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電話の取次をなくす|番号を隠すのではなく、用件で分ける

代表番号に電話が鳴る。出た人が用件を聞き、担当者を探し、不在なら伝言を受け、後で伝える。1件あたり数分ですが、これが1日に何十件も起きます。

ここで「電話番号を出すのをやめる」という判断をすると、別の問題が生まれます。通信販売をしている場合、広告に電話番号を表示することが省令で求められています。この記事では、番号を隠さずに取次そのものを減らす設計と、その根拠になる条文を説明します。

この記事でわかること

  • 取次で時間が消える構造と、用件を4つに分ける方法
  • 番号を隠さずに取次を減らす設計と、伝言を電話で受けない仕組み
  • 通信販売の広告について、省令が表示を求めている事項

ムダの現状:取次に時間が消えている

電話の取次は、出た人だけでなく、担当者の時間も奪います。

出た人は、用件を聞き、担当者を探し、不在なら伝言を受ける。担当者は、作業を中断して電話に出るか、後で伝言を見て折り返す。1件の電話で、2人以上の時間が使われています。

取次で起きる、4つのムダ

ムダ 中身 設計で消えるか
担当者を探す時間 誰が担当か分からない、席にいない 消える
用件を2回話させる 出た人と担当者に同じ話をする 消える
伝言の抜け メモが渡らない、内容がずれる 消える
折り返しの往復 相手も不在で、何度もかけ直す 減る

2つ目が、相手にとっていちばん負担の大きいムダです。用件を説明したのに、担当者に代わってもう一度説明させられる。ここで印象が悪くなります。

取次をなくす、という言葉の意味

取次をなくすというのは、電話に出ないということではありません。

やることは2つです。そもそも電話をかける必要がなかった用件を減らすこと。そして、かかってきた電話を、最初から担当者につながる形にすること。

電話番号を載せない、という方向には行きません。次の節で条文を確認しますが、通信販売をしている場合は表示が求められています。それに、番号がないこと自体が不信につながります。

機械に渡せる部分と、人に残す部分

工程 中身 誰がやるか
用件の振り分け どこにつなぐかを決める 機械または、かける側
担当者の在席の確認 いま出られるか 機械
伝言の記録 用件を残す かける側が入れる
折り返しの管理 未対応を出す 機械
用件そのものへの対応 答える、判断する 人

3番目をかける側に移せるかどうかが、この設計の分かれ目です。伝言を電話で受けている限り、取次はなくなりません。

スキームの全体図:用件で分け、取次を減らす

1. 1週間、用件を記録する 何の電話が、何件来ているか 推測で設計しない 2. 用件を、4つに分ける かけなくて済む・その場で答える 担当につなぐ・折り返す 3. 1つ目を、来る前に消す 案内に書く、通知を先に送る いちばん効くのは、ここ 4. 番号を、用件別に分ける 代表1本に集めない 最初から担当につながる 5. 伝言を、電話で受けない 不在なら、入力の案内につなぐ 伝言のメモが、一番よく消える 番号を隠すのではなく、用件で分ける

3番目がいちばん効きます。かかってくる電話をどう捌くかより、かける必要をなくすほうが、件数そのものを減らせるからです。

必要なツールと費用(2026年9月23日時点)

必要なもの 用途 費用の考え方
用件の記録表 1週間の実測 追加費用なし
用件別の番号または内線 最初から担当につなぐ 既存の電話の設定で足りることが多い
伝言の入力フォーム 不在時の受け口 既存の契約の範囲
案内のページ かける前に解決させる 既存のサイトに追記

