
物販を続けていると、必ず来ます。「商品が説明と違う」「届いたら壊れていた」。仕入れ判断の回で書いたとおり、仕入れの段階で防げることもありますが、輸送中の破損は検品では防げません。
そして、この分野のトラブルには特徴があります。起きた後に取れる手が、発送方法と、受取評価のタイミングで決まってしまうことです。起きてから慌てても、選択肢が残っていないことがあります。
この記事では、検品と返品対応を分解します。扱うのは、発送方法による違い、受取評価という分岐点、期限、返品前の注意事項、一部返金という着地、出品前の検品と記載、かかる時間、つまずく場所です。
記述はメルカリの公式ガイドを一次情報にしています。販売する場所によって仕組みは違うので、使うサービスの規定は必ずご自身で確認してください。
トラブルは、検品だけでは防ぎきれない
まず、前提を整理します。
防げるものと、防げないもの
検品で防げるのは、出品時点で分かる不備です。傷、汚れ、動作しない、付属品が足りない。これらは手元で確認できます。
防げないのが、輸送中に起きることです。箱がつぶれる、中で動いて壊れる、届かない。こちらの手を離れた後に起きるので、検品の精度とは関係ありません。
そして、もう1つ防ぎにくいのが認識の差です。同じ商品を見ても、「使用感あり」がどの程度かは人によって違います。これは検品ではなく、書き方の問題になります。
だから、対策は3方向に分かれる
出品前にやること、発送時にやること、起きた後にやること。この3つは別の話です。混ぜて考えると、どこに手を打てばいいか分からなくなります。
この記事では、起きた後に取れる手から逆算して整理します。なぜなら、後で取れる手は、前の判断によって決まってしまうからです。
順番を逆にして読むと、優先順位が見えます。起きた後にできることが少ないほど、前の段階に手をかける価値が高い。この分野は、まさにその形をしています。
起きてから調べるのでは遅い
公式ガイドの内容を、トラブルが起きてから読むことになる人が多い。そのときには、すでに選べる道が狭まっていることがあります。
先に読んでおけば、発送方法の選択も、評価のタイミングも変わります。データ収集の回で書いた「着手前に確認する」のと、同じ考え方です。
読む時間は30分ほどです。返品対応1件にかかる時間の、5分の1にもなりません。しかも一度読めば、以降の取引すべてに効きます。最初の1回で済む投資です。
発送方法の選択で、事故のときの手が変わる
いちばん見落とされている論点です。
公式の記述
公式ガイド「届いた商品が説明文と違う/壊れている」には、注記としてこう書かれています。「メルカリ便以外の配送方法を利用時、商品の破損が発生した場合:事務局にて配送状況の確認、および配送会社への調査ができません。ご利用の配送会社に、補償対応についてご相談ください」。
つまり、サービスが用意した配送方法を使っていないと、運営側が調べられる範囲の外に出るということです。配送会社と直接やりとりすることになります。
逆に、公式の配送方法なら調査してもらえる
同じページには「メルカリ便をご利用の場合、事務局で配送状況の調査や商品状態の確認をおこない、補償適用可否についてご案内いたします」と書かれています。
この差は大きい。調べてもらえるかどうかで、解決までの手間がまったく違います。個人で配送会社に問い合わせて、調査を依頼して、結果を待つ。この一連を自分でやるのは、想像以上に時間がかかります。
しかも、配送会社への調査依頼には期限や条件があることがあります。個人として問い合わせる場合、どこに何を伝えればよいかから調べることになります。運営が間に立ってくれる形とは、負担が別物です。
送料を数十円削って、この差を負う価値があるか
公式の配送方法より安い手段が見つかることはあります。ですが、事故が起きたときに使える手が減ります。
1件あたり数十円の差なら、保険料として払っていると考えたほうが合理的です。トラブルが1件起きれば、その差額の何十倍もの時間が消えます。
扱う商品によっても判断は変わります。壊れにくい衣類と、精密なものとでは、事故の起きやすさが違う。全部を同じ方法にする必要はありません。商品の性質で使い分けるのが現実的です。
匿名返品という仕組みもある
