
ライティングの案件を続けていると、取材の仕事が来ます。人に話を聞いて記事にする。調べて書くより単価が高く、やりがいもあります。
ただ、納品物の範囲の回で書いたとおり、この分野で揉めるのは単価ではなく工程です。そして取材記事は、調べて書く記事より工程が3つ多い。その3つが、時間あたりを決めます。
この記事では、取材・インタビュー記事の案件を分解します。扱うのは、相場から読める内訳、交通費の扱い、8つの工程、文字起こしの判断、確認の工程、受注時に決めること、時間と手取り、文字単価で受けない理由、つまずく場所です。「取材のコツ」という技術論は扱いません。
相場はクラウドワークスが発注側に公開しているページを一次情報にしています。
相場の2行を並べると、内訳が見えてくる
まず、公式に載っている2つの数字を並べます。
| カテゴリ | 依頼の種類 | 相場と納期 |
|---|---|---|
| インタビュー・取材 | 取材・執筆(取材・移動で3時間、交通費別) | 15,000円〜/15日前後 |
| テープ起こし・文字起こし | インタビュー60分間の文字起こし | 5,000円〜/3日前後 |
この2行は、別のカテゴリとして立っている
注目してほしいのは、金額より先にカテゴリが分かれていることです。「インタビュー・取材」と「テープ起こし・文字起こし」は、公式のページ上で別の見出しの下に置かれています。
つまり、文字起こしは、それ自体が独立した仕事として値段がついているということです。取材記事の一部ではなく、別の職種として扱われている。
この構造は、納品物の範囲の回で書いた「別の相場が存在する作業は、別立てで見積もる根拠がある」という判断基準と同じです。ここでも同じ物差しが使えます。
15,000円の3分の1が、文字起こし相当
数字で見ます。取材・執筆が15,000円から。60分の文字起こしが5,000円から。取材・執筆の3分の1が、文字起こしの相場に当たります。
取材が60分なら、文字起こしを自分でやった時点で、実質10,000円で「取材3時間+執筆+確認対応」を引き受けたことになります。この計算をしてから受けるかどうかで、収支がまったく変わります。
もちろん、どちらも「〜から」の金額なので、実際の案件がこの通りとは限りません。ただ、内訳の比率を知っておくと、提示額が妥当かを判断できます。15,000円で文字起こし込みと言われたときに、それが何を意味するかが分かる。相場は、交渉の材料ではなく判断の物差しとして使うのが実務的です。
だから、見積もりの前に構成を分解する
取材記事の依頼が来たら、金額だけを見ないでください。その金額に、どの工程が含まれているのか。これを確認してから返事をします。
文字起こしは含まれるのか。取材先のアポイントは誰が取るのか。写真は誰が撮るのか。確認は何回回るのか。依頼文に書かれていないことが、たいてい含まれています。聞かずに受けると、後から追加されます。
聞き方は、詰問にならないようにします。「進め方の確認をさせてください」と前置きして、箇条書きで並べる。確認することが多いほど、段取りができる人に見えます。質問を遠慮する人より、先に整理する人のほうが信用されます。
「交通費別」と書かれている意味
相場の記述には、注記があります。「取材・移動で3時間、交通費別」。この短い文に、3つの情報が入っています。
3時間は、取材時間ではない
「取材・移動で3時間」です。取材が3時間ではありません。移動を含めて3時間という想定です。
片道30分の場所なら、往復1時間。取材が60分なら、合計2時間。準備や待ち時間を入れて3時間、という計算でしょう。移動時間が長い案件ほど、実際の取材時間は短くなるということです。
だから、場所を先に確認します。片道2時間の場所なら、移動だけで4時間。3時間の想定を大きく超えます。その分を金額に反映できるかどうかを、受注前に確認してください。
交通費は、別で請求していい
「交通費別」という注記があるということは、交通費を別途請求するのが前提だと公式のページに書かれているということです。含まれている前提ではありません。
