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副業で社会保険はどうなる?2026年10月に「106万円の壁」が撤廃。業務委託なら原則変わりません

机の上の書類の束に書き込みながら電卓を操作している手元のイメージ

「副業を始めたら、社会保険ってどうなるんだろう」。

調べ始めると、出てくるのは「加入条件」「二重加入」「106万円の壁」といった言葉ばかりで、結局自分に何が起きるのかが見えてきません。

検索して上位に出てくる記事を読んでも、すっきりしない理由があります。多くが「雇う側」に向けて書かれているからです。人事担当者や社労士が手続きをどう進めるかという話で、働く本人が何を確認すればいいかという順番では書かれていません。

しかもこの分野は、2026年10月1日に要件が1つ変わったばかりです。それ以前に書かれた解説は、いまの制度と食い違っています。

この記事では、日本年金機構の資料と法律の条文にあたって、働く本人の立場から整理します。最初に、いちばん大事な分かれ道から入ります。

先に分かれ道。業務委託なら、原則なにも変わりません

社会保険の話に入る前に、ここを確かめてください。あなたの副業は、どこかに「雇われて」いますか。それとも業務委託ですか。

ここで話が大きく変わります。

健康保険の被保険者になるのは、健康保険法第3条第1項にあるとおり、適用事業所に使用される者です。厚生年金保険法第9条も同じ構造です。

そして保険料の計算のもとになる「報酬」は、健康保険法第3条第5項でこう定義されています。

「この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。」

つまり、使用関係のない業務委託の収入は、ここで言う「報酬」に当たりません。本業の標準報酬月額の計算には入らず、本業の社会保険料は副業の収入では動かないということになります。

クラウドソーシングで受けた案件、個人で請け負ったデザインやライティング、物販。こうした形の副業であれば、社会保険についてはひとまず気にしなくて大丈夫です。

【ただし、契約書の名前では決まりません】

日本年金機構は「常時使用される人」について、「雇用契約書の有無等とは関係なく、適用事業所で働き、労務の対価として給料や賃金を受けるという使用関係が常用的であること」と説明しています(就職したときの手続き)。

契約の名目が業務委託でも、働き方の実態が「雇われている」のと変わらなければ、被保険者になり得ます。時間を指定され、仕事の進め方も指示され、断る自由がない。そういう状態なら、形式だけで安心しないほうがいいでしょう。

なお、業務委託でも所得税と住民税は増えます。社会保険が変わらないという話と、税金の話は別です。この違いは後ろのほうで整理します。

ここから先は、2か所目でも雇われている人(アルバイト・パートの掛け持ち)に向けた話です。

2026年10月1日、「106万円の壁」はなくなりました

窓際で書類に目を通している人のイメージ

まず、直近で変わった点から。ここを知らずに古い記事を読むと、確実に間違えます。

これまで、短時間労働者が社会保険に加入する要件は4つありました。そのうちの1つが「所定内賃金が月額8.8万円以上であること」で、これがいわゆる「106万円の壁」と呼ばれていたものです。

この賃金要件が、2026年10月1日に撤廃されました。

日本年金機構のお知らせ(2026年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました)に、そのまま書かれています。

根拠になっているのは、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号)です。2025年6月13日に成立し、同年6月20日に公布されました。撤廃の施行日は、2026年9月11日に公布された令和8年政令第275号で2026年10月1日と定められています。

【「106万円」はもともと法律の言葉ではありませんでした】

日本年金機構のQ&Aには「所定内賃金が月額8.8万円以上であるかないかのみに基づき、要件を満たすか否かを判定します(年収106万円以上というのはあくまで参考の値です)」とあります。月額8.8万円を12倍したおよその数字が独り歩きしていた、ということです。

この撤廃は、副業している人にとっては「加入しやすくなった」方向の変化です。 これまで月8.8万円に届かず対象外だった人が、他の要件を満たせば加入対象になります。保険料の負担は増えますが、そのぶん厚生年金の記録が積み上がり、傷病手当金などの対象にもなります。どちらが得かは一概に言えません。

