
動画編集の副業は、20代の副業の中でも「必要なものが分からない」で止まる人がいちばん多い分野です。検索すると、15万円のパソコン、月額のソフト、数十万円のスクールが最初に出てきます。そして、案件を1本も受けていない段階で、パソコンとソフトとスクールに先払いしてしまう。これが、この副業でいちばん多い失敗です。
この記事では、動画編集という副業を「その道の専門家」の目で分解します。扱うのは、単価の相場、手数料を引いた手取り、1本に何時間かかるか、本当に必要なもの、最初の案件の取り方、単価が上がる順番、つまずく場所の7つです。「やってみたら月いくらでした」という結果報告はしません。
相場はクラウドワークスの公式ページ、手数料はクラウドワークス・ランサーズ・ココナラの公式ページ、ソフトの価格と要件はAdobe・Apple・Blackmagic Designの公式ページを一次情報にしています。価格と手数料は改定されるので、契約前に必ず公式ページで再確認してください。
動画編集の単価は「尺」と「作業範囲」で決まる
Webライターの報酬が文字単価で語られるのに対して、動画編集の報酬は「1本いくら」で語られます。ただし、その1本の中身は案件ごとにまったく違います。同じ「動画編集」でも、3分のショート動画に文字を入れる仕事と、15分のYouTube動画をカットしてテロップと効果音を入れる仕事と、企業紹介ムービーを絵コンテから仕上げる仕事では、単価が数十倍違います。
クラウドワークスが公開している発注相場
クラウドワークスは、発注者向けに「発注相場」という公式ページを公開しています。動画編集に関係する項目を抜き出すと、次のとおりです。
| 仕事の内容 | 1本の相場 | 納期 |
|---|---|---|
| TikTok動画の撮影・文字入れ(カット・顔出しなし) | 3,000円〜 | 3日程度 |
| YouTube用動画15分尺の編集(テロップ・素材カット・SE) | 8,000円〜 | 5日程度 |
| 企業紹介用ムービー(素材・絵コンテあり) | 120,000円〜 | 30日前後 |
出典はクラウドワークスの「発注相場」ページで、確認しました。同社の公式メディア「クラウドソーシングTimes」(2026年7月更新)では、企業向けの動画制作を作業別に分けたときの動画編集費用が5〜25万円、実際の発注事例として物販ビジネス系の動画が1本あたり2〜5万円という数字も示されています。
ここから読み取れることは2つです。ひとつは、副業で最初に受けるのは3,000円〜8,000円の帯で、企業案件の12万円は別の仕事だということ。もうひとつは、単価を分けているのが「尺」(3分か15分か)と「作業範囲」(文字入れだけか、カットとテロップと効果音まで含むか)だということです。この2つの軸は、後半の「単価が上がる順番」でそのまま使います。
「1本3,000円」の中身を分解する
TikTok動画の文字入れが3,000円で3日、というのは、発注者から素材の動画が届き、不要な部分をカットし、話している内容に合わせて画面に文字を入れ、指定の形式で書き出して納品する仕事です。3分前後の縦動画が多く、文字は1本で30〜60か所入ります。「顔出しなし」とあるのは、発注者が撮影した素材を使い、編集者が出演しないという意味です。
YouTube用15分尺の8,000円は、カット、テロップ、効果音(SE)の3つが含まれます。15分の動画に入るテロップは、話している内容の8割を文字に起こす「フルテロップ」なら200〜400か所になります。作業量が文字入れの数倍になるので、単価も数倍です。この「テロップの数」が、後で説明する所要時間をほぼ決めます。テロップを増やしても単価が上がらない構造については、テロップ単価の回で扱っています。
手数料を引いた手取りと、1本に何時間かかるか
「1本8,000円」を見て、そのまま入金されると思うと、最初の入金でずれます。仲介サイトの手数料が引かれるからです。
クラウドワークス・ランサーズ・ココナラの手数料