個人で受けていると、交通費を言い出しにくい場面があります。ですが、相場の注記にこう書かれている以上、別途請求することに根拠があります。提案の段階で「交通費は実費でご請求します」と書いておいてください。
金額の上限も決めておくと親切です。「往復3,000円を超える場合は事前にご相談します」。相手の経理の都合も考えた書き方をすると、通りやすくなります。領収書の提出が要るかも、このとき一緒に聞いておきます。
移動時間は交通費とは別の問題
ここも分けて考えます。交通費は実費で戻ってきますが、移動している時間は戻ってきません。片道2時間なら、4時間が消えます。
本業がある20代にとって、この4時間は大きい。平日の夜や土日に取材を入れるなら、移動時間込みで予定を確保する必要があります。受注の判断は、金額ではなく拘束時間で行うのが現実的です。
移動中に作業ができるかどうかでも変わります。電車なら下調べや原稿の確認に使えますが、車なら何もできません。同じ2時間でも、中身が違う。この観点も、受けるかどうかの判断に入れてください。
オンライン取材なら、この問題は消える
逆に言えば、オンラインでの取材なら移動時間はゼロです。相場の「取材・移動で3時間」という前提より、実際の拘束は短くなります。
だから、提案のときにオンラインを選択肢として出せます。「オンラインでの取材も承れます」の一言が、こちらの拘束時間を減らします。相手にとっても、場所の確保が要らない利点があります。
ただし、対面でないと成立しない取材もあります。現場を見せてもらう、作っているところを撮る、実物に触れる。何を記事にするかで、形式は決まります。こちらの都合だけで押し切らず、依頼元の意図を先に聞いてください。
1本の取材記事にある8つの工程
調べて書く記事との違いを、工程で見ます。
相手がいる工程は、自分で巻けない
調べて書く記事なら、全部の工程を自分の都合で進められます。夜中に書いても、土日にまとめても構いません。
取材記事は違います。日程調整、取材、確認。この3つは相手の都合で動きます。返事が来ないと止まりますし、取材日は相手の空いている日にしか設定できません。
納期が15日前後とされているのは、この待ち時間があるからでしょう。実作業が15日分あるわけではありません。
だから、納期の見積もりも変わります。実作業が9時間でも、日程調整に3日、取材先の確認に5日かかれば、2週間は必要です。実作業の時間と、納品までの日数は別のものとして伝えてください。ここを混同すると、無理な納期を約束することになります。
日程調整は、往復の回数で時間が決まる
軽視されがちな工程です。候補日を出して、相手に確認して、調整して、場所を決めて、当日の連絡先を交換する。1回で決まれば15分ですが、3往復すれば1時間を超えます。
短くするコツは、最初のメールに候補日を3つ以上、場所の選択肢、所要時間、当日の流れをまとめて書くことです。相手が1回の返信で決められる形にする。これはノーコードの回で書いた「相手の手数を減らす」のと同じ考え方です。
候補日は、こちらが本当に空いている日だけを出します。確保していない日を出して、後から調整し直すのがいちばん時間を食います。3つ出すなら、3つとも押さえておく。これは相手への礼儀でもあります。
質問案は、渡したほうが早い
質問案を事前に共有するかどうかは、案件によります。ただ、渡しておくほうが、取材そのものが短く濃くなります。相手が準備してきてくれるからです。
その場の反応を見たい種類の取材では、事前に渡さない判断もあります。どちらにするかを、依頼元と相談して決めてください。勝手に渡して、依頼元の意図とずれることがあります。
渡す場合も、全部は渡しません。大きな項目だけを共有し、細かい聞き方は当日に決める。準備してきてもらいたい部分と、その場で聞きたい部分を分けるのが、実務的な落としどころです。
文字起こしを、自分でやるかどうか
ここが、この記事でいちばん収支に効く判断です。
全文を起こす必要は、たいていない
まず前提として、記事を書くために60分の音声を一字一句起こす必要があるかを考えてください。使うのは、そのうちの一部です。