なお、過去にさかのぼって資格を取得する場合は注意が必要です。機構のQ&Aには「令和8年9月以前の期間について、遡及して被保険者資格を取得する場合は、撤廃前と同じ基準で、賃金要件も満たす必要があります」とあります。撤廃は、あくまで2026年10月以降の期間についての話です。

いまの加入要件。関門は3つあります

賃金要件がなくなったので、短時間労働者が加入するかどうかは3つで決まります。順に見ていきます。

その前に前提をひとつ。そもそも正社員の4分の3以上働いていれば、短時間労働者の話に入る前に加入します。

日本年金機構は「パートタイマー・アルバイト等でも事業所と常用的使用関係にあり、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である方は被保険者となります」と説明しています。時間と日数の両方です。

4分の3に届かない場合に、次の3つの関門を見ます。

関門 内容 20代が引っかかりやすい点
1. 労働時間 週の所定労働時間が20時間以上 「所定」なので、契約上の時間で見ます。ただし実際の労働時間が常態的に20時間以上なら、契約が20時間未満でも加入します(下記)
2. 企業規模 勤め先が従業員51人以上(特定適用事業所) ここが残っています。副業先が小さい会社なら、週20時間以上でも原則は加入しません
3. 学生でない 学生は適用除外 「学生なら除外」とは限りません。下のとおり、除外されない学生がいます

関門1は契約上の時間。ただし実態が勝つことがあります

「所定労働時間」は契約で決まっている時間のことなので、残業でたまたま超えた週があっても、それだけでは加入になりません。

ただし、ここに例外があります。日本年金機構のQ&A(問34)に、こう書かれています。

「実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。」

契約では週18時間なのに、実際はいつも22時間くらい働いている。こういう状態が2か月続いて、この先も続きそうなら、3か月目の初日から加入対象になります。 契約書の数字だけを見て「20時間未満だから関係ない」と判断すると、ここを取りこぼします。

関門2の「51人」は、素朴に数えた人数とは違います

ここは誤解しやすい部分です。日本年金機構の説明では、特定適用事業所とは「1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業等」とされています。

アルバイトを含めた「お店にいる人の数」とは別物です。厚生年金に入っている人の数で、しかも短時間労働者は数に入れません。法人の場合は、同一法人格に属する(法人番号が同一である)すべての適用事業所の合計で数えます。チェーン店なら、その店舗ではなく会社全体ということです。

そして、この企業規模要件は段階的に縮小されていく予定です。厚生労働省の資料「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」に、年月が示されています。

時期 対象となる企業規模
現在(2027年9月まで) 従業員51人以上
2027年10月から 36人以上
2029年10月から 21人以上
2032年10月から 11人以上
2035年10月から 10人以下(事実上の撤廃)

いま副業先が小さくて対象外でも、数年後には変わってきます。

そしてもう一つ、規模が小さくても加入するルートがあります。 日本年金機構の説明では、短時間労働者が被保険者になる場として、「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」「国・地方公共団体に属する事業所」の3つが挙げられています。

任意特定適用事業所は、働く人の2分の1以上の同意があれば、51人未満の会社でも労使の合意で加入できるという仕組みです。また副業先が公的機関なら、規模にかかわらず対象です。

「うちは小さいから関係ない」と決めつけず、副業先に確認する価値はここにあります。

関門3の「学生」から外される人がいます

「学生だから社会保険には入らない」。これは、条件つきでしか正しくありません。

日本年金機構のQ&Aは、学生であっても次の人は対象から除かれる、つまり加入し得るとしています。

【「学生」から除かれる人】

  • 卒業後も引き続きその勤め先で働くことが決まっている人
  • 休学中の人
  • 定時制課程・通信制課程に在学している人
  • これらに準じる人(いわゆる社会人大学院生など)

働きながら大学院に通っている、通信制で学び直している。20代にはよくある形ですが、この場合「学生だから除外」は使えません。

さらに、学生の除外が効くのは4分の3未満の短時間労働者のときだけです。機構のQ&Aには「学生であっても、適用事業所に使用され4分の3基準を満たす場合は、正社員等と同様に一般被保険者として健康保険・厚生年金保険の被保険者となります」とあります。がっつり働いている学生は、学生であることを理由に外れません。

