
新NISAで積立を始めたばかりのころ、保有資産がマイナスになっているのを見て、不安になったことはありませんか。「このまま持っていて大丈夫なのか」「今のうちに売ったほうがいいのか」。積立を始めて日が浅いほど、こうした不安は大きくなりがちです。
この記事では、実際に日本の株式市場で起きた過去最大の下落を例に、暴落時にやってはいけない2つの行動と、あらかじめ備えておくための実践的なポイントを整理します。
2024年8月5日、日経平均は1日で12.4%下落した
暴落は、決して遠い過去の出来事ではありません。日本経済新聞の報道によると、2024年8月5日、日経平均株価は前週末に比べ4,451円28銭(12.40%)安の3万1,458円42銭で取引を終えました。この下落幅は、1987年のブラックマンデー翌日(3,836円48銭安)を超え、史上最大の下げ幅を記録したものです。日銀の政策金利引き上げ、米国の景気不安やハイテク株安が重なり、不安にかられた投資家のパニック的な売りが広がったことが原因とされています。
ここで注目したいのが、その翌日の動きです。日本経済新聞の報道によると、2024年8月6日、日経平均株価は前日比3,217円04銭(10.2%)高の3万4,675円46銭まで急反発し、こちらも史上最大の上げ幅を記録しました。わずか1日で、下落幅の7割以上を取り戻した計算になります。前日に慌てて売ってしまっていたら、この反発の恩恵を受けられなかったはずです。
この2024年8月の事例が示しているのは、「暴落した翌日に、さらに暴落するとは限らない」という、ごく当たり前でありながら見落とされがちな事実です。次の章では、こうした暴落の場面で、多くの人がやってしまいがちな2つのNG行動を見ていきましょう。
暴落時にやってはいけない2つの行動
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の解説によると、株価が暴落した際にやってはいけない代表的な行動は、大きく分けて2つあります。
狼狽売り(ろうばいうり)
1つ目は「狼狽売り」です。株価の急落に動揺して冷静な判断ができなくなり、パニック状態で持ち株や投資信託を売却してしまう行動を指します。株価が急落したあとは、数か月から数年で回復するケースが一般的とされており、一時の感情で売却してしまうと、その後の株価上昇の機会を逃し、損失を確定させてしまう可能性が高くなります。前述の2024年8月のケースのように、暴落の翌日に大きく反発することも珍しくないため、急落した直後に売るという判断は、最も損をしやすいタイミングでの決断になりがちです。
積立投資をやめる・金額を減らす
2つ目は、積立投資をやめてしまう、あるいは積立金額を減らしてしまう行動です。新NISAのつみたて投資枠のように、毎月一定額を積み立てる方式の場合、株価が下がったときこそ、同じ投資金額でより多くの口数を購入できるタイミングにあたります。これは「ドルコスト平均法」と呼ばれる考え方の基本で、下落局面で積立を止めてしまうと、本来もっとも口数を安く仕込めるはずのタイミングを逃してしまいます。不安な気持ちから積立を中断したくなる場面こそ、実は当初の計画通り淡々と続けることが、長期的なリターンにつながりやすいといえるでしょう。
20代のNISA利用者に、実際に何が起きているか

こうした「やってはいけない行動」は、決して他人事ではありません。ニッセイ基礎研究所(前山裕亮氏、2026年8月21日「研究員の眼」)の分析によると、新NISAのつみたて投資枠の売却率(年末残高ベース)は、2024年の3%台から2025年には5%台へと、約2ポイント上昇しました。一方、比較的まとまった資金で運用する成長投資枠の売却率は、2024年の17%から2025年には16%へとやや低下しており、対照的な動きです。
同分析が特に注目しているのが、年代別の内訳です。2025年は各年代とも売却率が上昇したものの、上昇幅は一律ではなく、とりわけ20歳代以下で顕著でした。20歳代以下のつみたて投資枠の売却率は、2024年時点ですでに他の年代より高い4%台だったところ、2025年には9%まで上昇し、実に倍増しています。
売却が増えた背景として、同分析は2025年の株式市場が総じて好調で含み益を抱える人が増えたことを挙げています。実際、全証券会社のつみたて投資枠の収益率は2025年単年で18%、2年累積で25%に達し、人気の高い「オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)」を2024年1月から毎月積み立てていた場合は2025年単年で20%、2年累積で28%程度の収益率になる計算です。日本証券業協会のアンケート調査でも、全年代・20歳代以下ともに売却理由の最多は「利益確定のため」となっています。
