
英語で依頼のメールを書くとき、失礼にならないかを気にします。Could you と Would you のどちらがいいか、前置きは足りているか。
ただ、依頼が通るかどうかを決めているのは丁寧さではありません。相手が作業量を見積もれるかどうかです。
丁寧に書いても、依頼は通らない
丁寧さと、動いてもらえるかは別の軸です。
丁寧さは、断る理由を減らさない
相手が依頼を引き受けるかどうかは、自分の予定に入るかで決まります。どれだけ丁寧に書かれていても、時間が読めなければ後回しになります。逆に、簡潔でも作業量が分かれば、その場で判断してもらえます。
前置きが長いと、依頼が見えなくなる
本題に入るまでの説明が長いと、何を頼まれているのかが分かりにくくなります。読み進めて初めて依頼だと気づく形だと、返事が遅れます。英語メールの件名は処理させるために書くと同じで、相手が処理の判断をできる形にするのが先です。
敬語の強さを上げても効果が薄い
Could you を Would you に変えても、返信率は変わりません。表現を強めるより、情報を1つ足すほうが効きます。丁寧さの調整に時間をかけるくらいなら、所要時間の見積もりを書いてください。
放置される3つの理由
返事が来ない依頼には、共通点があります。
| 相手が分からないこと | 起きること |
|---|---|
| 何をすればいいか | 着手できず、後回しになる |
| どのくらいかかるか | 予定に入れられない |
| なぜ自分なのか | 他の人の担当だと思う |
「確認お願いします」では着手できない
確認という語は、範囲が広すぎます。全部読むのか、特定の項目だけか、間違いを探すのか、承認すればいいのか。何をすれば完了かが分からないと、始められません。動作を具体的に書いてください。
時間が読めないと、予定に入らない
相手も予定が埋まっています。30分かかるのか5分で終わるのかで、入れる場所が変わります。見積もりがないと、まとまった時間が空くまで待たれます。それが来週なら、来週まで動きません。
宛先が複数だと、誰も動かない
3人に同じ依頼を送ると、他の誰かがやると思われます。依頼する相手は1人に絞って、他の人は情報共有の宛先に回してください。1人に絞るだけで、返信率が変わります。
入れるのは4つ
依頼のメールに必要な要素は4つです。
組み立ての例
It should take about 10 minutes — there are six rows.
I need this by Thursday so we can send the final version on Friday.
You set these prices last quarter, so you’re the right person to confirm them.
4文です。丁寧な前置きはありませんが、相手は10分で終わることと、木曜までに必要なことと、なぜ自分なのかを把握できます。
動作は1つに絞る
1通で2つ頼むと、片方しか返ってきません。用件が2つあるなら、メールを2通に分けてください。件名も分かれるので、追跡しやすくなります。まとめたほうが親切に見えますが、実際は逆です。
「なぜあなたか」は1文で足りる
その人に頼む理由を1文添えると、他の人の担当だと思われません。前回担当したから、その領域の情報を持っているから。理由があると、依頼の重みが変わります。理由が思いつかない場合は、そもそも依頼先が違う可能性があります。
「お手数ですが」より「15分で終わります」
相手の負担への配慮は、言葉ではなく数字で示します。
| 配慮の示し方 | 相手が受け取るもの |
|---|---|
| Sorry to bother you | 気遣い(判断材料なし) |
| It should take 15 minutes | 予定に入れる判断材料 |
| I’ve done the first half | 作業量の削減 |
| No rush | 優先度の情報 |
見積もりは、多めに言わない
実際より長く見積もると、後回しにされます。逆に短く言いすぎると、始めてから「話が違う」となります。根拠を添えると信頼されます。「6行あるので10分程度」のように、数えられる形で書いてください。
