「AIが答えるようになったから、SEOはもう意味がない」という見方が広がっています。数字で見ると、半分正しく、半分は誤りです。Ahrefsの2026年6月の実測では、AIによる概要が出る検索で1位のクリック率が予測24.1%に対して実測9.0%、62.7%の減少でした。ただしこの調査は情報収集型のキーワードのみを対象にしています。一方Googleは公式に「AI機能に表示されるための特別な最適化は不要」と明記しています。この記事では、減る流入と減らない流入を分け、自社のどの記事が影響を受けるかをSearch Consoleで見分ける方法まで整理します。
この記事でわかること
結論。意味がなくなるのは「調べて終わる記事」
先に結論を置きます。「SEOは意味がない」は、記事の種類によって正しくも誤りにもなります。
| 記事の種類 | いま起きていること | 判断 |
|---|---|---|
| 「〜とは」「〜の意味」など、調べて終わる記事 | AIが答えを出すので、サイトまで来なくなる | 流入は減る。ここに投資を増やすのは筋が悪い |
| 料金・比較・選び方など、判断に使う記事 | AIの回答だけでは決められないので、まだ読まれる | 影響は小さい。むしろ相対的に価値が上がる |
| 地域+業種で探される(来店・訪問) | 地図と口コミが主戦場で、構造が別 | ほぼ影響なし。MEOの領域 |
| 指名・社名で探される | AIが要約しても、本人のサイトに来る | 影響なし |
つまり「調べ物としての検索」は減り、「決めるための検索」は残るというのが、いま起きている変化です。SEOという言葉でひとくくりにすると判断を誤ります。
実測データ。クリック率はどれだけ落ちたか
感覚ではなく、公開されている実測を見ます。SEOツールのAhrefsが2026年7月に公開した調査です。
| 指標(日本) | 2024年6月 | 2026年6月 |
|---|---|---|
| AI概要が出ないときの、1位のCTR | 31.1% | 31.7% |
| AI概要が出るときの、1位のCTR | 23.7% | 9.0% |
Ahrefsは、AI概要がなければこうなっていたはずという予測CTRを24.1%と算出し、実測の9.0%と比べて62.7%の減少としています。
図1:日本の情報収集型キーワードにおける、検索1位のクリック率(Ahrefs、2026年6月)。AI概要が出ると、予測より6割以上少ないクリックしか発生していない。
「1位を取ってもクリックは9%」という数字は、率直に言って重いです。かつて1位の価値は「検索した人の3割が来る」でしたが、AI概要が出る検索では1割を切っています。
この数字を読むときの、重要な前提
ここが、多くの解説で抜けている部分です。この調査は情報収集型のキーワードのみを対象にしています。対象範囲はAhrefs自身が明示しているものです。
情報収集型というのは、「〜とは」「〜の方法」「〜の相場」のように、答えを知りたいだけで、何かを買う手前にある検索のことです。AIがまさに得意とする領域であり、影響が最も大きく出る場所でもあります。
この62.7%という数字を、すべての検索に当てはめて語るのは誤りです。「SEOは6割減る」という説明を見かけたら、その調査が何を対象にしているかを確認してください。自社のお客さんがどういう言葉で探しているかによって、受ける影響はまったく違います。
もうひとつ。AI概要が出ない検索では、1位のCTRは31.1%から31.7%へと、むしろわずかに上がっています。検索そのものが死んだわけではありません。AI概要が出るかどうかで、二極化している状態です。
Googleは何と言っているか
ここは一次情報を確認しました。Google検索セントラルの「AI機能とウェブサイト」というページ(2025年12月31日更新)に、次のように書かれています。
| Googleが書いていること | 経営判断への意味 |
|---|---|
| AIによる概要やAIモードに表示されるための追加の要件はなく、特別な最適化も必要ない | 「AI対策」として別料金を請求される根拠が、公式にはない |
