
一人暮らしを始めてから、防災グッズをきちんと準備できている自信はありますか。実家にいたころは家族の誰かが備えてくれていたけれど、自分の部屋には非常食も懐中電灯もない、という人は少なくないはずです。この記事では、2026年8月に公表された最新の被害想定と、公的機関が示す備蓄の目安をもとに、一人暮らしの防災について実務的に整理します。
南海トラフ地震・首都直下地震、最新の被害想定
nippon.comが報じた最新の被害想定によると、南海トラフ地震は今後30年以内に発生する確率が「60〜90%程度以上」(すべり量依存BPTモデルによる)へと見直されています。被害想定では、冬の深夜に発生した場合、死者数は最大29万8,000人(このうち津波による死者だけで20万人超)、負傷者数は最大95万人、避難者数は最大1,230万人、全壊・焼失棟数は最大235万棟、経済被害は約292兆円(国内総生産の4割以上に相当)という規模です。ただし、早期避難率が高い場合、死者数は9万人前後まで減少するという試算も示されており、避難行動そのものが被害の大きさを左右することがわかります。
首都直下地震についても、M7級の地震が30年以内に70%の確率で発生するとされ、冬の夕方に発生し火災が広がるケースでは、死者数1万8,000人、全壊・焼失棟数40万棟、最大1,600万軒の停電、電話の5割が不通、避難者数最大480万人、経済被害83兆円という想定が示されています。
いずれも「もしかしたら起きるかもしれない」ではなく、今後30年以内という具体的な期間で高い確率が示されている点が重要です。一人暮らしの場合、家族と離れて暮らしている分、発災直後の数日間は自分の身は自分で守る必要があります。
一人暮らしの防災、何から備えればいい?

首相官邸の公式ページでは、災害への備えとして、飲料水は3日分(1人1日3リットルが目安)、非常食も3日分を用意することを推奨しています。大規模災害時には、水・食料ともに1週間分の備蓄が望ましいとされます。一人暮らしの場合、1日3リットル×3日分で最低9リットル、1週間分なら21リットルが目安になります。非常食は、ご飯(アルファ米など)、缶詰、干物、乾パンなど、調理をほとんど必要とせずそのまま食べられるものが推奨されています。災害直後はガスや水道が使えない可能性があるため、加熱・調理不要という点は特に重要なポイントです。
一気にすべてを揃えようとすると、費用も手間も大きな負担になります。まずは玄関やクローゼットに置いておく「非常持ち出し袋」から準備し、余裕ができてから自宅の備蓄を充実させていく、という段階的な進め方が現実的です。目安の費用感としては、最低限の防災グッズ一式で2万円から3万5,000円程度とされています。一度に揃えるのが難しければ、給料日ごとに1〜2品ずつ買い足していくのも一つの方法です。
地震そのものへの備え、家具の固定も忘れずに
水・食料の備蓄と同じくらい重要なのが、地震そのものによるケガを防ぐ備えです。東京消防庁の調査によると、近年発生した地震によるケガの原因の約30%から50%が、家具類の転倒・落下・移動によるものでした。棚やタンス、テレビ、本棚などが倒れてくることで、直接的なケガだけでなく、避難経路をふさいでしまい、逃げ遅れにつながるケースもあります。
賃貸物件で暮らす一人暮らしの場合、壁にネジで穴を開ける固定方法は使いにくいと感じる人も多いはずですが、東京都防災ホームページでは、穴を開けずにできる対策も複数紹介されています。天井と家具の隙間に設置する「ポール式器具(突っ張り棒)」、家具の底面と床面を接着させる「粘着シート(マット式)」、家具の前下部にくさびを挟んで壁側に傾ける「ストッパー式」の3種類です。1つだけでも一定の効果はありますが、突っ張り棒とストッパー式、突っ張り棒と粘着マットのように組み合わせて使うと、より効果が高まるとされています。特に、寝ている間に頭上へ倒れてくる可能性がある家具については、ベッドや布団の配置そのものを見直すことも、あわせて検討したいポイントです。
賃貸物件で暮らす一人暮らしの場合、いざというときに「そのまま自宅で過ごすか、避難所に行くか」の判断にも迷いやすいものです。台東区の防災ページによると、在宅避難ができるかどうかの判断基準は、地震時も風水害時も基本的に同じです。自宅に倒壊・焼損・浸水・流出の危険性がなく、日常生活を送るうえで他人のサポートを必要としない場合は、在宅避難が選択肢になります。逆に、自宅や隣家に倒壊・火災の被害がある、水害や土砂災害で生活できない状態にある、といった場合は、避難所への避難が必要です。マンションなど集合住宅の場合も、建物全体が大きく損傷していなければ、在宅避難が現実的な選択肢になり得ます。一人暮らしの場合は、体調を崩したときや情報収集の面で孤立しやすいという注意点もあるため、普段から近隣とのちょっとした会話や、離れて暮らす家族への安否連絡の方法を決めておくことも、備えの一つといえるでしょう。
水・食料以外に見落としがちな備え
水・食料の備蓄は意識していても、見落とされがちなのがトイレの備えです。首相官邸の案内でも、生活用水としてポリタンクに水道水を貯蔵しておくこと、お風呂の水を常時張っておくことが推奨されています。加えて、断水時には水洗トイレが使えなくなるため、携帯トイレ・簡易トイレの備蓄も欠かせません。トイレットペーパーやティッシュペーパーも、人数分、つまり一人暮らしであれば自分1人分をあらかじめ用意しておく必要があります。
そのほか、マッチやろうそく、カセットコンロといった、電気やガスに頼らずに灯りや加熱を確保できる道具も、公式に推奨されている備蓄品です。スマートフォンの充電が切れると、家族や職場との連絡はもちろん、災害情報の収集も難しくなるため、乾電池式やソーラー式のモバイルバッテリー、手回し充電のできるラジオがあると安心です。懐中電灯は、停電時の移動や作業に欠かせない基本アイテムとして、枕元などすぐ手に取れる場所に置いておくとよいでしょう。
