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相続した実家を売るときの取得費|被相続人の取得日と取得費を引き継ぐ仕組み【2026年版】

古い家屋と書類の束。相続した実家を売るときの取得費の調べ方

相続した実家を売ることになったとき、真っ先に困るのが取得費です。親がいくらで買ったのか、いつ買ったのか。契約書が残っていないことも珍しくありません。

ここで「分からないから売った金額の5%でいい」と結論を急ぐと、税額が大きく変わります。そもそも相続した不動産は、被相続人が買ったときの金額も、買った日付も、そのまま引き継ぐ仕組みになっています。所得税法第60条第1項が「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」と定めているからです。

この「みなす」には2つの効果があります。取得費を引き継ぐことと、取得の時期を引き継ぐこと。後者のほうが見落とされやすく、そして所有期間の判定を通じて税率に直結します。

この記事では、所得税法第33条・第38条・第59条・第60条と、国税庁のタックスアンサー3270・3252だけを根拠に、相続した不動産の取得費と取得時期の扱いを整理します。最後に、親の取得費を探す手順を書きます。

結論:相続した不動産は「引き続き所有していたものとみなす」

条文はこう書いている

所得税法第60条第1項は、居住者が次に掲げる事由により取得した資産を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算について、「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」としています。

「次に掲げる事由」の第1号が、贈与、相続(限定承認に係るものを除く)、遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く)です。

「引き続きこれを所有していたものとみなす」という言い方がすべてです。相続した瞬間に新しく取得したのではなく、被相続人が買ったときから自分が持っていたことにする、という構成になっています。

国税庁の説明

タックスアンサー3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」が、これを2つに分けて説明します。

取得費について。「相続や贈与によって取得した土地建物を売った場合の取得費は、被相続人や贈与者がその土地建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などを基に計算します」。

取得の時期について。「相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます」。

結論:確認するのは3つ

したがって、相続した実家を売るときに確認するのは次の3つです。

  1. 被相続人がいつ買ったか(所有期間の判定=税率が決まる)
  2. 被相続人がいくらで買ったか(取得費の本体)
  3. 自分が相続時に払った登記費用・不動産取得税(条件つきで取得費に加算できる)

3つ目は知られていません。後で詳しく書きますが、使い方を間違えると加算できなくなります。

所得税法60条1項「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」 親が購入 1998年3月 相続 2026年2月 売却 2026年8月 所有期間はここから数える(約28年) 引き継ぐもの ・被相続人の取得費(購入代金・購入手数料等) ・被相続人の取得の時期 引き継がない場合 ・限定承認に係る相続・包括遺贈(60条1項1号かっこ書)  → 59条1項によりみなし譲渡。時価で取得したことになる 出典:所得税法第59条・第60条(e-Gov法令検索)/国税庁タックスアンサー3270

だから、相続の翌月に売っても長期譲渡になりうる

所有期間の判定は被相続人の取得日から

取得の時期を引き継ぐ効果が、いちばん大きく出るのがここです。タックスアンサー3270は続けてこう書いています。

「したがって、被相続人や贈与者が取得した時から、相続や贈与で取得した相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定することになります」

つまり、相続してから何か月で売ったかは関係ありません。親が買った日から、自分が売った年の1月1日までを数えます。

税率が倍近く違う

長期か短期かで税率が大きく変わることは、家を売って手元に残る金額で扱いました。相続の場合、この判定が被相続人の取得日から行われるため、実家のように親が何十年も持っていた物件は、相続直後に売ってもほぼ長期譲渡になります。

「相続してすぐ売ると税率が高い」という誤解を聞くことがありますが、条文上はその逆です。短期になるのは、被相続人自身が買ってから5年以内に亡くなったような場合に限られます。

10年超の軽減税率も同じ考え方

マイホームを売ったときの軽減税率の特例は、所有期間が10年を超えることが要件です。相続で取得した物件については、この10年も被相続人の取得日から数えます。

ただし、軽減税率の特例は「自分が住んでいた家」であることが別途要件になります。所有期間は引き継げても、居住の事実までは引き継げません。相続した実家に自分が住んでいなければ、この特例は使えません。

