
サイトの右下に出てくるチャット。あれを自社でも置きたい、という相談はよくあります。
結論から言うと、ルールベースのチャットボットは、すべての製品とプランで作れます。無料ツールのみのアカウントでも置けます。
ただし、相手の答えによって質問を変える「条件分岐」は、Professional以上の機能です。無料で作れるのは、一本道のボットになります。
この記事では、無料でどこまで作れるか、そして一本道で成果を出す設計を扱います。
先に結論:無料でも置けます。ただし一本道です
- ルールベースのチャットボットは、すべての製品とプランが対象です。
- 条件分岐はProfessional以上。無料では、答えによって質問を変えられません
- だから無料版では、質問を3つまでに絞る設計にしてください。分岐なしで成立します
表示するページや営業時間の設定は、無料のまま行えます。
前提:作ること自体は無料でできます
公式ヘルプの冒頭は「すべての製品とプラン」です。ルールベースのチャットボットを、ゼロから組み立てられます。
「チャットは有料」という思い込み
他のツールでは有料の機能であることが多いため、最初から諦めている会社があります。置くだけなら、費用はかかりません。
問い合わせフォームより気軽に触れるので、問い合わせの件数自体は増えやすいのが特徴です。
ただし、置けば増えるわけではありません
チャットを置いても、ほとんど使われない会社も多い。使われるかどうかは、置いた場所と、聞く内容で決まります。
この記事の後半は、その設計の話です。
無料で止まるのは「条件分岐」です
ここが、この記事でいちばん重要な制約です。
公式には、if/then分岐の機能はProfessional・Enterpriseが対象と記載されています。
分岐がないと、どうなるか
相手が何を選んでも、次に出る質問は同じです。「導入を検討中」と答えた人にも、「既存のお客様」と答えた人にも、同じ流れが続きます。
この制約を知らずに設計すると、途中で作れなくなります。最初から一本道で成立する形にしてください。
一本道でも十分に機能します
実は、1〜10人の会社では分岐がなくても困りません。チャットの目的を「相手の状況を細かく聞くこと」ではなく、「連絡先を受け取ること」に置けばいいからです。
細かい事情は、人が返信するときに聞けます。ボットにやらせるのは、人につなぐまでの受付だけで足ります。
有料が必要なボットの種類
公式に記載されている、上位プランが必要なものを整理します。
| 機能 | 必要なプラン |
|---|---|
| if/then分岐 | Professional・Enterprise |
| コンシェルジュボット | Service Hub Professional・Enterprise |
| ナレッジベース&サポートボット | Service Hub Professional・Enterprise |
| オフラインボット | Sales HubまたはService HubのProfessional・Enterprise |
「オフラインボット」が無料で使えない点に注意
営業時間外の対応を専用のボットで分ける機能は、上位プランです。無料版では、この形の使い分けができません。
ただし、営業時間の設定そのものは無料でできます。時間外はチャットを出さない、という運用なら無料の範囲です。
作る手順
操作自体は難しくありません。公式の手順に沿って書きます。
- サービスのメニューから、チャットフローを開きます
- 初回はチャットウィジェットの設定を行います
- ルールベースのチャットボットを選びます
- テンプレートを選ぶか、ゼロから作ります
- 必要に応じて詳細を設定し、公開します
最初はテンプレートで構いません
ゼロから作ると、質問の順番を考えるところで止まります。テンプレートを選んで、文言だけ自社のものに直すほうが早い。
公開してから直せます。完成させてから出す、という進め方をしないでください。置いてみないと、何を聞くべきかが分かりません。
サイトにコードが入っている必要があります
チャットを表示するには、サイト側にトラッキングコードが入っていることが前提です。入っていなければ、まずそちらを済ませてください。
どのページに出すかを決める
公式には、表示の条件として特定のURL、クエリパラメータ、訪問者の情報で制御できると記載されています。
全ページに出さないでください
これが最初の設計ポイントです。全ページに出すと、読んでいる途中で邪魔になります。
とくにモバイルでは、画面の下部を占有します。記事を読みに来た人にとっては、じゃまな要素にしかなりません。
出すべきは3種類のページです
料金ページ。サービスの詳細ページ。問い合わせページ。この3つだけで足ります。
共通しているのは、相手が「聞きたいこと」を持っている状態で見ているページだという点です。ブログ記事を読んでいる人は、まだ聞きたいことがありません。
すでに顧客の人には出さない
訪問者の情報で制御できるので、既存の顧客には表示しない設定も可能です。
契約済みの相手に「導入をご検討ですか」と出るのは、管理されていない印象を与えます。1〜10人の会社ほど、この種の違和感が目立ちます。
営業時間の設定を先に決める
公式には、営業時間の選択肢として「ユーザーの空き状況に基づく」「チャット営業時間に基づく」「24時間無休」があると記載されています。
24時間無休を選ばないでください