記事の構成が決まっているなら、必要な発言だけを拾えば足ります。音声を聞きながら、使えそうな部分の時刻をメモし、そこだけ正確に起こす。全文起こしは、納品物に文字起こしが含まれる場合だけ必要になります。
取材中にメモを取っておくと、この工程がさらに短くなります。「ここは使える」と思った瞬間に時刻を書いておく。聞き直す範囲が10分の1になります。録音があるから安心、と思ってメモを取らないと、後で全部聞き直すことになります。
納品物に含まれるなら、別で見積もる
依頼元から「文字起こしも一緒にください」と言われることがあります。その場合は、別立てで見積もってください。
公式の相場が「インタビュー60分間の文字起こし 5,000円から」と示しているので、加算の根拠があります。「文字起こしのデータもご希望でしたら、別途◯円で承ります」と書けば、相手も判断できます。
このとき、どの形式で納品するかも決めます。発言を一字一句そのままか、言い淀みを整えたものか。同じ「文字起こし」でも、手間が倍くらい違います。先に確認しておかないと、作った後で作り直しになります。
外注するという選択
自分でやらず、外注する手もあります。5,000円で受けてくれる人がいるなら、15,000円の案件で5,000円を払う判断もあり得ます。
ただし、音声を第三者に渡すことになるので、依頼元と取材先の了解が要ります。勝手に渡さないでください。守秘の条件がついている案件では、そもそもできません。
外注する場合、品質の確認もこちらの仕事になります。上がってきたものをそのまま使うわけにはいきません。聞き取りにくい部分や専門用語は、たいてい間違っています。確認の時間まで含めて、外注する価値があるかを判断してください。
ツールを使う場合も、確認が要る
音声を自動で文字にする道具もあります。ただ、これも音声を外部のサービスに渡す行為です。案件によっては、規約や契約で制限されている場合があります。
使うなら、依頼元に確認してから。「音声の文字起こしに外部のツールを使ってよいか」を一言聞くだけです。せどりの回で書いた「分からないものは進めない」と同じで、聞くのは5分、揉めると案件を失います。
使ってよい場合でも、出力をそのまま信用しないでください。固有名詞や数字は、必ず音声に戻って確認します。取材記事で数字を間違えると、取材先に迷惑がかかります。自分の信用だけの問題では済みません。
読めないのは、確認の工程
工程の中で、いちばん時間が読めないのがここです。
確認の相手が2人いる
調べて書く記事なら、確認するのは依頼元だけです。取材記事は、依頼元と取材先の両方に確認が回ります。
そして取材先は、こちらの取引先ではありません。返事の期限を決めにくく、催促もしにくい。2人の確認が順番に回ると、それだけで1週間かかります。
順番も決めておきます。依頼元が先か、取材先が先か。依頼元の確認で大きく直ることがあるので、先に依頼元へ回すほうが手戻りは少ない。ただし案件によっては、取材先の確認を先に求められることもあります。最初に決めてください。
「言っていない」と言われることがある
取材先の確認で起きるのが、この問題です。録音に残っている発言でも、文字にすると印象が変わり、削除を求められることがあります。
これは相手が嘘をついているわけではありません。話し言葉と書き言葉では、同じ内容でも印象が違うからです。だから、確認の工程が必要とされています。
対応としては、争わないこと。削除や修正を求められたら、基本的には受け入れて、依頼元に報告します。判断するのは依頼元で、こちらではありません。
確認の回数と期限を、最初に決める
だから、受注時に決めます。取材先の確認は何回までか、いつまでに返してもらうか、返事がない場合はどうするか。
書き方はこうです。「取材先さまのご確認は1回、◯日までにいただく前提で進行します。期日までにご返信がない場合は、この内容で進めます」。期限を書くことが、止まらないための唯一の方法です。
この一文は、依頼元との合意として書いておきます。取材先に直接この条件を突きつける形にはしないほうが穏当です。あくまで進行の取り決めとして、依頼元と共有しておく。期日が来たときの判断も、依頼元に委ねます。
