
社員が辞めた、担当が変わった。そのときにやるのがユーザーの整理です。ところが、この作業には順番があり、しかも選択によって残るものが変わります。
公式ヘルプには、「アカウントからユーザーを完全に削除するには、その前に、ユーザーを無効化する必要があります」と明記されています。いきなり削除はできません。
そして、無効化と削除では過去の活動データの扱いが違います。急いで消すと、あとから誰が何をしたかを追えなくなります。
この記事では、2つの違いと退職時の手順を扱います。
先に結論:基本は「無効化で止める」
- 無効化すると、ログインできなくなります。過去の活動データは残ります
- 無効化したユーザーの有料シートは、アカウントの合計シート数に計上されません。請求の観点でも、まず無効化です
- 削除すると、プロファイルがアカウントから消えます。所有者の表示も変わります
対象はすべての製品とプラン。操作にはスーパー管理者権限が必要です。
前提:削除の前に、必ず無効化が要ります
公式には、削除の前に無効化が必須と書かれています。順番が決まっているので、迷う余地はありません。
この順番には意味があります
無効化の時点で、ログインは止まります。つまり、セキュリティ上の目的はここで達成されます。
退職した人がアカウントに入れる状態を、まず止める。データをどうするかは、そのあとで考えれば足ります。急いで削除する理由は、実はありません。
対象はすべての製品とプラン
公式ヘルプの冒頭は「すべての製品とプラン」です。無料ツールのみのアカウントでも、この操作は行えます。
無効化と削除の違い
2つの違いを、公式の記載に沿って整理します。
| 無効化 | 削除 | |
|---|---|---|
| ログイン | できなくなります | できません |
| プロファイル | 保持されます | アカウントから削除されます |
| 過去の活動データ | 引き続き使用できます | 削除されます |
| 有料シート | 保持されるが合計に計上されない | 外れます |
| 順番 | 先にこれ | 無効化の後だけ |
無効化は「レポートのために残す」設計です
公式には、無効化されたユーザーのプロファイルと関連データは「レポート作成やフォーキャストを目的に維持される」と書かれています。
つまり、過去の実績を数える側の都合で残されています。前年の売上を担当者別に見たいとき、無効化なら数字が残ります。
削除は「記録から名前が消える」ことです
削除すると、プロファイルがアカウントから削除されます。プロパティーの変更やコンテンツの更新といった過去の活動データも削除されます。
誰がいつ何を変えたか、という記録が失われる。これは、あとからトラブルを調べるときに効いてきます。
無効化なら、席は合計に数えられません
請求の観点でも、無効化で十分です。ここは見落とされがちなので、はっきり書きます。
公式には、無効化されたユーザーは「有料シートを保持しますが、そのシートはアカウントの合計シート数に計上されません」と記載されています。
「削除しないと請求が止まらない」は誤解です
退職者の席を外すために、慌てて削除する必要はありません。無効化した時点で、合計シート数から外れます。
この仕組みを知らないと、記録を失う代わりに費用を止める、という不要な取引をすることになります。両方とも取る方法があります。
ただし、席そのものは保持されます
無効化されたユーザーは、席を保持したままです。だから、再有効化したときに同じ席で戻れます。
産休や休職のように、戻ってくる可能性がある場合は、この挙動が役に立ちます。削除してしまうと、戻すときに設定をやり直すことになります。
削除すると、所有者の表示が変わります
ここが実務でいちばん影響します。
公式には、削除したユーザーが所有していたレコードについて、所有者が「無効化/削除された(ユーザーのEメールアドレス)」と表示されると書かれています。
レコードが宙に浮いた状態に見えます
顧客や取引の担当者欄に、この表示が並びます。誰が引き継いだのかは、この表示からは分かりません。
件数が少なければ手で直せますが、数百件あると面倒です。だから、削除する前に所有者の付け替えを済ませてください。
付け替えは削除の前です
順番を間違えると、作業が増えます。まず所有者を新しい担当者に変える。そのあとで無効化し、必要なら削除する。
この順番なら、担当者欄に変な表示が残りません。1件ずつ直す作業を、丸ごと省けます。
退職のときにやる順番
ここまでを手順にまとめます。上から順にやってください。
1. レコードの所有者を付け替える
コンタクト、会社、取引。その人が担当していたものを、新しい担当者に移します。一括で選んで変更できます。
2. 予約と自動化を確認する
その人の日程調整ページから入った予約が残っていないか。その人の名前で送られる設定になっているものがないか。
ここを見落とすと、退職した人の名前でメールが届きます。相手にとっては、会社の管理がずさんに見えます。
3. 無効化する
ここでログインが止まり、席も合計から外れます。退職日当日にやるべきなのは、ここまでです。
タイミングは、最終日の終業後が目安です。日中に止めると、引き継ぎの途中で画面を開けなくなります。
4. 削除は急がない
削除は、あとからでもできます。むしろ、しばらく置いてからのほうが安全です。
退職から数か月は、「あの案件どうなってた?」という確認が発生します。無効化のままなら、その人の活動記録をたどれます。