空き家になった実家を売る場合には、別の特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)が用意されています。要件が細かいため、該当しそうなら国税庁のタックスアンサーで全文を確認してください。

例外は「限定承認」。ここだけ引き継がない

条文のかっこ書き

所得税法第60条第1項第1号をもう一度読むと、かっこ書きで除外されているものがあります。「相続(限定承認に係るものを除く)」「遺贈(中略)及び包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く」。

限定承認に係る相続は、引継ぎの対象外です。条文が「除く」と書いている以上、ここは解釈の余地がありません。

限定承認とは、相続で得た財産の範囲内でのみ被相続人の債務を引き継ぐという方法です。相続人全員で家庭裁判所に申述する必要があり、期限もあります。債務の全体像が分からないときに選ばれる制度で、実務での件数は多くありません。ただ、選んだ場合の税務上の効果は大きく変わります。

代わりに第59条が適用される

では限定承認の場合どうなるか。所得税法第59条第1項が引き受けます。

同項は、次に掲げる事由により譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、「その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす」としています。そして第1号に「相続(限定承認に係るものに限る)」が挙がります。

つまり、限定承認をすると被相続人が相続時の時価で売ったものとみなされ、そこで譲渡所得が計算されます。相続人はその時価で取得したことになるため、その後売ったときの取得費は相続時の時価です。

実務上の意味

単純承認なら、取得費は被相続人が買ったときの金額。限定承認なら、相続時の時価。同じ不動産でも、出発点の数字が別になります。

地価が上がっている地域では、相続時の時価のほうが大きいことがあります。その場合、後で売ったときの譲渡所得は小さくなります。一方で、限定承認の時点でみなし譲渡による課税が被相続人に発生し、準確定申告が要ります。

限定承認を検討している段階で、不動産の譲渡所得についても税理士に確認してください。債務の整理だけを考えて選ぶと、税務の側で想定外の結果になることがあります。

引き継ぐ「取得費」に何が入るか

所得税法第38条の定義

所得税法第38条第1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費を「その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額」としています。

第2項は、家屋など使用や期間の経過により減価する資産について、この合計額から減価の額を控除せよと続けます。建物は買ったときの金額のままではなく、償却後の金額になるということです。

非業務用の建物についての減価の額の計算は、家を売った年の確定申告で扱った計算式(建物の購入・建築価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数)で求めます。

「取得に要した金額」に含まれるもの

国税庁のタックスアンサー3252「取得費となるもの」が、含まれる主なものを列挙しています。

取得費に含まれるもの
購入代金、建築代金、購入手数料
購入時に納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税 ※業務の用に供される資産の場合は含まれない
借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
土地の埋立て、土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
土地の取得に際して支払った測量費
所有権などを確保するために要した訴訟費用
建物付の土地を購入し、おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的と認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
購入のために借り入れた資金の利子のうち、実際に使用開始する日までの期間に対応する部分
既に締結されている購入契約を解除して他の物件を取得した場合に支出する違約金

訴訟費用には例外がある

所有権を確保するための訴訟費用は取得費になりますが、3252には注記があります。「なお、相続財産である土地を遺産分割するためにかかった訴訟費用等は、取得費になりません」。

整理すると、境界や所有権が争われていた土地を買い、紛争を解決して自分のものにした場合の訴訟費用は取得費になる。一方、相続人どうしで誰がどれを取るかを争った費用は取得費にならない。資産を取得するための費用か、分け方を決めるための費用かという区別です。

相続でもめた場合、弁護士費用は決して小さくありません。それが取得費に入らないことは、売却後の税額を見積もる段階で知っておく必要があります。ここは相続特有の論点です。

相続人が払った登記費用も入る。ただし条件つき

相続登記の費用は取得費になる

タックスアンサー3270に、あまり知られていない一文があります。

「なお、業務に使われていない土地建物を相続や贈与により取得した際に相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます」

被相続人が払った費用だけでなく、相続人が相続時に払った登記費用や不動産取得税も、取得費に足せるということです。相続登記の登録免許税と司法書士報酬は、実家の売却では必ず発生します。領収書を捨てないでください。