| AI機能で表示されるために、新たに機械が読めるファイルやAIテキストファイル、マークアップを作る必要はない | llms.txtのようなファイルの設置を必須として売る提案は、公式見解と食い違う |
| 必要なのは、インデックスに登録されていること、スニペットが表示されること、技術要件を満たすこと | 基本のSEOがそのまま要件になっている |
| AI機能に表示されたサイトのデータはSearch Consoleの全検索トラフィックに反映される | 別のツールを買わなくても、既存の画面で追える |
| AI概要が出る検索結果からのクリックは質が高く、ユーザーがサイトに長く滞在する傾向がある | 数は減るが、来た人の温度は高い、という主張 |
2つ目は重要です。「AI検索対策」として特別なファイルの設置を提案されたら、この記述を根拠に説明を求めてください。Googleが不要と明記しているものを、必須として売ることはできません。
2つの主張は矛盾しているのか
「クリックが6割減った」というAhrefsの実測と、「クリックの質は高い」というGoogleの説明。並べると矛盾して見えますが、論理的には両立します。
AI概要が答えを出すことで、「答えだけ知りたかった人」はサイトに来なくなります。残るのは、答えを読んだうえで「もっと詳しく知りたい」「この会社に頼めるのか」と思った人です。数は減り、温度は上がる。この説明自体は筋が通っています。
ただし当研究所としては、Googleの「質が高い」という説明を裏づける具体的な数値の公開は確認できていません。滞在時間がどれだけ長いのか、問い合わせ率がどう変わったのか、そこまでは示されていない状態です。クリック減は第三者の実測、質の向上はGoogleの自己申告。この非対称は認識しておいてください。
実務的な結論はこうです。クリック数が減ることは前提として計画する。そのうえで、来た人が問い合わせに至る率が上がるかどうかは、自社のSearch ConsoleとGA4で確かめる。他人の数字ではなく、自社の数字で判断してください。
減る流入と、減らない流入
ここが実務の中心です。自社のキーワードを、次の4つに分けてください。
図2:検索意図による影響の違い。自社の記事がどこに寄っているかで、受ける打撃は変わる。
左端の「調べたい」に寄った記事ばかりなら、流入は落ちます。逆に、料金や事例、地域名との組み合わせで探されている記事が多いなら、影響は限定的です。
ここで注意したいのは、「調べたい」の記事を捨てろという話ではないことです。認知の入口としての役割は残りますし、AI概要に引用されれば名前は表示されます。ただ、その記事に問い合わせを期待する設計は、もう成立しにくくなっています。役割を変えて考えてください。
自社のどの記事が影響を受けるか、Search Consoleで見分ける
他社の平均値ではなく、自社の実態を見ます。手順は3つです。
1つ目。検索パフォーマンスで、期間を「過去16か月」にして、表示回数とクリック数の折れ線を重ねます。表示回数は横ばいか増えているのに、クリック数だけが下がっている期間があれば、そこがAI概要の影響を疑う場所です。順位が落ちたなら表示回数も減るはずなので、表示回数が減っていないのにクリックだけ減っている、という形が特徴的です。
2つ目。クエリのタブで、CTRが極端に低いものを探します。順位が1位から5位なのにCTRが5%を切っている語は、AI概要が出ている可能性があります。実際にその語で検索して、AI概要が表示されるかを目で確かめてください。
3つ目。そのクエリが「調べたい」なのか「頼みたい」なのかを分類します。調べたい系ばかりなら、記事の構成そのものを見直す段階です。
Search Consoleでは、AI概要からのクリックが通常の検索トラフィックに合算されて記録されます(Google公式)。AI概要だけを切り出して見ることはできません。上の3つは、あくまで間接的な推定です。断定はできないことを前提に使ってください。
これから記事の構成をどう変えるか
方針は1つです。記事全体に占める「調べて終わる記事」の比率を下げる。ゼロにする必要はありませんが、それだけで構成されているなら危険です。
