
自分専用の単語帳が作れる、という話をよく見ます。実際、頼めば数十語のリストが例文つきで出てきます。
ただ、作った単語帳は3日で開かなくなります。問題は作る手間ではなく、覚える対象の選び方と、回す仕組みのほうにあります。
単語帳は作れるようになった。回らないだけ
作成が簡単になったぶん、別の失敗が起きます。
量が出るので、多く作りすぎる
50語のリストを頼めば50語出ます。手で作っていた頃なら10語で疲れていたので、自然に量が制限されていました。今は制限がないので、消化できない量を作ってしまう。作った時点で満足して、翌日には開きません。
例文が自分の業務と関係ない
出てくる例文は一般的な場面のものです。旅行、買い物、日常会話。業務で使う場面と違うので、実際に必要なときに出てきません。覚えたはずの語が、会議では使えない。この状態が続くと、やっていることの意味を感じにくくなります。
復習の設計が入っていない
リストは作られますが、いつ見直すかまでは決まりません。数日後に見返す仕組みがないので、1回読んで終わります。単語帳を作ることと、覚えることは別の作業です。ChatGPTの英作文添削で伸びる人と同じで、出力を受け取るだけでは変わりません。
覚える対象を、業務で出た語に限る
選び方を変えるだけで、続く確率が上がります。
| よくある選び方 | 問題 | 代わりに |
|---|---|---|
| 頻出単語リスト | 自分の業務に出ない | 今週のメールに出た語 |
| 試験の出題範囲 | 目的が違う | 会議で聞き取れなかった語 |
| 興味のある分野 | 使う機会がない | 資料で3回以上見た語 |
| 難しい語 | 使う場面が限られる | 簡単だが言えなかった語 |
実際に出会った語だけを入れる
自分の業務に出てきた語は、また出てきます。再会する可能性が高いので、覚える価値があります。頻出語リストは全体の統計であって、自分の分野の統計ではありません。同じ100語を覚えるなら、自分の受信箱から拾った100語のほうが使われます。
「簡単なのに言えなかった語」を優先する
難しい語より、簡単なのに出てこなかった語のほうが効きます。会議で言いたかったのに詰まった、その語です。難易度は低くても、使用頻度が高い。ここを埋めるほうが、会話の詰まりが早く減ります。
読めるが書けない語も対象にする
見れば分かるけれど、自分では使ったことがない語があります。これは覚えているつもりになりやすい部分です。自分の文で使えるかどうかで判定してください。判定の方法は後ろで説明します。
集める場所を1つに決める
拾う場所が散ると、集める作業自体が続きません。
その場では語だけ書く
会議中やメールを読んでいる最中に、意味を調べないでください。作業が止まりますし、調べたことで覚えた気になります。語だけをメモに書いて、次に進む。調べるのはまとめてで構いません。集める作業を軽くしておかないと、3日で止まります。
場所は1か所にする
手帳、スマートフォンのメモ、ブラウザの拡張機能。複数使うと、どこに書いたか分からなくなります。取り出しやすさより、1か所であることを優先してください。移動中に開けるものが現実的です。
週末に5語だけ残す
1週間で20語たまったら、そこから5語だけ選びます。基準は、また出てきそうか。残り15語は消して構いません。惜しく感じますが、全部残すと翌週に30語になり、開かなくなります。捨てる作業が、続ける条件です。
1日5語。到達点は「言える」ではない
覚えたかどうかの判定を変えます。
意味が言えても、使えない
日本語訳が言えることは、覚えたことにはなりません。会議で必要なのは、自分の文の中で使えることです。訳を確認する形式だと、この差が見えません。判定は、自分の業務の文を1つ作れるかどうかで行ってください。
判定の方法
1語につき1問、私が仕事で答える場面を想定した質問にしてください。
私が英語で答えたら、その語が適切に使えているかだけを見て、
使えていなければ短く指摘してください。文法の細かい指摘は不要です。
(語を貼る)
訳を聞かれるのではなく、使わされる形にします。答えられなければ、その語はまだ入っていません。5語で3分ほどです。
5語を超えない
