
不動産投資の説明で「減価償却で節税できます」と言われます。仕組み自体は実在しますが、この説明には期限が書かれていません。減価償却は、耐用年数が過ぎれば計上できなくなります。その年が来ると、現金の出入りは変わらないのに税負担だけが増えます。
大事なのは、その年が何年目なのかは買う前に計算できるということです。中古物件の耐用年数は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の第3条が定める「簡便法」で求められます。償却率も同じ省令の別表第八に一覧で載っています。どちらも誰でも引ける情報です。
この記事では、耐用年数省令第3条・別表第一・別表第八と、国税庁のタックスアンサー5404だけを根拠に、中古物件の耐用年数と年間の償却額、そして償却が終わる年を計算する手順を書きます。
結論:償却が終わる年は、買う前に計算できる
必要なのは3つの数字だけ
計算に要るのは次の3つです。どれも買う前に分かります。
- 建物の構造(登記事項証明書の表題部に書かれています)
- 築年数(同じく表題部の建築年月日から数えます)
- 建物部分の取得価額(売買契約書で土地と建物が分かれていればその額)
この3つから、法定耐用年数 → 簡便法による耐用年数 → 償却率 → 年間の償却額 → 償却が終わる年、の順で出ます。
結論:3ステップ
② 簡便法で耐用年数を出す(全部経過なら法定×20%、一部経過なら(法定-経過)+経過×20%)
③ その年数の償却率を別表第八で引き、建物の取得価額に掛ける
端数処理があります。1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年です。国税庁のタックスアンサー5404に明記があります。
中古の耐用年数は「簡便法」で出す
原則は「使用可能期間の見積り」
減価償却資産の耐用年数等に関する省令(以下「耐用年数省令」)の第3条第1項は、中古資産を取得して業務・事業の用に供した場合の耐用年数について、前二条の規定にかかわらず次に掲げる年数によることができると定めています。
第1号が原則で、「当該資産をその用に供した時以後の使用可能期間(中略)の年数」です。つまり、あと何年使えるかを見積もる。
ただ、あと何年使えるかを個人が合理的に見積もるのは難しい。根拠を示せと言われても困ります。そこで第2号が置かれました。
第2号が簡便法
第2号は、第1号の年数を「見積もることが困難なものに限る」としたうえで、次の2つを示します。
- イ 法定耐用年数の全部を経過した資産:当該資産の法定耐用年数の100分の20に相当する年数
- ロ 法定耐用年数の一部を経過した資産:当該資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の100分の20に相当する年数を加算した年数
条文には「その年数が二年に満たないときは、これを二年とする」とも書かれています。1年未満の端数を切り捨てる点は、国税庁のタックスアンサー5404が明記しました。
この条文は個人にも適用されます。第3条第1項本文が「個人において使用され、又は法人において事業の用に供された(中略)資産の取得をしてこれを個人の業務又は法人の事業の用に供した場合」と書いているためです。
国税庁の計算例
言葉だけでは分かりにくいので、国税庁が示している計算例をそのまま引きます。タックスアンサー5404に載っているものです。
法定耐用年数が30年で、経過年数が10年の中古資産の場合。
- 法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数 30年 - 10年 = 20年
- 経過年数10年の20パーセントに相当する年数 10年 × 20% = 2年
- 耐用年数 20年 + 2年 = 22年
簡便法が使えない場合がある
第3条第1項のただし書きに、条件があります。業務・事業の用に供するために支出した資本的支出の金額が取得価額の100分の50に相当する金額を超える場合には、第2号(簡便法)は使えません。
さらにタックスアンサー5404によれば、資本的支出の金額が再取得価額(同じ新品を取得する場合の取得価額)の50パーセントを超える場合には、法定耐用年数によることになります。
大規模なリノベーションを前提に中古を買う場合、この線を超えるかどうかで耐用年数が変わります。工事の見積額が建物価格の半分に近づくなら、先に確認してください。
法定耐用年数は省令の別表第一にある
住宅用の建物
耐用年数省令の別表第一「機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」が、構造と用途の組み合わせで年数を定めています。住宅用の行だけを抜き出すと、次のとおりです。
