当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。掲載リンクからご購入いただいた場合、当サイトに報酬が発生することがあります。

マイホームを売って損が出たとき|譲渡損失の損益通算と繰越控除、2つの特例の違い【2026年版】

確定申告書と電卓。マイホームの譲渡損失と損益通算の計算

家を売って損が出た。買ったときより安くしか売れなかった。この場合、譲渡所得はマイナスになるので譲渡所得税はかかりません。ここまでは家を売って手元に残る金額で扱いました。

この記事は、その先を扱います。「その損を、給与など他の所得から引けるのか」という話です。

結論から言うと、原則は引けません。租税特別措置法第31条第1項の後段が、はっきりそう書いています。「長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす」。第32条第1項の後段も、短期について同じ文章を置いています。

この「生じなかつたものとみなす」を外すために用意されているのが、措置法第41条の5と第41条の5の2という2本の特例です。名前が似ていて、要件が違い、どちらか一方しか使えません。

この記事では、e-Gov法令検索で条文を確認し、国税庁タックスアンサーNo.3370・No.3390・No.3383・No.3261を突き合わせて、2つの特例の違いと、実際に通算できる金額の出し方を整理します。金額はすべて計算過程を示します。

結論:売却の損は、原則「なかったもの」とみなされる

出発点は、措置法31条1項の後段にある一文

土地や建物を売った利益は、給与や事業の所得とは分けて計算します。これを分離課税といいます。税率が所有期間で分かれる話は家を売って手元に残る金額で扱いました。

分けて計算するということは、マイナスが出たときも分けられるということです。措置法第31条第1項は、長期譲渡所得について課税のしくみを定めたあと、後段でこう続けます。

「この場合において、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす」

「なかったものとする」ではなく「生じなかつたものとみなす」。所得税に関する法令すべての適用において、その損失はなかったことになります。だから給与所得からも引けず、翌年へ持ち越すこともできません。

ただし、同じ年の土地建物の売却益とは相殺できる

ここで誤解しやすい点があります。「損は一切使えない」わけではありません。

措置法第31条第1項は、長期譲渡所得の金額を計算するときに、「第三十二条第一項に規定する短期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同項後段の規定にかかわらず、当該計算した金額を限度として当該損失の金額を控除した後の金額とする」としています。第32条第1項にも、長期の損失について同じ向きの規定があります。

つまり、同じ年に別の土地や建物を売って利益が出ていれば、そちらとは相殺できます。相殺しきれずに残った分が「生じなかつたものとみなす」の対象です。

制限されているのは、①給与所得などほかの種類の所得から引くこと(損益通算)と、②翌年以降へ持ち越すこと(繰越控除)の2つです。この記事で扱う特例は、この2つの制限を外すためのものです。

制限を外す条文は2本ある

措置法第41条の5と第41条の5の2は、どちらも柱書きが同じ形をしています。「第三十一条第一項後段(中略)の規定にかかわらず、当該居住用財産の譲渡損失の金額については、所得税法第六十九条第一項の規定その他の所得税に関する法令の規定を適用する」。

所得税法第69条第1項は、損益通算を定めた条文です。「生じなかつたものとみなす」を止めて、通常どおり損益通算の規定を当てはめる。これが2本の特例のしていることです。

  • 措置法第41条の5:居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(国税庁タックスアンサーNo.3370)
  • 措置法第41条の5の2:特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(同No.3390)

どちらも、損益通算で引ききれなかった分を翌年以後3年内に繰り越せます。

2つの特例は、住宅ローンがどちら側にあるかで分かれる

41条の5は、新しく買う家にローンが要る

措置法第41条の5は、買い換えた場合の特例です。旧居宅を売って損が出て、新居宅を買った。この形を対象にします。

国税庁タックスアンサーNo.3370は、買換資産(新居宅)の要件として「買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること」を挙げています。

ローンが必要なのは新居宅の側です。売った家にローンが残っていたかどうかは、この特例では問われません。

41条の5の2は、売った家にローンが残っていることが要る

措置法第41条の5の2は、買い換えない場合でも使える特例です。No.3390は「これらの特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます」と明記しています。

代わりに、売った家の側に条件がつきます。No.3390が挙げる要件は次の2つです。

  • 「譲渡したマイホームの売買契約日の前日において、そのマイホームに係る償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること」
  • 「マイホームの譲渡価額が上記(3)の住宅ローンの残高を下回っていること」

