この記事の内容
「火曜から木曜の10時」の出どころを探した
営業メールの送信時間を調べると、どのサイトでも似た答えが並びます。火曜から木曜がよい。時間は10時前後がよい。月曜の朝と金曜の夕方は避ける。
この記事を書くにあたって、その根拠を探しました。一次的な出典にはたどり着けませんでした。
各社の記事が互いを参照している状態に見えます。元の調査が示されているものは見つからず、示されていても海外のメールマーケティング会社が自社顧客の配信結果を集計したもので、日本の法人営業のメールとは対象が違いました。
そこで、国内のビジネスメールについて最も広く参照されている一次調査を確認しました。一般社団法人日本ビジネスメール協会の「ビジネスメール実態調査2026」です。2026年4月に実施され、有効回答は1,293名です。
この調査にも、時間帯別の開封や返信のデータは載っていません。
だから、この記事では最適な送信時刻を断定しません
「10時に送れば返信率が上がる」と書いている記事は多いのですが、その根拠を確認できませんでした。確認できないことを書くと、読んだ人が自分の数字を測らなくなります。この記事で扱うのは、一次調査から実際に読み取れることと、自分で時間帯を決めるための手順です。
ただし、この調査には時間帯以上に重要な数字が載っています。そちらから始めます。
一次調査から分かる4つの数字
ビジネスメール実態調査2026から、営業メールの設計に直結する数字を4つ取り出します。
一次調査から読み取れる数字。時間帯の答えは載っていないが、設計に効く数字は載っている。
受信46.49通に対して、送信12.27通
1日あたりの平均受信通数は46.49通、平均送信通数は12.27通です。受信が送信のおよそ3.8倍あります。
ここから分かるのは、相手の受信箱は、自分が送っている感覚の4倍混んでいるということです。自分が1日12通送っているとき、相手は46通受け取っています。その46通のうち、あなたの1通が占める割合を考えると、送信時刻の最適化よりも先にやることが見えてきます。
1通を読む平均時間は1分39秒
同調査では、メール1通を読む平均時間が1分39秒とされています。書く時間は6分19秒です。
読む時間が2分に満たないという事実は、本文の長さの上限を決めます。読み飛ばされる前提ではなく、1分39秒で読み終わる量に収めるという設計になります。
半数が1日に10回以上確認し、約6割がスマートフォンで見る
ここが送信時刻の議論に直接効きます。1日10回以上確認する人が半数いるなら、「朝イチに送らないと埋もれる」という前提は弱くなります。10回確認する人の受信箱は、10回に分けて処理されているからです。
そして約6割がスマートフォンで確認しています。デスクに座ってパソコンで読むという想定で件名や本文を作ると、実際の見え方とずれます。
6割超が24時間以内に返信がないと遅いと感じる
相手の期待値が24時間だということです。この数字は、こちらが返信を待つ側になったときの設計にも使えます。送ってから24時間で返信がないことを「無視された」と解釈するのは早すぎますが、相手の基準が24時間であることは、再送の間隔を決めるときの出発点になります。
時間帯より先に効く3つの変数
上の4つの数字を並べると、送信時刻が効く順番が見えてきます。
| 順番 | 変数 | 根拠になる数字 |
|---|---|---|
| 1 | 件名 | 受信46.49通のなかで開くかどうかは、ほぼ件名で決まる。しかも6割はスマートフォンの画面で見ている |
| 2 | 本文の長さ | 1通を読む平均は1分39秒。これを超える量は、最後まで読まれない前提で設計する |
| 3 | 送る相手が合っているか | 件名と本文がよくても、担当でない人に届けば転送か削除で終わる |
| 4 | 送信の時間帯 | 1日10回以上確認する人が半数。時間帯による差は、上の3つより小さいと考えるのが自然 |
時間帯を4番目に置いているのは、効果がないという意味ではありません。上の3つを直していない状態で時間帯だけ変えても、変化が測れないという意味です。変数が3つ動いている状態では、時間帯の効果が見えません。
順番を守ると、測れるようになる
件名と本文の型を固定してから、時間帯だけを変える。この順番にすると、時間帯の効果が自分のデータで見えます。逆にすると、何が効いたのか永久に分かりません。他社の「10時が良い」を採用しても自社の改善につながらないのは、そもそも他社と件名も本文も違うからです。
スマホで読まれる前提の件名
約6割がスマートフォンで確認しているという数字から、件名の設計が決まります。