| 構造 | 住宅用の法定耐用年数 |
|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 |
| れんが造・石造・ブロック造 | 38年 |
| 金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 34年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 27年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 |
| 木造・合成樹脂造 | 22年 |
| 木骨モルタル造 | 20年 |
表の区分は「店舗用、住宅用、寄宿舎用、宿泊所用、学校用又は体育館用のもの」という括りです。同じ構造でも事務所用なら年数が変わります。鉄筋コンクリート造の事務所用は50年、木造の事務所用は24年です。
金属造は「肉厚」で3段階に分かれる
見落とされやすいのが金属造です。骨格材の肉厚で3つに分かれ、34年・27年・19年と大きく違います。同じ「鉄骨造」でも、軽量鉄骨なら19年や27年です。
肉厚は登記事項証明書に書かれていないことがあります。建築確認済証や設計図書で確認するか、売主・仲介会社を通じて確認してください。ここを取り違えると、耐用年数が15年ずれます。
経過年数は建築年月日から数える
経過年数は、登記事項証明書の表題部に記載された建築年月日から、業務の用に供した日までで数えます。マンションの場合、専有部分の表題部に建築年月日があります。
なお、建物の構造も表題部に記載されています。登記事項証明書1通で、構造と築年数の両方が確認できます。手数料は書面請求600円、オンライン請求・送付520円です。
償却率も省令で決まっている
別表第八の一覧
平成19年4月1日以後に取得した建物の償却方法は定額法で、償却率は耐用年数省令の別表第八「平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表」に定められています。
この記事で使う年数を抜き出します。
| 耐用年数 | 定額法の償却率 | 耐用年数 | 定額法の償却率 |
|---|---|---|---|
| 3年 | 0.334 | 22年 | 0.046 |
| 4年 | 0.250 | 27年 | 0.038 |
| 9年 | 0.112 | 34年 | 0.030 |
| 15年 | 0.067 | 35年 | 0.029 |
| 18年 | 0.056 | 38年 | 0.027 |
| 19年 | 0.053 | 47年 | 0.022 |
| 20年 | 0.050 | 50年 | 0.020 |
数字を見て気づくことがあります。耐用年数が短いほど、償却率は跳ね上がります。4年なら0.250で、47年の0.022の11倍以上です。築古の木造が節税目的で好まれるのは、この差が理由です。
ただし総額は変わらない
償却率が高いからといって、経費にできる総額が増えるわけではありません。建物の取得価額を何年で割るかの違いです。短い年数で大きく落とすか、長い年数で薄く落とすか。
短期間で落とせば、その期間の所得は圧縮されます。一方、売却時には償却した分だけ取得費が小さくなるため、譲渡所得が大きくなります。売るときの計算は家を売った年の確定申告で扱っています。
計算してみる。3つのケース
前提
以下はすべて仮定値による計算例です。実際の税額は所得や他の要素で変わります。
いずれも、売買契約書で土地と建物が分かれており、建物部分の取得価額が判明しているものとします。取得は平成19年4月1日以後なので、償却方法は定額法です。また、いずれも資本的支出はないものとし、簡便法が使える前提で計算します。
築年数は登記事項証明書の表題部の建築年月日から数え、取得した年に業務の用に供したものとします。初年度は月数按分になりますが、ここでは年間の金額で比べます。
ケースA:築25年の木造アパート、建物1,000万円
もっとも償却額が大きく出るパターンです。木造の法定耐用年数を築年数が超えているため、簡便法の「全部を経過した資産」に当たります。
- 法定耐用年数は木造・住宅用で22年。築25年なので全部を経過しています
- 簡便法は22年 × 20% = 4.4年。1年未満を切り捨てて4年
- 4年の償却率は0.250
- 年間の償却額は1,000万円 × 0.250 = 250万円
4年で償却は終わります。5年目からは、この250万円がまるごと消えます。
ケースB:築15年のRC造マンション、建物1,800万円
区分マンションでよくあるパターンです。RC造は法定耐用年数が長いため、築15年でもまだ一部しか経過していません。