返品の場面でも、発送方法の選択が効いてきます。公式ガイド「商品の返品手順」には「発送時にらくらく/ゆうゆう/エコメルカリ便を利用している場合、匿名返品サービスをご利用いただけます」と書かれています。
裏を返せば、それ以外の方法で発送していると、匿名での返品ができません。返品してもらうために、自分の住所を相手に伝えることになります。この点も、発送方法を選ぶときの判断材料になります。
公式も、匿名返品を使わない場合は「お届け先住所が必要な場合、取引メッセージで出品者へ確認してください」と案内しています。自宅から発送している人にとっては、これは小さくない問題です。発送方法を決める前に、この点も考えておいてください。
受取評価の前が、分岐点
2つ目の分岐点です。ここは購入者側の行動ですが、出品者も知っておく必要があります。
取引完了後は、キャンセルができない
公式ガイド「商品の返品手順」の注意事項に、こう書かれています。「取引完了後は、取引キャンセルができません。受取評価は行わないでください」。
受取評価をすると取引が完了し、そこから戻れなくなります。つまり、評価が押される前かどうかで、取れる手がまったく変わります。
相手は、この仕組みを知らないことがあります。届いた商品に不備があっても、先に評価してしまう。悪気があるわけではなく、手順を知らないだけです。だから、こちらから伝えておく意味があります。
問題があったら、評価せずに連絡する
「届いた商品が説明文と違う/壊れている」のページも、冒頭で同じことを書いています。「商品に問題があった場合は、評価を行わず、出品者に商品状態についてご連絡ください」。
出品者の立場では、購入者にこれを伝える場面があります。「お手数ですが、評価の前にご連絡をいただけますか」。相手が知らずに評価してしまうと、こちらからも対応が難しくなります。
伝え方は、やわらかくて構いません。評価を止めさせる指示ではなく、確認の案内として伝える。「評価の前に、中身のご確認をお願いします」という言い方なら、自然です。
発送時の案内に一行入れておく
対策として、発送の連絡に一言添えておく方法があります。「万一、商品に不備がございましたら、評価の前にご連絡ください」。
先に伝えておけば、相手も動きやすい。これは取材記事の回で書いた「期限と手順を先に示す」のと同じ発想です。
そして、この一言は信用にもなります。不備がある前提で話しているのではなく、何かあったときの道筋を示している。丁寧な出品者だという印象につながります。
添える場所は、発送の通知と一緒がいちばん読まれます。商品が届く直前の連絡は、相手がいちばん見ているタイミングだからです。出品ページに書いても、購入後に読み返す人は多くありません。
逆に、評価を急がせない
早く取引を終わらせたくて、評価を促したくなる場面があります。ですが、相手が中身を確認する前に評価を求めるのは避けてください。
公式の禁止行為には「評価方法を指定すること」が挙げられており、評価に関する働きかけには線があります。急がせて後から問題が出ると、余計にこじれます。
取引を早く終えたいのは、売上の反映を待っているからでしょう。ですが、数日早く終わらせることと、トラブルの芽を残すことを比べてください。急いで得られるものは、失う可能性のあるものに見合いません。
資金繰りが厳しいなら、そもそも回す量を見直す時期かもしれません。入金を待てない状態で仕入れを続けると、判断が急ぎがちになります。これは仕入れの上限を決める話ともつながります。
到着から14日という期限
3つ目が、時間の制約です。
公式が示している期限
「届いた商品が説明文と違う/壊れている」のページには、当事者間で解決できない場合についてこう書かれています。「お手元に商品が到着してから14日以内にお問い合わせいただいた場合、利用状況に応じて補償対応の可否について調査いたします」。
到着から14日。この日数を過ぎると、調査の対象から外れる可能性があります。
逆に言えば、14日という枠があることを知っていれば、当事者間のやりとりにも期限を置けます。「何日までに解決しなければ、事務局に相談する」という線を、自分の中で引いておく。だらだら続けないための目安になります。
当事者間のやりとりにも、目安がある