専用の電話システムを検討する前に、まず1週間の実測をしてください。何の用件が何件来ているかが分からないまま設備を入れると、想定と違う使われ方になります。

導入手順:1週間、用件を記録する

Step 1:1週間、用件を1行で記録する

最初にやるのは、実測です。推測で設計しないでください。

1週間、電話に出た人が1件ごとに1行記録します。記録するのは3つだけ。用件の種類、担当につないだかどうか、かかった時間の目安。

用件の種類は、この時点では自由記述で構いません。分類は後からやります。最初から分類の選択肢を作ると、実際の用件が選択肢に押し込まれます。

そして、記録は電話の直後にしてください。まとめて書くと、細かい用件が抜けます。

記録の形は、紙でもフォームでも構いません。ただし、電話を切った直後に3秒で書ける場所に置いてください。事務所の奥にファイルがある形だと、記録されません。

この1週間で、たいてい予想と違う結果が出ます。いちばん多いと思っていた用件が実は少なく、意識していなかった用件が上位に来る。この差が、実測をやる理由です。

Step 2:用件を、4つに分ける

1週間分の記録を、4つに分けます。

分類 中身 打ち手
かけなくて済んだもの 案内に書いてあれば分かること 来る前に消す
出た人が答えられるもの 営業時間、場所、簡単な確認 答えを手元に置く
担当につなぐ必要があるもの 個別の案件、契約の話 最初から担当につなぐ
折り返しになるもの 担当が不在、調べる必要がある 伝言を電話で受けない

実際に分けてみると、1つ目と2つ目で全体の半分を超えることが少なくありません。この2つは、取次の前に消せるものです。

分けるときに迷うのが、1つ目と2つ目の境目です。案内に書いてあれば分かったのか、それとも書いてあっても電話で確認したかったのか。ここは、案内に実際に書いてあるかどうかで機械的に分けてください。書いていなければ1つ目、書いてあるのにかかってきたなら2つ目です。

2つ目が多いということは、案内はあるが届いていないということです。この場合、書き足すのではなく、置き場所や書き方を変える必要があります。

Step 3:1つ目を、来る前に消す

かけなくて済んだ用件が、いちばん減らしやすい対象です。

多い順に3つ選んで、それぞれについて「なぜ電話をかけたのか」を考えてください。答えは3つのどれかです。案内に書いていない。書いてあるが見つけられない。書いてあるが信用されていない。

1つ目なら、書き足します。2つ目なら、置き場所を変えます。3つ目は難しく、たとえば「本当に今日届くのか確認したい」という用件がこれにあたります。

3つ目への打ち手は、こちらから先に知らせることです。発送したときに通知を送る。予定が変わったときに連絡する。問い合わせが来る前に情報を出すと、その電話は起きません。

「電話が来る前」を測る

この打ち手が効いたかは、電話の件数でしか測れません。だから、1週間の実測は打ち手の前と後で2回やってください。

そして、減った件数を金額に換算しないでください。1件数分の電話を減らしても、金額にすると小さく見えます。効果は件数と、中断された回数で見てください。作業の中断は、時間以上のコストがあります。

Step 4:番号を、用件別に分ける

3つ目の「担当につなぐ必要があるもの」は、最初から担当につながる形にします。

代表番号を1本だけにせず、用件別に分けてください。注文について、既に購入した商品について、請求について。案内のページに、それぞれの番号または内線を書きます。

ここで、音声案内で番号を押させる形にするかは、慎重に決めてください。選択肢が多いと、聞いているうちに分からなくなります。4つを超えるなら、音声案内ではなく番号を分けるほうが早いことがあります。

そして、分けた番号にかかってきた電話が、実際にその用件だったかを記録してください。ずれが多い場合、案内の書き方が実際の用件と合っていません。

Step 5:伝言を、電話で受けない

4つ目の「折り返しになるもの」で、伝言を電話で受けるのをやめます。

担当が不在のとき、出た人が用件を聞いてメモを書く。この形だと、内容がずれ、メモが渡らず、そして相手はもう一度説明することになります。

代わりに、入力の案内につなぎます。「担当が不在ですので、こちらのページから内容を入れていただけますか」と伝え、URLを送る。あるいは、出た人がその場でフォームに入力する。

後者のほうが相手の負担は小さく、そして入力された内容は担当者に直接届きます。紙のメモが机の上で消えることがなくなります。

入力する項目は4つです。相手の名前と連絡先、用件、折り返しの希望時間、そして受けた人の名前。これ以上増やすと、電話中に入力が終わりません。

最初の1か月は、1つ目と2つ目だけを減らす

番号を分けるのは、設備の設定が必要になることがあります。最初からそこに手をつけないでください。

最初の1か月は、1つ目と2つ目だけを減らします。案内に書き足す。よくある質問への答えを、電話に出る人の手元に置く。これだけで、件数が目に見えて減ります。

そして、1か月後にもう一度1週間の実測をしてください。残っている用件の構成が変わっているはずです。その構成を見てから、番号の分け方を決めます。

電話に出る人の手元に置くもの

2つ目の「出た人が答えられるもの」を実際に答えられるようにするには、手元に答えを置く必要があります。

置くのは1枚です。よく聞かれる質問と答えを、多い順に10件。営業時間、場所、駐車場、支払いの方法、届くまでの日数。実測で上位に来たものを、そのまま並べてください。