ただし同分析は、20歳代以下では「利益確定のため」の比率が全年代と同程度にとどまる一方で、それ以外の理由が相対的に多く挙げられている点を指摘しています。具体的には、「ポートフォリオのリスク調整(リバランス)のため」「配当金・分配金が魅力的でなくなったため」といった保有商品の見直しに加え、「基準価額の下落が見込まれるから」「損切りのため」という下落相場を意識した理由、さらに「現金が必要となったため」という資金繰り上の理由も、他の年代と比べて相対的に高くなっていました。同分析は、手元に十分な余裕資金がないまま積立を続けた結果、突発的な資金需要で売却を迫られた「NISA貧乏」ともいえる状況が、20歳代以下の一部で生じている可能性を指摘しています(ただし断定ではなく可能性としての言及です)。積立額を決める際は、暴落時だけでなく、日々の生活費が急に必要になった場合にも耐えられる金額に設定しておくことが、長く続けるための土台になります。
暴落に備えるための3つの実践
暴落そのものを予測したり避けたりすることはできませんが、暴落が来たときに慌てないための準備は、今からでもできます。前述の三菱UFJモルガン・スタンレー証券の解説を参考に、実践できるポイントを3つ紹介します。
1. 生活資金を除いた余剰資金の範囲で投資する
まず大前提として、投資は当面の生活費や、近い将来に使う予定のあるお金を除いた「余剰資金」の範囲で行うことが基本です。生活費まで投資に回してしまうと、暴落時に「今すぐ現金が必要だから」という理由で、不本意なタイミングでの売却を迫られることになります。
2. 株式以外の資産にも分散しておく
株式や投資信託だけでなく、現金や国債のようにリスクの低い資産にも一定割合を振り分けておくことで、株価が大きく下がった局面でも、資産全体で見たときの値動きをゆるやかにできます。全額を一つの資産に集中させないという考え方は、投資初心者ほど意識しておきたいポイントです。
3. 暴落する前に、自分なりの損切りルールを決めておく
「投資額の20%以上の損失が出たら売却する」といった、自分なりのルールをあらかじめ決めておくことも有効です。暴落が実際に起きてから冷静に判断しようとしても、動揺した状態では難しいものです。平常時のうちに「どうなったら売る/売らない」を言語化しておくことで、いざというときに感情に流されにくくなります。
暴落は「いつか必ず来るもの」として考える
長期投資を続けていく以上、暴落は「起きるかもしれない」ものではなく、「いつか必ず来る」ものとして考えておくのが現実的です。2024年8月の急落も、事前に予告があったわけではなく、ある日突然訪れました。だからこそ、暴落が起きてから対策を考えるのではなく、暴落が起きる前の平常時に、余剰資金での投資・分散・損切りルールといった備えを済ませておくことが重要になります。
新NISAは非課税保有期間が無期限という制度設計上、本来は数十年単位での長期運用を前提にした制度です。目先の数か月・数年の値動きに一喜一憂しすぎず、暴落も含めた長期的な視点で資産形成を続けていく姿勢が、結果的に「やってはいけない2つの行動」を避けることにもつながります。
過去の暴落は、どれくらいで回復してきたのか
「暴落したら、いつか戻るとは言うけれど、実際どれくらいかかるのか」という疑問を持つ人も多いはずです。過去の主な下落局面を見てみると、回復にかかる期間は事件ごとに大きく異なります。
1987年の「ブラックマンデー」では、三井住友DSアセットマネジメントの解説によると、急落前の水準から18.3%下落したものの、約5か月(100営業日)で下落前の水準まで回復しています。2020年の「コロナショック」も、発生から数週間で直前の水準から約3割下落する急落となりましたが、その後は比較的早いペースで持ち直し、数か月で下落前の水準の9割超まで戻したとされます。
一方で、2008年の「リーマンショック」は事情が異なります。発生から約1か月後には、発生直後と比較して約41%もの下落を記録し、その後もしばらく低迷が続きました。ブラックマンデーやコロナショックのような比較的短期間でのV字回復とは異なり、本格的な株価の持ち直しにはより長い時間を要したことが知られています。