クラウドワークスの公式ページによると、ワーカーが負担するシステム利用料は、10万円以下の部分が20%で、これに消費税がかかるため実質22%です。ランサーズの公式ヘルプでは、契約金額(税込)の一律16.5%です。動画編集の副業でよく使われるココナラは、公式ヘルプによると販売時の手数料が22%(税込。20%×1.1)で、計算例として販売額125,000円のとき売上金は97,500円と示されています。ビデオチャットサービスだけは27.5%です。
| 案件 | 報酬 | CW・ココナラ(22%) | ランサーズ(16.5%) |
|---|---|---|---|
| TikTok文字入れ | 3,000円 | 約2,340円 | 約2,505円 |
| YouTube 15分尺 | 8,000円 | 約6,240円 | 約6,680円 |
| 企業紹介ムービー | 120,000円 | 約93,600円※ | 約100,200円 |
※クラウドワークスは10万円を超える部分の利用料が10%に下がるため、実際の手取りはこの表より少し多くなります。振込手数料(クラウドワークスは楽天銀行100円・他行500円)は別です。覚え方は「報酬×0.78(CW・ココナラ)または×0.835(ランサーズ)」で、Webライターの回と同じ式です。
1本に何時間かかるか(想定モデル)
この副業で先に決めるべきなのは「月いくら」ではなく「週に何時間までか」です。そのために、1本にかかる時間を工程ごとに分けます。次の数字は本メディアが置いた想定モデルで、統計ではありません。最初の1本を編集したら、自分の実測に置き換えてください。
YouTube用15分尺(カット・テロップ・SE)を初めて編集する場合
- 素材の確認と構成: 素材を通しで見て、残す部分と切る部分を決める。1時間
- カット: 言い直し、無音、不要な部分を切る。2時間
- テロップ: フルテロップなら200〜400か所。慣れないうちはここが最も長い。3時間
- 効果音・BGM: 場面の切り替えと強調に入れる。1時間
- 書き出しと修正対応: 指定形式で書き出し、確認を受けて直す。1時間
合計8時間です。報酬8,000円の手取り6,240円を8時間で割ると、時給は780円。TikTokの文字入れは、素材確認0.5時間、カット0.5時間、文字入れ1時間、書き出し0.5時間で合計2.5時間、手取り2,340円なので時給936円です。入口の案件を時給で見ると、最低賃金を下回るのが普通です。それでも受ける理由は、後述する「単価が上がる材料」を作るためで、Webライターと同じ構造です。
平日の朝に1時間、土日に2時間ずつなら週9時間。15分尺なら週に1本、月に4本が上限です。TikTokの文字入れなら週に3本。慣れて15分尺が5時間になれば月に7本まで増えます。受注は、この計算で出た本数の7割にとどめてください。動画編集は書き出しに時間がかかり、修正のたびに書き出し直すため、Webライターより予定が崩れやすい副業です。
必要なもの① パソコンは「買う前に試す」
「動画編集にはハイスペックなパソコンが必要」という前提で、案件を受ける前に15万円のパソコンを買う人が多くいます。順番が逆です。まず手持ちのパソコンで無料ソフトを動かし、15分の動画を1本書き出してみる。それで止まるなら買う。止まらないなら買わない。判断はそれだけです。
公式が公開している要件を基準にする
パソコンの要件は、使うソフトの公式ページに書かれています。Appleの公式ページによると、Final Cut ProはmacOS 15.6以降、メモリは8GB(16GB推奨)、空き容量7.2GB以上です。Blackmagic Designの公式ページによると、DaVinci Resolveの無料版はUltra HD(3840×2160)までの解像度と、60fpsまでのほぼすべての8bitフォーマットに対応しています。Adobe Premiere Proの要件は、Adobeの公式ページ「必要システム構成」で最新版を確認してください(本記事の執筆時点では同ページに機械的にアクセスできなかったため、数値の転記をしていません)。