誰が取材先に連絡するかも決める
こちらが直接連絡するのか、依頼元を経由するのか。これによって、かかる時間が変わります。
依頼元を経由する形は、安全ですが遅い。往復が倍になります。直接連絡する形は速いですが、依頼元の知らないやりとりが発生するので、報告の義務が生まれます。どちらにするか、最初に決めてください。
直接連絡する場合は、やりとりを依頼元にも共有します。メールなら宛先に入れておく。後から「そんな話は聞いていない」と言われないためです。手間は増えますが、関係者が多い案件では必要な手続きです。
受注時に決める6項目
ここまでを踏まえて、受注時に決めることを整理します。
- 場所と形式:対面かオンラインか。対面ならどこか
- 日程調整の担当:こちらが取るのか、依頼元が取るのか
- 文字起こし:納品物に含まれるのか。含まれるなら別途いくらか
- 写真:誰が撮るのか。こちらが撮るなら機材と加工の範囲
- 確認の回数と期限:依頼元と取材先、それぞれ何回・いつまでか
- 交通費:実費請求か、金額に含まれるか
4つ目の写真が、見落とされやすい
取材記事には、たいてい写真がつきます。誰が撮るのかが決まっていないと、当日に「写真もお願いします」と言われます。
スマートフォンで撮るのか、機材が要るのか。何カットか。加工はするのか。撮影は、別の技能で、別の相場がある仕事です。引き受けるなら、加算の対象にしてください。
撮らない場合も、確認は要ります。写真を依頼元が用意するのか、取材先から提供してもらうのか。誰も用意していないまま入稿日を迎えることがあります。担当が決まっていることを、早い段階で確かめてください。
2つ目の日程調整も、金額に関わる
こちらがアポイントを取る形なら、その作業時間も見積もりに入ります。依頼元が取ってくれるなら、こちらは当日に行くだけです。
この差は1時間以上あります。依頼文に書かれていないなら、必ず聞いてください。「日程のご調整はどちらで行いますか」の一言です。
こちらで調整する場合は、取材先の連絡先をもらう必要があります。連絡先を預かるなら、その扱いにも配慮が要ります。案件が終わったら消す、他の用途に使わない。当たり前のことですが、決めておくほうが安全です。
書面に残す
6項目とも、口頭ではなく文字で残します。メールでも、チャットでも構いません。
取材記事は関係者が多いぶん、言った言わないが起きやすい。最初のメールに6項目を書いて、確認をもらう。これだけで、後の揉めごとがほとんど消えます。
この6項目は、型にしておくと毎回使えます。案件ごとに書き直す必要はありません。1本目で作った確認メールの型が、2本目以降の資産になります。これは他の分野の記事でも繰り返している、型を先に作るという考え方です。
1本にかかる時間と手取り
制作時間に公的な統計はありません。以下は60分のオンライン取材で3,000字程度の記事を書く場合を置いた本メディアの想定モデルで、統計ではありません。
| 工程 | 時間 | 備考 |
|---|---|---|
| 企画の確認と日程調整 | 60分 | 往復2回の想定 |
| 下調べと質問案の作成 | 90分 | 相手のことを調べる時間を含む |
| 取材 | 60分 | オンラインなので移動なし |
| 必要部分の聞き起こし | 90分 | 全文ではなく使う部分だけ |
| 構成と執筆 | 180分 | 3,000字程度 |
| 確認の対応と修正 | 60分 | 依頼元と取材先の2系統 |
9時間で、時間あたり約1,430円
合計は9時間です。15,000円(税抜)で受けたとすると、税込16,500円からシステム利用料と消費税が引かれて手取りは12,870円。9時間で割ると、時間あたり約1,430円になります。
この数字は、他の分野と比べて低い水準です。資料デザインの回で出した約3,028円、ノーコードの回の約3,432円と比べると半分以下。取材記事は、単価は高く見えても時間あたりでは厳しい分野です。
