよう、出典元の資料名等も記載しましょう」としています。

こちらで分からないなら、枠だけ用意して相手に埋めてもらう。空欄で納品するより、枠を作って渡すほうが親切です。

他社のデータや公的な統計を使う場合は、出典の書き方に決まりがあることもあります。引用のルールは、提供元が定めている場合があります。相手に確認するか、提供元のページを見て書いてください。

加工した場合は、その旨も添えます。「◯◯をもとに作成」。元データそのままではないことを示す書き方です。数字を足し合わせたり、期間を絞ったりしたなら、この形にしておくのが正確です。

30代につながるのは、数字を形に翻訳する力

このメディアは、20代の副業を「30代に何が残るか」で選ぶ立場で書いています。図解の仕事で残るのは、作図ソフトの操作ではありません。

何を見せて、何を捨てるかを決める力

残るのは、手元の数字から、伝えるべき1つを選び出す力です。公式が書いている「主題は一つに絞る」を、実際の数字に対してやる訓練になります。

30代になると、数字を使って人を動かす場面が増えます。予算の説明、成果の報告、企画の根拠。全部の数字を見せる人と、1つに絞れる人では、通る確率が変わります。

そして、絞る練習は自分の資料では積みにくい。自分の数字だと、どれも大事に見えるからです。他人の数字を扱う仕事のほうが、冷静に選べます。副業で図解を受けるのは、その訓練になります。

見せ方の誠実さを、判断できること

縦横の比率、軸の省略、色の使い方。これらで印象が変わることを知っていると、自分が作るときも、人の資料を見るときも判断が変わります。

誇張された図を見抜けるようになるのは、大きな武器です。社外から提示された資料、社内で回ってくる報告。形の選び方と軸の取り方を見れば、意図が分かります。

見抜いたうえで、指摘のしかたも身につきます。「この軸は途中から始まっていますが、0から見るとどうなりますか」。攻撃ではなく、確認として聞ける。この聞き方ができる人は、会議で信用されます。

公的な基準を根拠にできること

もう1つが、この記事で使った一次情報そのものです。総務省統計局が公開している資料で、誰でも読めます。

自分の判断を「そう思うから」ではなく「こう書かれているから」と説明できる。これは他の分野の記事でも繰り返してきたことです。根拠を持っている人は、議論で押し切られません。

そして、根拠は探せば見つかります。総務省統計局のサイトも、探しに行かなければ存在を知らないままです。調べる習慣そのものが、資産になります。どの分野に移っても、同じ手順で根拠を見つけられます。

まとめ

  • 図解の依頼は「きれいにして」に見えて、実際はどの形にするかを選ぶ仕事。選んだ理由を添えると、修正の往復が減る
  • 総務省統計局のページは「誤ったグラフを作成してしまうことで、そのグラフから受ける印象が実態とずれてしまう場合がある」とし、注意点を5つ挙げている
  • いちばん効くのが「グラフ一つにつき主題は一つに絞りましょう」。主題が複数なら、枚数を分ける提案ができる
  • 形の対応は公式に整理されている。量の大小は棒グラフ、変化の方向は折れ線、構成比は円と帯、散らばりはヒストグラムと箱ひげ図、相関は散布図、地域別は統計地図
  • デザインについては「縦横の比率を変えたり、波形で省略したり」が具体例として名指しされ、誤った印象を与えないよう求められている
  • 補足事項として数値の単位と出典元の資料名等の記載が挙げられている。納品前のチェックリストに固定する
  • 想定モデルは3点で6時間15分。時間あたり3,000円なら税抜約21,900円、1点あたり約7,300円。前半の読み込みと主題整理105分が、単価を作っている

よくある質問(FAQ)

デザインの経験が浅くても受けられますか。

図解で求められるのは、装飾の技術より形の選択です。総務省統計局のページには、グラフごとの特性と用途が整理されています。量の大小なら棒グラフ、変化の方向なら折れ線、構成比なら円や帯。この対応を押さえたうえで、主題を1つに絞れば、形は決まります。凝った装飾より、主題と形が合っているかのほうが評価されます。

相場はいくらですか。

図解そのものの相場は、公開されている範囲では見つかりませんでした。近い分野では、指定モチーフの線画イラストが30,000円から、コミュニケーションツール用のアイコンデザインが30,000円からとされています(クラウドワークス発注相場)。図解は1点の重さが案件で大きく変わるので、工数から逆算するのが確実です。想定モデルでは3点で6時間15分、時間あたり3,000円なら税抜約21,900円になります。

「もっと差が大きく見えるようにして」と言われたら。

総務省統計局のページには「グラフは、縦横の比率を変えたり、波形で省略したり、デザインを変えることで、見る人に与える印象が変わってきます。誤った印象を与えない、適切なデザインを考えましょう」と書かれています。この記述を引いたうえで、色を変える、注記を添える、該当部分だけを拡大した別の図を添えるといった代案を出すのが現実的です。

画像と編集できる形、どちらで納品すべきですか。

相手の運用によります。毎月や四半期ごとに数字が変わる図なら、編集できる形のほうが喜ばれますし、更新の依頼にもつながります。一度きりの資料なら画像で構いません。受注時に、更新の予定があるかを聞いて決めてください。編集できる形で渡す場合は、相手の環境で開けるかの確認も必要です。

副業として始めるとき、確定申告や会社への影響はどうなりますか。

この記事では図解制作の中身だけを扱っています。副業全般の論点は姉妹メディア「20代の放課後」で扱っています。確定申告と20万円ルール、副業の始め方を参照してください。


作り始める前に、公式の5項目を読んでおく

統計データを正しく読み取る、主題を明らかにする、的確なグラフを選択する、デザインを工夫する、補足事項の記載。総務省統計局が公開している資料に、グラフごとの用途の一覧も載っています。納品前のチェックリストとして使えます。

総務省統計局の解説を見る

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