この公式要件から、副業で最初に受ける「フルHD・15分尺・テロップとカット」の作業に必要な水準を置くと、次のようになります。
- メモリ16GB以上。Appleが「16GB推奨」としている水準で、8GBだとテロップを増やすほど動作が重くなる
- SSDの空き容量が100GB以上。15分尺の素材は1本で数GBから10GB前後になり、書き出しファイルも残る。ソフト本体の7GB前後とは別に必要
- 発売から5年以内。CPUの世代が古いと書き出しに数倍の時間がかかり、修正のたびに待ち時間が増える
- 4K編集は最初は考えない。副業の入口の案件はフルHD(1920×1080)がほとんどで、4K前提のパソコンは過剰投資になる
手持ちのパソコンがこの水準を満たしていれば、買い替えは不要です。満たしていない場合も、まず無料ソフトを入れて試してから決めてください。「書き出しに1時間かかる」「テロップを入れると止まる」という具体的な不便が出てから買えば、必要なスペックが自分で分かります。
スマートフォンだけで受けられる案件と、受けられない案件
CapCutは、公式サイトによるとデスクトップ版(Windows・Mac)、オンライン版、モバイル版があり、無料で使えます。TikTokの文字入れ案件は、CapCutのモバイル版でも納品できます。一方で、YouTube用15分尺のフルテロップをスマートフォンで入れると、作業時間が2〜3倍に伸び、発注者が指定する書き出し形式や解像度に対応できないことがあります。文字入れの案件だけならスマートフォンで始められ、15分尺に進む段階でパソコンが必要になる、と考えておけば、先払いを避けられます。
必要なもの② ソフトは無料で始めて、指定が来たら払う
ソフトの選び方も、パソコンと同じです。最初は無料、発注者から指定が来たら払う。この順番なら、ソフト代が回収できない事態は起きません。
主なソフトの価格(公式ページ)
| ソフト | 価格 | 対応OS |
|---|---|---|
| DaVinci Resolve | 無料。Studio版は51,980円の買い切り | Win・Mac |
| CapCut | 無料。有料プランあり | Win・Mac・スマホ |
| Premiere Pro(単体) | 月3,280円。7日間無料体験 | Win・Mac |
| Final Cut Pro | 50,000円の買い切り、または月1,780円 | Macのみ |
向いている段階は、それぞれ次のとおりです。DaVinci Resolveは最初の1本から使え、無料版でフルHDの案件は足ります。CapCutはTikTok・ショート動画の文字入れ向きで、スマートフォンでも納品できます。Premiere Proは発注者から指定されたときに、年間プランの月々払い(3,280円)で契約します。Final Cut ProはMacで長く続けると決めたときの選択肢で、買い切りのほかにApple Creator Studio(月1,780円)にも含まれます。
DaVinci Resolveの無料版は、公式ページの記載どおりUltra HDまでの解像度と60fpsまでの8bitフォーマットに対応しているので、副業の入口であるフルHDの案件には十分です。有料のStudio版で追加されるのは、AIによるノイズ除去やテキストベース編集、4Kを超える解像度などで、最初の半年は必要ありません。
「Premiere Pro指定」の案件が来たら
発注者によっては、プロジェクトファイルの受け渡しや、既存のテロップのデザインを引き継ぐために、Premiere Proを指定することがあります。その案件を受けると決めた時点で、7日間の無料体験を始め、1本目の納品が終わってから月額の契約に進みます。単体プランは月3,280円なので、8,000円の案件を月に1本受ければ回収できる計算です。逆に言えば、指定案件がない段階で月額を払い始めると、その月は手取りが3,280円減るだけです。