先頭が勝負になる
スマートフォンのメールアプリは、一覧画面で件名を途中までしか表示しません。表示される文字数は機種と設定で変わるため、何文字までと断定はできません。ただし、パソコンの一覧より短いという方向は確実です。
そこで、件名の先頭に情報を寄せます。具体的には次の順で組み立てます。
- 何の話か。名詞で言い切る。動詞や修飾で始めない
- 誰に向けたものか。部署や役割が分かる語
- 社名。ここは末尾でよい
良くない例 はじめまして。株式会社◯◯の(名前)と申します。 直した例 中途採用の母集団形成について|株式会社◯◯
件名の直し方。上は先頭12文字が情報ゼロになっている。
「はじめまして」から始まる件名は、先頭の12文字が情報を持ちません。スマートフォンの一覧で切れる位置を考えると、この12文字は致命的です。
記号を使いすぎない
件名に角括弧や区切り線を多用すると、一斉配信のメールに見えます。区切りは1つまでにして、装飾のための記号は入れません。
数字は入れると効きます。ただし根拠のない数字は入れません。「返信率3倍」のような数字を件名に置くと、本文で裏付けられなかったときに信頼を失います。
Reを付けない
やりとりがないのに件名にReを付ける手法があります。開封率は上がるかもしれませんが、開いた相手はすぐに初回だと気づきます。
テレアポで担当者の名前を知っているふりをする手法と同じ構造です。短期的には通りますが、気づかれた時点で、その会社への今後の接点を失います。営業代行なら、失うのは依頼元の信用です。
1分39秒で読み終わる本文
読む平均時間が1分39秒という数字から、本文の量が決まります。
目安は400字から600字
日本語を黙読する速度には個人差がありますが、1分39秒で読める量はおおむね600字から800字程度です。そこから、件名の確認や署名を見る時間を差し引くと、本文は400字から600字が現実的な上限になります。
この範囲に収めるには、書く順番を固定するのが早いです。
1. 誰宛かと、何の話か(1〜2行) 2. なぜこの会社に連絡したか(1〜2行) 3. 何ができるか(2〜3行) 4. 相手に取ってほしい行動(1行・1つだけ) 5. 断る場合の導線(1行) 6. 署名
本文の構成。この順で書くと、削る場所が分かりやすくなります。
実際の形
株式会社◯◯ 採用ご担当者様 はじめてご連絡いたします。 株式会社△△の(名前)と申します。 御社の採用ページで中途採用を 複数職種で募集されているのを拝見し、 ご連絡いたしました。 弊社では、母集団形成の部分だけを 切り出してお手伝いしております。 求人媒体の運用は変えずに、 応募数を増やす形での導入が多いです。 もしご関心があれば、 事例をまとめた資料をお送りします。 「資料希望」とだけご返信ください。 不要であればご返信は不要です。 以後のご連絡は控えます。 (署名:社名・氏名・電話番号・メールアドレス・自社サイトのURL)
本文の型。カッコ内は説明で、実際には書きません。本文は約340字です。
「資料希望とだけご返信ください」が効く理由
相手に取ってほしい行動を1つに絞り、しかも返信に必要な手間を最小にしています。「ご都合のよい日時をいくつかお知らせください」と書くと、相手は予定表を開く必要があります。その時点で後回しになります。
4文字返信すれば済む形にしておくと、関心の有無だけが先に分かります。日程はその後で調整できます。
断る導線を入れる
「不要であればご返信は不要です。以後のご連絡は控えます」を入れます。これは相手のためであると同時に、こちらの工数も減らします。反応がなかった相手を追い続けずに済むからです。
ただし、書いたなら必ず守ってください。書いておいて再送すると、意思表示の無視になります。
自分の時間帯を決める手順
ここからが本題です。他社の数字が使えない以上、自分で測ります。手順は4つです。
1. 先に件名と本文を固定する
前の2章の型で、件名と本文を1つに決めます。ここを動かしたまま時間帯を測っても、何が効いたか分かりません。
2. 時間帯を4つの枠に丸める
1時間刻みで測ると、枠あたりの件数が少なくなりすぎて判断できません。4つに丸めます。
| 枠 | 時間帯 | 想定している状況 |
|---|---|---|
| A | 始業前から午前中 | 出社直後にまとめて処理される時間 |
| B | 昼前後 | 移動や休憩の合間にスマートフォンで見る時間 |
| C | 午後 | 打ち合わせの間に処理される時間 |
| D | 終業前から夜 | 翌朝にまとめて読まれる可能性が高い時間 |
