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配信の声は騒音になる?|生活騒音に法律の規制はない

夜の室内から窓越しに街の明かりが見えている様子

集合住宅で配信していると、必ず一度は不安になります。隣に聞こえていないか。苦情が来たらどうするか。

調べると、「〇〇デシベル以下に抑えましょう」という記事が出てきます。ただ、その数字の根拠がどこにも書かれていません。どの法律の、どの条文から来た数字なのか。

この記事では、先に法律の条文を確認します。結論を言うと、個人の家から出る音について「何デシベルまで」という法律上の基準は存在しません。そのうえで、では何を見ればいいのか、苦情が来たら何をすればいいのかを整理します。なお、個別の事案が法的にどう扱われるかは判断できません。その部分は相談先に渡します。

「何デシベルまで」を探しても見つからない

まず、探しても見つからない理由から説明します。

数字を出している記事の根拠

配信と騒音について書かれた記事の多くは、数字を出します。夜間は45デシベル以下、昼間は55デシベル以下、といった具合です。

この数字の出どころは、たいてい「騒音に係る環境基準」です。ただ、環境基準は地域の環境を維持するための行政上の目標であって、個人の家から出る音に直接適用される基準ではありません。守らないと違反になる、という種類の数字ではないんです。

にもかかわらず、記事の中では「この数字を超えると違反」のように書かれていることがあります。読む側からすると、守るべき線があるように見えてしまう。ここが最初のずれです。

では、守るべき線が別のところにあるのか。それを確かめるために、法律そのものを読みました。

環境省が書いていること

環境省が公開している生活騒音についての資料に、はっきり書かれている一文があります。

「また、生活騒音には法的規制はありませんが、近隣住民や地域内で話し合う、市区町村に相談するなどの解決方法があります。」(確認日2026年9月22日)

同じ資料のよくある質問にも、同じ趣旨の回答があります。「生活騒音を規制する法律はありますか?」という問いに対して、「生活上発生する音のため、法律による規制はありませんが、市区町村によっては条例により生活騒音への配慮を定めているところもあります」と答えたうえで、お住まいの地域の自治体(環境に係わる部署)でご確認ください、と案内しています。

つまり、探しても見つからないのは、探し方が悪いからではありません。国の側が「法律による規制はありません」と明言しているからです。ここを知っておくと、無駄に探し回らずに済みます。

「生活騒音」の定義を確認する

そもそも生活騒音とは何を指すのか。同じ資料に定義が書かれています。

一般家庭のピアノやクーラー、家庭用ヒートポンプ給湯機等から発生する騒音、集合住宅でのバス・トイレの給排水音、自動車のアイドリング等の通常一般の生活行動に伴って、居住環境(住宅内及び住戸まわり)において発生するものを指して「生活騒音」と言う、とされています。

住宅の中と、その周りで出る音のことです。自宅から配信するときの声や音響機器の音は、この範囲に入ります。だから、これから確認する法律の話がそのまま関係してきます。

配信環境そのものの作り方は照明の記事や音ズレの記事にまとめています。この記事は、外に出る音の話です。

よくある説明 確認できたこと
夜間は45デシベル 環境の目標値
超えたら違反になる 法的規制はない
法律を守れば安心 条例と契約を見る
数字が判断の基準 基準は存在しない

騒音規制法が対象にしているもの

名前からすると、この法律がいちばん関係ありそうに見えます。実際に読んでみます。

騒音規制法が対象にしているもの 工場および事業場の事業活動 建設工事にともなう騒音 自動車騒音 深夜は飲食店営業等と拡声機 個人の住宅から出る音は 条文のどこにも出てこない 環境省も「生活騒音には 法的規制はありません」と明記 では、何を見るのか 1 賃貸借契約書・管理規約 用法遵守と迷惑行為の条項 2 市区町村の条例 配慮の指針を置く自治体がある 3 民事上の責任 調停や訴訟になった事例がある 苦情が来たときの順番 当事者間または住宅の管理人へ そのあと自治体の相談窓口へ
法律ではなく、契約書と条例を見る

第1条に書かれている目的

騒音規制法の第1条は、この法律が何のためにあるかを定めています。そのまま引用します。

「この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。」

規制の対象として挙げられているのは3つです。工場及び事業場における事業活動。建設工事に伴って発生する騒音。そして自動車騒音。個人の住宅から出る音は、目的の条文に出てきません。

これは書き漏らしではありません。法律全体の構成を見ると、はっきりします。

章の構成を見ると分かる

騒音規制法の目次は、こうなっています。第一章が総則。第二章が特定工場等に関する規制。第三章が特定建設作業に関する規制。第四章が自動車騒音に係る許容限度等。第五章が雑則。第六章が罰則。