- 法定耐用年数はRC造・住宅用で47年。築15年なので一部を経過しています
- 簡便法は(47年 - 15年)+ 15年 × 20% = 32年 + 3年 = 35年
- 35年の償却率は0.029
- 年間の償却額は1,800万円 × 0.029 = 52万2,000円
ケースAの5分の1です。同じ建物価格でも構造と築年数でこれだけ違います。
ケースC:築20年の重量鉄骨、建物1,500万円
- 法定耐用年数は金属造(肉厚4mm超)・住宅用で34年。築20年で一部経過
- 簡便法は(34年 - 20年)+ 20年 × 20% = 14年 + 4年 = 18年
- 18年の償却率は0.056
- 年間の償却額は1,500万円 × 0.056 = 84万円
ここで、もし肉厚が3mm以下だったら法定耐用年数は19年になります。築20年なら全部経過なので、19年 × 20% = 3.8年 → 3年。償却率は0.334で、年間501万円です。肉厚の確認を怠ると、6倍違う数字で計画を立てることになります。
3つを並べる
建物価格はいずれも1,000万円台なのに、年間の償却額は5倍近く開きます。構造と築年数が、そのまま数字の差になって出ます。
| ケース | 法定 | 簡便法 | 償却率 | 年間償却額 |
|---|---|---|---|---|
| A 築25年 木造 1,000万円 | 22年 | 4年 | 0.250 | 250万円 |
| B 築15年 RC 1,800万円 | 47年 | 35年 | 0.029 | 52万2,000円 |
| C 築20年 重量鉄骨 1,500万円 | 34年 | 18年 | 0.056 | 84万円 |
建物と附属設備を分けると、償却は前に寄る
別表第一には「建物附属設備」の区分もある
別表第一には、建物とは別に建物附属設備の区分があります。主なものを挙げます。
| 建物附属設備 | 耐用年数 |
|---|---|
| 電気設備(照明設備を含む)・その他のもの | 15年 |
| 給排水または衛生設備およびガス設備 | 15年 |
| 冷房・暖房・通風またはボイラー設備(冷凍機の出力が22kW以下) | 13年 |
| 昇降機設備(エレベーター) | 17年 |
| 昇降機設備(エスカレーター) | 15年 |
| 消火・排煙または災害報知設備および格納式避難設備 | 8年 |
建物本体が47年でも、附属設備は8年から17年です。取得価額を建物本体と附属設備に区分できれば、設備分は短い年数で償却できます。
ただし、区分には根拠が要る
区分するには、それぞれの取得価額が分かっている必要があります。新築を売主から買う場合は、売買契約書や工事内訳書で区分されていることも多いでしょう。中古の場合、契約書に区分がないのが通常です。
根拠のない区分は認められません。「だいたい2割が設備」といった按分を自分で決めることはできません。区分を検討するなら、工事内訳書などの資料を売主から入手できるかを先に確認し、税理士に相談してください。
設備分の償却が終わる年も、別に来る
区分した場合、償却が終わる年が2回に分かれます。耐用年数の短い設備分が先に終わり、建物本体が後に残る形です。
たとえばRC造の区分マンションで、建物本体を35年、給排水設備を15年で償却したとします。この場合、16年目に設備分の経費が消え、36年目に建物本体の経費が消えます。段が2つある、ということです。
短期的には経費が増えますが、設備の償却が終わった年に一段、建物の償却が終わった年にもう一段、経費が落ちるということでもあります。区分するなら、その2つの年を先に計算に入れてください。
初年度にやらないと、後からはできない
タックスアンサー5404の注記
見落とすと取り返しがつかない注記があります。タックスアンサー5404は、こう書いています。
つまり、買った年の申告で簡便法を使わなかったら、翌年以降に切り替えることはできないということです。法定耐用年数のまま、長い年数で薄く償却し続けることになります。
初年度は月割りになる
もう1つ、初年度の注意点があります。年の途中で業務の用に供した場合、その年の償却費は使用した月数で按分します。1月に貸し始めれば12か月分、10月なら3か月分です。
ケースAの年250万円で言えば、10月から貸し始めた年に計上できるのは約62万円です。「初年度から250万円落とせる」と考えていると、4分の1しか出ません。
年間の償却額だけを見て「初年度からこれだけ落とせる」と考えると、ずれます。初年度は月数按分、2年目からがフルの金額です。
土地は償却できない
最後に前提の確認です。減価償却できるのは建物と附属設備で、土地は対象外です。時の経過により価値が減少しない資産だからです。