同じページのよくある質問には「取引相手から返事がありません」という項目があり、「メッセージ送信から24時間を目安にお返事をお待ちください」と書かれています。
そして「お待ちいただいても返事がない場合」は、当事者間で解決できない場合の手順を参照するよう案内されています。24時間待って、動かなければ次の手に移る。この目安を知っていると、いつまでも待たずに済みます。
待っているあいだも、時間は進みます。相手の返事を待つ日数も、14日の中に含まれている。だから、待ち方にも期限を持つ必要があります。
だから、連絡は早いほうがいい
14日という期限があり、やりとりの目安が24時間。ここから逆算すると、連絡を先送りするほど、選べる道が減ります。
連絡が来たら、その日のうちに返す。返せなくても、受け取った旨だけ先に返す。速さそのものが、解決の手段になる場面です。
相手の心情から見ても、返信の速さは効きます。不備があって連絡したのに反応がないと、不安が怒りに変わります。内容より先に、反応の速さで印象が決まる。これは仕事全般に言えることです。
調査を頼む場合に求められること
公式には、運営側で詳細を確認するために必要な対応も書かれています。「商品の破損状態や問題箇所がわかる画像の送付」「商品実物の商品回収センターへの送付(商品送り先は事務局からご案内します)」「本人確認の実施」。
画像は、相手に依頼する必要があります。「破損箇所が分かるお写真をいただけますか」と早い段階で聞いておくと、後の手続きが速く進みます。
そして、商品の実物を送ることになる可能性も頭に入れておきます。捨てないでほしい、と早めに伝えておく。相手が処分してしまうと、その後の手続きができなくなります。
返品前に確認する6点
返品の手順にも、公式が注意事項を挙げています。
公式が挙げている6点
「商品の返品手順」のページは「トラブルを防止するため、返品を行う前に下記6点を必ずご確認ください」として、次を挙げています。
| 公式が挙げている注意事項 |
|---|
| 出品者の同意なく、商品の返品やキャンセル申請をしないでください |
| 取引完了後は、取引キャンセルができません。受取評価は行わないでください |
| 出品者は返品された商品を受け取った後に、「返送された商品を受け取った」をタップしてキャンセルを完了してください |
| 匿名返品サービスを利用しない場合、返品時の配送方法、送料の負担は、出品者・購入者間で取り決めてください |
| 発送時にらくらく/ゆうゆう/エコメルカリ便を利用している場合、匿名返品サービスをご利用いただけます |
| 匿名返品サービスを利用しない場合は、追跡番号付きの配送方法をご利用いただき、取引メッセージで取引相手に追跡番号をお知らせください |
4つ目が、揉める場所
「返品時の配送方法、送料の負担は、出品者・購入者間で取り決めてください」。送料を誰が持つかは、自動では決まりません。
説明と違う商品を送ってしまった場合は、出品者が持つのが筋でしょう。購入者の都合による返品なら、話が変わります。どちらのケースかを、やりとりの中ではっきりさせてから返品の話に進んでください。
判断がつかない場合もあります。輸送中の破損なのか、元からあったのか。そのときは、どちらが原因かを争うより、着地点を先に探すほうが早いことが多い。原因の特定に時間をかけても、解決には近づきません。
6つ目は、自分を守る手続き
「追跡番号付きの配送方法をご利用いただき、取引メッセージで取引相手に追跡番号をお知らせください」。
返品の途中で商品が行方不明になると、誰の手元にもない状態が生まれます。追跡番号があれば、どこで止まっているかが分かる。返品を受ける側としても、この形を相手にお願いしてください。
公式も返品の手順の中で「商品の紛失などを防ぐために、匿名返品サービスや、追跡サービス付きの配送方法をおすすめします」と書いています。おすすめ、と書かれているものは、たいてい事故が起きた実例があるということです。
キャンセルは双方の合意が要る
「取引のキャンセル方法」のページには「取引キャンセルとは、取引を解除することを指し、キャンセル申請フォームからの手続きが必要です」とあり、「取引キャンセルには双方の合意が必要となるため、キャンセル申請前に取引相手へご相談ください」と書かれています。