住宅の生活騒音を扱う章が、存在しません。第2条の定義も同じです。「特定施設」とは工場又は事業場に設置される施設のうち著しい騒音を発生する施設であつて政令で定めるもの、とされています。

つまり、この法律の構造そのものが、事業活動と建設工事と自動車を対象にしてできています。個人宅の配信が違反になる条文が、そもそも用意されていません。

深夜の規定も、対象が違う

ひとつだけ、深夜について書かれた条文があります。第28条です。「深夜騒音等の規制」という見出しがついています。

ここには、「飲食店営業等に係る深夜における騒音、拡声機を使用する放送に係る騒音等の規制については、地方公共団体が、住民の生活環境を保全するため必要があると認めるときは、当該地域の自然的、社会的条件に応じて、営業時間を制限すること等により必要な措置を講ずるようにしなければならない」と書かれています。

対象は、飲食店営業等と、拡声機を使用する放送です。個人が自宅で配信する声は、ここにも入っていません。そして、条例との関係を定めた第27条も、第1項・第2項ともに工場・事業場と建設作業の話で、住宅の生活騒音を想定した規定がありません。

法律を最後まで読んでも、配信の声を直接扱う条文は出てきませんでした。これが、数字が見つからない理由です。

規制がない、は「何をしてもいい」ではない

ここからが、いちばん誤解されやすいところです。

民事の責任は、別に生じる

法律の規制がないと聞くと、安心してしまいそうになります。ただ、同じ環境省の資料に、こう書かれています。

「騒音が改善されないと訴えられることはありますか?」という問いに対して、「公害調停となったり民事訴訟で賠償請求となったりした事例があります」という回答です。

つまり、行政が規制する法律がないことと、民事上の責任が生じないことは、まったく別の話です。「法律で禁止されていないから大丈夫」という理屈は、ここでは通りません。どの程度なら責任が生じるかは個別の事情で変わるので、この記事では判断できません。心配な場合は弁護士や法テラスに相談してください。

契約書と管理規約が効く

もうひとつ、多くの人が見落としている場所があります。自分が結んでいる契約です。

賃貸なら賃貸借契約書。分譲なら管理規約と使用細則です。ここに、用法遵守の義務や、他の居住者に迷惑をかける行為を禁じる条項が入っていることがあります。楽器の使用について個別に定めている物件もあります。

法律に規制がなくても、契約で約束したことは守る必要があります。そして、契約違反は法律違反とは別のルートで問題になります。まず読むべきなのは、六法ではなく自分の契約書のほうでした。

自治体の条例を確認する

3つ目が、市区町村の条例です。環境省の資料も、市区町村によっては条例により生活騒音への配慮を定めているところもある、と案内しています。

例えば、自治体で生活騒音などに関する配慮すべき指針が設けられています、とも書かれていました。内容は自治体によって違うので、住んでいる場所で確認する必要があります。

案内されている確認先は、お住まいの地域の自治体の、環境に係わる部署です。電話でも、自治体のサイトでも調べられます。引っ越したら、そのたびに確認し直してください。条例は自治体ごとに違います。

見る場所 何を見るか 確認先
契約書 用法遵守と迷惑行為 管理会社
管理規約 楽器や音の細則 管理組合
条例 配慮の指針 自治体の環境部署
民事の責任 個別の事情による 弁護士・法テラス

苦情が来る前にやること

基準がないなら、何を目安にすればいいのか。環境省が挙げている配慮の項目を、配信に翻訳します。

環境省が挙げている5つの気くばり

同じ資料に、「騒音をなくす5つの気くばり」としてまとめられている項目があります。

時間帯に配慮すること。音がもれない工夫をすること。音は小さくする工夫をすること。音の小さい機器を選ぶこと。そして、ご近所とのおつきあいを大切にすること。この5つです。

抽象的に見えますが、配信に当てはめると具体的になります。順番も意味があって、最初が時間帯です。音量を下げるより先に、いつ配信するかを見る。夜中の2時に小さい声で話すより、夜の9時に普通の声で話すほうが、問題になりにくい場合があります。

音響機器について書かれていること

同じ資料には、音響機器からの騒音という項目があります。ここが配信者に直接関係します。

書かれているのは、周囲への配慮のため、音量を調節しましょう。夜間はヘッドホン・イヤホンを使いましょう、という2点です。そして、テレビ・オーディオ機器については、適正な音量に設定する、周囲への影響に配慮して設置する、とあります。

配信では、スピーカーで音を出す必要はほとんどありません。イヤホンかヘッドホンにするだけで、外に出る音が自分の声だけになります。これは費用もかからず、すぐにできる対策です。音のトラブル全般の切り分けは音ズレの記事で扱っています。