ただし、この9時間には日程調整や確認対応といった「待っている間にできない作業」が含まれています。集中して9時間作業するのではなく、2週間に分散して9時間です。本業のある人にとっては、まとまった時間が要らないという意味で、むしろ組み込みやすい面もあります。
対面にすると、さらに下がる
これはオンラインの想定です。対面で片道1時間なら、移動で2時間が加わって11時間。時間あたりは約1,170円まで落ちます。
片道2時間の場所なら、4時間が加わって13時間。約990円です。金額は同じ15,000円でも、場所によってここまで変わります。場所を聞かずに受けてはいけない理由が、ここにあります。
対面を受けるなら、同じ日に2件入れる工夫もあります。近い場所の取材を並べれば、移動時間を分け合えます。1回の移動で2本分の取材を終えると、時間あたりは大きく改善します。継続的に依頼をもらえる相手なら、提案してみる価値があります。
それでも受ける価値がある理由
時間あたりが低いのに、なぜこの分野を勧めるのか。理由は2つあります。
1つは、本数を重ねるほど速くなること。質問案の型ができ、構成の型ができ、確認のやりとりも定型化します。2本目以降は下調べと執筆が短くなり、7時間程度に収まります。時間あたりは約1,840円に上がります。
もう1つが、次の章で書く「残るもの」です。時間あたりだけで選ぶなら、この分野は選ばれません。
そして、取材記事は実績として見せやすい。署名が入る案件も多く、次の仕事を取る材料になります。調べて書く記事は名前が出ないことが多いので、この点は明確な違いです。時間あたりでは劣っても、次につながる度合いでは勝ります。
文字単価で受けてはいけない理由
取材記事を文字単価で提示されることがあります。これは断るか、条件を変えてもらってください。
文字数と工数が、対応していない
調べて書く記事なら、文字数と工数はある程度対応します。3,000字なら3時間、6,000字なら6時間、というように。
取材記事は違います。取材が60分なら、記事が2,000字でも5,000字でも、取材と文字起こしの時間は同じです。工数の大部分が、文字数と無関係に発生します。
日程調整も、確認対応も同じです。1,000字の記事でも3往復するときは3往復します。文字数に比例するのは、執筆の工程だけです。9時間のうち、比例するのは3時間しかありません。
短くまとめるほど、単価が下がる構造
文字単価だと、おかしなことが起きます。読みやすく短くまとめると、報酬が減る。冗長に書くほど報酬が増える。
良い記事を書くほど損をする設計です。この構造のまま受けると、書き方まで歪みます。だから、取材記事は本数単価で受けるのが基本です。
実際、取材記事は短いほうが読まれることもあります。話を全部載せるより、核心だけを残したほうが伝わる。削る判断が価値になる仕事で、削ると報酬が減る契約にしない。これは自分のためだけでなく、記事のためでもあります。
提案の言い方
断るのではなく、置き換えます。「取材の案件は、文字数に関わらず取材と確認の工数が発生するため、1本あたりの固定でお願いしております」。
そのうえで根拠を添えます。公式の相場でも、取材・執筆は1本いくらの形で示されています。公開されている相場の形式に合わせるだけなので、無理な要求にはなりません。
それでも文字単価を求められる場合は、条件を足します。「文字数の下限と上限を決めていただければ、文字単価でも承ります」。上限があれば、青天井にはなりません。断るより、条件を付けて受けるほうが関係は続きます。
つまずく場所は5つに決まっている
この分野でつまずくのは、ほぼ5つです。
| つまずく場所 | 先に決めておくこと |
|---|---|
| 場所を聞かずに受ける | 移動時間を含めた拘束で判断する |
| 文字起こしを込みだと思う | 別カテゴリの相場がある。別立てで |
| 確認の期限を決めない | 取材先の確認も回数と期日を書く |
| 写真の担当が決まっていない | 撮影は別の仕事として扱う |
| 文字単価で受ける | 工数は文字数と対応しない |
1・場所を聞かずに受ける
いちばん収支に効く見落としです。同じ15,000円でも、オンラインなら9時間、片道2時間の対面なら13時間。時間あたりが1.4倍変わります。