この違いからわかるのは、「暴落すれば必ず数か月で元に戻る」という単純な話ではないということです。下落の原因や規模によって、回復までの道のりは大きく変わります。だからこそ、短期間での回復を前提にした資金計画を立てるのではなく、「回復に時間がかかる可能性もある」ことを織り込んだうえで、生活に影響のない余剰資金の範囲で、長期的に投資を続けていく姿勢が欠かせません。
今日からできること
ステップ1(今夜):今の積立金額が、生活費を圧迫していないか確認する
毎月の積立額が、余剰資金の範囲に収まっているか、家計簿や銀行残高を見ながら確認してみましょう。もし生活費との境目が曖昧になっている場合は、次の積立から見直すことも検討してください。
ステップ2(今週中):自分なりの損切りルールを1つ決めてみる
「何%下落したら売却を検討するか」「そもそも当面は売却しないと決めるか」など、自分なりのルールを一つだけでも言語化してみましょう。紙やメモアプリに書き残しておくと、実際に暴落が起きたときに読み返せます。
ステップ3(今月中):資産配分を一度見直す
保有している資産が、株式・投資信託に偏りすぎていないか、現金や他の資産とのバランスを一度確認してみましょう。極端な偏りがあれば、少しずつ調整していくことも選択肢の一つです。
暴落への備えも含めて、始める前に決めておくことは20代の投資ガイドに整理しました。
まとめ
2024年8月5日、日経平均株価は史上最大の下げ幅(12.40%安)を記録しましたが、その翌日には史上最大の上げ幅(10.2%高)で急反発しました。暴落時にやってはいけない行動は、大きく分けて「狼狽売り」と「積立投資をやめる・減らすこと」の2つです。20代のNISA利用者の間では、つみたて投資枠の売却率が上昇している実態もあり、暴落は決して他人事ではありません。余剰資金での投資、資産の分散、事前の損切りルール設定という3つの備えを、平常時のうちに済ませておくことが、いざというときに慌てないための鍵になります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 新NISAの資産がマイナスになったら、すぐ売った方がいいですか?
すぐに売る「狼狽売り」は、最も損をしやすいタイミングでの判断になりがちです。2024年8月の暴落でも、翌日には史上最大の上げ幅で反発しました。まずは一呼吸置き、あらかじめ決めておいたルールに従って判断することをおすすめします。
Q2. 暴落したら積立額を減らした方がいいですか?
株価が下がったときは、同じ金額でより多くの口数を購入できるタイミングです。積立を止めたり減らしたりすると、このタイミングを逃してしまうため、生活に支障のない範囲であれば継続することが基本とされています。
Q3. 2024年8月の暴落はどれくらいの規模でしたか?
2024年8月5日、日経平均株価は前週末比4,451円28銭(12.40%)安となり、史上最大の下げ幅を記録しました。翌8月6日には3,217円04銭(10.2%)高となり、史上最大の上げ幅で反発しています。
Q4. 暴落に備えて何をしておけばいいですか?
①生活資金を除いた余剰資金の範囲で投資する②株式以外の資産にも分散しておく③暴落する前に自分なりの損切りルールを決めておく、の3点が実践しやすい備えです。
Q5. 20代でNISAを使っている人は、実際に売却しているのですか?
ニッセイ基礎研究所の分析によると、20歳代以下のつみたて投資枠の売却率は2024年の4%台から2025年には9%へと倍増しています。利益確定による売却が最多ですが、リバランスや下落懸念、「現金が必要になった」といった理由も他の年代より相対的に多く挙げられています。
Q6. 損切りルールはどうやって決めればいいですか?
「投資額の20%以上の損失が出たら売却する」のように、具体的な下落率や金額であらかじめ基準を決めておく方法が一般的です。暴落が起きてから考えるのではなく、平常時のうちに言語化しておくことが重要です。
Q7. 新NISAは短期間で結果を出す制度ですか?
いいえ。新NISAは非課税保有期間が無期限の制度で、本来は数十年単位の長期運用を前提としています。目先の値動きに一喜一憂せず、長期的な視点で続けることが基本です。
Q8. 暴落から回復するまで、どれくらいかかりますか?
下落の原因や規模によって大きく異なります。1987年のブラックマンデーは約5か月で回復しましたが、2008年のリーマンショックはより長期にわたって低迷が続きました。短期間での回復を前提にせず、余剰資金の範囲で長期的に投資を続けることが重要です。