いちばんやりがちな失敗です。夜中に来たチャットに、誰も返信できません。
相手は、その場で返事が来ると思って書きます。返ってこないと、問い合わせフォームより印象が悪くなります。
実際に人がいる時間だけにする
1〜10人の会社なら、平日の10時から17時あたりが現実的です。昼休みを外す会社もあります。
短く設定することを恐れないでください。出ている時間に確実に返せることのほうが、はるかに重要です。
時間外はフォームに誘導する
チャットを出さない時間帯は、問い合わせフォームが受け皿になります。フォームなら、返信が翌営業日でも違和感がありません。
期待値の設定が違う、という理解でいてください。チャットは即時、フォームは翌営業日。この使い分けが崩れると、評価が下がります。
無料版で作るなら、この3問だけ
分岐が使えない前提で、実際に機能する構成を書きます。
1問目:用件を3つから選んでもらう
「料金について」「導入の相談」「その他」。これで足ります。分岐がなくても、選んだ内容は記録に残ります。
自由記述にしないでください。書くのが面倒で、そこで離脱します。
2問目:メールアドレスだけもらう
会社名も、電話番号も、この段階では聞かないでください。項目が増えるほど、途中でやめられます。
連絡先さえあれば、続きは人が聞けます。ボットの仕事は、ここで終わりです。
電話番号を聞きたくなる気持ちは分かりますが、電話される前提だと入力をためらう人がいます。まずメールで返し、相手が望めば電話に切り替える。この順番のほうが、結果的につながります。
3問目:返事のタイミングを伝える
「担当者から、本日中にご連絡します」。この1文があるかどうかで、印象がまったく違います。
書いた以上は守ってください。守れない時間を書くくらいなら、翌営業日と書くほうがいい。
チャットとフォームの使い分け
両方を置くべきか、という質問への答えです。
両方置いてください。役割が違います
フォームは、用件がはっきりしている人が使います。見積が欲しい、資料が欲しい。
チャットは、用件がまだ固まっていない人が使います。これって自分に合うのかな、という段階です。
チャットのほうが、手前の層を拾えます
フォームを埋めるほどではないが、少し聞きたい。この層は、チャットがなければ何も残さずに帰ります。
だから、チャットで拾える件数は「フォームからの問い合わせに上乗せ」になります。置き換えではありません。
ただし、確度は低い
手前の層なので、そのまま商談になる割合は低くなります。ここを理解しておかないと、件数だけ見て失望します。
チャットで得た連絡先は、すぐ商談にするのではなく、案内を送る対象として持っておく。この期待値が正しい。
業種別:何を聞くか
用件の選択肢を3つにする、と書きました。その3つを何にするかは、業種で変わります。実際に使える例を挙げます。
工務店・リフォーム
「費用の目安が知りたい」「工期を知りたい」「うちでも対応できるか知りたい」。3つ目が効きます。
築年数が古い、マンションの規約が厳しい、面積が小さい。断られるかもしれない、と思っている人が問い合わせをためらいます。その不安に選択肢を与えるだけで、件数が変わります。
士業事務所
「顧問料の目安」「対応してもらえる内容か」「相談だけでもよいか」。3つ目が重要です。
相談した時点で費用が発生すると思っている人が、かなりいます。ここを明示するだけで、初回相談の件数が増えます。
受託開発・制作会社
「概算の費用感」「納期の目安」「小規模でも受けてもらえるか」。やはり3つ目です。
大きな会社の実績が並んでいるサイトほど、小さな案件の人は遠慮します。遠慮している人を拾うのが、チャットのいちばん現実的な役割です。
共通しているのは「断られる不安」
3業種とも、3つ目の選択肢が同じ構造です。自分の条件でも対応してもらえるのか、という不安。
フォームには書きにくい内容です。だからチャットで拾えます。ここを選択肢に入れていないと、チャットの価値が半減します。
来たチャットをどう捌くか
置く準備より、受ける準備のほうが大事です。ここを決めずに公開しないでください。
通知の宛先を複数人にする
1人だけに通知が行く設定だと、その人が外出中は誰も気づきません。最低2人が受け取る形にしてください。
そして、スマートフォンでも通知を受け取れるようにしておく。チャットは、返信までの時間が価値です。
返信の1文目を決めておく
毎回ゼロから書くと、返信が遅くなります。「お問い合わせありがとうございます。担当の◯◯です」までは固定にしてください。
テンプレートとして登録しておけば、数秒で返せます。速さがそのまま印象になります。
その場で答えられないときの型も決める
「確認して、本日中にご連絡します」。この形をあらかじめ決めておけば、分からない質問が来ても止まりません。
いちばん悪いのは、答えられないまま黙ることです。相手の画面では、無視されたように見えます。
調べる時間が必要なら、そう書いてください。待つこと自体は、たいてい許容されます。
チャットの記録は、そのまま残ります
やりとりは、その相手のレコードに残ります。あとから商談になったとき、最初に何を聞いてきたかを読み返せます。
この記録は、提案の内容を決めるときに効きます。最初の不安が解消されていない提案は、通りません。
置いたあとに必ず起きること
1. 最初の2週間は、ほとんど来ません
置いてすぐに件数が増えることは、まずありません。存在を知られるまでに時間がかかります。