ただし「業務に使われていない土地建物」という条件があります。賃貸に出していた物件は対象外です。

5%ルールを使うと、足せなくなる

同じ注記の続きに、決定的な条件があります。

「(注)取得費が分からない場合などには、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができます(中略)。ただし、この場合には、相続人などが支払った登記費用などを取得費に含めることはできません」

5%ルール(概算取得費)を使うと、相続人が払った登記費用は加算できません。5%の中に含まれている、という整理です。

つまり、取得費の求め方は二者択一になります。実額で計算するなら相続時の登記費用も足せる。5%で計算するなら足せない。「5%で計算して、さらに登記費用を足す」はできません。

どちらが有利かは計算して決まる

被相続人の取得費が判明していれば、実額のほうが有利になるのが通常です。売った金額の5%というのは、かなり小さい数字だからです。

2,500万円で売った場合、5%は125万円。親が1,500万円で買っていたなら、実額のほうが1,375万円多く引けます。差額に税率がかかるので、税額の差は数百万円規模になります。

だからこそ、次の節の「探す手順」に意味があります。

被相続人の取得費を探す手順

まず取得の時期を確定させる

金額より先に、日付です。取得の時期が分かれば、所有期間が確定して税率が決まります。

登記事項証明書の権利部(甲区)に、所有権移転の登記原因とその日付が記録されています。「昭和何年何月何日売買」といった形です。これが被相続人の取得日の手がかりになります。

登記事項証明書は法務局で誰でも取得でき、手数料は書面請求600円、オンライン請求・送付520円です。売る前にどのみち必要になる書類なので、早めに取っておくと判断が早まります。

次に金額を探す

金額の資料は、家の中に残っていることがあります。優先順位をつけて挙げます。

  1. 売買契約書。これがあれば購入代金が確定します。購入時の仲介手数料の領収書があれば、それも足せます
  2. 権利証(登記済証)または登記識別情報通知。金額は書かれていませんが、取得の経緯をたどる資料になります
  3. 住宅ローンの金銭消費貸借契約書。借入額が分かります
  4. 通帳や振込の記録。購入時期の入出金が残っていることがあります
  5. 購入時のパンフレットや価格表。分譲住宅の場合、当時の価格が記載されていることがあります

探す順番を間違えない

実家の片付けは、売却の直前に一気にやることが多くなります。しかし、書類は片付けの過程でいちばん失われやすいものです。

片付けを始める前に、金庫、仏壇の引き出し、タンスの奥、押入れの書類箱を先に確認してください。権利証が入っていた封筒に、売買契約書が一緒に入っていることがよくあります。

そして、見つかったらすぐに写真を撮ってください。原本は申告まで保管しますが、探し直す手間を考えると、その場でデータにしておくほうが安全です。

それでも見つからないとき

どうしても見つからない場合、売った金額の5%を取得費とすることができます。これは国税庁のタックスアンサー3258が定める取扱いで、家を売って手元に残る金額でも扱いました。

契約書以外の資料から取得費を合理的に説明できる場合の扱いは、個別の事情によって判断が分かれます。手元に残っている資料を全部集めたうえで、税務署または税理士に相談してください。集めてから相談するのと、何もない状態で相談するのとでは、進み方が違います。

計算してみる。2,500万円で売った実家

前提

以下はすべて仮定値による計算例です。実際の税額は特例の適用などで変わります。

  • 被相続人が1998年3月に購入。売買契約書が見つかり、土地1,000万円・建物800万円、購入時の仲介手数料等60万円(土地建物の価格比で按分)
  • 建物は木造・非業務用。2026年8月に引き渡し。経過年数は28年5か月 → 6か月未満切捨てで28年
  • 2026年2月に相続。相続登記の登録免許税と司法書士報酬で合計20万円を支払った
  • 2026年8月に2,500万円で売却。売却時の仲介手数料等90万円

実額で計算した場合

建物の償却費相当額を先に出します。木造・非業務用の償却率は0.031です。

  • 建物の購入価額は800万円+仲介手数料の建物分(60万円 × 800/1,800 ≒ 26.7万円)= 826.7万円
  • 償却費相当額 = 826.7万円 × 0.9 × 0.031 × 28年 = 645.7万円
  • 95%限度額は826.7万円 × 0.95 = 785.4万円なので、限度内です