いわゆるオーバーローンの状態です。基準日は決済日ではなく「売買契約日の前日」。ここは後で金額の上限にも効いてくるので、覚えておいてください。

借入金の位置が、ちょうど逆になっている

  措法41条の5(買換え) 措法41条の5の2(オーバーローン)
買い換えること 必要 不要
売った家のローン 問われない 契約日の前日に残高が必要
買った家のローン 取得した年の年末に必要 問われない
通算できる額の上限 なし(損失の全額) ローン残高-譲渡価額
敷地500㎡の制限 繰越控除にかかる なし

ローンがどちら側にあるかが、ちょうど入れ替わっています。売った家にローンが残っていて、買い換えないなら41条の5の2。買い換えて、新居宅にローンを組むなら41条の5です。

両方を同時には使えない

No.3390は、41条の5の2が使えない場合として「マイホームを売却した年またはその年の前年以前3年内における資産の譲渡について、マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5第1項)の適用を受ける場合または受けている場合」を挙げています。No.3370にも、逆向きの同じ規定があります。

同じ年はもちろん、前年以前3年内にもう一方を使っていれば、使えません。さらに、同じ特例を3年内に2回使うこともできません。「前年以前3年内の年において生じた他のマイホームの譲渡損失の金額について(中略)適用している場合」が除外されているためです。

両方に共通する入口の条件

売った年の1月1日で、所有期間が5年を超えていること

No.3370もNo.3390も、譲渡資産の要件として「売った年の1月1日において所有期間が5年を超えていること」を求めます。

売った日ではなく、売った年の1月1日が基準です。この数え方は税率の区分と同じで、家を売って手元に残る金額で扱いました。相続で取得した家の所有期間は被相続人から引き継ぐので、そちらは相続した実家を売るときの取得費を参照してください。

年末に売るか年明けに売るかで、5年を超えるかどうかが変わる場合があります。12月に契約が固まりそうなときは、ここを確認してください。

住まなくなってからでも売れるが、期限がある

すでに住んでいない家でも対象になります。ただしNo.3370・No.3390は「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります」としています。

この期間内であれば、「その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません」という一文もあります。人に貸していても対象から外れません。

家を取り壊して土地だけを売る場合は、別に3つの条件がつきます。取り壊された家屋と敷地が取り壊した日の属する年の1月1日で所有期間5年超であること、敷地の譲渡契約が取り壊した日から1年以内に締結され、かつ住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、そして「家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと」です。更地にしてから月極駐車場にすると、外れます。

親子や夫婦に売ると、対象から外れる

No.3370は「旧居宅の売主と買主が、親子や夫婦など『特別の関係』にある場合」を適用除外に挙げています。範囲も示されていて、「生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人なども含まれます」。

売った後もその家に住み続ける形の売却は、ここに触れる可能性があります。

前年・前々年に4つの特例を使っていると、使えない

No.3370とNo.3390は、同じ4つの特例を並べています。売却した年の前年および前々年にこれらを適用していると、譲渡損失の特例は使えません。

前年・前々年に使っていると使えない特例
居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31の3)
居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(被相続人の居住用財産に係る特別控除を除く)
特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)
特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)

2年続けて家を売り買いした人は、ここに引っかかることがあります。前の売却で何を適用したかを、申告書の控えで確かめてください。

期限は令和9年12月31日までの譲渡

No.3370は「マイホーム(旧居宅)を令和9年12月31日までに譲渡して」、No.3390は「令和9年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを(中略)売却して」としています。どちらも[令和8年4月1日現在法令等]の記載です。

この期限は過去に何度も延長されてきましたが、延長される保証はありません。売却を検討している段階であれば、その年の国税庁の記載を確認してください。

損失の額は「買値-売値」ではない。減価償却を引く

建物の取得費は、買ったときの金額のままではない

特例が使えるかどうかの前に、そもそも損失がいくらなのかを出す必要があります。ここで多くの計算が狂います。

国税庁タックスアンサーNo.3261は、「建物は使用したり、期間が経過することによって価値が減少していきます。したがって、建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要があります」としています。

土地は減価しないので、この処理は建物だけです。取得費が減るということは、損失も減るということです。

自宅は「事業に使われていなかった場合」の計算になる

No.3261は、事業用と非事業用で計算を分けています。マイホームは非事業用です。「建物の耐用年数の1.5倍の年数(1年未満の端数は切り捨てます。)に対応する旧定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額にその建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて計算します」。