10語にすると、判定に時間がかかって続きません。5語なら通勤中に終わります。1週間で5語、1か月で20語。少なく見えますが、業務で出た語だけなので、使う機会が確実にあります。使うたびに定着するので、実際の伸びは語数以上です。
AIに作らせるのは例文ではない
一般的な例文なら辞書にもあります。頼むべきは別の内容です。
| 頼むこと | 理由 |
|---|---|
| 自分の業務文脈の例文 | 使う場面が一致する |
| 取り違えやすい語との違い | 辞書では分かりにくい |
| その語を避ける言い換え | 出てこないときの逃げ道 |
| 相手に使われたときの意味 | 聞く側でも必要になる |
業種と場面を毎回渡す
「製造業の品質管理の担当者が、海外の取引先に納期を説明する場面で」のように、条件を先に書いてください。条件がないと、汎用的な例文が返ってきます。手間に見えますが、この1行を定型にしておけば毎回コピーで済みます。
似た語との違いを聞く
辞書を引いても、近い意味の語の使い分けは分かりにくい部分です。「この2語の違いを、使う場面の違いで説明して」と頼むと、判断基準が出てきます。ここはAIが得意な領域です。ただし、微妙な語感は人によって感覚が違うので、実際の文書での使われ方も確認してください。
言い換えを1つ用意しておく
本番でその語が出てこないことはあります。そのとき使える簡単な言い換えを、セットで覚えておくと詰まりません。「この語が出てこないときに使える簡単な表現を1つ」と頼んでください。覚える語が1つ増えるのではなく、逃げ道が1つできると考えます。
覚えなくていい語を決める
全部を覚えようとすると、回りません。
一度しか出ない固有名詞は捨てる
製品名、地名、人名。その案件が終われば使いません。読めれば足りるので、単語帳に入れないでください。入れると、毎回5語のうち1つを占めます。
辞書で引けば足りる専門用語
書くときに調べられる語は、覚えなくても業務は回ります。覚える必要があるのは、会話の途中で止まると困る語です。読み書きだけで使う語は、優先度を下げてください。
3か月使わなかった語は外す
印がつかないまま3か月経った語は、自分の業務には出ない語です。覚え切っていなくても外して構いません。単語帳を減らすことに抵抗があるかもしれませんが、残す語が少ないほど回転が速くなります。
まとめ
単語帳を作る手間は減りました。残っている問題は回し方です。
- 量が出るので作りすぎる。作った時点で満足して開かなくなる
- 覚える対象は、自分の業務に実際に出た語だけにする
- 集める場所は1か所。その場では語だけ書いて、意味は調べない
- 週末に5語だけ残す。残りは消す
- 判定は訳ではなく、自分の業務の文で使えるか
- AIに頼むのは一般的な例文ではなく、業務文脈の例文と似た語との違い
- 一度しか出ない固有名詞と、辞書で足りる語は入れない
1週間5語でも、業務で出た語なら確実に再会します。再会のたびに定着するので、語数以上に効きます。
よくある質問
業務で英語を使う機会が少ない場合はどうしますか
読む機会があるなら、そこから拾ってください。海外の技術資料でも、取引先からのメールでも構いません。機会がまったくない段階なら、単語より先に、自分が話したい内容を日本語で書き出すほうが役に立ちます。
市販の単語帳は使わなくていいですか
基礎的な語が不足している自覚があるなら、併用する価値はあります。ただ、同時に2つ回すと続きません。市販のものを1冊終えてから業務の語に移る、という順番のほうが現実的です。
発音も一緒に覚えるべきですか
会話で使う語なら、音も確認しておいてください。読み上げてもらって真似するだけで足ります。読み書きでしか使わない語は、後回しで構いません。
語ではなく、フレーズで覚えるほうがいいですか
業務で出てきた形のまま覚えるのが、いちばん使いやすいです。単語だけ切り出すと、前後の語との組み合わせが分からなくなります。メモを取るときも、その語が入っていた1文ごと書いておくと後で楽です。
記録はアプリを使うべきですか
何でも構いませんが、移動中に開けることを優先してください。凝った仕組みを作ると、作ること自体が目的になります。メモアプリ1つで足ります。