この記事の内容
リスケとキャンセルを分ける
商談の前日に「日程を変更させてください」という連絡が来る。あるいは当日の朝に「本日は難しくなりました」と来る。
どちらも予定が飛ぶ点では同じですが、扱いを分けないと案件が静かに消えます。
2つは別の事象
| 事象 | 相手の状態 | こちらがやること |
|---|---|---|
| リスケ | 会う意思はある。日程が合わないだけ | その場で新しい日程を確定させる |
| キャンセル | 日程を決め直すと言っていない | 次の接点を作ってから終える |
| 無断で来ない | 忘れたか、優先度が下がった | 当日中に1回だけ連絡する |
見分け方は単純です。相手が新しい日程の話をしているかどうか。「改めてご連絡します」はリスケではありません。キャンセルです。
分けないと案件が静かに消える
「改めてご連絡します」に「承知しました、お待ちしております」と返す。これが最も多い失敗です。
この時点で、次の行動の主導権が相手に移ります。相手の予定に自社の商談が入っていない状態で、連絡が来るのを待つことになる。
そして多くの場合、連絡は来ません。案件は失注ではなく、忘れられて終わります。
対応の6ステップ
6ステップのうち、勝負が決まるのは1と2。残りは案件を管理下に置き続けるための工程。
当日中に返す
リスケの連絡に対する返信は、受け取った日のうちに出してください。
返信が遅れると何が起きるか
相手は日程を動かした直後なので、代わりの枠がまだ空いています。1日置くと、その枠に別の予定が入ります。
そして相手の側にも、申し訳ないという感覚が残っている時間があります。当日なら候補を受け入れてもらいやすい。
これは相手の心理を利用するという話ではありません。予定表が埋まる前に押さえるという、単純な物理の話です。
返す内容は3行
1行目 了解した旨を短く 2行目 代わりの候補を3つ(日と時間帯を散らす) 3行目 難しければこちらで合わせる旨
3行で足りる。長くすると、相手が読んで返す時間が延びる。
3行目を入れる理由は、候補が全部だめだった場合に相手が止まらないようにするためです。「その他の日程でしたら合わせます」の1行があれば、相手は候補を出せます。
謝罪を先に書かない
「ご連絡ありがとうございます。お忙しいところ恐れ入ります」から始める返信をよく見ます。
相手が謝っている場面で、こちらも恐縮すると、往復が1回増えます。相手は「こちらこそ申し訳ない」と返さざるを得なくなるからです。
承知した旨を1行で受けて、すぐ候補に入る。これが相手の手間を最も減らす形です。
こちらから候補を出す
リスケの連絡に対して「ご都合のよい日をお知らせください」と返すのは、最もよくある失敗です。
相手に考えさせない
相手は日程を動かしたばかりです。そこにもう一度、候補を考える作業を渡すことになります。
そして相手が出した候補がこちらで埋まっていれば、さらに往復が増える。日程調整の往復が増える構造は、初回のときと同じです。詳しくは商談の日程調整で書きました。
候補の出し方
初回と同じく、日と時間帯の2軸で散らします。ただしリスケのときは、もとの日程に近い側を1つ入れてください。
もとの日程に近い候補があると、相手の準備がそのまま使えます。3週間先だけを出すと、準備をやり直すことになり、それ自体が延期の理由になります。
そして候補はもとの所要時間のまま出します。リスケを機に短くすると、案件の優先度を下げたと読まれます。
相手が日程を言えない場合
「今は日程が決められない」と言われることがあります。社内の状況が固まっていない場合です。
このときも、待ってはいけません。「では2週間後にこちらからご連絡します」と、こちらから次の接触日を決めてください。
この1行があるかないかで、案件が残るかどうかが変わります。次の接触日が決まっていない案件は、管理から外れます。
候補を出しても返信が来ない場合
当日中に候補を返したのに、相手からの返信が止まることがあります。リスケの連絡だけ来て、そこで途切れる形。
この場合、3営業日で一度だけ追いかけてください。内容は「先日お送りした候補について、ご都合いかがでしょうか」に、新しい候補を1つ足す形。
新しい候補を足すのは、前の候補がすでに埋まっている可能性があるからです。同じ3つを繰り返すと、相手は同じ判断をもう一度することになる。