したがって、売買代金のうち土地の割合が大きいほど、償却できる金額は小さくなります。都心の物件は土地の比率が高くなりがちなので、この点でも償却額は出にくい。「利回り」だけを見て比べると、この差が見えません。利回りの分解はワンルーム投資「やめとけ」の根拠で扱っています。
償却が終わった年に何が起きるか
現金は変わらないのに、税金が増える
減価償却費は、現金が出ていかないのに経費に計上できる費目です。裏を返すと、償却が終わっても現金の出入りは1円も変わりません。変わるのは課税所得だけです。
ケースAでいえば、5年目に年250万円の経費が消えます。家賃も返済額も同じなのに、課税される所得が250万円増える。所得税と住民税を合わせた税率が30%なら、手取りは年75万円減る計算になります。
この年が来ること自体は避けられません。避けられないからこそ、何年目に来るのかを買う前に把握しておく価値があります。
ローン返済との重なり
償却の終わりと同じ時期に、もう1つの動きが進んでいます。ローンの中身の変化です。
元利均等返済では、返済当初は利息の割合が大きく、年が経つにつれて元金の割合が増えます。毎月の返済額は変わりませんが、そのうち経費にできる利息部分だけが年を追うごとに減っていきます。元金部分は経費になりません。
つまり、減価償却費が減る(または消える)のと同時に、経費にできる利息も減っていきます。2つが重なった年に、税務上の赤字が黒字に転じます。
だから、出口と並べて考える
償却が終わる年が来たときの選択肢は、大きく3つです。持ち続ける、売る、追加で取得する。
どれを選ぶにしても、その年が何年目かを知らずに判断はできません。ケースAなら4年、ケースBなら35年、ケースCなら18年。物件ごとに全然違います。
そして、売る場合は償却した分だけ取得費が小さくなり、譲渡所得が大きくなります。短期間で大きく償却した物件ほど、売却時の譲渡所得は膨らみます。節税できた分が、売却時に戻ってくる構造だと理解しておくと、判断を誤りません。
買う前に確認する5項目
登記事項証明書で2つ、契約書で1つ、資料で2つ
ここまでの計算に必要な情報を、入手先ごとに並べます。どれも契約前に確認できます。
- 建物の構造(登記事項証明書の表題部)。別表第一のどの行を引くかが決まります
- 建築年月日(同じく表題部に記載)。経過年数の起点です
- 建物部分の取得価額(売買契約書)。土地と分かれていなければ、消費税額から逆算できないかを確認します
- 金属造の場合の骨格材の肉厚(建築確認済証・設計図書)。34年・27年・19年のどれかが決まります
- 建物附属設備の内訳(工事内訳書など)。区分できるかどうかが決まります
1と2は登記事項証明書1通で足ります。法務局で誰でも取得でき、手数料は書面請求600円、オンライン請求・送付520円です。
4番目が抜けやすい
鉄骨造の物件で、肉厚の確認が抜けたまま「鉄骨だから34年」と計算しているケースは珍しくありません。別表第一は4mm超・3mm超4mm以下・3mm以下の3段階に分けており、住宅用ならそれぞれ34年・27年・19年です。
築20年の物件で比べると、4mm超なら簡便法で18年、3mm以下なら3年。年間の償却額は6倍前後変わります。提案書に「鉄骨造」としか書かれていなければ、肉厚を聞いてください。
5番目は「できたら」でよい
建物附属設備の区分は、資料がなければ諦めることになります。根拠のない按分は認められないからです。中古では内訳書が残っていないことが多く、区分できないのが通常だと考えておくほうが安全です。
区分できない前提で計算しておけば、あとから区分できたときに上振れするだけです。逆に、区分できる前提で収支を組むと、資料が出てこなかった時点で計画が崩れます。
出した数字を1枚にしておく
最後に、計算結果を1枚にまとめておくことをおすすめします。書くのは4つです。
- 法定耐用年数(別表第一のどの行か)
- 簡便法による耐用年数(計算式ごと)
- 償却率(別表第八の値)と年間の償却額
- 償却が終わる西暦
この4つ目が、この記事でいちばん持ち帰ってほしい数字です。「何年後」ではなく西暦で書いておくと、ほかの予定と並べられます。
まとめ
中古物件の減価償却で押さえるのは、耐用年数省令の第3条、別表第一、別表第八の3つです。すべて公開されており、誰でも引けます。
耐用年数は簡便法で出します。法定耐用年数の全部を経過していれば法定耐用年数の20%、一部を経過していれば(法定-経過)+経過×20%。1年未満の端数は切り捨て、2年に満たないときは2年です。
法定耐用年数は住宅用でRC・SRCが47年、木造が22年、金属造は肉厚で34年・27年・19年に分かれます。肉厚を確認しないと、耐用年数が15年ずれることがあります。