再有効化したときに戻るもの
無効化を選ぶ理由の1つが、戻せることです。
公式には、再有効化すると「削除される前にユーザーに割り当てられたシート」が戻り、「ユーザーは自分のレコードに割り当てられたままになり」と書かれています。
席もレコードもそのままです
休職や産休から戻る場合、設定をやり直す必要がありません。無効化のときと同じ状態で再開できます。
削除してから再度招待すると、席の割り当ても権限も設定し直しです。戻る可能性が1%でもあるなら、無効化で止めておいてください。
外部の協力者にも使えます
季節的に手伝ってもらう相手、プロジェクト単位の業務委託。契約が切れたら無効化し、再開したら戻す。
この運用なら、毎回招待し直す手間がありません。そして、無効化している間は席が合計に数えられません。
操作にはスーパー管理者権限が必要です
公式には、この操作にはスーパー管理者権限が必要と記載されています。
権限を持つ人が1人だと詰まります
前の記事でも書きましたが、スーパー管理者が1人しかいない状態は危険です。その人が辞めるときに、誰も操作できません。
とくにこのケースでは、辞める本人が自分を無効化することになります。手順としては可能でも、望ましい状態ではありません。
代表者は必ず持っておく
実務の担当者に加えて、代表者がスーパー管理者を持っておいてください。普段使わなくて構いません。
人の出入りがあるときに、必ず必要になります。必要になってから設定しようとすると、設定できる人がいない、という状況になります。
引き継ぎで抜けやすい5か所
所有者の付け替え以外にも、確認すべき場所があります。この5つは、抜けたことに気づきにくい箇所です。
1. 進行中の取引
取引の所有者は、コンタクトとは別に設定されています。コンタクトだけ付け替えて、取引が残っているケースが多い。
金額の入った取引が宙に浮くと、売上の見込みが狂います。取引は必ず個別に確認してください。
2. その人が作ったリスト
リストは作った人がいなくなっても動き続けます。ただ、何のために作ったかが分からなくなります。
引き継ぎの前に、そのリストの用途を本人に1行書いてもらってください。本人がいるうちにしか聞けません。
3. 未完了のタスク
その人に割り当てられたタスクが残ります。担当者を付け替えないと、誰も見ない一覧に沈みます。
4. 通知の宛先
問い合わせがあったときの通知先が、その人になっていることがあります。通知が誰にも届かない状態は、気づくのに数週間かかります。
退職後に最初の問い合わせが来たとき、初めて発覚します。テスト送信を1回して、届く先を確認してください。
5. 受信トレイの接続
その人のメールアカウントが接続されている場合、その接続経由の記録が止まります。
止まること自体は正しいのですが、過去のやりとりの記録は残るのか、確認しておいてください。顧客との履歴は、会社の資産です。
入社のときにやること
出ていく話をしてきましたが、入るときの手順も決めておくと、あとの整理が楽になります。順番は退職のときの逆です。
会社のアドレスで招待する
個人のアドレスで招くと、退職後にこちらから制御できない状態が残ります。会社のアドレスなら、最悪の場合でもアドレス側で止められます。
外部の協力会社を招くときも同じです。先方の会社のアドレスで招いてください。担当者個人の連絡先で招くと、担当が代わったときに誰が入っているか分からなくなります。
席は「編集するか」で決める
見るだけでよい相手に、編集できる席を配らないでください。見るだけの席は無料で、人数の制限もありません。
判断は単純です。その人が何を書き換えるのかを、1つ挙げてみる。挙がらなければ、見るだけで足ります。
権限は設定画面まわりだけ絞る
慎重になりすぎて権限を絞ると、「保存できない」が頻発します。そのたびに管理者が呼ばれるので、結局は手間が増えます。
1〜10人の会社なら、設定画面に入れないようにするだけで十分です。日々の業務データは触れるようにしておいてください。
入社の日に、前任者の担当を移す
ここが抜けやすい。引き継ぎの話をした日と、実際にシステム上で移す日がずれます。
口頭で引き継いだつもりでも、画面上の担当者が前のままなら、通知も一覧も前任者に紐づいたままです。入社の日に一緒にやってしまってください。
パターン別:休職・兼務・外部委託
退職以外にも、ユーザーを整理する場面があります。3つに分けて書きます。
休職・産休の場合
無効化してください。削除はしません。戻ったときに、同じ席と担当で再開できます。
ただし、休職の間もレコードの所有者はその人のままです。担当を一時的に別の人へ移すかどうかは、別に判断してください。
期間が3か月を超えるなら、移すほうが現実的です。戻ったときに戻せばいい、と考えてください。
兼務・異動の場合
部署が変わっても、HubSpotを使い続けるなら無効化は不要です。変えるのは権限と担当だけです。
営業から管理に移ったなら、編集の範囲を変える。席をそのままにして権限だけ変える、という操作ができます。
外部委託・プロジェクト単位の場合
契約が終わったら無効化。再開したら戻す。この運用がいちばん手間がかかりません。
大事なのは、契約終了の日に無効化する、と決めておくことです。外部の人は退職のような区切りがないので、誰も外しません。
契約書の終了日を見たときに、ユーザーの棚卸しも一緒にやる。この習慣がないと、3年前に終わった相手が残り続けます。