依頼文に場所が書かれていないなら、応募の前に聞いてください。受けてから遠いと分かっても、断りにくい。
複数回の取材がある案件なら、その回数も聞きます。3回の取材なら、移動も3回分です。1本の記事に1回の取材とは限りません。連載の案件では、特に確認が要ります。
場所の聞き方も、遠回しにしなくて構いません。「取材場所はどちらになりますでしょうか。移動時間を含めて日程を調整したいので、先に伺えますと助かります」。理由を添えれば、値踏みしているようには見えません。
2・文字起こしを込みだと思う
公式のページでは、文字起こしは別のカテゴリに置かれ、60分5,000円からの相場がついています。取材記事の一部ではありません。
納品物に含めるよう言われたら、別立てで見積もる。断る必要はなく、金額を示せばいい話です。
金額を示すと、相手が「では不要です」と言うこともあります。それも良い結果です。必要ないものを無償で作らずに済みます。見積もりを出すのは、値上げのためではなく、要不要を判断してもらうためです。
3・確認の期限を決めない
取材先の確認は、期限を書かないと止まります。相手は自分の仕事の合間に見るので、後回しになるのが普通です。
「◯日までにご返信がない場合は、この内容で進めます」と最初に書いておく。催促するより、最初に決めておくほうが角が立ちません。
期日は、余裕を持って設定します。取材先にとっては本業の合間の作業です。3日では短く、1週間なら現実的でしょう。短く切りすぎると、結局守られません。
逆算も必要です。公開日が決まっているなら、そこから修正と入稿の日数を引いて、確認に出す日を決める。確認に回す日から逆算して、執筆の締め切りが決まります。納期だけを見て進めると、確認の時間がなくなります。
4・写真の担当が決まっていない
当日に言われると断れません。取材の場で「ついでに写真も」と言われて、スマートフォンで撮ることになる。
そして撮った写真の加工まで頼まれます。撮影は別の相場がある仕事です。受注時に決めておいてください。
撮るなら、その場の段取りも変わります。撮影する場所を決め、明るさを見て、相手に立ち位置をお願いする。取材と撮影を1人でやると、どちらも中途半端になりやすい。両方を引き受けるなら、時間を長めにもらってください。
5・文字単価で受ける
取材記事の工数は、文字数と対応しません。短くまとめるほど報酬が減る構造になるので、書き方まで歪みます。
1本あたりの固定で受ける。公式の相場も、取材・執筆は1本いくらの形で示されています。
固定で受けるときは、記事の長さの目安だけ合意しておきます。「3,000字前後を想定しています」。目安がないと、際限なく長いものを求められることがあります。固定単価でも、量の合意は必要です。
そして、取材時間の上限も決めます。60分の想定が2時間になれば、文字起こしも執筆も倍になります。時間が延びることは、量が増えることと同じです。延びた場合の扱いを、最初に決めておいてください。
30代につながるのは、人から話を引き出す力
このメディアは、20代の副業を「30代に何が残るか」で選ぶ立場で書いています。時間あたりが低いこの分野を勧めるのは、残るものが大きいからです。
準備した質問を、その場で捨てられること
取材で残るのは、用意した質問より面白い話が出たときに、そちらへ舵を切る判断です。予定どおりに全部聞くのが上手な取材ではありません。
30代になると、この能力が効く場面が増えます。商談、面接、部下との1対1の面談。相手の話を聞きながら、次に何を聞くかを組み立て直す。これは机の上では練習できません。
そして、取材は有償でこの練習ができます。失敗しても、相手は仕事として対応してくれる場です。社内の会議でいきなり練習するより、はるかに安全に経験を積めます。
相手の言葉を、意味を変えずに整えること
もう1つが、話し言葉を書き言葉に直す作業です。語尾を整え、重複を削り、順番を入れ替える。しかも、言っていないことを足さない。
この訓練は、議事録でも報告書でも効きます。会議の発言をそのまま書くと読めませんが、整えすぎると意図が変わる。どこまで整えてよいかの感覚は、取材記事で身につきます。