3つの関門に入る前に、外れる人もいます

もうひとつ、見落とされやすい除外があります。2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えて使用される見込みがない人は、そもそも適用から除かれます(健康保険法第3条第1項第二号ロ、厚生年金保険法第12条第一号ロ)。

短期の副業バイトが、ここに当たることもあるでしょう。ただし、契約の更新が明示されていたり、過去に更新の実績があったりすれば、最初から加入扱いになります。「2か月で切ればセーフ」という単純な話ではありません。

あわせて、2026年10月の改正では新しい除外も設けられました。最低賃金法第7条の減額特例許可を受けていて、かつ所定内賃金が月8.8万円未満の人(特定減額特例対象者)は、原則として加入対象外です。申し出れば任意で加入できます。該当するのは試用期間中の人や軽易な業務に従事する人などで、許可を受けていなければ関係ありません。

2か所で加入したら、本人が10日以内に届を出す

パソコンの画面を一緒に見ながら話している2人のイメージ

ここで、よくある誤解をひとつ潰しておきます。

加入要件は、勤め先ごとに別々に判定します。2か所の労働時間や賃金を足し算しません。

日本年金機構のQ&Aに、はっきり書かれています。「被保険者資格の取得要件を満たすか否かについては、各事業所単位で判断を行うこととしており、2ヶ所以上の事業所における所定内賃金や労働時間を合算することはしません」。

本業で週30時間、副業で週10時間。合わせて40時間だから副業先でも加入、という話にはなりません。副業先で週20時間以上働いていなければ、そちらでは加入しない扱いです。

逆に、両方で要件を満たせば、両方で加入します。 これが「2か所で加入する」状態です。

その場合にやることが、健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届の提出です。

項目 内容
誰が出すか 被保険者本人。会社ではありません
いつまで 事実が発生してから10日以内
どこへ 選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所(健康保険組合の事業所を選んだ場合は、その組合にも手続きが必要)
方法 電子申請、郵送、窓口持参
前提 各勤め先から「被保険者資格取得届」が出ていること(こちらは事業主が5日以内)

出典は日本年金機構の二以上事業所勤務届のページと、本人向けのリーフレット「兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ」です。

この届は本人が出すものだ、という点が実務上いちばん大事です。 会社がやってくれるものだと思って待っていると、誰も出さないまま時間が過ぎます。「主たる事業所」をどちらにするかを自分で選んで届け出る、という仕組みになっています。

なお、この届を出さなかった場合にどうなるかは、日本年金機構のページには書かれていませんでした。 罰則や不利益の記載を確認できていないので、ここは断定を避けます。期限が定められている以上、出すものだという前提で動くのが無難でしょう。

保険料は「二重」ではなく、合算して按分されます

「2か所で入ったら保険料も2倍になるのでは」。ここがいちばん不安なところだと思います。

結論から書くと、保険料が二重に発生するわけではありません。 順に追います。

いったん合わせて、それから分ける A社の報酬月額 200,000円 B社の報酬月額 100,000円 合算した標準報酬月額 300,000円 ×183/1000=54,900円 労使折半で本人負担は 27,450円 B社で天引き 9,150円 A社で天引き 18,300円 報酬の比率で 分けるだけ 出典:日本年金機構「兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ」の計算例。 保険料率は改定されることがあります。健康保険料率は選択した事業所の保険者の率が使われます。

日本年金機構の説明は、こうです。「それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定します。保険料は、決定した標準報酬月額による保険料額をそれぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分し決定します」。

18,300円と9,150円を足すと27,450円。これは標準報酬月額30万円に対する、厚生年金保険料の本人負担額そのものです(健康保険料は別に計算されます)。二重に取られているわけではなく、1つの保険料を2か所に割り振っているだけだと分かります。

ただし、ここは正直に書いておきます。本業だけのときより、負担の合計額は増えます。 報酬を合算したことで標準報酬月額の等級が上がるからです。「二重取りではない」ことと「増えない」ことは違います。

もうひとつ、見落とされやすい点があります。健康保険料率は、選択した事業所の保険者の率が全体に適用されます。 協会けんぽは都道府県支部ごとに率が違うので、どちらを「主たる事業所」として選ぶかで金額が変わり得るということです。