そして、この1枚は電話機のそばに物理的に置いてください。画面で開く形にすると、電話を受けながら探すことになります。

1枚に収まらない場合は、載せる件数を減らします。11件目以降は、担当につなぐか折り返しにする。1枚に収めるほうが、結果として速く答えられます。

現場の合意の取り方:電話を避けていると思われない

懸念 背景 答え方
電話を避けていると思われる 番号が見つけにくい会社への不信 番号は隠さず、むしろ用件別に増やすと説明する
高齢の顧客が困る 入力フォームを使えない人がいる 出た人が代わりに入力する形にする
記録する手間が増える 実測の1週間が負担 記録は3項目・10秒、期間は1週間だけと明示する

番号は、隠さず増やす

1つ目の懸念は、実際に起きる問題です。電話番号が見つけにくい会社に、人は不信を持ちます。

この設計では、番号を隠しません。むしろ、用件別に分けることで番号は増えます。そして、案内のページで「この用件はこの番号へ」と明示する。

探しにくいのは番号が1本しかないからではなく、どこにかければよいか分からないからです。用件別に並んでいれば、かける側にとっても速くなります。

フォームを使えない相手のために、代わりに入力する

2つ目の懸念には、運用で答えます。

伝言を入力フォームに移すとき、相手に入力させる形だけにしないでください。出た人がその場で入力する形を必ず残します。

これは高齢の顧客のためだけではありません。運転中や外出先からかけている相手にも、その場で入力してもらうのは無理があります。入力するのは、受けた側でよいという前提にしてください。

失敗パターンと限界:広告に表示すべき事項

通信販売の広告には、電話番号の表示が求められている

電話を減らしたい、という動機から番号の掲載をやめる判断をする前に、条文を確認してください。

特定商取引に関する法律第11条第1項は、販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品等の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に定められた事項を表示しなければならないと定めています。

同項の第6号は「前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項」としており、その具体が同法施行規則第23条第1項にあります。

同項の第1号は、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号としています。

つまり、通信販売の広告をする場合、電話番号は表示すべき事項に含まれています。「電話を減らすために番号を載せない」という選択は、ここでは取れません。

同じ規則が定める、その他の事項

同項は、ほかにもいくつかの事項を定めています。実務で関わるものを挙げます。

第2号は、販売業者等が法人であって、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名としています。

第5号は、引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容としています。

第7号は、売買契約又は役務提供契約を二回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間その他の販売条件又は提供条件としています。

自社の広告がこれらを満たしているかは、この機会に確認してください。電話の用件のうち「書いていないから聞く」というものは、表示の不足から生まれていることがあります。

広告の表示を省略できる場合と、その条件

法第11条第1項のただし書きは、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、これらの事項の一部を表示しないことができるとしています。

ただし、この場合も「請求があれば遅滞なく交付または提供する」ことが前提です。そして、その請求を受ける窓口が必要になります。

どの事項をどこまで省略できるかは省令の定めによります。自社の広告の設計を変える場合は、条文と省令を確認したうえで、判断に迷う場合は弁護士など専門家に相談してください。

この仕組みが向かない場合

電話が主要な受注の経路になっている業態では、取次を減らす設計より、受注そのものの処理を速くするほうが効きます。この記事の設計は、電話が問い合わせの経路になっている場合を想定しています。

また、緊急の連絡を受ける必要がある事業では、入力フォームへの誘導が適切でない場面があります。設備の故障、事故、体調に関わる連絡。これらは、最初から担当につながる経路を別に用意してください。