話し声について書かれていること

もうひとつ、そのものずばりの項目があります。「話し声」です。

挙げられているのは2つ。近所へ配慮して話す。窓を開けたまま話さない。

2つ目が効きます。夏場、暑いので窓を開けたまま配信してしまうことがあります。ただ、窓が開いていると、壁の遮音は関係なくなります。声がそのまま外に出ていく。エアコンをつけて窓を閉める。これだけで、外に出る音はかなり変わります。室内・階段の足音についても、マットなどを敷いて音を小さくする、歩き方に注意する、と書かれていました。立ち上がる配信をする場合は、ここも見てください。

環境省の項目 配信での実装
時間帯に配慮する 深夜帯を避ける
夜間はイヤホン スピーカーを使わない
窓を開けて話さない エアコンで閉める
足音を小さくする 足元にマット

苦情が来たあとの順番

それでも、言われることはあります。そのときの順番を決めておきます。

直接やり取りしない

最初に決めておくのは、直接やり取りしない、ということです。

インターホンが鳴って、隣の人が立っている。この状況で話し合うと、感情が乗りやすくなります。そして、口頭のやり取りは記録に残りません。あとで「言った」「言っていない」になります。

その場では、「ご迷惑をおかけしました。管理会社に確認します」で切り上げて構いません。謝罪と、責任を認めることは違います。迷惑をかけたことへの謝罪はしても、具体的な原因や賠償の話は、その場でしないでください。

ドアを開けずに、インターホン越しに対応しても構いません。相手が興奮している場合は、そのほうが安全です。対面する義務はありません。

管理人と管理会社を通す

環境省の資料にも、順番が書かれています。「生活騒音で困っています。どうしたらよいですか?」という問いへの回答です。

「まずは当事者間または住宅の管理人にご相談ください。また、各地方公共団体に相談窓口が設けられている場合がありますのでそちらにご相談ください。」

これは苦情を言う側への案内ですが、言われた側も同じ経路を使えます。管理会社に連絡して、事実を伝え、対応を相談する。間に人が入ると、感情のやり取りが減ります。そして、管理会社に連絡した記録が残ります。

記録を残す

3つ目が記録です。これは、トラブルの初動として共通します。

残すのは、言われた日時と内容。誰から言われたか。そのとき自分が何をしていたか。配信のアーカイブがあるなら、その時間帯。管理会社に連絡した日時と、担当者の名前。

時系列を書いておくと、話が早くなります。とくに、自分が配信していない時間帯の苦情が混ざっている場合、記録がないと反論できません。記録の残し方はトラブルの初動の記事にまとめています。

「うるさい」を数字にする方法がある

最後に、意外と知られていない手段を紹介します。

自治体が騒音計を貸している場合がある

環境省の資料のよくある質問に、こういう項目があります。「どれくらいの騒音が発生しているのか知ることはできますか?」

回答は、「地方自治体によっては騒音計の貸出を行っているところがあります。窓口にお問い合わせください。」です。

これが効くのは、話が主観のぶつかり合いになったときです。「うるさい」「うるさくない」は、どこまでいっても平行線になります。数字が入ると、話の土俵が変わります。貸出をしているかどうかは自治体によるので、環境に係わる部署に聞いてください。

苦情の実際の件数

規模も見ておきます。環境省の騒音規制法施行状況調査によると、平成28年度の騒音の苦情件数は16,264件でした。

その内訳は、建設作業が33.6%、工場・事業場が28.0%、営業が9.1%、家庭生活が6.2%、航空機が3.2%、拡声機が2.6%、自動車が1.9%、鉄道が0.4%、その他が14.9%です。

家庭生活からの苦情は、件数としては1,308件でした。発生源の内訳として挙げられているのは、電気機器、楽器・音響機器、人の声・足音・給排水音、ペット、アイドリング・空ぶかし、その他です。音響機器と人の声が、どちらも項目として立っています。

感じ方には幅がある、と書かれている

最後に、この問題の性質についても書かれていました。

生活騒音は誰もが生活している間に発生するもので、みなさんは被害者にも加害者にもなる可能性があります。それらは周囲の人との親密さ、自身の心情に影響されるものであるため、感じ方は人それぞれです。一度不快と印象付けられた音をその後敏感に感じるようになることがあります、と。

この最後の一文が実務的です。一度気になり始めると、同じ音量でも気になるようになる。だから、最初の一回を起こさないことが、いちばん効率がいい対策になります。音量を下げるのは、気になられてからでは遅い場合があります。

状況 やること 連絡先
苦情の前 窓を閉める 不要
言われた直後 その場で決めない 管理会社
繰り返す 記録を残す 自治体の窓口
数字がほしい 騒音計を借りる 自治体の窓口