算式はこうです。

建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数 = 減価償却費相当額

償却率は建物の構造ごとに決まっています。賃貸用の減価償却とは表が違うので、不動産投資の減価償却の数字をそのまま使わないでください。

区分 非業務用の償却率
木造 0.031
木骨モルタル 0.034
(鉄骨)鉄筋コンクリート 0.015
金属造①(骨格材の肉厚3mm以下) 0.036
金属造②(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) 0.025

経過年数の端数処理も決まっています。「経過年数の6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます」。減価償却費相当額は建物の取得価額の95パーセントが限度です。

計算してみる。1,200万円の損が928万円になる

次の条件で計算します。数字は説明のために置いた設定で、相場ではありません。

  • 2012年6月に鉄筋コンクリート造のマンションを購入。購入代金4,200万円(契約書の内訳で建物2,000万円・土地2,200万円)
  • 2026年10月に3,000万円で売却。売買契約日の前日のローン残高は3,400万円
  • 仲介手数料は上限額(売買代金の3%+6万円)に消費税10%、ほかに印紙税1万円

まず経過年数です。2012年6月から2026年10月までは14年4か月。6か月未満の端数は切り捨てるので14年になります。

減価償却費相当額は、2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 14年 = 378万円。建物の取得価額2,000万円の95%である1,900万円の範囲内なので、そのまま使います。

建物の取得費は 2,000万円 - 378万円 = 1,622万円。土地2,200万円と合わせて、取得費は3,822万円です。

なお、取得費には購入代金のほか、買ったときの仲介手数料や登記費用などの取得に要した金額も含められます。ここでは計算を追いやすくするため購入代金だけで置きました。これらを加えると取得費が増えるので、損失はその分だけ大きくなります。実際に計算するときは、購入時の領収書と精算書を先に集めてください。

譲渡費用は、仲介手数料が(3,000万円 × 3% + 6万円)× 1.1 = 105万6,000円。印紙税1万円を足して106万6,000円になります。仲介手数料の上限と、そこに含まれない費用の扱いは仲介手数料はいつ払い、どんなときに返ってくるかで扱いました。

譲渡所得は 3,000万円 -(3,822万円 + 106万6,000円)= △928万6,000円。これが譲渡損失の金額です。

単純に買値と売値を引き算すると 3,000万円 - 4,200万円 = △1,200万円。減価償却の分だけ、271万4,000円ぶん損失が小さくなりました。「1,200万円損したから1,200万円通算できる」と考えていると、ここで見込みが外れます。

41条の5の2には、通算できる額の上限がある

上限は「契約日の前日のローン残高-譲渡価額」

No.3390は、損益通算の限度額を次のように示しています。「マイホームの売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた残りの金額が、損益通算の限度額となります」。

措置法第41条の5の2の条文も、譲渡損失の金額の定義の末尾で「当該特定譲渡に係る契約を締結した日の前日における当該譲渡資産に係る住宅借入金等の金額の合計額から当該譲渡資産の譲渡の対価の額を控除した残額を限度とする」としています。

この特例が想定しているのは、売ってもローンが返しきれない部分です。だから上限がその差額になります。

引くのは「譲渡価額」であって、手取りではない

計算式で差し引くのは譲渡の対価の額、つまり売却価格そのものです。仲介手数料や印紙税を引いた後の手取りではありません。

ここを手取りで計算すると、限度額を実際より大きく見積もることになります。譲渡費用は損失の計算には効きますが、限度額の計算には入りません。2つの計算で使う数字が違うことに注意してください。

例で見る。928万円の損でも、通算できるのは400万円

先ほどの例で計算します。売買契約日の前日のローン残高は3,400万円、譲渡価額は3,000万円でした。

限度額は 3,400万円 - 3,000万円 = 400万円。

譲渡損失は928万6,000円でしたが、41条の5の2で通算できるのは小さいほうの400万円です。買値との差1,200万円と比べると、3分の1になりました。

その年の給与所得の金額が700万円なら、700万円 - 400万円 = 300万円が総所得金額になります。400万円は初年度で使い切るので、繰越しは発生しません。