取得費は次のとおりです。

  • 土地分 1,000万円 + 仲介手数料の土地分(60万円 × 1,000/1,800 ≒ 33.3万円)= 1,033.3万円
  • 建物分 826.7万円 - 645.7万円 = 181万円
  • 相続時に払った登記費用等 20万円
  • 取得費合計 = 1,234.3万円

譲渡所得は、2,500万円 - 1,234.3万円 - 90万円 = 1,175.7万円。

5%ルールで計算した場合

売買契約書が見つからず、被相続人の購入代金が分からなかったとします。この場合、売った金額の5%を取得費とすることができます。

  • 取得費 = 2,500万円 × 5% = 125万円(相続時の登記費用20万円は加算できません)
  • 譲渡所得 = 2,500万円 - 125万円 - 90万円 = 2,285万円

建物の償却の計算も不要になります。5%はあくまで概算なので、土地建物の区分も償却も関係なく、売却価格の5%という1つの数字で終わりです。手間はかかりませんが、その代わり金額が小さい。

差は1,109.3万円

譲渡所得の差は2,285万円 - 1,175.7万円 = 1,109.3万円です。

所有期間は1998年3月から2026年1月1日まで27年を超えているので、長期譲渡所得です。課税される所得がこれだけ違えば、税額の差も大きくなります。

契約書1枚を探すかどうかで、この差が生まれます。実家の片付けを始める前に、書類を先に探す理由はここにあります。

相続税を払っている場合

取得費に加算できる特例がある

相続税を納めた人が、相続財産を一定期間内に売った場合、納めた相続税のうち一定の金額を取得費に加算できる特例が用意されています。国税庁のタックスアンサー3267「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」で扱われます。

この特例は要件と計算方法が細かく、適用期限もあります。本記事の範囲を超えるため、詳細は別の記事で扱います。相続税を納めているなら、売る前に該当するかどうかを確認してください。

相続税評価額は取得費ではない

混同されやすいのがここです。相続税の申告で使った評価額は、譲渡所得の取得費にはなりません。

相続税の評価額は路線価などに基づいて計算されるもので、被相続人が実際に支払った金額とは無関係です。所得税法第60条が引き継ぐとしているのは、被相続人の取得費、つまり実際に買ったときの金額です。

相続税の申告書があるからといって、そこに書かれた評価額を取得費として使うことはできません。土地の4つの価格がそれぞれ別の目的を持っていることは、公示地価・路線価・固定資産税評価額で整理しました。

売る前に、税理士に相談する順番

相続税を納めている場合、確認する順番はこうなります。

  1. 被相続人の取得費と取得時期を、資料から確定させる
  2. 相続時に自分が払った登記費用・不動産取得税の領収書を集める
  3. 取得費加算の特例に該当するか、期限内かを確認する
  4. 使える特例をすべて洗い出したうえで、売却時期を決める

資料を集めてから相談してください。1と2が揃っていないと、税理士も判断のしようがありません。

まとめ

相続した不動産を売るときの取得費は、所得税法第60条第1項により「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」という形で引き継がれます。引き継ぐのは取得費と取得の時期の両方です。

取得の時期を引き継ぐ効果が大きい。国税庁のタックスアンサー3270は、被相続人が取得した時から譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期・短期を判定するとしています。親が長く持っていた実家なら、相続直後に売ってもほぼ長期譲渡です。

例外は限定承認です。第60条第1項第1号がかっこ書きで除外し、代わりに第59条第1項によってみなし譲渡となります。単純承認か限定承認かによって、取得費がまったく別の数字に変わります。

取得費には、被相続人が払った購入代金・購入手数料・購入時の登録免許税などのほか、相続人が相続時に払った登記費用や不動産取得税も含まれます(業務に使われていない土地建物の場合)。ただし5%ルールを使うと、これは加算できません。

そして最後に。計算例では、契約書が見つかるかどうかで譲渡所得が1,109.3万円違いました。実家の片付けを始める前に、金庫と仏壇の引き出しと押入れの書類箱を先に開けてください。見つけたら、その場で写真を撮る。それだけで税額が変わります。