それでも返信が無ければ、キャンセルとして扱ってください。リスケの連絡があった案件も、日程が決まらなければキャンセルと同じ状態です。次の接触日を決めて、管理下に残します。
理由をどう扱うか
リスケの連絡には、たいてい理由が添えられています。この扱いを間違えると、関係が悪くなります。
詮索しない
理由を掘り下げないでください。「差し支えなければ、どのようなご事情でしょうか」は不要です。
理由が分かっても、こちらの行動は変わりません。やることは新しい日程を決めることだけだからです。
体調不良と言われたとき
最も多い理由がこれです。ここで2つやってはいけないことがあります。
1つ目、回復の見込みを聞くこと。「いつ頃お戻りでしょうか」は、答えにくい質問です。
2つ目、近すぎる候補を出すこと。翌日や翌々日の候補は、まだ回復していない可能性があります。
体調不良と言われたら、候補は3営業日以降から出してください。そして「お大事になさってください」を1行入れて、候補に入ります。
聞いてよい唯一のこと
理由は聞きませんが、1つだけ確認してよいことがあります。参加者が変わるかどうかです。
リスケの理由が担当者の不在なら、次回も同じ人が出るとは限りません。参加者が変われば、当日の進め方が変わります。
聞き方は「次回は同じメンバーでご参加いただけますでしょうか」で足ります。事情を聞かずに、必要な情報だけ取れます。
キャンセルされたとき
日程を決め直す話が出ない場合、それはキャンセルです。ここからの対応が、案件が残るかどうかを決めます。
「改めて」に承知しましたと返さない
「一度持ち帰らせてください」「改めてご連絡します」。この2つは、次の行動が相手側にある状態です。
承知しましたと返すと、こちらにできることが無くなります。連絡が来るのを待つ案件は、実質的に終わっています。
その場で次の接点を作る
返信に入れるのは3つです。
- 承知した旨。理由は聞かない
- 判断の材料になりそうなものを1つ送る旨(資料、事例、条件の整理など)
- 次にこちらから連絡する時期。「1か月後に一度ご状況を伺います」
3つ目が要点です。相手の同意を求める形ではなく、こちらの予定として伝えてください。「ご連絡してもよろしいでしょうか」と聞くと、断る選択肢を作ることになります。
もちろん、明確に不要と言われたら従います。ただし何も言われていない段階で、こちらから選択肢を提示する必要はありません。
無断で来なかったとき
開始時刻になっても相手が現れない。この場合の対応は決めておいてください。
5分待って連絡が無ければ、こちらから1回だけメールを送ります。内容は「本日お約束しておりましたが、ご都合が変わりましたでしょうか」と、代替候補3つ。
電話はしないでください。会議中や移動中の可能性があり、忘れていた場合は相手に気まずさだけが残ります。
そしてその日のうちに返信が無ければ、翌営業日に1回。それでも無ければ、状態を「時期をおく」にします。3回目は送りません。
直前に条件だけ聞かれたとき
商談の前日に「先に費用感だけ教えてもらえますか」と来ることがあります。多くの場合、これは社内で商談の必要性を問われた結果です。
ここで数字だけ返すと、商談そのものが不要になります。相手の社内で、その数字だけで判断されるからです。
返し方は2つ。幅で答えて、幅が決まる条件を当日に確認したいと書く。あるいは、当日の冒頭10分で費用の話をすると約束する。
どちらも、数字を隠しているわけではありません。営業メールの再送で書いた「要求を下げる」の逆で、ここは下げないほうが相手のためになります。条件が決まらないまま出した数字は、後で必ずずれますから。
自社都合でリスケするとき
こちらから日程を動かす場合の話です。ここには上限を設けてください。
1回までと決める
自社都合のリスケは、1案件につき1回まで。2回目が必要になった時点で、体制の問題です。
相手から見ると、2回動かす会社は「約束が動く会社」になります。商談の前に、取引先としての評価が決まってしまいます。
1回までと決めておくと、社内の調整の優先度が変わります。商談を動かす前に、社内の予定を動かす判断が出ます。
伝え方
避ける 急遽都合が悪くなりまして 社内の都合により 使う こちらの都合で恐縮ですが、日程の変更をお願いできますでしょうか 代わりに下記の日程はいかがでしょうか(候補3つ)
理由をぼかす言葉を並べるより、非を認めて候補を出すほうが早く終わる。