AIを使うなら、用件の分類と、案内の改善に

電話に自動応答を入れる判断は、慎重にしてください。相手が話した内容を正確に取れないと、間違った先につながり、結局取次が増えます。

効くのは、記録した用件を分類する部分です。1週間分の自由記述を4つに分ける作業は、件数が多いと時間がかかります。候補を出させて人が確認する形なら使えます。

そして、「かけなくて済んだもの」に分類された用件から、案内に書き足す文章を作る使い方も向いています。実際に聞かれた言葉をもとに書くと、探しやすい案内になります。

効果の測り方

数字 測り方 いつ見るか
1日あたりの着信件数 1週間の実測を比べる 打ち手の前と、1か月後
取り次いだ件数の割合 担当につないだ件数 毎月
折り返しの往復回数 1件あたり何回かけたか 毎月

1つ目は、打ち手の前に測っていないと比較できません。Step 1の実測を必ずやってください。

2つ目が、番号を用件別に分けた効果を示します。最初から担当につながっていれば、取次の件数は減ります。

3つ目が、伝言を電話で受けるのをやめた効果です。入力された伝言が担当者に直接届いていれば、往復は1回で終わります。ここが減らない場合、折り返しの希望時間を聞いていない可能性があります。

同じ法令・同じ論点の記事

同じ特定商取引法では、返品の期間を定めた15条の3も窓口に関わります。引渡しから8日の扱いはクレーム対応マニュアルが使われない理由で扱っています。

まとめ

電話の取次では、1件で2人以上の時間が使われています。そして、相手にとっていちばん負担なのは、用件を2回話させられることです。

やることは3つです。1週間、用件を1行で記録すること。用件を「かけなくて済んだもの」「出た人が答えられるもの」「担当につなぐ必要があるもの」「折り返しになるもの」の4つに分けること。そして、1つ目を来る前に消すことです。

1つ目と2つ目で全体の半分を超えることが少なくありません。この2つは、取次の前に消せます。

伝言は、電話で受けるのをやめてください。出た人がその場でフォームに入力する形にすると、内容がずれず、メモが消えません。入力する項目は、相手の名前と連絡先、用件、折り返しの希望時間、受けた人の名前の4つです。

そして、電話番号は隠しません。特定商取引に関する法律第11条第1項と同法施行規則第23条第1項第1号により、通信販売の広告では電話番号が表示すべき事項に含まれています。番号は隠さず、用件別に分けて増やしてください。

よくある質問

電話番号を載せないという選択はできますか

通信販売をする場合の広告については、特定商取引に関する法律第11条第1項が主務省令で定める事項の表示を求めており、同法施行規則第23条第1項第1号が「販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」を挙げています。電話番号は表示すべき事項に含まれています。なお、法第11条第1項のただし書きには請求により書面を交付等する旨を表示する場合の定めがありますが、この場合も請求を受ける窓口が必要です。

音声案内で番号を押させる形にすべきですか

選択肢が4つを超えるなら、音声案内ではなく番号を分けるほうが早いことがあります。選択肢が多いと、聞いているうちに分からなくなり、結局代表につながります。そして、分けた番号にかかってきた電話が実際にその用件だったかを記録してください。ずれが多い場合、案内の書き方が実際の用件と合っていません。

伝言を相手に入力してもらうのは、失礼ではありませんか

相手に入力させる形だけにしないでください。出た人がその場で入力する形を必ず残します。運転中や外出先からかけている相手に、その場で入力してもらうのは無理があります。入力するのは受けた側でよい、という前提にしてください。

1週間の実測は、本当に必要ですか

推測で設計すると、想定と違う用件に設備を合わせることになります。記録するのは3つだけです。用件の種類、担当につないだかどうか、かかった時間の目安。1件10秒で終わります。そして、打ち手の前と1か月後の2回測らないと、効果が分かりません。

用件の分類は、最初から選択肢を作ったほうが速くないですか

最初は自由記述にしてください。最初から選択肢を作ると、実際の用件が選択肢に押し込まれます。1週間分が集まってから、実際に出てきた言葉をもとに4つに分けます。

件数が減ったことを、どう報告すればよいですか

金額に換算しないでください。1件数分の電話を減らしても、金額にすると小さく見えます。件数と、作業が中断された回数で示してください。作業の中断は、時間以上のコストがあります。そして、取り次いだ件数の割合と、折り返しの往復回数もあわせて見ると、何が効いたかが分かります。

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