償却率は別表第八に一覧で載っています。耐用年数が短いほど償却率は高く、4年なら0.250、47年なら0.022。ただし経費にできる総額は同じで、何年で割るかの違いです。
そして最も重要な注記が1つ。中古資産の耐用年数の算定は、事業の用に供した年にしかできません。その年にやらなければ、翌年以降に切り替えることはできないと国税庁が明記しています。
「減価償却で節税できます」という説明に期限は書かれていません。期限は、登記事項証明書1通と省令の別表2つで自分で計算できます。買う前に出しておいてください。
よくある質問(FAQ)
築古の木造が節税に向いていると言われるのはなぜですか
簡便法の計算結果が短くなり、償却率が高くなるためです。木造・住宅用の法定耐用年数は22年なので、築22年以上なら全部を経過した資産として22年×20%=4.4年、1年未満を切り捨てて4年になります。4年の定額法償却率は0.250で、47年の0.022と比べると11倍以上です。ただし経費にできる総額が増えるわけではなく、建物の取得価額を何年で割るかの違いです。短期間で落とせばその期間の所得は圧縮されますが、売却時には償却した分だけ取得費が小さくなり、譲渡所得が大きくなります。
売買契約書に土地と建物の内訳がありません
建物部分の取得価額が分からないと、償却額を計算できません。減価償却できるのは建物と附属設備で、土地は時の経過により価値が減少しない資産なので対象外だからです。契約書に消費税額の記載があれば、そこから建物価格を逆算できる場合があります。ほかに、固定資産税評価額の比で按分する方法などが実務で使われますが、どの方法が認められるかは個別の事情によります。金額の影響が大きい論点なので、手元の資料を集めたうえで税理士または所轄税務署に確認してください。
軽量鉄骨と重量鉄骨で、耐用年数はどれくらい違いますか
別表第一は金属造を骨格材の肉厚で3つに分けています。住宅用で、肉厚4mm超が34年、3mm超4mm以下が27年、3mm以下が19年です。同じ「鉄骨造」でも15年の差があります。築20年の物件で比べると、4mm超なら簡便法で18年(償却率0.056)、3mm以下なら全部経過扱いで3年(償却率0.334)となり、年間の償却額は6倍前後変わります。肉厚は登記事項証明書に書かれていないことがあるため、建築確認済証や設計図書で確認してください。
買った翌年から簡便法に変えられますか
できません。国税庁のタックスアンサー5404は「中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度においてすることができるものですから、その事業年度において耐用年数の算定をしなかったときは、その後の事業年度において耐用年数の算定をすることはできません」と明記しています。買った年の申告で簡便法を適用しなければ、法定耐用年数のまま償却し続けることになります。初年度の申告は、この点でやり直しがききません。申告の準備は購入の段階から始めておくことをおすすめします。
大規模なリフォームをする予定ですが、影響はありますか
あります。耐用年数省令第3条第1項のただし書きは、業務・事業の用に供するために支出した資本的支出の金額が取得価額の100分の50に相当する金額を超える場合、簡便法は使えないという扱いです。さらにタックスアンサー5404は、資本的支出の金額が再取得価額(同じ新品を取得する場合の取得価額)の50パーセントを超える場合には法定耐用年数による、と定めています。築古を安く買ってフルリノベーションする計画では、この線を超えることがあります。工事の見積額が固まる前に、税理士に確認してください。
償却が終わったら、どうすればいいですか
選択肢は持ち続ける、売る、追加で取得するの3つですが、どれが正しいかは物件と自分の状況によります。判断の材料として押さえておきたいのは2つです。1つは、償却が終わっても現金の出入りは変わらないこと。変わるのは課税所得だけです。もう1つは、売る場合に償却した分だけ取得費が小さくなり、譲渡所得が大きくなること。短期間で大きく償却した物件ほど、売却時の譲渡所得は膨らみます。その年が何年目に来るかを買う前に計算しておけば、慌てずに検討できます。
耐用年数と償却率は、省令とタックスアンサーで確認できます
簡便法の条文は耐用年数省令の第3条に、法定耐用年数は別表第一に、償却率は別表第八にあります。物件を検討する段階で、この2つを開いて自分の物件の年数を出しておくと、提案書の数字を検算できます。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。本文の建物価格・償却額はすべて仮定値による計算例です。個別の税務判断は、税理士または所轄税務署にご相談ください。