理由を詳しく書く必要はありませんが、「こちらの都合で」と明示してください。主語を曖昧にすると、不誠実に見えます。
代替の候補を同時に出す
変更のお願いと候補を、別のメールに分けないでください。1通目で候補まで出します。
分けると、相手は「変更は分かったが、いつになるのか」という宙ぶらりんの状態で待つことになります。この時間が、案件の温度を下げます。
そして候補は相手が出した日程より前の枠も含めてください。後ろ倒しだけの候補は、こちらの都合をもう一度押し付ける形になります。
同行者がいる商談を動かすとき
自社から2人以上で出る商談を動かす場合、押さえ直す枠が2つ以上になります。難度が一気に上がる場面。
ここでやりがちなのが、社内の予定を先に確認してから相手に候補を出す形です。確認している間に、相手の枠が埋まります。
順番を逆にしてください。先に相手へ候補を出し、決まってから社内を合わせる。社内の予定は動かせますが、相手の予定は動かせません。
同行者が動かせない役職者の場合だけ、先に社内を確認します。その場合も、確認は当日中に終えてください。翌日に持ち越すと、結局同じことが起きます。
空いた枠をどうするか
リスケやキャンセルで枠が空きます。ここを放置すると、1日の生産量がそのまま落ちます。
前日までに分かった場合
前日までに分かれば、枠は埋められます。日程調整中の相手に、その枠を候補として出してください。
これは商談の日程調整で書いた前日リマインドが効く場面です。リマインドを送る目的の1つが、まさにこれでした。
当日に分かった場合
当日に空いた枠を商談で埋めるのは、現実的ではありません。代わりに使い道を決めておいてください。
- 返信待ちになっている相手への再送を書く
- 直近の商談の記録を整理する
- 次週の日程調整の候補を出し切る
先に決めておかないと、空いた時間は消えます。「空いたら何をするか」を1つ決めておくだけで、落ちる生産量が変わります。
枠を埋める準備
埋められるかどうかは、日程調整中の案件がいくつあるかで決まります。
常に3件から5件が調整中の状態を保っておくと、空いた枠を当てる先があります。調整中が0件だと、空いた枠は必ず消えます。
これはインサイドセールスのトスアップ基準で書いた工程の考え方と同じです。手前の工程に在庫が無いと、後ろの工程が止まります。
リスケが重なった週の扱い
ある週に3件も4件もリスケが重なることがあります。連休の前後や、月末月初に起きやすい。
こういう週は、個別の案件の問題ではありません。そもそもその週に入れたことが原因です。
だから対処も個別にやらないこと。リスケされた全件に対して、同じ週の候補を出すと、また同じ理由で動きます。翌週以降に寄せてください。
そして次から、その時期に商談を集めないと決める。連休明けの初日、月末の最終営業日、期初の第1週。この3つは避けるだけで、リスケが減ります。
記録と、打ち切りの基準
リスケは繰り返されます。記録が無いと、何回目かが分からなくなります。
記録する4項目
商談の表に足す列 リスケ回数 こちら都合 / 相手都合を分けて数える 最後に動いた日 いつ日程が変わったか 次回の確定状況 確定 / 調整中 / 未定 次の接触予定日 未定の場合に、こちらから連絡する日
4列。最後の1つが空欄の案件は、管理から外れている。
こちら都合と相手都合を分けて数えるのは、原因が違うからです。こちら都合が増えているなら、枠の押さえ方に問題があります。
3回目で状態を変える
相手都合のリスケが3回続いたら、案件の状態を変えてください。失注にするのではなく、「時期をおく」に移します。
3回動くということは、いま優先度が高くないということです。4回目の候補を出しても、同じことが起きます。
移すときに1行送ります。「お忙しい時期かと思いますので、一度お時間を置かせていただきます。3か月後に改めてご連絡します」
これで関係は切れません。そして次の接触日が決まるので、案件は管理下に残ります。
月1回、リスケ率を見る
確定した商談のうち、実施までに日程が動いた割合を出してください。
この率が高いなら、原因は日程調整の段階にあります。候補を出す期間が先すぎるか、所要時間が長すぎるか。商談の中身ではなく、押さえ方の問題です。
そして実施率も一緒に見ます。確定した件数のうち、実際に実施できた割合です。リスケ率が高く実施率が低いなら、確定の基準が緩い可能性があります。
まとめ
- リスケとキャンセルは別の事象。見分け方は、相手が新しい日程の話をしているかどうか