一方的には終われない、ということです。先に話をして、合意してから申請する。この順番を守らないと、申請だけが宙に浮きます。
公式は、キャンセル理由についても注意しています。「キャンセル申請/お問い合わせによるキャンセルにかかわらず、キャンセル理由が迷惑行為/禁止行為に該当する場合は警告や利用制限の対象となります」。キャンセルの中身も見られているということです。
申請理由は、相手にそのまま表示される
同じページに、見落とされやすい注記があります。「『理由の詳細』は取引相手に『申請理由』としてそのまま表示されるため、トラブルが発生しないよう、問題のない表記でご記載ください」。
感情的な文章を書くと、それがそのまま相手に届きます。事実だけを、短く書く。「商品説明と状態に相違があったため」で足ります。
書く前に一度読み返す癖をつけてください。送信ボタンを押す前の10秒が、その後の数日を左右します。これは取引のメッセージ全般に言えることです。
一部返金という着地
返品だけが解決策ではありません。
公式が案内している方法
「届いた商品が説明文と違う/壊れている」のページには、当事者間の話し合いについてこう書かれています。「お客さま間で合意できる解決方法があるかお話し合いください」。
そして「出品者の販売利益の一部を購入者へ返金し取引を完了する場合は、事務局で返金をサポートします」と続きます。全額を返して商品も戻すのではなく、一部を返して取引を続ける道が用意されているということです。
公式が手順を用意しているということは、これが例外的な扱いではなく、想定された解決方法だということです。特別なお願いをしているわけではないので、提案することに遠慮は要りません。
どちらが得かを、計算してみる
返品になると、商品が戻ってきて、返品の送料がかかり、売上がゼロになります。商品も、返品された状態で再度売れるとは限りません。
一部返金なら、送料は増えず、売上の一部が残ります。金額次第では、返品より双方にとって良い着地になります。提案してみる価値はあります。
相手にとっても、返送の手間がなくなります。梱包して、発送して、追跡番号を伝える。購入者にとっても、返品は面倒な作業です。その手間を省ける提案として伝えると、受け入れられやすくなります。
提案のしかた
謝罪と事実の確認をしたうえで、選択肢として出します。「ご指摘の箇所について、◯円のご返金という形でのご提案も可能です。ご返品をご希望の場合は、そちらでも対応いたします」。
押しつけず、選べる形にする。これは他の分野の記事でも繰り返してきた、判断を相手に返す形です。
順番も大事です。先に謝罪と事実の確認、それから提案。いきなり金額の話から入ると、値切りの交渉のように見えます。何が起きたかを共有してから、解決の話に移ってください。
金額の目安を決めておく
その場で考えると、言い値になりがちです。あらかじめ基準を決めておいてください。
たとえば、記載漏れの程度によって売値の1割、2割、3割。基準があると、相手にも説明できます。そして、返品のほうが安く済むラインも決めておく。仕入れ判断の回で書いた「基準を先に紙に書く」のと同じ考え方です。
基準を持っていると、感情に流されません。相手が強く出てきたときに譲りすぎたり、逆に意地になって断ったり。その場の空気ではなく、決めておいた線で判断する。これが揉めごとを短く終わらせるコツです。
出品前にやる検品と、書き方
ここまでは起きた後の話でした。起こりにくくする側も整理します。
検品の手順を固定する
毎回違う見方をしていると、見落としが出ます。順番を決めてください。外観、可動部、付属品、におい、動作。この順で見る、と決めておく。
順番を決めた検品は、速くて漏れが少ない。これは図解の回で書いたチェックリストの話と同じ構造です。
扱うジャンルが決まっているなら、そのジャンル特有の確認項目も足します。衣類なら首元の伸びと毛玉、本なら書き込みと日焼け、機器なら通電と付属品。ジャンルごとの型を作ると、見落としが一段減ります。
見つけた不備は、写真に撮る
不備を見つけたら、その場で写真を撮ります。出品の写真に含めるためでもあり、後から「発送前はこの状態だった」と示すためでもあります。
撮った写真は、取引が終わるまで消さないでください。輸送中の破損が疑われたときに、発送前の状態を示せます。