「いくら損したか」と「いくら通算できるか」は別(設定例) 売却3,000万円/購入4,200万円(建物2,000・土地2,200)/契約日前日のローン残高3,400万円 買値との差 1,200万円 4,200-3,000 譲渡損失 928万6,000円 減価償却378万円を控除後 通算できる額 400万円 3,400-3,000(措法41条の5の2の限度額) 買い換えて措法41条の5を使う場合、この限度額はなく、928万6,000円が損益通算の対象になります。 ただし新居宅に償還期間10年以上のローンを組むことなど、別の要件が加わります。 出典:租税特別措置法41条の5・41条の5の2(e-Gov法令検索)/国税庁タックスアンサー3370・3390・3261をもとに計算

41条の5(買換え)に上限はない。代わりに条件が増える

損失の全額が損益通算の対象になる

41条の5には、41条の5の2のような限度額の定めがありません。譲渡損失の全額が損益通算の対象です。

同じ例で、3,000万円で売った後に新居宅を買った場合、928万6,000円が対象になります。給与所得の金額が700万円なら、初年度に700万円を引いて総所得金額はゼロ。残る228万6,000円を翌年以後3年内に繰り越せます。

売った家にローンが残っておらず、買い換える予定があるなら、こちらしか選べません。逆に、両方の要件を満たす場合は、通算できる額が大きく変わることになります。

買換資産の要件は3つある

No.3370が挙げる買換資産(新居宅)の要件です。

  1. 「譲渡の年の前年の1月1日から売却の年の翌年12月31日までの間に日本国内にある資産(新居宅)で家屋の床面積が50平方メートル以上であるものを取得すること」
  2. 「買換資産(新居宅)を取得した年の翌年12月31日までの間に居住の用に供することまたは供する見込みであること」
  3. 「買換資産(新居宅)を取得した年の12月31日において買換資産について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること」

取得の期間は、売った年の前年1月1日から始まっています。先に買ってから売った場合も、範囲に入ります。

床面積50平方メートル以上という条件は、41条の5の2にはありません。買い換える側だけの制限です。

災害危険区域等に建てられた新築が除かれている

No.3370には、見落とされやすい注記があります。「この特例の対象となる買換資産の範囲からは、令和10年1月1日以後に居住の用に供した又は供する見込みである建築後使用されたことのない家屋のうち、災害危険区域等内において建築された一定のものが除かれています」。

対象は建築後使用されたことのない家屋、つまり新築です。中古住宅は含まれません。

この場合の添付書類も指定されています。「その家屋が災害危険区域等内において建築された一定の家屋に該当しないことを証する書類(立地用件証明書)」です。新築を買って令和10年以降に住む予定なら、売主か施工会社に発行を確認してください。

繰越控除にだけかかる制限が3つある

敷地500平方メートルを超える部分(41条の5のみ)

No.3370は「繰越控除が適用できない場合」の筆頭に、敷地面積の制限を置いています。「旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合は、500平方メートルを超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できません」。

注意すべきは、これが繰越控除の側の制限だという点です。売却した年の損益通算では、500平方メートルを超える部分も含めて通算できます。切られるのは、翌年以降へ持ち越す分です。

そしてこの制限は41条の5にしかありません。No.3390には敷地面積の制限が置かれていません。

合計所得金額が3,000万円を超える年(両方)

No.3370もNo.3390も「合計所得金額が3,000万円を超える年がある場合は、その年のみ適用できません」としています。3年の繰越期間のうち、超えた年だけが飛ぶ形です。

ここでもNo.3390が、はっきりした書き方をしています。「なお、損益通算の特例については、所得金額の要件がありませんので、例えば、マイホーム(譲渡資産)を売って譲渡損失の金額が生じた年の合計所得金額が3,000万円を超える場合であっても損益通算の特例の適用を受けることができます」。

初年度の損益通算に所得制限はありません。所得が高い年に売って損が出た場合でも、その年の通算はできます。

繰越しの各年末に新居宅のローンがあること(41条の5のみ)

No.3370は「繰越控除を適用する年の12月31日において新居宅について償還期間10年以上の住宅ローンがない場合」も、繰越控除ができない場合に挙げています。

取得した年だけでなく、繰越控除を使う各年の年末にローンが残っている必要があります。繰上返済でローンを完済すると、その年から繰越控除が使えなくなります。

制限 初年度の損益通算 翌年以後の繰越控除
敷地500㎡超(41の5) かからない 超える部分は対象外
合計所得3,000万円超 かからない 超えた年のみ不可
新居宅のローン(41の5) 取得年の年末に必要 各年の年末に必要