できる部分は先にやっておく
依頼の一部を自分で済ませておくと、相手の作業量が減ります。下書きを作っておいて、確認だけ頼む。候補を3つ挙げて、選んでもらう。ゼロから考えてもらうより、はるかに早く返ってきます。
急がないなら、そう書く
すべての依頼に期限を書くと、どれが本当に急ぎか分からなくなります。急がないものには、遅いほうの目安を書いてください。「今月中で大丈夫です」があると、相手は安心して予定に入れられます。空欄にすると、いつまでも来ません。
理由は目的ではなく影響を書く
なぜ必要かの説明も、書き方で通り方が変わります。
自分の都合ではなく、止まるものを書く
「社内の資料に使うため」は、自分の都合です。「これがないと金曜の提案書が出せない」は、止まるものの説明です。後者のほうが、優先度が伝わります。相手にとっては、遅れた場合に何が起きるかが判断材料になります。
背景の説明は2文まで
経緯を長く書くと、依頼が埋もれます。相手が知る必要があるのは、判断に使う部分だけです。なぜこの案件が始まったかは、たいてい不要です。2文で足りないなら、別の資料に切り出してください。
大きい依頼は、最初の一歩だけ頼む
全体を頼むと、相手は着手の判断に時間がかかります。まず1つ目の部分だけを頼んで、終わってから次を頼む。全体像は伝えたうえで、今回の依頼は最初の部分だけ、という形にすると動いてもらえます。
断りやすくすると、通りやすくなる
逆説的ですが、これは効きます。
断る余地を残すと、返事が早い
断れない形の依頼は、返事そのものが遅くなります。相手が困っているからです。「難しければ、その旨だけお知らせください」の1行があると、少なくとも返事は来ます。断られたら別の手段を探せるので、こちらも早く動けます。
代わりの選択肢を1つ用意する
「今週が難しければ、来週前半でも構いません」のように、選べる形にします。選択肢があると、相手は全部を断る必要がなくなります。ただし3つ以上並べると、選ぶこと自体が負担になるので、2つまでにしてください。
断られたら、理由を聞かない
断りの返事に対して理由を尋ねると、相手に負担がかかります。次の依頼がしにくくなるので、短く礼を伝えて別の手段に移ってください。英語メールの断り方は4文で足りるで書いたとおり、断る側も理由は1つしか出しません。深追いしないほうが関係が続きます。
まとめ
依頼が通るかどうかは、丁寧さではなく見積もりやすさで決まります。
- Could you を Would you に変えても、返信率は変わらない
- 放置される理由は3つ。何をするか、どのくらいかかるか、なぜ自分か
- 入れるのは4つ。動作1つ、所要時間、期限、なぜその人か
- 依頼する相手は1人に絞る。宛先が複数だと誰も動かない
- 「お手数ですが」より「15分で終わります」
- 理由は自分の都合ではなく、遅れた場合に止まるものを書く
- 断りやすくすると、返事が早くなる
相手が5秒で「今日できるか」を判断できれば、その依頼は通ります。
よくある質問
所要時間が自分でも分からない場合は
分かる範囲で書いてください。「1時間はかからないと思いますが、正確には分かりません」でも、何もないよりは判断できます。自分でやったことがない作業なら、そう書いたうえで相手に見積もってもらう形にしてください。
目上の相手にも同じ形でいいですか
同じで構いません。役職が上の人ほど時間が埋まっているので、見積もりがあるほうが助かります。丁寧さを足したいなら、前置きを増やすのではなく、こちらで済ませた部分を明記してください。
期限を書くと催促がましくなりませんか
なりません。期限がないほうが、あとで催促することになります。最初に日付を書いておけば、催促の必要が減ります。急がない場合は、遅いほうの目安を書いてください。
相手が忙しいのが分かっている場合は
作業量を減らしてから頼んでください。下書きを作る、候補を絞る、確認箇所を指定する。時間を取れない相手ほど、こちらの準備が返信率に影響します。遠慮して曖昧に頼むと、かえって手間が増えます。
返事が来ないときはどうしますか
まず、依頼が届いているかを確認してください。そのうえで、期限まで日数があるなら待ちます。催促の段階と書き方は、別の記事にまとめています。理由を切り分けてから送ると、角が立ちません。