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地図サービスから営業リストを作っていいのか|規約が禁じているのは「大量ダウンロード」

規約に「大量ダウンロード」と書いてある

地図サービスには、店舗名、住所、電話番号が並んでいます。営業リストにそのまま使えそうに見えます。

この判断を、法律ではなく規約から確定させます。結論を先に書くと、地図画面からの一括取得は規約で明示的に禁止されています。

公開されている、と、取ってよい、は別公開されている規約が取得を許す地図画面からの一括取得使える範囲提供された経路・公的データ左だけの部分は、誰でも見られるが規約が一括取得を禁じている。「公開情報だから問題ない」は、この2つの円を1つだと思っている。営業リストの土台に置けるのは、重なっているところだけ。

公開されていることは、規約の制限を外す理由にならない。重なりの外を土台にすると、出どころを説明できない。

第3項「禁止行為」の5つ

Google マップ/Google Earth 追加利用規約の第3項に、禁止行為が5つ並んでいます。

禁止されていること 営業リスト作成との関係
一部を再配布もしくは販売すること、または新しい商品もしくはサービスを作成すること 取得したデータを販売する行為が直接あたる
コンテンツをコピーすること 画面から情報を写し取る行為
コンテンツを大量にダウンロードすること、または一括フィードを作成すること ここが直撃する
他の地図関連のデータセットを作成または補強すること 店舗データベースを作る行為
リアルタイムナビゲーションや自律的車両制御に組み合わせること 営業リストとは無関係

3つ目の条文はこうです。「コンテンツを大量にダウンロードすること、またはコンテンツの一括フィードを作成すること(もしくはその行為を第三者に委託すること)」

「第三者に委託すること」が入っている

かっこの中を読み飛ばさないでください。自分でやらず、外部に頼んだ場合も同じ扱いです。

リスト作成を委託して、委託先が地図から集めていた。この構造は、規約の文言上そのまま禁止行為に入ります。

後の章で書きますが、ここが実務では最も起きやすい形でしょう。

4つ目も効いてくる

4つ目は「他の地図関連のデータセットを、代わりになるまたは実質的に類似するサービスで使用する目的で、作成または補強すること」です。

営業リストは地図サービスの代わりにはならないので、この項目が当たるかは商材によります。ただし店舗情報のデータベースを作って提供する事業なら、検討が必要な項目です。

Google利用規約の側にもある

地図の規約とは別に、サービス全体の利用規約があります。こちらにも関係する条項があります。

「サービスの不正使用の禁止」

Google 利用規約の「サービスの不正使用の禁止」に、こうあります。

「Google のウェブページの機械可読な指示(クロール、トレーニングなどのアクティビティを禁止する robots.txt ファイルなど)に違反する、Google のいずれかのサービスのコンテンツにアクセスすることを目的とした自動化された手段の使用」

ここで基準になるのが robots.txt です。機械可読な指示に違反する自動アクセスが、不正使用として挙げられています。

2つの規約は別々に効く

整理します。地図の追加規約が禁止しているのは大量取得という行為そのものです。利用規約が禁止しているのは機械可読な指示に反する自動アクセスです。

だから「手作業でコピーすれば自動化ではないから大丈夫」という理屈は通りません。自動化の論点を回避しても、大量ダウンロードの禁止が残ります。

逆に、少量を手で見るだけなら、どちらにも当たりにくい。量と自動化の2軸で見るのが正確です。

スクレイピング一般の判断との違い

公開されている情報を機械的に集めてよいかは、著作権法や不正競争防止法の話として営業リストをスクレイピングで作っていいのかで整理しました。

地図サービスの場合は、そこに規約という別の層が乗ります。法令上の問題が無くても、規約違反は規約違反です。

そして規約違反の結果は、アカウントの利用停止やサービスの提供拒否という形で来ます。法令とは別の層で、事業が止まるリスクを抱えることになる。

ツールを使えば自分は無関係か

地図から店舗情報を一括で取得するツールや、代行サービスがあります。これを使う場合の整理です。

委託しても同じ

前に引用したとおり、第3項の3つ目には「もしくはその行為を第三者に委託すること」が明記されています。

つまりツールに実行させた場合も、代行会社に頼んだ場合も、条文の文言に入ります。自分の手で操作していないことは、抗弁になりません。委託した側の責任として読まれる構造です。