梱包の様子も撮っておくと、さらに確実です。どう包んで送ったかを示せると、輸送中の事故であることの説明がしやすい。数秒の手間で、後の説明が楽になります。
保存の方法も決めておきます。取引ごとにまとめておけば、後から探せます。撮ったものの、どの取引の写真か分からなくなるのが、いちばんもったいない。月ごとのフォルダに入れるだけでも十分です。
「使用感あり」では足りない
認識の差が生まれるのは、抽象的な言葉を使ったときです。「使用感あり」「多少の傷」「美品」。これらは人によって基準が違います。
具体的に書いてください。「右下に長さ1センチの擦り傷が1箇所あります」。数と場所と大きさを書けば、認識の差が生まれません。写真も添えれば、さらに確実です。
公式の禁止行為には「商品の状態がわかる画像を掲載しないこと」も挙げられています。写真を載せることは、親切ではなく前提です。不備がある箇所は、特に写しておいてください。
書いた不備は、揉めない
実務上の要点はここです。書いてあった不備でトラブルになることは、ほとんどありません。問題になるのは、書いていなかった不備だけです。
不備を書くと売れにくくなる、と感じるかもしれません。ですが、書かずに売れた後のトラブル対応にかかる時間を考えれば、最初から書いたほうが安上がりです。
そして、正直に書いた出品は評価にも表れます。説明どおりだった、という評価が積み上がると、次の取引が楽になります。短期の売れやすさより、長く続けるための材料と考えてください。
1件のトラブルにかかる時間
対応時間に公的な統計はありません。以下は、返品で着地した場合を置いた本メディアの想定モデルで、統計ではありません。
| やること | 時間 | 備考 |
|---|---|---|
| 連絡の確認と初回返信 | 20分 | 状況の確認と画像の依頼 |
| 状況の確認とやりとり | 60分 | 数回の往復。待ち時間は除く |
| 解決方法の提案と合意 | 30分 | 返品か一部返金かを決める |
| キャンセル申請の手続き | 20分 | 理由の記載と申請 |
| 返送の受け取りと完了操作 | 20分 | 状態の確認を含む |
2時間30分が、1件で消える
合計は2時間30分です。これは実作業だけで、相手の返事を待つ時間は含まれていません。実際には数日にまたがります。
そして、この2時間30分に対する収入はゼロです。返品になれば売上も戻します。1件のトラブルで、利益の出る取引が何件分か消える計算になります。
精神的な負担も無視できません。やりとりが続いているあいだ、頭の片隅に残り続けます。本業がある人にとって、この負荷は時間以上に重い。だから、起きにくくする側に手をかける価値があります。
だから、予防の時間は安い
出品時に不備を具体的に書くのに、追加でかかるのは1件あたり数分です。検品の順番を決めるのは、最初の1回だけ。
数分の積み重ねで、2時間30分を避けられる可能性が上がる。費用対効果で考えれば、答えは明らかです。
予防は成果が見えにくい、という難しさはあります。起きなかったトラブルは、数えられません。それでも続けられるかどうかが、長く回せる人との差になります。
代わりに、起きた回数は数えられます。月に何件のトラブルがあったかを記録しておけば、予防の効果が見えてきます。減っていれば、続ける理由になります。
発送方法の差も、同じ計算になる
公式の配送方法を使うことで送料が数十円上がっても、事故のときに調査してもらえるかどうかの差があります。
1件のトラブルが2時間30分なら、数十円の差額を何百件分積んでも、1件の事故のほうが重い。この計算をしてから、発送方法を選んでください。
同じ考え方は、梱包材にも当てはまります。緩衝材を1枚多く入れる数円と、破損したときの2時間30分。公式の禁止行為にも「梱包不備(緩衝材不足、商品がはみ出すなど)」が挙げられています。ここもケチる場所ではありません。
つまずく場所は5つに決まっている
この分野でつまずくのは、ほぼ5つです。
| つまずく場所 | 公式に書かれていること |
|---|---|
| 送料を削って公式以外で送る | メルカリ便以外は事務局で配送状況の確認ができない |
