
取引に金額を入れ始めてから気づくことがあります。通貨が円になっていない。
設定を変えれば済む、と思うかもしれません。しかし、すでに入っている金額は自動で換算されません。
公式ヘルプにも、無料ツールのアカウントについて「既存の取引の値を新しい通貨の正しい金額にユーザーが更新する必要があります」と記載されています。
この記事では、通貨の設定と、やり直しが効かない部分を扱います。
先に結論:3つだけ
- 会社の通貨は、取引を作る前に日本円にしてください。
- あとから変えても、既存の取引の金額は自動で換算されません。
- 複数の通貨を使えるのはStarter以上です。無料では1つだけです
最初の5分の設定で、あとの数時間の手直しが消えます。
最初に会社の通貨を日本円にしてください
導入したら、まずここを見てください。
会社の通貨とは何か
公式には、会社の通貨は「新しい取引を作成する際のデフォルトの通貨」であり、金額のレポートに使用されると説明されています。
つまり、すべての金額の基準になる通貨です。ここが違っていると、全部がずれます。
編集は「すべての製品とプラン」で可能です
公式ヘルプの対象には、会社の通貨の編集について「すべての製品とプラン」と記載されています。
つまり、無料のアカウントでも変更できます。設定そのものは、誰でも触れる場所にあります。
作る前に確認する、それだけです
やるべきことは単純です。取引を1件も作っていない段階で、設定を開いて確認する。
この5分をやらないと、あとで何十件も手で直すことになります。
あとから変えても、金額は換算されません
ここが、この記事でいちばん重要な部分です。
公式に明記されている挙動
公式には、無料ツールのアカウントについて「既存の取引の値を新しい通貨の正しい金額にユーザーが更新する必要があります」と記載されています。
つまり、設定を変えても、数字はそのまま残ります。換算されません。
何が起きるか、具体的に書きます
取引の金額に「50000」と入れていたとします。通貨を変更すると、その50000が新しい通貨の50000として扱われます。
金額の意味が、まったく変わってしまう。しかも、画面上はエラーになりません。
複数通貨のアカウントでも作業が必要です
公式には、複数の通貨を使っているアカウントについて、影響を受ける成約済みの取引で為替レートの値を1に更新することを推奨するという案内があります。
どちらにしても、手作業が発生するということです。
複数の通貨はStarter以上
次に、プランの条件です。
公式に記載されている内容
公式には、「Starter、Professional、またはEnterpriseのサブスクリプションを持つアカウントは複数の通貨を使用できるが、使用できる通貨の数には異なる上限がある」と記載されています。
つまり、無料のアカウントで使えるのは1つの通貨だけです。
無料の範囲でできること
会社の通貨を日本円に設定する。これは無料でできます。
国内の取引しかないなら、これで十分です。複数の通貨は必要ありません。
海外取引がある場合の判断
ドル建ての取引がある会社なら、複数の通貨が使えるプランを検討することになります。
ただし、件数が少ないなら、円に換算した金額を入れるという運用でも回ります。あとで書きます。
為替レートの入れ方
複数の通貨を使う場合の話です。
手で入れるか、自動にするか
公式には、新しい通貨を会社の通貨に換算する為替レートを入力すると説明されています。あわせて、自動で更新する機能も用意されています。
つまり、固定のレートを自分で決めることもできます。
手で入れる場合は、いつのレートかを決める
社内の基準を決めてください。期初のレートで1年間通す、という会社は多い。
経理の処理と合わせるのが基本です。先に経理と話してください。
レートを変えると、集計が変わります
途中でレートを変更すると、過去の数字の見え方が変わります。
前年と比べるときに、どのレートで集計しているかを揃えないと意味がありません。
自動更新の頻度は3つから選びます
為替レートを自動で更新する機能があります。
対象はStarter以上です
公式ヘルプの対象プランには、各製品のStarter、Professional、Enterpriseが挙げられています。
無料のアカウントは対象外です。そもそも通貨が1つなので、必要ありません。
月次・四半期・年次
公式には、更新の頻度として月次、四半期、年次の3つが挙げられています。
有効にしたときは、現在の月、四半期、年の初日に有効なレートに更新されると説明されています。
反映には数日かかります
公式には、選択した頻度から2〜5営業日以内に同期されると記載されています。
月初にすぐ変わるわけではありません。月初の数日は、前のレートで動いていると考えてください。
成約した取引のレートは更新されません
ここも、知らないと混乱します。
公式に書かれている内容
公式には、成約した取引の為替レートの値は今後自動的に更新されないと記載されています。
つまり、受注した時点のレートで固定されます。これは、むしろ正しい挙動です。
クローズ日にレートがない場合
公式には、取引のクローズ日に設定上のレートが存在しない場合、クローズ日に最も近いタイムスタンプに基づいて取得されると説明されています。
近い日のレートが使われる、ということです。厳密な日次のレートではありません。
会計の数字とは一致しません
ここは、はっきり書いておきます。ここで出る金額は、会計上の数字と完全には一致しません。