枠の境目は、自社の対象業種に合わせて決めてください。小売や飲食が対象なら、一般的な事務職とは動き方が違います。
3. 枠ごとに同じ数だけ送る
リストを4分割して、枠ごとに同じ通数を送ります。ここで業種や企業規模が枠に偏らないように分けてください。Aの枠だけ大企業が多い状態で比べても、時間帯の差なのか企業規模の差なのか分かりません。
判断に必要な件数は、枠あたり最低でも数十通です。10通ずつで差が出たように見えても、それは偶然の範囲に収まります。
分け方は、リストを上から順に4等分するのではなく、1件ずつ順番に枠を振っていくのが確実です。リストは業種順や地域順に並んでいることが多く、上から4等分すると枠ごとに性質が偏ります。1行目をA、2行目をB、3行目をC、4行目をD、5行目をAと振っていけば、偏りは自然に散ります。
なお、同じ企業に複数回送ることになった場合は、2回目以降を集計から外してください。1回目で認知が発生しているため、時間帯の比較になりません。
4. 3つの数字を枠ごとに数える
| 数字 | 数え方 | 分かること |
|---|---|---|
| 到達率 | エラーで戻らなかった数 ÷ 送信数 | リストの鮮度。時間帯とは無関係なので、先に確認して除外する |
| 返信率 | 何らかの返信が来た数 ÷ 到達数 | 断りの返信も数える。読まれたかどうかの指標になる |
| 前向きな返信率 | 資料希望や日程調整に進んだ数 ÷ 到達数 | 実際に効いたかどうか |
開封率を入れていないのは、追跡用の画像を埋め込む必要があり、受信側の設定で画像が読み込まれないことが多いためです。数えられるのに信頼できない数字を置くと、判断を誤ります。
断りの返信も、返信として数える
「結構です」という返信は、成果としては失敗ですが、データとしては成功です。読まれたことが確定しているからです。断りの返信が多い枠は、少なくとも届いて読まれている枠です。ここを失敗として除外すると、時間帯の比較ができなくなります。
時間帯について、法令で確実に言えること
送信時間に関する法的な制約があるのかどうか、条文で確認しました。
時間帯を制限する規定はない
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律には、送信してよい時間帯を定めた条文がありません。深夜に送っても、休日に送っても、それ自体で違反になることはありません。
ただし、時間帯に関係なく常に効く義務が2つあります。こちらを外すと、送信時刻を工夫する以前の問題になります。
第4条の表示義務
広告宣伝のメールを送るときは、次の内容が受信者の画面に正しく表示されるようにしなければなりません。
一 当該送信者の氏名又は名称 二 前条第三項本文の通知を受けるための 電子メールアドレス又は 電気通信設備を識別するための 文字、番号、記号その他の符号
特定電子メール法 第4条第1号・第2号。第3号で、その他の事項が省令に委ねられています。
1号が送信者名、2号が受信拒否の通知先です。つまり署名に社名と氏名を書き、配信停止の連絡先を明記するということです。営業メールを1通ずつ手で送っている場合でも、広告宣伝が目的なら対象になります。
第3条第3項のオプトアウト
受信拒否の通知を受けた後は、その意思に反して送ってはいけません。条文はこうです。
送信者は、第一項各号に掲げる者から 総務省令・内閣府令で定めるところにより 特定電子メールの送信をしないように求める旨の 通知を受けたときは、 その通知に示された意思に反して、 特定電子メールの送信をしてはならない。
特定電子メール法 第3条第3項本文。読みやすさのため改行を入れています。
ここで重要なのは、この義務に時間的な期限がないことです。1年前に断られた相手も対象です。だから、断られた相手を記録して恒久的に除外する運用がないと、いずれ違反します。
フォーム営業との違いについては、フォーム営業は違法なのかで、どの法律がどちらに適用されるかを条文で整理しています。
再送のタイミングをどう決めるか
1通目に返信がなかったときの話です。ここも「3日後がよい」という数字が流通していますが、出典は確認できませんでした。代わりに、使える数字が1つあります。
24時間という期待値から逆算する
調査で、6割超が24時間以内に返信が来ないと遅いと感じるとされています。これは相手が自分あてのメールに感じている基準であって、営業メールに当てはまるわけではありません。
ただし、この基準を持っている人が、営業メールを24時間放置したということは、意図的に後回しにしたか、見ていないかのどちらかです。翌日に再送すると、前者だった場合に「急かされた」と受け取られます。