「社会保険の手続きで会社にバレる」の実際

ここは推測が飛び交いやすいところなので、確認できたことだけを書きます。

まず、業務委託の副業なら、この届出自体が不要です。 適用事業所に使用されていないので、社会保険の経路で本業に何かが伝わることはありません。

2か所で加入して届を出した場合は、日本年金機構のページにこう書かれています。

「なお、決定した標準報酬月額および保険料額は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知します。」

つまり、本業の会社にも、按分後の新しい標準報酬月額と保険料額が通知されます。 給与から引く額が変わるので、経理や人事が気づく可能性は高いでしょう。社会保険の面では「気づかれない前提」で動かないほうが安全です。

一方で、その通知書に副業先の会社名まで書かれているかどうかは、確認できませんでした。 記入例の様式まで当たれていないので、「社名が伝わる」とも「伝わらない」とも書けません。ここは断定を避けます。

結局のところ、2か所で雇われて働くなら、先に勤務先の就業規則を確認して必要な手続きを踏むのが確実です。隠し通す方法を探すより、そのほうが早く済みます。

雇用保険は原則1か所。合算できる制度は65歳以上限定

健康保険・厚生年金とは別に、雇用保険があります。こちらは考え方が違います。

雇用保険は、原則として1か所でしか加入しません。 厚生労働省のパンフレット「第4章 被保険者について」には、こうあります。

「2以上の適用事業主に雇用される者/…その者の生計を維持するのに必要な主たる賃金を受ける事業所において被保険者となります。/従たる賃金を受ける事業所においては被保険者となりません(二重の資格取得はできません)。」

本業で雇用保険に入っているなら、副業先では原則入りません。ただし業務取扱要領には、主たる雇用関係の判断が難しい場合などに本人の選択によるいずれか一方を認める例外も書かれています。

【「合算して雇用保険に入れる制度」は20代には使えません】

複数の勤め先の労働時間を合算して雇用保険に加入できる「マルチジョブホルダー制度」があります。ただし雇用保険法第37条の5は、対象を「二以上の事業主の適用事業に雇用される六十五歳以上の者」と定めています。

条文に年齢が明記されているので、20代は全員対象外です。「合算できる制度がある」とだけ紹介している記事を見かけたら、年齢条件を確かめてください。

なお、雇用保険の加入ラインそのものは、将来広がる予定です。雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)で、被保険者の要件が週の所定労働時間「20時間以上」から「10時間以上」に変わります。2024年5月10日に成立、同年5月17日に公布され、施行は2028年10月1日です。

ただし、施行後に「主たる賃金を受ける1か所のみ」という取扱いがどうなるかは、現時点では確認できていません。いま「2028年から副業先でも雇用保険に入れる」と読むのは早すぎます。

税金の「20万円ルール」とは、まったく別の話です

最後に、混ざりやすいものを切り分けます。

副業の話で必ず出てくる「20万円」は、所得税の確定申告が必要かどうかの基準です。国税庁のNo.1900に、給与を1か所から受けていて給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人は申告が必要、とあります。

これは社会保険とは何の関係もありません。

何で決まるか 単位
所得税 1年間の所得額 年単位・本人が申告
住民税 前年の所得額 年単位・市区町村が課税
社会保険 所定労働時間と勤め先の規模 勤め先ごと・月単位の標準報酬月額

社会保険の加入は、年収がいくらかでは決まりません。 決めるのは所定労働時間と勤め先の規模です。賃金要件が撤廃されたいまは、なおさらそうなっています。「年収○万円」で3つをまとめて語ると、必ずどこかで間違えます。

ついでに、もうひとつ切り分けておきます。「130万円の壁」という言葉もありますが、これは健康保険の被扶養者になれるかどうかの基準です。本業で会社員として働いている読者は、すでに自分が被保険者なので、自分には関係がありません。関係するのは、自分が家族を扶養に入れている場合だけです。

その扶養の基準も動いています。扶養認定日が2025年10月1日以降で、認定を受ける人が19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く)の場合、年間収入の要件は150万円未満に変わりました。年齢は認定日が属する年の12月31日時点で判定します。