営業の管理のための数字だと考えてください。請求と入金は、会計のシステムで管理するものです。
操作できる人が限られています
設定を変えるには権限が必要です。
公式に記載されている権限
公式には、スーパー管理者、またはアカウントの既定を編集する権限が必要と記載されています。
この媒体で何度も書いているとおり、権限は機能ごとに分かれています。管理者なら何でもできる、ではありません。
誰が持つかを決めてください
通貨の設定は、一度決めたら基本的に変えません。だからこそ、変えられる人を絞ってください。
誤って変更されると、全社の金額の意味が変わります。
変更したら記録に残す
もし変更するなら、いつ、なぜ変えたかを残してください。
半年後に数字が合わないとき、この記録がないと原因を特定できません。
日本の会社で起きる金額のずれ
設定が正しくても、運用でずれます。
| ずれの原因 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 税込と税抜が混在 | 合計が合わない | どちらかに統一する |
| 桁の入力間違い | 1件で全体が狂う | 上限の目安を共有する |
| 値引き前の金額 | 売上と差が出る | 入れる金額の定義を決める |
桁の間違いは、必ず起きます
0を1つ多く入れる。これは誰でもやります。
そして、1件の間違いでその月の合計が使い物にならなくなります。月末に、上位の数件だけ目視で確認してください。
「だいたいの金額」を入れる人がいます
見積が出ていない段階で、感覚の数字を入れる。これ自体は悪くありません。
問題は、見積を出したあとに直さないことです。段階が進んだら金額を更新する、というルールにしてください。
単位を統一してください
千円単位で入れる人と、円で入れる人が混ざる。実際に起きます。
この媒体で繰り返し書いているとおり、入力の規則を決めるのはデータが少ないうちです。
税込か税抜かを決めてください
日本の会社で、いちばん揉めるところです。
公式には定義されていません
取引の金額を税込で入れるか税抜で入れるかは、ツールが決めることではありません。会社で決めるものです。
だからこそ、決めないまま始まります。そして、混ざります。
おすすめは税抜です
売上の管理は、たいてい税抜で行います。会計の数字と比べやすくなります。
そして、税率が変わっても過去の数字と比較できます。
プロパティーの説明に書いておく
以前の記事で書いたプロパティーの説明欄に、「税抜で入力」と書いておいてください。
口頭で伝えただけでは、新しく入った人には伝わりません。画面に書いてあれば伝わります。
金額を入れるタイミングを決める
通貨の設定が正しくても、入れる時期がばらばらだと数字は使えません。
最初は、おおよそで構いません
商談の初期は、正確な金額が出ていません。それでも、空欄にしないでください。
空欄のままだと、見込みの合計が出せません。おおよそでも入っていれば、規模は分かります。
見積を出した時点で、必ず更新する
ここが抜けます。見積を出したのに、取引の金額が最初のままという状態です。
以前の記事で書いた見積の機能を使っているなら、作成と同時に更新する流れにしてください。
受注時は、値引き後の金額に
最終的に入っているべきなのは、実際に請求する金額です。
値引き前の金額が残っていると、売上の集計と合いません。そして、合わない理由を探す時間が発生します。
数字が合わないと言われたとき
経営側から「数字が合わない」と言われる場面があります。切り分けの順番を書きます。
1. 通貨と単位を確認する
まず、会社の通貨が想定どおりかを見てください。ここがずれていれば、全部ずれます。
次に、千円単位で入っている取引が混ざっていないかを確認します。上位の数件を開けば分かります。
2. 税込と税抜の混在を疑う
合計がわずかに合わない場合、これが原因のことが多い。
10パーセント前後のずれなら、まず税の扱いを確認してください。
3. 集計の期間を合わせる
受注日で見ているのか、クローズの予定日で見ているのか。
この媒体で書いてきたとおり、同じデータでも、どの日付で切るかで数字は変わります。比べる前に、条件を揃えてください。
導入の初日にやる3つ
順番に書きます。
1. 会社の通貨を確認する
設定を開いて、日本円になっているかを見てください。これが最初です。
取引を1件でも作る前に、必ず確認してください。
2. 税込か税抜かを決める
社内で決めて、プロパティーの説明に書く。5分で終わります。
この5分を省くと、半年後に全件を確認することになります。
3. 変えられる人を絞る
通貨の設定を変更できる人を、2人までにしてください。
1人だとその人が不在のときに困り、多すぎると誤って変更されます。
金額以外にも通貨が出てくる場所
通貨の設定は、取引の画面だけの話ではありません。
見積に出る金額
以前の記事で書いた見積の機能を使うと、そこにも同じ通貨が出ます。
つまり、設定が違っていればお客様に出す書類の金額表記もずれます。社内だけの問題では済みません。
商品の登録にも影響します
前に書いた商品ライブラリに単価を登録している場合、その単価も同じ通貨で扱われます。
あとから通貨を変えると、商品の単価も見直すことになります。作業の量が一気に増えます。
レポートの合計も同じです
会社の通貨は、金額のレポートに使用されると公式に説明されています。