納品されたリストの出どころを確認する

リストを購入する場合、出どころを確認してください。名刺を営業リストに入れていいのかで書いた個人情報保護法第30条の確認義務と、同じ場面です。

聞くことは1つ。「このデータはどこから、どのように集めましたか」

地図サービスから集めたと答えた場合、そのリストは規約違反の産物です。答えられない場合も、受け取らない判断をしてください。

「公開情報だから問題ない」という説明

販売側が「すべて公開されている情報です」と説明することがあります。これは論点がずれています。

公開されているかどうかと、そのサービスの規約が取得を許しているかは別の話です。公開されていることは、規約の制限を外す理由になりません。

自社サイトに地図を埋め込む場合

紛らわしい論点を1つ整理しておきます。自社サイトに地図を埋め込む行為と、情報を取得する行為は別です。

提供されている埋め込み用のコードを使って地図を表示するのは、想定された使い方でしょう。これを禁じる条項はありません。

問題になるのは、埋め込んだ地図からデータを抜き出して別の場所に貯める動きのほう。表示と取得を混同しないでください。

営業リストの文脈で関係するのは、後者だけです。自社の所在地を地図で見せることは、この記事の論点に入りません。

API経由なら何ができるのか

では、地図の情報は一切使えないのか。そうではありません。提供されている手段があります。

用意されている経路を使う

事業者向けに、地図の情報をプログラムから取得する仕組みが提供されています。有料ですが、これが規約上の正規の経路です。

画面から取ることと、提供されている経路から取ることは、規約上まったく別の扱いです。同じ情報でも、経路で可否が変わる。

正規の経路でも制限はある

ただし正規の経路を使えば自由になるわけではありません。提供されているポリシーに、保存の制限があります。

原文はこうです。「You must not pre-fetch, cache, or store Places API content beyond the allowed exceptions」

許可された例外を除いて、事前取得も、キャッシュも、保存も禁止という規定です。取得したデータを自社のデータベースに貯めることは、原則としてできない。

表示の義務もある

同じポリシーに、帰属表示の義務があります。「You must follow Google Maps attribution requirements when displaying Content」

取得した情報を画面に出す場合、提供元を表示する必要があります。社内の営業リストとして使うだけなら表示の場面は少ないですが、顧客向けの画面に出すなら関係します。

保存してよいのはIDだけ

保存が原則禁止なら、営業リストは作れないのか。ここに例外が1つあります。

識別子は無期限に保存できる

ポリシーにこうあります。「the place ID, used to uniquely identify a place, is exempt from the caching restrictions. You can therefore store place ID values indefinitely.」

場所を一意に識別するIDだけが、保存の制限から除外されています。このIDは無期限に保存できます。

この例外が意味すること

設計としては、こうなります。

  1. 自社のリストには、識別子と自社で作った情報だけを持つ
  2. 店舗名、住所、電話番号は保存しない
  3. 必要になった時点で、識別子から取得する

つまり地図の情報を「持つ」のではなく、「そのつど参照する」形です。この設計なら、保存の制限に抵触しません。費用と引き換えに、規約上の不安は消えます。

列 保存してよいか
場所の識別子 できる。無期限
店舗名・住所・電話番号 できない
自社で調べた担当者名や接触履歴 できる。自社の情報だから
法人番号 できる。公的データだから

ただし実務では重い

正直に書くと、この設計は営業リストの用途には重いです。

架電するたびに参照が必要になり、費用も発生する。そしてオフラインで一覧を見ることができません。

だから結論はこうなります。地図の情報を営業リストの土台にするのは、正規の経路を使っても相性が良くない。土台は別のところに置くべきです。

許される範囲でリストを作る

では、地図はまったく使えないのか。使える場面があります。

1件ずつ見るのは問題にならない

禁止されているのは大量のダウンロードと一括フィードの作成です。1件の会社を調べるために地図を開くことは、これに当たりません。

商談の前に所在地を確認する。エリアの見当をつける。こうした使い方は、通常の利用の範囲でしょう。

使ってよい場面と、いけない場面

場面 判断
リストにある1社の所在地を確認する 通常の利用
訪問の順路を考える 通常の利用
エリアにどのくらいの店舗があるか見当をつける 通常の利用
検索結果の店舗を順に書き写してリストを作る 大量ダウンロードに当たり得る
ツールで一括取得する 禁止行為
取得したリストを販売する 禁止行為