- 「改めてご連絡します」はリスケではなくキャンセル。ここに「お待ちしております」と返すと案件が消える
- リスケの返信は受け取った日のうちに出す。1日置くと相手の枠に別の予定が入る
- 返す内容は3行。了解/候補3つ/難しければ合わせる旨
- 謝罪を先に書かない。相手が謝っている場面で恐縮すると往復が1回増える
- 「ご都合のよい日を」と返さない。日程を動かしたばかりの相手に、もう一度考えさせることになる
- 候補は日と時間帯の2軸で散らし、もとの日程に近い側を1つ入れる。準備がそのまま使える
- 所要時間はもとのまま。リスケを機に短くすると、優先度を下げたと読まれる
- 日程が決められないと言われたら、こちらから次の接触日を決める
- 理由は詮索しない。分かってもこちらの行動は変わらない
- 体調不良と言われたら、候補は3営業日以降から出す
- 聞いてよいのは参加者が変わるかどうかだけ
- キャンセル時は3つ返す。承知/材料を1つ送る旨/次にこちらから連絡する時期
- 次の連絡は同意を求めず、こちらの予定として伝える
- 無断で来なかったら、5分待ってメールを1回。電話はしない。翌営業日にもう1回で打ち切る
- 自社都合のリスケは1案件1回まで。2回目は体制の問題
- 変更のお願いと候補を別メールに分けない。1通目で候補まで出す
- 空いた枠は、前日までなら調整中の相手に当てる。当日なら使い道を先に決めておく
- 調整中の案件を常に3件から5件持つ。0件だと空いた枠は必ず消える
- 相手都合のリスケが3回続いたら「時期をおく」に移す。失注にはしない
- 月1回、リスケ率と実施率を見る。リスケ率が高いのは押さえ方の問題
リスケとキャンセルは、避けられない事象です。防ぐのではなく、起きたときに主導権を渡さない形を決めておく。当日中に候補を返す。次の接触日を必ず決める。この2つだけで、消える案件はかなり減ります。
よくある質問
リスケの連絡にはいつ返信すべきですか
受け取った日のうちです。相手は日程を動かした直後なので代わりの枠がまだ空いていますが、1日置くとそこに別の予定が入ります。心理の話ではなく、予定表が埋まる前に押さえるという物理の話です。返す内容は、了解した旨と候補3つと、難しければ合わせる旨の3行で足ります。
「改めてご連絡します」と言われたらどうしますか
これはリスケではなくキャンセルです。「お待ちしております」と返すと、次の行動の主導権が相手に移り、連絡は多くの場合来ません。承知した旨、判断の材料を1つ送る旨、そして次にこちらから連絡する時期の3つを返してください。時期は同意を求めず、こちらの予定として伝えます。
リスケの理由は聞いたほうがいいですか
聞かないでください。理由が分かっても、やることは新しい日程を決めることだけで変わりません。ただし1つだけ確認してよいのが、次回の参加者が変わるかどうかです。担当者の不在が理由なら次回のメンバーが変わる可能性があり、当日の進め方に影響します。
体調不良と言われたときの候補はいつから出しますか
3営業日以降から出してください。翌日や翌々日の候補は、まだ回復していない可能性があります。そして回復の見込みを聞かないこと。「いつ頃お戻りでしょうか」は答えにくい質問です。「お大事になさってください」を1行入れて、候補に入ります。
商談の時間に相手が来なかったらどうしますか
5分待って連絡が無ければ、メールを1回だけ送ります。内容は都合が変わったかの確認と、代替候補3つ。電話はしないでください。会議中や移動中の可能性があり、忘れていた場合は気まずさだけが残ります。その日に返信が無ければ翌営業日に1回、それでも無ければ状態を「時期をおく」にします。
自社都合のリスケは何回まで許容されますか
1案件につき1回までと決めてください。2回目が必要になった時点で、枠の押さえ方や体制の問題です。相手から見ると2回動かす会社は「約束が動く会社」になり、商談の前に取引先としての評価が決まってしまいます。上限を決めておくと、社内の予定を動かす判断が出ます。
リスケが続く相手はどう扱いますか
相手都合のリスケが3回続いたら、状態を「時期をおく」に移してください。失注にはしません。3回動くのは、いま優先度が高くないということなので、4回目の候補を出しても同じことが起きます。移すときに「3か月後に改めてご連絡します」の1行を送れば、関係は切れず案件も管理下に残ります。