半年に一度、名簿と突き合わせる
3つのどのパターンでも、取りこぼしは出ます。半年に一度、ユーザーの一覧と社員名簿を並べてください。
5分で終わります。この5分をやらないと、有料の席が使われないまま請求され続けます。
どちらを選ぶかの判断
最後に、削除すべきかどうかの判断です。
基本は無効化のままで構いません
費用は止まる、ログインも止まる、記録は残る。無効化の時点で、必要なことはほぼ達成されています。
それでも削除するのは、一覧に並ぶ人数を整理したい場合くらいです。実務上の必要性は高くありません。
削除するなら、1年後を目安に
どうしても整理したいなら、退職から1年ほど置いてください。前年の実績を見る場面が、この期間に発生します。
年度の集計が終わり、その人の担当分を振り返る機会がなくなってから。この順番なら、消して困ることがありません。
迷ったら消さない
この判断で覚えておくべきことは1つです。無効化は戻せますが、削除は戻せません。
記録は、必要になるまで必要だと気づきません。置いておくコストはほぼゼロです。
辞める人が自分でやると危ない操作
最後に、意外と起きるケースを挙げておきます。退職する本人が、自分のアカウントを整理してしまうパターンです。
「きれいにしてから辞めます」が困ります
善意でやってくれることが多いのですが、本人にしか分からない情報が、一緒に消えます。
自分が作ったリストを整理する。古いメモを消す。使っていないテンプレートを削除する。どれも一見よい行動ですが、残った側にとっては、判断材料が減っただけです。
引き継ぎで頼むべきなのは、消すことではありません。書き残してもらうことです。
頼むべきは3つだけ
退職が決まったら、次の3つを書き残してもらってください。30分で終わります。
1つ、進行中の案件の状況。画面に書いていない事情を、1件ずつ1行で。次の連絡をいつ、どういう理由でする予定だったか。
2つ、自分が作ったリストや項目の用途。「何のために作ったか」は、本人がいるうちにしか聞けません。
3つ、顧客ごとの注意点。担当者の性格、決裁の流れ、地雷。この種の情報こそ、引き継ぎで失われます。
本人の権限は、最後まで残しておく
退職日の前に権限を下げてしまうと、この書き残しができません。最終日まで通常どおり使えるようにしておいて、終業後に無効化する。
信頼の問題が絡む場合もありますが、記録を持ち出されるリスクと、記録が残らないリスクを比べてください。多くの場合、後者のほうが実害が大きくなります。
まとめ
ユーザーの整理は、順番と選択で結果が変わります。
- 削除の前に無効化が必要です。いきなり削除はできません
- 無効化ならログインが止まり、過去の活動データは残ります。レポートのために維持される設計です
- 無効化した人の有料シートは、合計シート数に計上されません。費用を止めるために削除する必要はありません
- 削除すると所有者の表示が変わります。付け替えは削除の前に済ませてください
- 再有効化すれば、席もレコードの割り当ても戻ります。戻る可能性があるなら無効化で止めます
退職日にやるのは、付け替えと確認と無効化まで。削除は急がないでください。
人の出入りは、どの会社にも必ずあります。手順を一度決めて書き出しておけば、次からは10分で終わります。毎回その場で考えるから、抜けが出ます。
よくある質問(FAQ)
いきなり削除できますか
できません。公式に、アカウントからユーザーを完全に削除するには、その前にユーザーを無効化する必要があると記載されています。
無効化すると請求は止まりますか
無効化されたユーザーは有料シートを保持しますが、そのシートはアカウントの合計シート数に計上されないと公式に記載されています。費用のために削除する必要はありません。
削除すると過去の記録はどうなりますか
削除されます。無効化の場合はプロパティーの変更やコンテンツの更新といった過去の活動データが引き続き使用できますが、削除すると使えなくなります。誰がいつ何を変えたかを追えなくなります。
担当していた顧客はどうなりますか
削除した場合、所有者が「無効化/削除された(ユーザーのEメールアドレス)」と表示されます。付け替えは削除の前に済ませてください。あとからだと1件ずつ直すことになります。
復職する可能性があります
無効化で止めてください。再有効化すると、割り当てられていたシートが戻り、レコードの割り当ても維持されると公式に記載されています。削除してから招待し直すと、設定をやり直すことになります。
退職する本人に、整理してもらったほうがいいですか
消す作業は頼まないでください。本人にしか分からない情報が一緒に消えます。頼むべきは書き残すことです。進行中の案件の状況、自分が作ったリストや項目の用途、顧客ごとの注意点。この3つを30分で書いてもらうほうが、はるかに価値があります。
外部の協力会社はどう管理すればいいですか
先方の会社のアドレスで招待し、契約終了の日に無効化する、と決めておいてください。外部の人は退職のような区切りがないため、決めておかないと誰も外しません。見るだけでよい相手なら、無料の席で足ります。
誰でも操作できますか
スーパー管理者権限が必要です。この権限を持つ人が1人しかいないと、その人が辞めるときに困ります。代表者が持っておくことをおすすめします。
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