境目は「リストを作る目的で集めているかどうか」です。1件を調べる行為と、集める行為は違います。

手で写せば大丈夫という誤解

ツールを使わず手作業なら問題ない、という理解があります。これは正確ではありません。

第3項の3つ目が禁じているのは「大量にダウンロードすること、または一括フィードを作成すること」です。手段が自動か手作業かは書かれていません。

自動化の論点は別の条項(利用規約の側)にあります。手作業にすると、そちらは回避できますが、地図の規約の側は残ります。

地図に頼らない作り方

土台を別のところに置くなら、どこに置くか。制約の少ない順に並べます。

公的データが最も制約が少ない

国税庁の法人番号公表サイトは、法人番号、商号、所在地を公開しています。ダウンロードも用意されています。

これを土台にして、必要な情報を自社で足していく。これが最も制約の少ない形でしょう。使い方は営業リストの鮮度で書きました。

ただし店舗単位の情報は入っていません。法人単位なので、チェーンの各店舗を狙う営業には向きません。

店舗単位が必要な場合

店舗単位のリストが要る業態では、別の手段を組み合わせます。

  1. 業界団体や組合の会員名簿。公開されているものを使う
  2. 各社の公式サイトの店舗一覧。1社ずつ見て、自社で整理する
  3. 自治体が公開している許認可の一覧。飲食や建設などで公開されている