操作の学び方は、公式のチュートリアルで足ります。DaVinci Resolveは公式サイトにトレーニング教材が用意され、Premiere Proは公式ヘルプに基本操作の手順があります。書籍で全体像をつかみたい場合は、楽天ブックスなどで扱いのある『YouTube完全マニュアル[第4版]』(2,690円)のような、制作から配信までを1冊で扱う本が1冊あれば十分で、数十万円のスクールは最初の段階では不要です。
必要なもの③ 素材のライセンス、サンプル動画、保存場所
パソコンとソフト以外に、案件を受ける前に用意しておくものが3つあります。どれも無料で用意できますが、無いと最初の案件で止まります。
BGMと効果音は「商用利用可」を確認したものだけ使う
動画編集で最も多いトラブルが、BGMと効果音の著作権です。発注者の動画に、利用条件を確認していない音源を入れると、公開後に動画が削除されたり、発注者に損害が出たりします。使ってよいのは、発注者が支給した素材と、利用規約に「商用利用可」と明記された素材だけです。素材サイトの規約は、使う前に必ず読み、どのサイトのどの素材を使ったかを納品時に一覧で渡してください。この一覧を毎回つけるだけで、発注者からの信頼が大きく変わります。
60秒のサンプル動画を1本作る
実績がゼロの状態で応募するより、自分で編集した60秒の動画を見せられるほうが、通過率は明らかに上がります。自分のスマートフォンで撮った1〜2分の映像を、カット、テロップ、効果音の3つを入れて60秒に仕上げ、YouTubeに限定公開でアップロードしておきます。テーマは何でも構いませんが、応募したい案件のジャンル(商品紹介、Vlog、解説)に寄せると効果的です。このサンプルは、応募文にURLを1行添えるだけで使えます。
素材の保存場所を決めておく
1案件で受け取る素材は数GBから10GB前後で、納品後も修正依頼に備えて1か月は残します。パソコンの内蔵SSDだけで運用すると3案件で空き容量がなくなるので、外付けSSDかクラウドストレージに「案件名_日付」のフォルダを作って移す運用を、最初の案件から始めてください。
フォルダの中は「01_素材」「02_プロジェクト」「03_書き出し」「04_納品済み」の4つに分けておくと、修正依頼が来たときに該当のプロジェクトファイルを探す時間がなくなります。発注者から「先月の動画の一部を差し替えてほしい」という依頼は珍しくなく、素材を消してしまっていると受けられません。保存の運用は地味ですが、継続契約に進む発注者ほど、この種の依頼が増えます。残しておくのは素材そのものだけでなく、買ったときの条件もです。素材ライセンスの回で、どこを記録しておくかを扱っています。
最初の案件を取る手順
登録したのに案件が取れない、という状態が2週間続くと、大半の人がやめます。順番を決めておけば、そうはなりません。
手順1: サンプル動画と応募文のテンプレートを作る(1週目)
前章の60秒サンプルを作り、クラウドワークス・ランサーズ・ココナラに登録して本人確認を済ませます。応募文は次の5点を、この順番で200〜300字にまとめます。①案件のジャンルに関係する経験を1行(本業や趣味でよい)②サンプル動画のURL③対応できる納期と週の作業時間④使用ソフトと納品できる形式⑤希望単価(募集の範囲内)。「未経験ですが頑張ります」は入れません。発注者が知りたいのは、納期どおりに指定の形式で届くかどうかだけです。
手順2: TikTok・ショートの文字入れ案件を2本受ける(2〜3週目)
最初の案件は、3,000円前後の文字入れ案件から入ります。理由は、作業時間が2.5時間前後で週の枠に収まり、発注者の指示(フォント、色、位置)を再現する練習になるからです。応募する案件は、次の3条件で絞ります。
- 素材と指示書(テロップのルール、書き出し形式)が支給されること。素材も指示もない案件は、作業範囲が無限に広がる
- 修正回数の上限が募集文に書いてあること。書いていなければ、契約前に「2回まで」と確認する
- 納期が週の作業時間に収まること。「毎日1本」は最初の枠を超える
手順3: テスト編集の条件を確認する