| 増やす記事 | なぜ効くか |
|---|---|
| 料金・費用の相場と内訳 | 金額の判断はAIの回答だけでは決められない。原典を見に来る |
| 失敗例・向かない場合 | 一般論の要約には出てこない。書き手の立場が必要になる |
| 実際にやった手順と結果 | 体験は要約で置き換えられない。E-E-A-Tの観点でも有利 |
| 地域名や業種を伴う記事 | 来店・訪問の判断につながる。AIより地図と口コミが主戦場 |
| 比較の判断軸そのもの | 「どれがいいか」ではなく「どう選ぶか」。判断の枠組みは要約されにくい |
それに加えて、書き方を変えると引用されやすくなります。見出しを質問の形にして直後に結論を置く。段落を単体で意味が通るように書き、代名詞に頼らず固有名詞と数字を入れる。この2つは、AI概要に引用される形に近づくだけでなく、通常の検索でも効きます。
大事なのは、これらがGoogleの言う「基本のSEO」の範囲に収まっていることです。新しい技術も、追加の費用も要りません。
「AI対策」として売られているものの判断基準
いま最も相談が多いのがここです。判断の基準を示します。
| 提案の内容 | 判断 |
|---|---|
| AI用のファイル(llms.txt等)を設置します | 必須ではない。Googleが「新たにAIテキストファイルを作る必要はない」と明記している。自分で30分なら止めないが、外注する段階ではない |
| AI検索で1位にします | 保証できない。AIの回答に何が引用されるかは、順位保証と同じく業者が約束できるものではない |
| 見出しを質問形にし、段落を自己完結させます | 妥当。効果の根拠がはっきりしていて、通常のSEOにも効く |
| 構造化データを正しく入れます | 妥当。仕様が公開され、検証ツールで確認できる |
| AI専用の別サイトを作ります | 根拠が見当たらない。公式にそのような要件はない |
共通する見分け方は、「Googleが公開している情報で裏づけられるか」です。裏づけを聞いて、出典が業者のブログしかないなら、その提案は判断を保留してください。
それでもSEOをやめたほうがいい場合
ここまで「意味がなくなるわけではない」と書いてきましたが、やめたほうがいい状況も実際にあります。正直に挙げます。
1つ目は、扱っている情報が一般論しかない場合。公開情報をまとめ直しただけの記事は、AIが最も得意とする領域です。ここで勝負し続けるのは厳しい。自社にしかない数字や体験を出せないなら、別の集客手段のほうが確実です。
2つ目は、半年以内に結果が必要な場合。これはAIの登場と関係なく、以前から変わりません。立ち上がりに時間がかかる打ち手です。
3つ目は、商圏が徒歩圏に限られる店舗。記事を書くより、Googleビジネスプロフィールを整えて口コミに返信するほうが、はるかに少ない手間で来店につながります。
4つ目は、そもそも検索需要がない商材。新しい概念の商品は名前を知られていないので検索されません。AI以前の問題です。
当研究所が計測を始めたこと
ここまで挙げたのは、すべて他社が公開したデータとGoogleの公式情報です。当研究所自身の実測データは、まだありません。
このメディアが公開を始めたのは2026年9月で、記事数もアクセスもまだ足りていない段階です。この段階で「実測しました」と名乗るのは不誠実なので、いま出せる材料は出典つきの他社データだけであるとはっきり書いておきます。
そのうえで、次の計測を開始しました。
| 計測すること | いつ報告するか |
|---|---|
| 記事ごとの表示回数・クリック数・CTRの推移 | 記事が20本を超え、データが溜まった時点 |
| 「調べたい」系と「頼みたい」系で、CTRに差が出るか | 同上 |
| AI概要が表示される語と、されない語での違い | 同上 |
結果が思わしくなければ、それも書きます。うまくいった話だけを載せるメディアは、判断の役に立ちません。
まとめ
「SEOは意味がないのか」への答えを整理します。