| 評価を急がせる/急ぐ | 取引完了後は、取引キャンセルができません |
| 連絡を先送りする | 到着から14日以内の問い合わせが調査の条件 |
| 返品の送料を決めずに進める | 送料の負担は出品者・購入者間で取り決める |
| 申請理由に感情を書く | 理由の詳細は相手にそのまま表示される |
1・送料を削って公式以外で送る
数十円安い方法が見つかると、そちらを選びたくなります。ですが公式は、メルカリ便以外での破損について「事務局にて配送状況の確認、および配送会社への調査ができません」と明記しています。
そして、匿名での返品も使えなくなります。送料の差は、事故が起きたときの手の数と引き換えです。
判断の目安は、商品の価格と壊れやすさです。安くて壊れにくいものなら、別の方法でも損失は限られます。高いものや壊れやすいものだけでも、公式の方法に寄せてください。
2・評価を急がせる/急ぐ
取引を早く終えたい気持ちは分かりますが、評価が押されると戻れません。公式は「取引完了後は、取引キャンセルができません」としています。
発送の連絡に「不備がございましたら評価の前にご連絡ください」と添えておく。一行で、後の選択肢を残せます。
定型文にしておけば、毎回書く手間もありません。発送の連絡文を1つ作って、使い回す。これは他の分野で繰り返してきた、型を作る話と同じです。
購入者として買う側に回ったときも、同じことを覚えておいてください。届いたら、評価の前に中身を確認する。自分が損をしないための手順でもあります。
3・連絡を先送りする
返事に困る内容だと、つい後回しにします。ですが14日という期限があり、やりとりの目安は24時間とされています。
すぐ答えられなくても、受け取った旨だけ先に返す。「ご連絡ありがとうございます。状況を確認のうえ、本日中にご返信します」。これだけで、相手の不安がかなり減ります。
そして、返すと言った期限は守ってください。本日中と書いて翌日になると、それ自体が新しい不満になります。守れる期限を書くのが、結局いちばん早い。
4・返品の送料を決めずに進める
返品することだけ決めて、送料の話をしないまま進めると、後で揉めます。公式も「出品者・購入者間で取り決めてください」としています。
返品の話をするときに、必ずセットで決めてください。「返送の送料は当方で負担いたします」まで書いて、初めて合意です。
負担する場合の渡し方も決めます。返送の伝票をこちらで用意するのか、立て替えてもらって後で返すのか。方法まで決めないと、また往復が増えます。1回のメッセージで、そこまで書いてください。
5・申請理由に感情を書く
キャンセル申請の「理由の詳細」は、相手にそのまま表示されます。公式も「トラブルが発生しないよう、問題のない表記でご記載ください」と注意しています。
事実だけを短く書く。説明のつもりで書いた長文が、相手を刺激することがあります。
書く内容の型も決めておけます。何が、どう違っていたか。それだけ。誰が悪いかは書かない。手続きのための記載であって、主張の場ではありません。
そして、長く書いても手続きは早くなりません。短く書いたほうが、相手も同意しやすい。読むのに時間がかかる文章は、それだけで返事が遅れます。
30代につながるのは、揉めたときの手順を持っていること
このメディアは、20代の副業を「30代に何が残るか」で選ぶ立場で書いています。物販のトラブル対応で残るのは、梱包の技術ではありません。
問題が起きた後の、最初の一手を持っていること
残るのは、揉めたときに何から手をつけるかを知っていることです。事実を確認する、期限を把握する、選択肢を並べる、合意を取る。
30代になると、トラブルの矢面に立つ場面が増えます。クレーム、納期の遅れ、仕様の食い違い。手順を持っている人は、慌てません。慌てない人のところに、難しい案件が回ってきます。
そして、手順は経験からしか身につきません。本で読んだ手順と、自分で使った手順では、使えるときの速さが違う。副業の小さいトラブルは、その練習の場になります。
先に手を打っておく発想
発送方法の選択も、評価前の一言も、不備の具体的な記載も、すべて起きる前の行動です。起きてからでは選べません。
この発想は、あらゆる仕事で効きます。問題が起きたときに取れる手は、起きる前の判断で決まっている。これを知っている人は、平時の判断が変わります。