手続き。確定申告書を出し続けることが要件になる

初年度に添付する書類

損益通算を受ける年は、確定申告書に明細書と計算書を添付します。No.3370とNo.3390で書類の名前が違います。

措法41条の5 措法41条の5の2
居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表) 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(措置法第41条の5用) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(措置法第41条の5の2用)
旧居宅・新居宅それぞれの登記事項証明書や売買契約書の写しなど。新居宅の年末残高証明書 旧居宅の登記事項証明書など。売買契約日の前日の住宅借入金等の残高証明書

41条の5の2で必要になる残高証明書は「売買契約日の前日のもの」と指定されています。通常の年末残高証明書とは基準日が違うため、金融機関に日付を指定して依頼してください。売却が決まった段階で手配しておくと確実です。

登記事項証明書については、No.3370・No.3390とも「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載することで添付を省略できるとしています。この明細書の使い方は家を売った年の確定申告で扱いました。

翌年以降は「連続して」提出する

繰越控除の要件は、書類だけではありません。No.3370・No.3390は同じ2点を挙げます。

  1. 「損益通算の適用を受けた年分について、上記の書類の添付がある期限内申告書を提出していること」
  2. 「損益通算の適用を受けた年分の翌年分から繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出すること」

初年度は期限内申告である必要があります。期限後の申告では、その先の繰越しが成り立ちません。

そして翌年以降は連続して提出します。会社員で、繰り越した損失を引くと税額が出ない年があっても、申告を飛ばすとそこで切れます。損失を使い切るまでは、毎年出し続けてください。

住宅ローン控除と併用できる

No.3370もNo.3390も「この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用できます」と注記しています。買い換えて新居宅に住宅ローン控除を使いながら、旧居宅の譲渡損失を通算することができます。

ただし住宅ローン控除は税額控除なので、損益通算で所得が減って税額がゼロになる年は、控除しきれない分が生じます。適用の順序と実際の効果は、税務署か税理士に確認してください。

41条の5には、あとから修正申告する義務がある

4つのケースで、特例が使えなくなる

41条の5は、まだ買っていない、あるいはまだ住んでいない段階でも適用を受けられます。「取得する見込み」「居住の用に供する見込み」で申告できるからです。

その見込みが外れた場合の扱いを定めているのが、国税庁タックスアンサーNo.3383です。損益通算の規定を適用して申告していた人が、次のいずれかに当たると「いずれの場合も特例の適用要件を満たさず、損益通算の規定を適用することができないこととなります」。

  • 譲渡した年の翌年末までに買換資産を取得しない場合
  • 買換資産を取得した年の年末に、その買換資産に係る住宅借入金等の金額を有しない場合
  • 買換資産を取得した年の翌年末までに、その買換資産を居住の用に供しない場合

繰越控除を適用していた人についても、買換資産を取得した年の翌年末までに居住の用に供しない場合は同じ扱いになります。

期限は4か月。自分から出す

No.3383は「それぞれ4か月以内に損益通算をした年分の所得税について修正申告書を提出し、かつ、その期限内に修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければなりません」としています。

起算日は、①譲渡した年の翌年末、②買換資産を取得した年の年末、③買換資産を取得した年の翌年末。それぞれから4か月です。

税務署から連絡が来るのを待つ手続きではありません。本人が期限を管理して出す形になっています。

期限内に出せば、加算税も延滞税もかからない

No.3383は、最後にこう記しました。「なお、修正申告書の提出期限までに修正申告書を提出しその期限内に納付すべき税額を納付すれば、加算税や延滞税がかかることはありません」。

見込みが外れること自体にペナルティはありません。期限を過ぎることにペナルティがあります。買い換える予定で申告したなら、取得と入居の期限をカレンダーに入れておいてください。

まとめ

不動産を売って出た損は、措置法第31条第1項後段によって「生じなかつたものとみなす」とされます。同じ年のほかの土地建物の売却益とは相殺できますが、給与所得などから引くことも、翌年へ持ち越すこともできません。

この制限を外すのが、措置法第41条の5と第41条の5の2です。買い換えて新居宅にローンを組むなら41条の5、売った家にローンが残っていて買い換えないなら41条の5の2。ローンが必要な側が逆になっていて、両方を同時には使えません。