「調べて終わる記事」の流入は確実に減っています。Ahrefsの2026年6月の実測で、AI概要が出る検索での1位のCTRは、予測24.1%に対して実測9.0%。62.7%の減少です。
ただしこの調査は情報収集型のキーワードのみが対象です。「SEO全体が6割減る」という読み方は誤りです。AI概要が出ない検索では、1位のCTRはむしろわずかに上がっています。
Googleは公式に「AI機能に表示されるための特別な最適化は不要」「新たにAIテキストファイルを作る必要はない」と明記しています。AI対策として別料金を請求する提案は、この記述と突き合わせてください。
実務としては、「調べたい」記事の比率を下げ、「決めるための記事」を増やす。料金、失敗例、実際にやった手順、地域名を伴う記事。これらはAIの要約で置き換えにくく、問い合わせにも近い。
そして、他社の平均値ではなく自社のSearch Consoleで確かめてください。表示回数は減っていないのにクリックだけ減っている記事があれば、そこが影響を受けている場所です。
よくある質問
AIが答えるなら、もう記事を書かなくていいのでは
AIは何もないところから答えを作るわけではなく、既存のページを読んで要約しています。書く人がいなくなれば、要約する材料もなくなります。ただし「調べて終わる記事」を書き続けても流入にはつながりにくいので、料金や事例、実際にやった手順など、要約で置き換えにくい内容に寄せる必要があります。
62.7%減という数字は、うちのサイトにも当てはまりますか
そのまま当てはめないでください。この調査は情報収集型のキーワードのみを対象にしています。自社のお客さんが「地域名+業種」や「商品名」で探しているなら、影響はずっと小さいはずです。自社のSearch Consoleで、表示回数が減っていないのにクリックだけ減っている記事があるかを確認するのが確実です。
AI対策の専門サービスに依頼すべきですか
提案内容によります。Googleは「AI機能に表示されるための追加の要件はなく、特別な最適化も必要ない」「新たにAIテキストファイルやマークアップを作る必要はない」と明記しています。特別なファイルの設置や、AI専用サイトの構築を必須として提案された場合は、この記述を示して根拠を聞いてください。一方、見出しを質問形にする、段落を自己完結させる、構造化データを正しく入れるといった提案は妥当です。
AI概要に引用されると、流入は増えますか
Googleは「AI概要が表示される検索結果からのクリックは質が高く、ユーザーがサイトに長く滞在する傾向がある」と説明していますが、当研究所ではこれを裏づける具体的な数値の公開を確認できていません。クリック数の減少は第三者の実測で示されている一方、質の向上はGoogleの説明であるという非対称があります。自社の数字で確かめてください。
Search ConsoleでAI概要からの流入だけを見られますか
切り出して見ることはできません。GoogleはAI機能に表示されたサイトのデータについて「Search Consoleの全検索トラフィックに反映される」と説明しており、合算されています。間接的な推定としては、順位が高いのにCTRが極端に低いクエリを探し、そのキーワードで実際に検索してAI概要が出るかを目で確認する方法があります。
いまからSEOを始めるのは遅いですか
狙う言葉によります。「調べて終わる」語で大手と競うのは、以前より条件が厳しくなりました。一方で、地域名を伴う語、具体的な検討段階の語、自社の商品名に近い語は、以前と同じかそれ以上に有効です。始める前に、自社のお客さんがどの段階のどんな言葉で探しているかを洗い出してください。そこが「調べたい」に寄っているなら、SEO以外の手段も並行して検討する段階です。
この記事のデータは、自社で実測したものですか
いいえ。この記事で挙げた数字は、Ahrefsが公開した調査とGoogleの公式ドキュメントによるものです。当研究所のメディアは2026年9月に公開を始めたばかりで、自社の実測データを語れる段階にありません。現在、記事ごとのCTRの推移と、検索意図による差の計測を開始しています。データが溜まった時点で、結果が思わしくない場合も含めて公開します。