今日からできること

3つあります。上から順にやってください。

ひとつめ、3分。自分の副業がどちらかを確かめる。

契約書のタイトルではなく、働き方で見ます。シフトに入って時給で働いているなら「雇われている」側です。案件ごとに受けて成果物を納めているなら業務委託です。

業務委託だったなら、社会保険についてはここで終わりです。 本業の保険料は動きません。次に読むべきは税金の話になります。副業の確定申告、20万円ルールって結局どういうこと?にまとめてあります。

ふたつめ、5分。雇われている副業なら、3つの関門を自分に当ててみる。

書き出すのは3つです。副業先の契約書に書かれた週の所定労働時間。副業先の会社の規模(厚生年金に入っている人が51人以上か。わからなければ採用ページの従業員数が手がかりになります。法人全体で数える点に注意してください)。そして自分が学生に当たるか(社会人大学院生・通信制・定時制・休学中は「学生」から外れます)。

契約が週20時間未満でも、実際にいつも20時間以上働いているなら、そこで止まらずに次へ進みます。20時間以上で、かつ51人以上の会社なら、加入する可能性が高いと考えてください。51人未満でも、労使の合意があれば加入することがあります。

みっつめ、10分。加入しそうなら、先に手を打つ。

まず本業の就業規則で、副業の可否と届出の要否を確認します。次に副業先に「社会保険の加入対象になりますか」と聞きます。これは聞いて差し支えない質問で、むしろ先に確認しておくほうが手続きがスムーズです。

両方で加入することになったら、二以上事業所勤務届を自分で、10日以内に出します。 会社が出してくれるものではありません。どちらを「主たる事業所」にするかも自分で選びます。健康保険料率は選んだほうの率が使われるので、迷ったら年金事務所に聞くのが確実です。

まとめ

副業で社会保険がどうなるかは、まず「雇われているか、業務委託か」で分かれます。 業務委託なら、本業の社会保険料は原則動きません。使用関係のない収入は、法律上の「報酬」に当たらないからです。

2か所目でも雇われている場合は、2026年10月1日に要件が1つ減りました。 月額8.8万円という賃金要件、いわゆる「106万円の壁」が撤廃されています。それ以前に書かれた解説とは前提が違うので、読む記事の日付に注意してください。

いま残っている関門は3つ。週20時間以上、従業員51人以上の会社、学生でないこと。 判定は勤め先ごとで、2か所の時間を足しません。企業規模は2027年10月から段階的に下がっていきます。

両方で加入したら、本人が10日以内に二以上事業所勤務届を出します。 会社ではなく本人です。保険料は二重にはならず、合算した標準報酬月額から算出した額を報酬の比率で按分します。ただし等級が上がるぶん、負担の合計は増えます。

雇用保険は原則1か所のまま。合算できるマルチジョブホルダー制度は、条文で65歳以上と定められているので20代は使えません。

そして「20万円ルール」は所得税の話で、社会保険とは別の制度です。社会保険は年収ではなく、所定労働時間と会社の規模で決まります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務委託の副業をすると、本業の社会保険料は上がりますか?

原則上がりません。健康保険の被保険者は「適用事業所に使用される者」で、保険料の基礎となる「報酬」は健康保険法第3条第5項で「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と定義されています。使用関係のない業務委託の収入はこれに当たらないため、本業の標準報酬月額の計算には入りません。ただし契約書の名目が業務委託でも、実態として使用関係が常用的であれば被保険者になり得ます。なお所得税と住民税は増えます。

Q2. 「106万円の壁」は今もありますか?

ありません。短時間労働者の加入要件のうち、所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件は2026年10月1日に撤廃されました。根拠は令和7年法律第74号で、施行日は令和8年政令第275号により定められています。なお「106万円」はもともと法令上の基準ではなく、日本年金機構のQ&Aにも「年収106万円以上というのはあくまで参考の値です」と書かれていました。ただし2026年9月以前の期間について遡及して資格を取得する場合は、撤廃前の基準で賃金要件も必要になります。

Q3. 本業と副業の労働時間を足して20時間を超えたら加入しますか?