判断の基準は単純です。本人が読んで「そう言いました」と言えるか。取材先の確認という工程があるおかげで、この基準を毎回検証できます。直された箇所が、整えすぎた場所です。回数を重ねると、直される前に分かるようになります。
人に確認をもらう手続きに慣れること
取材先に原稿を見てもらい、修正を受け、着地させる。この一連は、社内外の調整そのものです。
期限を切って依頼し、返事がなければ催促し、修正の意図を汲んで直す。この手続きを何度も経験している人は、30代で調整役を任されても困りません。作業の速さより、この部分で評価が決まります。
そして、立場の違う3者の間に立つ経験でもあります。依頼元、取材先、読者。3者の利害が一致しない場面で、着地点を探す。これは管理職の仕事そのものです。20代のうちに、小さい規模で経験しておく価値があります。
まとめ
- 公式の相場では、取材・執筆(取材・移動で3時間、交通費別)が15,000円から・15日前後、インタビュー60分間の文字起こしが5,000円から・3日前後(クラウドワークス発注相場)
- この2つは別のカテゴリとして立っている。文字起こしは取材記事の一部ではなく、独立した仕事として値段がついている
- 「取材・移動で3時間」は取材時間ではなく移動を含めて3時間。「交通費別」と明記されているので、実費請求には根拠がある
- 工程は8つ。日程調整・取材・文字起こし・取材先への確認の4つは、調べて書く記事にはない
- 確認は依頼元と取材先の2系統。取材先には回数と期限を必ず書く
- 想定モデルはオンライン60分取材・3,000字で9時間、手取り12,870円、時間あたり約1,430円。対面で片道2時間なら13時間・約990円まで落ちる
- 工数は文字数と対応しないので、文字単価ではなく1本あたりの固定で受ける
よくある質問(FAQ)
取材の経験がなくても受けられますか。
この記事では技術論は扱っていませんが、実務として先に決めておくことははっきりしています。場所と形式、日程調整の担当、文字起こしの扱い、写真の担当、確認の回数と期限、交通費。この6項目を受注時に文字で確認できれば、経験の有無にかかわらず進められます。最初はオンラインで、移動のない案件から始めるのが現実的です。
文字起こしは自分でやるべきですか。
記事を書くだけなら、全文を起こす必要はたいていありません。使う発言の時刻をメモして、そこだけ正確に起こせば足ります。納品物に文字起こしが含まれる場合は、別立てで見積もってください。公式の相場では「インタビュー60分間の文字起こし」が5,000円からとされており、加算の根拠になります。外部のツールや外注を使う場合は、音声を第三者に渡すことになるため、依頼元への確認が必要です。
取材先から「この発言は消してほしい」と言われたら。
基本的には受け入れて、依頼元に報告してください。判断するのは依頼元です。話し言葉と書き言葉では同じ内容でも印象が変わるため、こうした依頼は珍しくありません。争わずに着地させるほうが、結果として次の依頼につながります。確認の回数と期限を最初に決めておくと、やりとりが長引きません。
1本15,000円は安いですか。
想定モデルでは、オンライン60分取材・3,000字で9時間、手取り12,870円、時間あたり約1,430円です。他の分野と比べると低い水準になります。対面で移動が長い案件はさらに下がります。ただし、本数を重ねると質問案や構成の型ができて7時間程度に収まり、時間あたりは約1,840円に上がります。単価より、場所と工程で判断してください。
副業として始めるとき、確定申告や会社への影響はどうなりますか。
この記事では取材記事の工程だけを扱っています。副業全般の論点は姉妹メディア「20代の放課後」で扱っています。確定申告と20万円ルール、副業の始め方を参照してください。
応募の前に、相場の注記まで読んでおく
「取材・移動で3時間、交通費別」。この短い注記に、想定されている拘束時間と交通費の扱いが書かれています。発注側に公開されている相場のページなので、見積もりの根拠として示すこともできます。