まとめ

探す先が違っていた、という話でした。

  • 個人の家から出る音について「何デシベルまで」という法律上の基準は存在しない。環境省は「生活騒音には法的規制はありません」と明記している
  • 騒音規制法の第1条が対象にしているのは3つ。工場及び事業場における事業活動、建設工事に伴う騒音、自動車騒音。個人の住宅から出る音は出てこない
  • 章の構成も同じ。特定工場等、特定建設作業、自動車騒音の3つで、住宅の生活騒音を扱う章がない
  • 深夜について定めた第28条も、対象は飲食店営業等と拡声機を使用する放送。個人の配信は入っていない
  • ただし、規制がないことと責任がないことは別。環境省の資料に「公害調停となったり民事訴訟で賠償請求となったりした事例があります」と書かれている
  • 見るべきは3か所。賃貸借契約書や管理規約の用法遵守・迷惑行為の条項、市区町村の条例、そして民事上の責任
  • すぐできる対策は2つ。夜間はヘッドホンかイヤホンを使う。窓を開けたまま話さない。どちらも環境省の資料に挙げられている
  • 5つの気くばりの最初は時間帯。音量を下げるより先に、いつ配信するかを見る
  • 苦情が来たら、その場で決めない。謝罪はしても、原因や賠償の話はしない。管理人と管理会社を通す
  • 自治体によっては騒音計を貸し出している。「うるさい」「うるさくない」の平行線を、数字にできる

今日できるのは、窓を閉めて配信することと、自分の賃貸借契約書か管理規約を開いて、音について書かれた条項を探すことです。法律より先に、契約書のほうに具体的なことが書いてあります。個別の事案がどう扱われるかは、管理会社と自治体、必要なら弁護士に確認してください。

よくある質問(FAQ)

配信の声は騒音規制法に違反しますか

騒音規制法は、個人の住宅から出る音を規制の対象にしていません。第1条が対象としているのは、工場及び事業場における事業活動、建設工事に伴って発生する騒音、そして自動車騒音です。章の構成も、特定工場等・特定建設作業・自動車騒音の3つで、住宅の生活騒音を扱う章がありません。深夜について定めた第28条も、対象は飲食店営業等と拡声機を使用する放送です。ただし、法律の規制がないことと、民事上の責任が生じないことは別の話です。

何デシベルまでなら大丈夫ですか

個人の家から出る音について、守るべき数値の基準は法律上存在しません。環境省も「生活騒音には法的規制はありません」と明記しています。記事でよく見る45デシベルなどの数字は、地域の環境を維持するための行政上の目標値で、個人の家に直接適用されるものではありません。数字を目標にするより、時間帯を調整する、窓を閉める、スピーカーではなくイヤホンを使う、といった具体的な対策のほうが確実です。

隣から苦情が来ました。どうすればいいですか

その場で話し込まないでください。謝罪はしても、原因の特定や賠償の話はしないことです。「ご迷惑をおかけしました。管理会社に確認します」で切り上げて構いません。環境省の資料も、まずは当事者間または住宅の管理人に相談し、各地方公共団体に相談窓口が設けられている場合はそちらに相談する、という順を案内しています。そして、言われた日時と内容、そのとき自分が何をしていたかを記録に残してください。

賃貸で配信しても問題ありませんか

法律ではなく、自分の賃貸借契約書を読んでください。用法遵守の義務や、他の居住者に迷惑をかける行為を禁じる条項が入っていることがあります。楽器の使用について個別に定めている物件もあります。法律に規制がなくても、契約で約束したことは守る必要があり、契約違反は別のルートで問題になります。分譲の場合は、管理規約と使用細則を確認してください。不明な点は管理会社や管理組合に聞くのが早いです。

防音の工事をしたほうがいいですか

その前に、費用のかからないことから試してください。環境省の資料に挙げられているのは、夜間はヘッドホン・イヤホンを使う、音量を調節する、窓を開けたまま話さない、室内ではマットなどを敷いて足音を小さくする、といった項目です。とくに窓は効きます。開いていると壁の遮音が関係なくなるので、エアコンをつけて閉めるだけで外に出る音が変わります。これらを試したうえで足りない場合に、工事を検討する順番になります。

本当にうるさいのか確かめる方法はありますか

環境省の資料に、地方自治体によっては騒音計の貸出を行っているところがある、と書かれています。窓口に問い合わせてください、とのことです。「うるさい」「うるさくない」は主観のぶつかり合いになりやすく、話が平行線になります。数字が入ると、話の土俵が変わります。貸出をしているかどうかは自治体によるので、お住まいの自治体の環境に係わる部署に確認してください。自治体の相談窓口の有無も、あわせて聞けます。

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