しません。日本年金機構のQ&Aに「被保険者資格の取得要件を満たすか否かについては、各事業所単位で判断を行うこととしており、2ヶ所以上の事業所における所定内賃金や労働時間を合算することはしません」とあります。副業先で週20時間以上働いていなければ、副業先では加入しません。ただし契約が週20時間未満でも、実際の労働時間が連続する2か月で週20時間以上になり、その状態が続く見込みなら、3か月目の初日から加入対象になります。労働時間を合算する仕組みは、雇用保険のマルチジョブホルダー制度(65歳以上限定)のほうなので、混同しないよう注意してください。

Q4. 副業先が小さい会社なら、週20時間以上でも加入しませんか?

原則そうなります。企業規模要件が残っており、現在は厚生年金の被保険者が51人以上の企業(特定適用事業所)が対象です。この51人は、1年のうち6月間以上その規模が見込まれるかで判定し、短時間労働者は人数に含めません。法人の場合は同一法人番号のすべての事業所を合計します。なおこの要件は段階的に縮小され、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上、2035年10月から10人以下となる予定です。ただし51人未満でも、働く人の2分の1以上の同意による労使の合意があれば「任意特定適用事業所」として加入できます。国・地方公共団体に属する事業所は規模にかかわらず対象です。

Q5. 学生なら社会保険に入らなくていいのですか?

条件つきです。学生は短時間労働者の適用除外とされていますが、日本年金機構のQ&Aでは、卒業後も引き続きその勤め先で働くことが決まっている人、休学中の人、定時制課程・通信制課程に在学している人、これらに準じる人(いわゆる社会人大学院生など)は「学生」から除かれるとされています。また学生であっても、所定労働時間と日数が通常の労働者の4分の3以上であれば、正社員等と同様に被保険者となります。

Q6. 二以上事業所勤務届は会社が出してくれますか?

いいえ、被保険者本人が提出します。日本年金機構は「被保険者本人の届出により、主たる事業所を選択して…決定します」と説明しており、提出期限は事実発生から10日以内です。提出先は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所で、電子申請・郵送・窓口持参のいずれかで行います。前提として各勤め先から「被保険者資格取得届」が出ている必要があり、そちらは事業主が5日以内に提出します。なお提出しなかった場合にどうなるかは、同機構のページに記載がありませんでした。

Q7. 2か所で加入すると、保険料は二重に取られますか?

二重にはなりません。それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した額で標準報酬月額を決め、そこから算出した保険料を各事業所の報酬月額の比率で按分します。日本年金機構のリーフレットの例では、A社20万円・B社10万円で標準報酬月額30万円、厚生年金保険料54,900円の本人負担27,450円が、A社18,300円・B社9,150円に分けられます。足すと27,450円で、重複していません。ただし報酬を合算することで等級が上がるため、本業だけのときより負担の合計額は増えます。

Q8. 社会保険の手続きで、副業が本業の会社に知られますか?

業務委託の副業なら、この届出自体が不要なので社会保険の経路では伝わりません。2か所で加入して届を出した場合は、日本年金機構が「決定した標準報酬月額および保険料額は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知します」としているため、本業にも新しい標準報酬月額と保険料額が通知されます。給与から引く額が変わるので、気づかれない前提で動かないほうが安全です。なお通知書に副業先の社名が記載されるかどうかは確認できませんでした。

Q9. 副業先でも雇用保険に入れますか?

原則入れません。厚生労働省のパンフレットには「主たる賃金を受ける事業所において被保険者となります」「従たる賃金を受ける事業所においては被保険者となりません(二重の資格取得はできません)」とあります。複数の勤め先を合算できるマルチジョブホルダー制度は、雇用保険法第37条の5が対象を「六十五歳以上の者」と定めているため、20代は対象外です。なお被保険者の要件は週10時間以上に広がる予定で、令和6年法律第26号により2028年10月1日施行とされていますが、その後に「1か所のみ」の取扱いが変わるかは確認できていません。

Q10. 副業の収入が20万円以下なら、社会保険も関係ありませんか?

関係あります。別の制度です。20万円は所得税の確定申告が必要かどうかの基準で、国税庁のタックスアンサーNo.1900に示されています。社会保険の加入は年収額では決まらず、所定労働時間と勤め先の企業規模で判定します。賃金要件が撤廃されたいまは、金額の基準そのものがありません。したがって副業の収入が20万円以下でも、副業先で週20時間以上働いていて会社が51人以上であれば、加入対象になり得ます。

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