契約前に「テスト編集」を求められることがあります。確認するのは、報酬が出るか、素材の著作権はどちらにあるか、テスト動画を発注者がそのまま使わないか、の3点です。無償のテストは1分以内の素材に限る、と決めておくと、時間を守れます。3分の素材を無償で編集させて、そのまま投稿する発注者は実在します。
テストの条件を聞くこと自体をためらう人が多いのですが、条件を聞かれて嫌がる発注者は、契約後も修正や納期で無理を言ってくる可能性が高い相手です。「テストの報酬と、テスト動画の扱いを教えてください」の1行で確認できます。返事がなければ、その案件は見送って構いません。応募できる案件は毎日増えるので、1件に固執する必要はありません。
手順4: 最初の3本は「修正の回数」と「作業時間」を記録する
納品日、尺、テロップの数、かかった時間、修正の回数、修正の内容を6列で記録します。修正の内容は、誤字、フォントや色の指示違い、カットの位置、音量、書き出し設定のどれかに分類します。3本目で修正が1回以下になっていれば、それが次の段階に進む根拠になります。
この記録は、自分の弱点を見つけるためだけのものではありません。「テロップ300か所の15分尺を、修正1回で納品しました」という一文は、次の応募文でそのまま実績として使えます。「動画編集経験あり」と書くより、数字で書いた1行のほうが発注者には伝わります。時間の記録は、8時間が5時間に縮んだ時点で「週に受けられる本数」を増やす判断にも使うので、案件ごとに必ず残してください。
単価が上がる順番は「作業範囲」で決まる
「動画編集で単価を上げる方法」を検索すると、After Effectsを学べ、スクールに通え、営業しろ、という答えが並びます。順番が書かれていないのはWebライターと同じです。クラウドワークスの発注相場が示しているとおり、単価を分けているのは「尺」と「作業範囲」なので、上げ方もその2軸で考えます。
文字入れ→テロップ・カット・SE: 「尺」を伸ばす
3,000円の文字入れから8,000円の15分尺に進む条件は、フルテロップを崩れずに入れられることと、効果音の入れどころが分かることの2つです。文字入れ案件を2〜3本こなすと、発注者のテロップのルール(改行の位置、強調の色、1画面の文字数)が体に入ります。それを15分尺に当てはめるだけです。応募先は同じ発注者が最短で、文字入れの納品後に「15分尺のカットとテロップ、効果音まで対応できます。サンプルはこちらです」と、60秒サンプルを15分尺の一部に差し替えて送ります。
15分尺→継続契約: 「作業範囲」を広げる
1本8,000円の単発から、月4本の継続契約に進む条件は、発注者が自分でやっている工程を引き受けることです。具体的には、サムネイルの作成、見せ場を先頭に持ってくる構成の提案、台本と素材の対応表の整理。この3つを引き受けると、発注者の作業が1本あたり1時間以上減ります。切り出すタイミングは、3本納品して修正が1回以下になったときで、「次回からサムネイルと構成案まで対応するので、1本1万円で月4本の継続でお願いできますか」と、作業範囲の拡大とセットで伝えます。単価だけ上げてほしいと言うと断られますが、作業範囲を広げる提案は通ります。
継続契約→企業向け制作: 別の仕事になる
クラウドワークスの発注相場で12万円〜とされる企業紹介ムービーは、編集の延長ではなく、撮影の段取り、絵コンテの読み解き、発注者の担当者との進行管理が加わる別の仕事です。週9時間の枠では撮影の立ち会いが収まらないことが多く、この段階は「30代で本業に近づける選択肢」として考えるのが現実的です。副業のまま到達する人もいますが、その前に、継続契約を2社分回せる状態を作るほうが先です。
つまずく場所は決まっている
動画編集の副業でやめる理由は、センスでも機材でもありません。決まった場所でつまずいて、そこで止まります。
案件ゼロの段階で、パソコン・ソフト・スクールに先払いする