2週間で判断せず、最低2か月は置いてみてください。その間に、文言を1回は直すことになります。
2. 想定していない質問が来ます
「採用の応募はここでいいですか」「請求書の再発行をお願いしたい」。用件の選択肢に入れていないものが来ます。
これは良い情報です。2か月分をまとめて見れば、選択肢を何にすべきかが分かります。
2-2. 既存顧客からの連絡も来ます
見込み客向けに置いたつもりでも、すでに取引のある相手が使います。いちばん手軽な連絡手段だからです。
これは歓迎すべきことです。ただし、用件の選択肢に「既存のお客様」がないと、相手は無理やりどれかを選ぶことになります。
2か月ほど運用して、既存顧客からの連絡が多いようなら、選択肢の1つをそちらに振り替えてください。実際に来る用件に合わせるのが正解です。
3. 返信が遅れると、逆効果になります
いちばん避けたいのがこれです。チャットに書いたのに、3日後に返事が来る。
相手からすれば、フォームに書いたほうがましだった、という体験になります。返せない時間帯に出さない。この原則を守ってください。
効果をどう測るか
置いたあと、続けるかどうかをどう判断するか。見る数字を3つに決めておいてください。
1. 会話が始まった件数
チャットが開かれ、1問目に答えてもらえた件数です。ここが月に数件なら、出しているページを見直してください。
表示されただけの回数と、会話が始まった回数は別です。見られているのに始まらないなら、最初の1文が悪い。
2. 連絡先まで到達した件数
1問目に答えたあと、メールアドレスまで入力してもらえた件数です。ここで大きく落ちるのが普通です。
落ち方が極端なら、聞いている項目が多すぎます。メールアドレス1つだけにしているかを確認してください。
3. そのあと商談になった件数
3か月ほど経ってから見る数字です。前述のとおり、チャット経由は手前の層なので、割合は低くなります。
低いこと自体は問題ではありません。問題なのは、拾った連絡先を放置していることです。案内を送る対象に入れてください。
3か月で判断する
1か月では、件数が少なすぎて判断できません。3か月分を並べて、増えているか減っているかを見てください。
そして、やめる判断も普通にあります。2か月やって1件も会話が始まらないなら、そのサイトにはチャットが合っていません。外して構いません。
まとめ
チャットボットは、無料で置けます。
- ルールベースのチャットボットは、すべての製品とプランが対象です。
- 条件分岐はProfessional以上。無料では一本道の構成になります
- 無料版なら、質問は3つまで。用件、連絡先、返事のタイミングです
- 全ページに出さない。料金・サービス・問い合わせの3ページで足ります
- 24時間無休を選ばない。返せる時間だけ出してください
置くこと自体は10分で終わります。難しいのは、返す体制のほうです。
先に決めるべきなのは、機能ではありません。誰が、どの時間に、何分以内に返すか。ここが決まっていれば、ボットの中身は3問で足ります。決まっていないなら、置くのを1週間待ってでも先に決めてください。
よくある質問(FAQ)
無料版でもチャットボットを作れますか
作れます。公式ヘルプの対象は「すべての製品とプラン」で、ルールベースのチャットボットをゼロから構築できます。ただし条件分岐はProfessional以上です。
相手の答えによって質問を変えられますか
無料版ではできません。if/then分岐はProfessional・Enterpriseの機能です。無料では、誰が何を選んでも同じ流れになります。
営業時間外はどうなりますか
営業時間の設定で制御できます。選択肢は「ユーザーの空き状況に基づく」「チャット営業時間に基づく」「24時間無休」です。なお、時間外専用のオフラインボットは上位プランの機能です。
どのページに出すのがいいですか
料金ページ、サービスの詳細ページ、問い合わせページの3つで足ります。表示は特定のURLや訪問者の情報で制御できます。全ページに出すと、記事を読みに来た人にとって邪魔になります。
フォームがあればチャットは不要ですか
役割が違います。フォームは用件がはっきりしている人、チャットは用件がまだ固まっていない人が使います。チャットで拾えるのは手前の層なので、確度は低いかわりに、置かなければ何も残さず帰っていた人を拾えます。
既存の顧客からの連絡が来てしまいます
よくあることで、問題ではありません。チャットがいちばん手軽な連絡手段だからです。ただし用件の選択肢に該当するものがないと、相手は無理やりどれかを選ぶことになります。2か月ほど運用して多いようなら、選択肢を振り替えてください。
どのくらい続ければ判断できますか
3か月分を並べて見てください。1か月では件数が少なすぎて判断できません。見るのは、会話が始まった件数、連絡先まで到達した件数、そのあと商談になった件数の3つです。2か月やって1件も会話が始まらないなら、そのサイトには合っていないので外して構いません。
置いたのに全然使われません
最初の2週間はほとんど来ません。存在を知られるまで時間がかかります。最低2か月は置いてみてください。また、出しているページが適切かも確認してください。ブログ記事を読んでいる人は、まだ聞きたいことがない段階です。
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