3つ目は見落とされがちですが、業種によっては最も使えます。許認可の一覧は、その業を営んでいることが確認済みという利点もあります。

手間の比較

地図から一括で取るのが速いのは事実です。ただし速さの対価として、規約違反という不安定な土台を抱えることになります。

公的データから作ると初速は落ちますが、その後の運用で困らない。取得元を記録でき、鮮度の更新も公的データの更新に合わせられます。

そして納品先に出どころを聞かれたときに答えられます。営業代行として受託している場合、これは実務上重要です。

許認可の一覧はどこで見つけるか

3つ目を具体的に書いておきます。業種ごとに、許認可の一覧を公開している機関が違います。

飲食なら保健所を所管する自治体、建設業なら国土交通省と都道府県、宅建業も同じく国土交通省と都道府県。医療機関は都道府県が一覧を出しています。

探し方は単純で、「業種名+許可+一覧」あるいは「業種名+登録業者」で検索するだけ。データ形式はばらばらですが、多くは一覧表として公開されています。

この方法の利点は3つ。取得元が明確なこと、その業を営んでいることが確認済みであること、そして更新のタイミングが公表されていることです。

運用のルールに落とす

最後に、社内で決めることを整理します。

決める3つ

1  リストの取得元を列に持つ
   公的データ / 公式サイト / 名刺 / 他社提供 / 問い合わせ

2  地図サービスの扱いを明文化する
   1件の確認には使う / リスト作成には使わない

3  外注に出すときの条件
   取得元を報告させる / 地図からの取得を禁止する旨を契約に書く

3つとも、あとから確認できる形にしておく。口頭で決めると守られない。

外注の契約に1行入れる

リスト作成やフォーム送信を外部に委託する場合、契約に1行入れてください。

「地図サービスその他、当該サービスの利用規約が大量取得を禁止している情報源から取得しないこと」

この1行があるだけで、委託先の判断基準が変わります。そして問題が起きたときに、こちらが指示していなかったことを示せます。

既にあるリストをどうするか

過去に地図から作ったリストが社内にある場合の話です。

実務的な対応は、そのリストを使い切らず、公的データを土台にしたリストへ段階的に移すことです。

そして新規の取得を止める。取得元の列を追加して、どの行がどこから来たかを記録しておけば、移行の進み具合も見えてきます。

なお本稿は規約の原文から線を引いたものです。規約は改定されるので、判断の前に最新版を確認してください。

まとめ

  • 判断は法律ではなく規約から確定させる。地図画面からの一括取得は明示的に禁止されている
  • Google マップ追加利用規約の第3項に禁止行為が5つ。3つ目「コンテンツを大量にダウンロードすること、または一括フィードを作成すること」が直撃する
  • 同じ項に「もしくはその行為を第三者に委託すること」が明記されている。ツールも代行も同じ扱い
  • Google利用規約の側には、robots.txt など機械可読な指示に違反する自動アクセスの禁止がある
  • 2つの規約は別々に効く。手作業にしても、大量ダウンロードの禁止は残る
  • 「公開情報だから問題ない」は論点がずれている。公開は規約の制限を外す理由にならない
  • リストを買うなら「どこから、どのように集めたか」を聞く。答えられない相手からは受け取らない
  • 提供されている経路(有料のAPI)が規約上の正規の手段。同じ情報でも経路で可否が変わる
  • ただし正規の経路でも事前取得・キャッシュ・保存が原則禁止
  • 例外は場所の識別子だけ。これは無期限に保存できる
  • 設計としては、識別子と自社情報だけを持ち、店舗名・住所・電話は保存せず、そのつど参照する
  • ただしこの設計は営業リストの用途には重い。土台は別のところに置く
  • 1件ずつ見るのは問題にならない。境目は「リストを作る目的で集めているか」
  • 土台にするなら法人番号公表サイト。ただし店舗単位の情報は入っていない
  • 店舗単位が要るなら、業界団体の名簿、公式サイトの店舗一覧、自治体の許認可の一覧
  • 取得元を列に持つ。地図の扱いを明文化する。外注の契約に1行入れる
  • 既存のリストは使い切らず、公的データを土台にしたものへ段階的に移す

地図から取るのが速いのは事実です。ただし速さの対価は、納品先に出どころを聞かれたときに答えられない状態です。営業代行として受託しているなら、ここは価格より先に効いてきます。

よくある質問

地図サービスから営業リストを作るのは禁止されていますか

禁止されています。Google マップ/Google Earth 追加利用規約の第3項に「コンテンツを大量にダウンロードすること、またはコンテンツの一括フィードを作成すること」が禁止行為として挙げられています。これは法律の話ではなく規約の話ですが、違反するとアカウントの利用停止やサービスの提供拒否につながります。

ツールや代行会社に頼めば自分は関係ありませんか

同じ扱いです。第3項の該当箇所には「もしくはその行為を第三者に委託すること」が明記されています。ツールに実行させた場合も、代行会社に頼んだ場合も条文の文言に入るため、自分の手で操作していないことは抗弁になりません。

手作業でコピーするなら問題ないですか

正確ではありません。第3項が禁じているのは「大量にダウンロードすること、または一括フィードを作成すること」で、手段が自動か手作業かは書かれていません。自動化の論点はGoogle利用規約の側にあり、手作業にするとそちらは回避できますが、地図の規約の側は残ります。

公開されている情報なのに、なぜだめなのですか

公開されているかどうかと、そのサービスの規約が取得を許しているかは別の話だからです。公開されていることは、規約の制限を外す理由になりません。リスト販売業者が「すべて公開情報です」と説明する場合、この2つを混同しています。

APIを使えば自由に保存できますか

できません。提供されているポリシーに「事前取得、キャッシュ、保存を許可された例外を除いて行ってはならない」とあります。例外は場所を一意に識別するIDだけで、こちらは無期限に保存できます。店舗名や住所や電話番号は保存できないため、そのつど参照する設計になります。

地図はまったく使えないのですか

1件ずつ見る使い方は問題になりません。商談前に所在地を確認する、訪問の順路を考える、エリアの見当をつける。こうした利用は通常の範囲です。境目は「リストを作る目的で集めているかどうか」で、1件を調べる行為と集める行為は別のものです。

店舗単位のリストはどう作ればいいですか

法人番号公表サイトは法人単位なので店舗情報が入っていません。店舗単位が必要なら、業界団体や組合の公開名簿、各社の公式サイトの店舗一覧、そして自治体が公開している許認可の一覧を組み合わせます。3つ目は見落とされがちですが、その業を営んでいることが確認済みという利点もあります。

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