「ローリングストック法」で無理なく備蓄を続ける
防災用の食料というと、賞味期限が長い専用の非常食を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、普段の生活で使っている食品を少し多めに買い置きし、使った分だけ補充していく「ローリングストック法」という考え方もあります。レトルト食品や缶詰、カップ麺、飲料水などを、いつもより少し多めにストックしておき、古いものから日常的に消費しながら、使った分を買い足していく方法です。
この方法のメリットは、専用の非常食を賞味期限切れで無駄にしてしまうリスクが低く、日常の買い物の延長で無理なく備蓄を続けられる点にあります。防災グッズの中には消費期限や使用期限があるものも多いため、年に1〜2回は中身を確認する習慣をつけておくと、いざというときに「期限切れで使えなかった」という事態を防げます。
今日からできること
ステップ1(今夜):自宅にある防災グッズを確認する
懐中電灯、モバイルバッテリー、飲料水など、すでに家にあるものをリストアップしてみましょう。何もない場合は、まず1本の飲料水と1本の懐中電灯から始めるだけでも、大きな一歩になります。
ステップ2(今週中):非常持ち出し袋を1つ用意する
すべてを一度に揃えようとせず、まずは玄関やクローゼットにすぐ持ち出せるバッグを1つ用意し、水・非常食・携帯トイレなど、最低限のものから入れていきましょう。
ステップ3(今月中):自治体のハザードマップを確認する
自分が住んでいる地域が、洪水・土砂災害・津波などのリスクをどの程度抱えているか、自治体が公開しているハザードマップで確認しておきましょう。避難場所や避難経路も、あわせて把握しておくと安心です。
ステップ4(今月中):家具の固定状況を見直す
寝ている場所の周りに、倒れてくる可能性のある家具はないか確認してみましょう。突っ張り棒や粘着マットなど、賃貸でも使える対策グッズは、ホームセンターや通販で手軽に入手できます。
まとめ
2026年8月に公表された最新の被害想定では、南海トラフ地震の30年以内の発生確率が「60〜90%程度以上」へと見直され、死者数は最大29万8,000人にのぼるとされています。一人暮らしの防災は、水・食料をそれぞれ3日分(1人1日3リットルの水、大規模災害時は1週間分)、携帯トイレや懐中電灯、モバイルバッテリーといった見落としがちな備えまで含めて、段階的に準備していくことが基本です。地震によるケガの3割から5割は家具の転倒・落下・移動が原因とされているため、賃貸でもできる突っ張り棒や粘着マットでの固定も忘れずに行いましょう。ローリングストック法を活用すれば、無理なく日常に組み込みながら備蓄を続けられます。まずは今夜、家にあるものを確認するところから始めてみましょう。
災害への備えと同じく、事前に知っておくと効くのが住まいのお金です。入居時・毎月・退去時にかかるお金の全体像は20代の一人暮らしガイドにまとめています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 一人暮らしの防災、水はどれくらい備蓄すればいいですか?
首相官邸の案内では、飲料水は1人1日3リットルを目安に3日分、大規模災害時は1週間分の備蓄が推奨されています。一人暮らしなら最低9リットル、1週間分なら21リットルが目安です。
Q2. 非常食は何を用意すればいいですか?
ご飯(アルファ米など)、缶詰、干物、乾パンなど、加熱・調理をほとんど必要とせずそのまま食べられるものが推奨されています。災害直後はガス・水道が使えない可能性があるためです。
Q3. 南海トラフ地震はどれくらいの確率で起きるのですか?
最新の被害想定では、今後30年以内に発生する確率は「60〜90%程度以上」(すべり量依存BPTモデルによる)へと見直されています。
Q4. 防災グッズにかかる費用の目安はどれくらいですか?
最低限の防災グッズ一式で、2万円から3万5,000円程度が一般的な目安とされています。一度に揃えず、給料日ごとに買い足していく方法もあります。
Q5. 水・食料以外に何を備えればいいですか?
携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパー、マッチやろうそく、カセットコンロ、モバイルバッテリー、懐中電灯なども公式に推奨されている備蓄品です。断水時のトイレ対策は特に見落とされがちです。
Q6. ローリングストック法とは何ですか?
普段の生活で使う食品を少し多めに買い置きし、古いものから消費しながら、使った分を買い足していく備蓄方法です。専用の非常食を賞味期限切れで無駄にするリスクを減らせます。
Q7. 首都直下地震の被害想定はどうなっていますか?
M7級の地震が30年以内に70%の確率で発生するとされ、冬の夕方発生・火災延焼のケースでは死者数1万8,000人、最大1,600万軒の停電、避難者数最大480万人という想定が示されています。
Q8. 賃貸でも家具の転倒対策はできますか?
できます。壁にネジで穴を開けない方法として、天井との隙間に設置する「ポール式器具」、家具の底面を床に接着する「粘着シート」、家具の前下部にくさびを挟む「ストッパー式」があり、組み合わせるとより効果的です。
Q9. 防災グッズはどこに保管すればいいですか?
非常持ち出し袋は玄関やクローゼットなど、すぐに持ち出せる場所に置いておくのが基本です。自宅備蓄はキッチンや押し入れなど、日常的に管理しやすい場所にまとめておきましょう。