つまり、月次で見ている合計の数字も、この設定に乗っています。1か所の設定が、全部に効いているということです。
海外取引がある会社の設計
最後に、海外との取引がある場合です。
件数が少ないなら、円で入れる
年に数件なら、受注時のレートで円に換算した金額を入れる。これで十分です。
そのうえで、元の通貨と金額をメモに残しておいてください。あとから確認できます。
件数が増えたら、プランを検討する
毎月のように外貨の取引があるなら、複数の通貨が使えるプランを検討する段階です。
この媒体の立場は一貫しています。手作業が回らなくなってから、有料を検討してください。
レートをどう扱うか、先に経理と決める
営業の管理と、会計の処理では使うレートが違うことがあります。
どちらの数字を見て会話するのかを、最初に決めておいてください。これを曖昧にすると、毎月もめます。
設定を触る前にやること
すでに取引が入っている状態で通貨を変えるなら、順番があります。
1. 先に書き出してください
以前の記事で書いたエクスポートで、取引の一覧を手元に残してください。
変更する前の金額が分かる状態にしておく。これがないと、直すときの正解が分かりません。
2. 件数を数えてから決める
直す必要がある取引が何件あるか。10件なら今日中に終わります。300件なら、別の判断が要ります。
件数によっては、過去のぶんは放置して、新しい取引から正しくするという選択もあります。
3. いつから正しいのかを記録する
途中で切り替えるなら、その日付を残してください。
「この日より前の金額は参考値」と分かっていれば、あとから見る人が混乱しません。
まとめ
通貨は、最初に決めるものです。
- 会社の通貨は、取引を作る前に日本円にしてください。編集はすべての製品とプランで可能です
- あとから変えても、既存の取引の金額は自動で換算されません。手で直すことになります
- 複数の通貨が使えるのはStarter以上です。数の上限はプランによって異なります
- 為替レートの自動更新は月次・四半期・年次から選び、反映には2〜5営業日かかります。
- 成約した取引のレートは、自動では更新されません。
設定そのものは5分です。やり直しには、何時間もかかります。
よくある質問(FAQ)
会社の通貨を、あとから日本円に変えられますか
変更はできます。ただし、公式には、無料ツールのアカウントについて、既存の取引の値を新しい通貨の正しい金額にユーザーが更新する必要がある、と記載されています。設定を変えても数字は自動で換算されません。取引を作る前に確認してください。
無料版で複数の通貨を使えますか
使えません。公式には、Starter、Professional、またはEnterpriseのサブスクリプションを持つアカウントは複数の通貨を使用できる、と記載されています。使用できる通貨の数にもプランごとの上限があります。無料のアカウントで使えるのは、会社の通貨1つだけです。
為替レートは自動で更新できますか
できます。対象は各製品のStarter、Professional、Enterpriseです。頻度は月次、四半期、年次の3つから選べます。ただし、公式には選択した頻度から2〜5営業日以内に同期されると記載されているため、月初にすぐ反映されるわけではありません。
すでに成約した取引のレートも変わりますか
変わりません。公式には、成約取引の為替レートの値は今後自動的に更新されない、と記載されています。受注した時点のレートで固定されます。なお、クローズ日に設定上のレートが存在しない場合は、クローズ日に最も近いタイムスタンプに基づいて取得されると説明されています。
通貨の設定は誰でも変更できますか
できません。公式には、スーパー管理者、またはアカウントの既定を編集する権限が必要と記載されています。通貨は一度決めたら基本的に変えない設定なので、変更できる人を2人程度に絞っておくことをおすすめします。
取引の金額は税込と税抜のどちらで入れますか
これはツールが決めることではなく、会社で決めるものです。おすすめは税抜です。会計の数字と比べやすく、税率が変わっても過去と比較できます。決めたら、プロパティーの説明欄に「税抜で入力」と書いておいてください。口頭では、新しく入った人に伝わりません。
通貨の設定は、取引の画面だけに影響しますか
いいえ。見積に出る金額、商品ライブラリに登録した単価、金額のレポートにも影響します。公式には、会社の通貨は新しい取引を作成する際の既定の通貨であり、金額レポートに使用されると説明されています。設定を変えると、お客様に出す書類の表記まで関係してきます。
取引の金額は、いつ更新すればいいですか
商談の初期はおおよその金額で構いません。見積を出した時点で必ず更新し、受注時には値引き後の最終金額にしてください。抜けやすいのは見積を出したときです。値引き前の金額が残っていると、売上の集計と合わず、その理由を探す時間が発生します。
海外取引が年に数件だけの場合はどうしますか
受注時のレートで円に換算した金額を入れる運用で十分です。そのうえで、元の通貨と金額をメモに残しておいてください。毎月のように外貨の取引があるようになったら、複数の通貨が使えるプランを検討する段階です。
参考にした公式ドキュメント
あわせて読みたい
HubSpotは無料で始められます
コンタクト管理・フォーム・メール配信・商談管理を1つにまとめたCRMプラットフォームです。会社の通貨の編集は、すべての製品とプランで行えます。プランごとの違いと料金は公式サイトでご確認ください。