実務上は、1回目の再送まで1週間前後を目安にすると、後回しにした相手の処理サイクルを1周待つ形になります。ここは断定できる根拠がないので、自分で測って調整してください。
再送の内容を変える
同じ文面を送り直すのは、相手にとっては同じメールが2通届いただけです。再送では次の2点を変えます。
- 件名を変える。前回と同じ件名だと、既読のメールだと判断されます
- 要求を下げる。1通目で資料送付を提案したなら、2通目は「今は不要かどうかだけ教えてください」に下げます
何回で止めるかを先に決める
回数の上限は法律に書かれていません。だから自分で決めます。返信がない場合に2回までにするのか3回までにするのか。決めて、記録と照合できる状態にしておきます。
そして断りの返信が来たら、回数に関係なくその時点で恒久的に除外します。これは第3条第3項があるため、自分のルールではなく法律上の義務です。
まとめ
- 「火曜から木曜の10時」の一次的な出典は確認できなかった。国内で最も参照されるビジネスメール実態調査2026にも、時間帯別のデータは載っていない
- 同調査で使えるのは、受信46.49通に対して送信12.27通、1通を読む平均1分39秒、半数が1日10回以上確認、約6割がスマートフォン、6割超が24時間以内に返信がないと遅いと感じる、という数字
- 効く順番は、件名、本文の長さ、送る相手、そして時間帯。上の3つを固定しないと、時間帯の効果は測れない
- 件名は先頭に情報を寄せる。「はじめまして」で始めると先頭12文字が無駄になる。やりとりがないのにReを付けない
- 本文は400字から600字。相手に取ってほしい行動は1つに絞り、返信の手間を最小にする
- 時間帯は4つの枠に丸めて、件名と本文を固定したうえで、枠あたり数十通ずつ送って比べる
- 法令に時間帯の制限はない。ただし第4条の表示義務と第3条第3項のオプトアウトは、時間に関係なく常に効く
- 断られた相手の除外には期限がない。記録して恒久的に外す運用がないと、いずれ違反する
送信時刻を調べている時間で件名を直したほうが、先に結果が変わります。時間帯は、件名と本文を固定したあとに残る、最後の変数です。
よくある質問
結局、何時に送るのが正解なのですか
一次的な根拠が確認できないため、この記事では断定しません。断定している記事の数字は、出典をたどると互いを参照しているか、海外のメールマーケティング配信の集計でした。対象が日本の法人営業とは違います。件名と本文を固定したうえで、時間帯を4つの枠に分けて自分で測ってください。枠あたり数十通たまれば傾向が見えます。
深夜や休日に送ると法律違反になりますか
特定電子メール法に送信時間帯を制限する条文はありません。深夜や休日に送ること自体で違反にはなりません。ただし第4条の表示義務と第3条第3項のオプトアウトは、時間帯に関係なく常に適用されます。署名に社名と氏名、受信拒否の連絡先を明記してください。
本文は短いほうがいいのですか
短さそのものが目的ではありません。1通を読む平均時間が1分39秒という調査結果から逆算すると、本文は400字から600字が現実的な上限になります。それ以上書くなら、後半は読まれない前提で構成してください。重要な情報を後半に置かないという設計の話です。
開封率は測らなくていいのですか
追跡用の画像を埋め込む方法がありますが、受信側の設定で画像が読み込まれないことが多く、数字が実態とずれます。数えられるのに信頼できない指標を置くと判断を誤るので、到達率、返信率、前向きな返信率の3つで見ることを勧めます。
返信がないとき、何日後に再送すればいいですか
根拠のある日数は確認できませんでした。目安としては1回目の再送まで1週間前後です。調査では6割超が24時間以内に返信がないと遅いと感じるとされているため、翌日の再送は急かしていると受け取られる可能性があります。再送では件名を変え、要求を下げてください。
件名にReを付けると開封率が上がると聞きました
開封率は上がるかもしれませんが、開いた相手はすぐに初回だと気づきます。テレアポで担当者名を知っているふりをするのと同じ構造で、気づかれた時点でその会社への今後の接点を失います。営業代行なら、失うのは依頼元の信用です。使わないでください。
一度断られた相手に、半年後なら送ってもいいですか
特定電子メール法第3条第3項には期限の定めがありません。受信拒否の通知を受けた後は、その意思に反して送ってはならないとだけ書かれています。半年でも1年でも、断られた記録がある相手は除外してください。だからこそ、断られた事実を恒久的に残す記録が必要になります。