この記事で最も伝えたい失敗です。15万円のパソコン、月3,280円のソフト、数十万円のスクールを、案件を1本も受けていない段階で契約すると、回収するまでに文字入れ案件で数十本が必要になり、その前に止まります。順番は、手持ちのパソコンと無料ソフトで1本作る、文字入れ案件を2本受ける、指定が来たらソフトを払う、不便が出たらパソコンを買う、です。スクールは、継続契約が取れてから「次の段階に必要な技術が明確に分かった」ときに検討しても遅くありません。
BGM・効果音・フォントの利用条件を確認していない
発注者の動画が公開後に削除される最大の原因です。音源だけでなく、フォントにも商用利用の条件があります。使った素材の一覧を納品時に渡す運用を最初から入れておくと、この問題は起きません。
特に注意が必要なのは、「無料」と書かれた素材サイトです。無料で使えることと、商用利用できること、クレジット表記なしで使えることは、それぞれ別の条件です。動画編集の副業で発注者から受け取る報酬は商用利用にあたるので、「個人利用は無料、商用は有料」の素材は使えません。パソコンに最初から入っているフォントにも、動画への埋め込みを制限しているものがあります。迷ったら、発注者が支給した素材だけで仕上げるのが最も安全です。
修正のたびに書き出しが必要で、時間が読めない
動画編集はWebライターと違い、修正のたびに書き出しが発生します。15分尺の書き出しは、パソコンの性能によって数分から1時間以上かかります。修正回数の上限を契約前に決めること、修正は「タイムコードで指示してもらう」と最初に伝えること(クラウドソーシングTimesも、発注側にタイムコード指定を勧めています)、書き出し時間を見込んで納期の前日に初稿を出すこと。この3つで、時間の上限を守れます。修正と作り直しをどう分けるかは、修正対応の回で詳しく書いています。
書き出し設定を間違えて納品する
解像度、フレームレート、ファイル形式、音量。この4つの指定を守らない納品は、内容が良くても差し戻されます。指示書に書かれていなければ、契約時に「1920×1080・30fps・MP4(H.264)でよいか」と確認し、最初の1本は納品前に自分のスマートフォンで再生して確認してください。
よくある失敗は、縦動画の案件を横向きの設定で書き出す、素材が60fpsなのに30fpsで書き出して動きがカクつく、音量が小さすぎてスマートフォンで聞こえない、の3つです。書き出しの設定は一度決めればプリセットとして保存できるので、発注者ごとに「発注者名_書き出し」の名前で保存しておくと、2本目以降の設定ミスがなくなります。形式・解像度・音量をどう決めるかは、書き出し設定の回にまとめています。
会社のルールと確定申告を後回しにする
厚生労働省の副業・兼業のページでは、自分が勤める会社の就業規則を確認し、そのルールに照らして副業を選ぶ必要があると説明されています。動画編集の副業は多くの場合、業務委託です。就業規則で制限されていればそちらが優先するので、始める前に該当条文を読んでください。副業の所得が年20万円を超えると確定申告が必要で、20万円以下でも住民税の申告は別途必要です。この部分は20代の放課後の記事「副業の確定申告、20万円ルールって結局どういうこと?」に整理されています。ソフトの月額や外付けSSDは経費になるので、領収書は案件と同じフォルダに残しておきます。
30代につながるのは編集の速さではなく「設計」
動画編集の副業を「複利」にできるかどうかは、テロップを何か所入れたかではなく、どの工程を担当したかで決まります。文字入れを1,000本こなした経験は、次の案件でも3,000円のままです。一方、見せ場を先頭に持ってくる構成、テロップのルールの設計、素材と台本の対応表、修正を減らすための初稿の出し方。この工程は、単価が上がる材料であると同時に、そのまま30代の本業で使える技能です。
具体的には、次の3つを残してください。
- 構成案とテロップルールの実物: 自分が提案した構成と、発注者のルールを整理した1枚。ポートフォリオとして次の応募に使える
- 修正の記録: どこを直され、次にどう防いだか。編集の視点そのもので、ディレクションに進むときの土台になる
- 時間の実測: 1本にかかった時間の推移。8時間が5時間になった記録は、次の交渉と自分の上限管理の両方に使える