よくある質問(FAQ)

相続してすぐ売ると、税率が高くなりますか

相続してからの期間ではなく、被相続人が取得した時から数えます。国税庁のタックスアンサー3270は「被相続人や贈与者が取得した時から、相続や贈与で取得した相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定する」としています。根拠は所得税法第60条第1項。相続した資産について「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」と定めた条文です。したがって、親が何十年も持っていた実家であれば、相続の翌月に売っても長期譲渡所得になります。短期になるのは、被相続人自身が買ってから5年以内に亡くなったような場合です。

相続税の申告書に書いた評価額を、取得費に使えますか

使えません。相続税の評価額は路線価などに基づいて計算されるもので、被相続人が実際に支払った金額とは別の数字です。所得税法第60条が引き継ぐとしているのは被相続人の取得費、つまり実際に買ったときの購入代金や購入手数料などです。相続税の申告書があっても、そこに書かれた評価額を譲渡所得の取得費とすることはできません。なお、相続税を納めている場合には、納めた相続税のうち一定の金額を取得費に加算できる特例(国税庁タックスアンサー3267)が別に用意されています。こちらは要件と期限があるので、売る前に確認してください。

相続登記にかかった費用は取得費になりますか

なります。タックスアンサー3270は「業務に使われていない土地建物を相続や贈与により取得した際に相続人や受贈者が支払った登記費用や不動産取得税の金額も取得費に含まれます」としています。相続登記の登録免許税と司法書士報酬が該当します。ただし2つ条件があります。1つは「業務に使われていない土地建物」であること。賃貸に出していた物件は対象外です。もう1つは、5パーセントルール(概算取得費)を使う場合には加算できないこと。同じ注記に明記されています。領収書は申告まで保管してください。

兄弟で共有相続した場合、取得費はどうなりますか

各自の持分に応じて計算します。所得税法第60条第1項は取得した資産について「その者が引き続きこれを所有していたものとみなす」としているため、共有持分を相続した各人が、それぞれの持分に対応する被相続人の取得費と取得の時期を引き継ぎます。売却したときの譲渡所得も持分に応じて各自に発生し、各自が確定申告をします。なお、遺産分割のためにかかった訴訟費用は取得費になりません。タックスアンサー3252が「相続財産である土地を遺産分割するためにかかった訴訟費用等は、取得費になりません」と明記しています。

限定承認をすると、何が変わりますか

取得費の引継ぎがなくなります。所得税法第60条第1項第1号は「相続(限定承認に係るものを除く)」とかっこ書きで除外しており、限定承認に係る相続は引継ぎの対象外です。代わりに第59条第1項が適用され、その事由が生じた時にその時における価額に相当する金額により資産の譲渡があったものとみなされます。つまり被相続人が相続時の時価で売ったものとされ、相続人はその時価で取得したことになります。その後に売ったときの取得費は相続時の時価です。税務上の扱いがまったく変わるため、限定承認を検討する段階で不動産の譲渡についても税理士に確認してください。

売買契約書が見つかりません。ほかに何を探せばいいですか

まず登記事項証明書の権利部(甲区)を見てください。所有権移転の登記原因と日付が記録されているので、被相続人の取得時期が分かります。取得時期が分かれば所有期間が確定し、税率が決まります。金額については、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、購入時期の通帳や振込の記録、分譲住宅なら当時のパンフレットや価格表が手がかりになります。これらの資料から取得費を合理的に説明できるかは個別の事情によって判断が分かれるため、集めたうえで税務署または税理士に相談してください。探すのは実家の片付けを始める前です。書類は片付けの過程でいちばん失われやすいものです。

条文と取扱いは、e-Govと国税庁で確認できます

引継ぎの根拠は所得税法第60条に、取得費と取得の時期の具体的な扱いは国税庁のタックスアンサー3270にあります。実家の片付けを始める前に、この2つを開いて何を探すべきかを決めてください。

国税庁 相続で取得した土地・建物の取得費
e-Gov 所得税法

本記事は一般的な情報提供を目的としています。本文の取得費・譲渡所得はすべて仮定値による計算例です。個別の税務判断は、税理士または所轄税務署にご相談ください。

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