契約書の一文、議事録の一行、記録の1枚。平時には意味がないように見えるものが、揉めたときに効きます。この感覚を持っている人は、面倒な準備を面倒がりません。
着地点を複数持てること
返品か、一部返金か。1つの道しかないと思っていると、交渉になりません。複数の着地点を知っていて、相手に選んでもらう。
これは値引き交渉でも、納期の相談でも同じです。選択肢を用意できる人は、関係を壊さずに着地させられます。20代のうちに、小さい金額で練習できるのが物販です。
そして、着地させた相手とはその後も続くことがあります。揉めごとを丁寧に終わらせた相手ほど、次につながるという場面は珍しくありません。対応そのものが、評価の材料になります。
まとめ
- 検品で防げるのは出品時点で分かる不備まで。輸送中の破損と認識の差は、別の方法で手を打つ
- 公式は「メルカリ便以外の配送方法を利用時、商品の破損が発生した場合:事務局にて配送状況の確認、および配送会社への調査ができません」としている。送料の差は、事故のときの手の数と引き換え(メルカリ公式)
- 「取引完了後は、取引キャンセルができません。受取評価は行わないでください」。評価が分岐点になるので、発送の連絡に一言添えておく
- 当事者間で解決できない場合は「お手元に商品が到着してから14日以内にお問い合わせ」が調査の条件。返事を待つ目安は24時間とされている
- 返品前の注意事項は6点。特に返品の送料負担は当事者間の取り決め、匿名返品が使えるのは公式の配送方法で発送した場合
- 返品以外に一部返金という着地がある。「出品者の販売利益の一部を購入者へ返金し取引を完了する場合は、事務局で返金をサポートします」
- キャンセル申請の「理由の詳細」は相手にそのまま表示される。事実だけを短く書く
- 想定モデルでは1件の返品対応で2時間30分。出品時に不備を具体的に書く数分で、これを避けられる可能性が上がる
よくある質問(FAQ)
送料の安い方法で送ってはいけないのですか。
禁止されているわけではありません。ただし公式は、メルカリ便以外の配送方法での破損について「事務局にて配送状況の確認、および配送会社への調査ができません。ご利用の配送会社に、補償対応についてご相談ください」としています。また、匿名返品サービスが使えるのは、らくらく/ゆうゆう/エコメルカリ便で発送した場合とされています。送料の差と、事故のときに使える手の差を比べて判断してください。
購入者が評価してしまった後でも、対応できますか。
公式は「取引完了後は、取引キャンセルができません。受取評価は行わないでください」としています。評価によって取引が完了すると、キャンセルの手続きは取れなくなります。だからこそ、発送の連絡の段階で「不備がございましたら評価の前にご連絡ください」と添えておくことが、後の選択肢を残す方法になります。
返品の送料は、どちらが負担するのですか。
公式ガイドは「匿名返品サービスを利用しない場合、返品時の配送方法、送料の負担は、出品者・購入者間で取り決めてください」としています。自動では決まりません。説明と違う商品を送ってしまった場合と、購入者の都合による返品とでは話が変わるので、どちらのケースかをやりとりの中ではっきりさせてから、送料の負担まで含めて合意してください。
返品以外の解決方法はありますか。
公式は「お客さま間で合意できる解決方法があるかお話し合いください」としたうえで、「出品者の販売利益の一部を購入者へ返金し取引を完了する場合は、事務局で返金をサポートします」と案内しています。返品になると送料が増えて売上もゼロになるため、金額次第では一部返金のほうが双方にとって良い着地になることがあります。押しつけず、選べる形で提案してください。
副業として始めるとき、確定申告や会社への影響はどうなりますか。
この記事では検品と返品対応だけを扱っています。副業全般の論点は姉妹メディア「20代の放課後」で扱っています。確定申告と20万円ルール、副業の始め方を参照してください。
トラブルが起きる前に、返品の手順を読んでおく
返品前に確認する6点、匿名返品が使える条件、送料負担の取り決め。公式ガイドにまとまっています。起きてから読むと、選べる道が狭まっていることがあります。