この3つが半年分たまると、副業の単価だけでなく、本業でのSNS運用、採用動画、社内向け説明動画といった仕事に直接効きます。20代で企業のSNSや動画を担当する部署は増えていて、「素材を渡せば1本にできる人」は社内で希少です。
まとめ
- 単価は「尺」と「作業範囲」で決まる。公式の発注相場では、TikTok文字入れ3,000円〜、YouTube15分尺8,000円〜、企業紹介ムービー120,000円〜
- 手取りは「報酬×0.78(クラウドワークス・ココナラ)または×0.835(ランサーズ)」。振込手数料は別
- 15分尺は最初8時間、文字入れは2.5時間が目安。週9時間なら15分尺で月4本、受注はその7割まで
- パソコンは買う前に手持ちで試す。基準はメモリ16GB・SSD空き100GB・5年以内。4Kは考えない
- ソフトは無料(DaVinci Resolve・CapCut)で始め、Premiere Pro指定の案件が来てから月3,280円を払う
- BGM・効果音・フォントは商用利用可を確認し、使った素材の一覧を納品時に渡す
- 最初は60秒サンプル→文字入れ2本→15分尺→継続契約、の順。案件ゼロでの先払いが最大の失敗
副業の選び方や始め方の全体像は、20代の放課後の「副業の始め方がわからない20代へ」にまとまっています。このメディアでは、副業を1種類ずつ、専門家の目で分解していきます。
よくある質問(FAQ)
パソコンは何を買えばいいですか?
まず買わないでください。手持ちのパソコンにDaVinci Resolveの無料版を入れて、15分の動画を1本書き出してみます。止まらなければそのまま使えます。止まる場合の基準は、メモリ16GB以上、SSDの空き100GB以上、発売から5年以内の3つで、副業の入口であるフルHD案件にはこれで足ります。4K対応の高価な構成は、企業案件に進む段階まで不要です。
無料ソフトで案件を受けても大丈夫ですか?
問題ありません。DaVinci Resolveの無料版は公式にUltra HDまで対応しており、フルHDの15分尺やショート動画の案件は無料版で納品できます。発注者がPremiere Proのプロジェクトファイルを指定した場合だけ、その案件を受けると決めてから7日間の無料体験を始め、納品後に月額契約に進んでください。
スマートフォンだけで始められますか?
TikTok・ショート動画の文字入れ案件なら、CapCutのモバイル版で納品できます。YouTube用15分尺のフルテロップは、スマートフォンだと作業時間が2〜3倍になり、書き出し形式の指定に対応できないことがあるので、その段階でパソコンが必要になります。まず文字入れ案件をスマートフォンで2本受けてから、パソコンを考える順番で問題ありません。
1本にどれくらい時間がかかりますか?
本メディアの想定モデルでは、YouTube用15分尺(カット・テロップ・SE)が初回8時間、慣れて5時間、TikTokの文字入れが2.5時間です。統計ではないので、最初の1本で実測し、その数字で「週の作業時間÷1本の時間」を計算して、受注はその7割にとどめてください。
スクールに通ったほうが早いですか?
案件を受ける前の段階では不要です。操作は公式のチュートリアルとヘルプで足り、発注者の指示書が最良の教材になります。継続契約が取れて「次の段階に必要な技術」が具体的に分かったときに、その技術に絞った講座を検討するのが、費用対効果の高い順番です。
BGMはどこのものを使えばいいですか?
発注者が支給する素材か、利用規約に「商用利用可」と明記された素材サイトのものだけを使います。サイトごとにクレジット表記の要否や利用範囲が違うので、使う前に規約を読み、どのサイトのどの素材を使ったかを一覧にして納品時に渡してください。フォントにも同じ確認が必要です。
最初の一歩は、手持ちのパソコンに無料ソフトを入れること
DaVinci Resolveの無料版は、公式サイトから登録なしでダウンロードできます。まず15分の動画を1本書き出してみて、それからパソコンとソフトを判断してください。