金額の出し方では2点を押さえてください。損失は「買値-売値」ではなく、建物の取得費から減価償却費相当額を引いて計算します。そして41条の5の2では、通算できる額が「契約日の前日のローン残高-譲渡価額」で頭打ちになります。

制限のかかり方にも段差があります。敷地500平方メートル超と合計所得金額3,000万円超は、繰越控除にだけ効きます。初年度の損益通算に所得制限はありません。

手続きでは、初年度を期限内申告にすること、翌年以降は連続して確定申告書を出すこと。そして41条の5を見込みで適用した場合は、4か月以内の修正申告という義務が残ります。

賃貸に出している物件の赤字を給与と通算する話は、不動産所得のしくみで別の条文です。そちらはワンルーム投資「やめとけ」の根拠で扱いました。

よくある質問(FAQ)

家を売って損が出ました。確定申告はしなくてもよいですか

譲渡所得がマイナスなら譲渡所得税は発生しないので、その意味では申告義務はありません。ただし、措置法第41条の5または第41条の5の2で損益通算を受けるつもりなら、申告しなければ適用されません。さらに繰越控除まで使うには、国税庁タックスアンサーNo.3370・No.3390が求めるとおり、損益通算を受けた年分について書類の添付がある期限内申告書を出しておく必要があります。損が出た年こそ、申告するかどうかで手取りが変わります。

買い換えないのですが、損益通算はできますか

売った家に住宅ローンが残っていれば、措置法第41条の5の2で可能です。No.3390は「これらの特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合であっても適用することができます」としています。条件は、売買契約日の前日に償還期間10年以上の住宅ローンの残高があること、そして譲渡価額がその残高を下回っていることです。通算できる額は「契約日の前日のローン残高-譲渡価額」が上限になります。売った家にローンが残っていない場合、買い換えないのであれば、どちらの特例も使えません。

「1,200万円で買って800万円で売った」なら400万円通算できますか

そのままの金額にはなりません。国税庁タックスアンサーNo.3261により、建物の取得費は購入代金から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。自宅は非業務用なので、建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数で求めた額を引きます。償却率は木造0.031、鉄筋コンクリート造0.015などと構造ごとに決まっています。一方で譲渡費用(仲介手数料や印紙税)は損失を大きくする方向に働きます。実際の譲渡損失は、この2つを反映させた後の金額です。

敷地が600平方メートルあります。使えませんか

損益通算は使えます。制限がかかるのは繰越控除の側です。No.3370は「旧居宅の敷地の面積が500平方メートルを超える場合は、500平方メートルを超える部分に対応する譲渡損失の金額については適用できません」としており、これは繰越控除が適用できない場合として挙げられています。売却した年の損益通算では、500平方メートルを超える部分も含めて通算できます。なお措置法第41条の5の2(買い換えない場合)には、この敷地面積の制限がありません。

去年3,000万円特別控除を使いました。今年の損失は通算できますか

できません。No.3370・No.3390はともに、売却した年の前年および前々年に「居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除」を適用している場合を適用除外に挙げています。同じく除外されるのは、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31の3)、特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)、特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)です。2年続けて家を売り買いした場合は、前の申告書の控えで何を適用したか確認してください。

買い換えるつもりで申告しましたが、結局買いませんでした

修正申告が必要です。国税庁タックスアンサーNo.3383は、譲渡した年の翌年末までに買換資産を取得しない場合、特例の適用要件を満たさず損益通算の規定を適用できないとしています。この場合、譲渡資産を譲渡した年の翌年末から4か月以内に、損益通算をした年分の所得税について修正申告書を提出し、その期限内に納付すべき税額を納付します。同ページは「修正申告書の提出期限までに修正申告書を提出しその期限内に納付すべき税額を納付すれば、加算税や延滞税がかかることはありません」とも記しています。期限の管理だけは怠らないでください。

要件は国税庁のページで確認できます

買い換える場合はNo.3370、買い換えない場合はNo.3390。どちらも適用除外と添付書類まで列挙されています。売却の契約を結ぶ前に、どちらに当てはまるかを確かめておいてください。

国税庁 No.3370(買換え)
国税庁 No.3390(買換えなし)

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の適用可否や税額の判断は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。記事中の金額は説明のために置いた設定値であり、相場を示すものではありません。住民税の取扱いは本記事の範囲外です。国税庁タックスアンサーの記載は[令和8年4月1日現在法令等]のものです。

上部へスクロール