
内定が2つ出た。年収はA社が高い。仕事の中身はB社が面白そう。通勤はA社が近い。決められないまま、承諾の返事の期限が近づいてくる。この状態で多くの人がやるのは、条件を書き出して眺めることです。ですが、書き出しても決まりません。
理由は、年収は数字で、仕事の中身は数字ではないからです。単位の違うものを並べても、比べたことにはなりません。この記事では、実際に転職した人が何を基準に選んだのかを公的統計で確認したうえで、単位の違うものを同じ土俵に乗せる手順、承諾期限の延ばし方、直感を使ってよい場面の線引きまでを解説します。
迷いの整理そのものについては転職するか迷うのは情報不足ではないで扱っています。こちらは「転職はする。どちらの会社か」という段階の話です。
内定が2つあるとき、人は実際に何で選んでいるか
1位は「仕事の内容・職種」、賃金は7番目
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」は、転職した人に「現在の勤め先を選んだ理由」を3つまで選ばせています。結果は次のとおりです。
| 順位 | 選んだ理由(3つまでの複数回答) | 割合 |
|---|---|---|
| 1 | 仕事の内容・職種に満足がいくから | 41.0% |
| 2 | 自分の技能・能力が活かせるから | 36.0% |
| 3 | 労働条件(賃金以外)がよいから | 26.0% |
| 4 | 転勤が少ない、通勤が便利だから | 20.8% |
| 5 | 安全や衛生等の職場環境がよいから | 15.1% |
| 6 | 地元だから(Uターンを含む) | 13.9% |
| 7 | 賃金が高いから | 12.2% |
| 8 | 会社に将来性があるから | 7.9% |
| 9 | 会社の規模・知名度のため | 7.4% |
| 10 | 前の会社の紹介 | 5.6% |
3つまで選んでよい設問で、賃金を挙げた人は12.2%しかいません。さらに「一番の理由」を1つだけ選ばせた集計では、「仕事の内容・職種に満足がいくから」が18.8%で最も高くなっています。実際に転職した人は、年収を主たる決め手にしていないということです。
「年収で選ばないほうがいい」ではなく「年収では決まらない」
この数字を「年収を気にするな」と読むのは誤りです。年収は生活に直結しますし、低すぎる提示を受け入れる理由はありません。ここで言いたいのは別のことで、年収は「足切り」には使えるが「選択」には使いにくいという点です。
足切りとは、「この金額を下回るなら受けない」という線を先に引いておくことです。これは有効です。一方、2社とも足切りラインを超えている場合、年収の差だけで決めようとすると、その差が本当に生活を変えるのかという問いに答えられず、手が止まります。月2万円の差は年24万円ですが、通勤が片道30分違えば年間で250時間ほどの差になります。どちらが重いかは、金額だけでは比べられません。
20代は「技能・能力が活かせるか」の比重が上がる
同じ調査を年齢階級別に見ると、若い層ほど「自分の技能・能力が活かせるから」を挙げる割合が高くなります。20代はまだ職務経験が短いため、次の会社で何を任されるかが、その後10年の選択肢の幅を決めます。この時期に「任される仕事の中身」を後回しにして条件だけで選ぶと、5年後に打てる手が減ります。
採用する側から見ても同じです。20代の候補者を見るとき、前職の年収はほとんど判断材料になりません。見ているのは「何を任されて、どこまで自分で回していたか」です。次の職場で何を任されるかは、年収よりも次の転職で効いてきます。
年収で比べると決まらない、構造的な理由
満足度が最も低い項目が「賃金」
同じ調査には、転職後の満足度を項目別に測った数字もあります。「満足」と答えた割合から「不満足」と答えた割合を引いた指数(D.I.)で見ると、次のようになります。
仕事内容・職種が60.5ポイントで最も高く、賃金は19.5ポイントで最も低い。職業生活全体では42.0ポイントです。賃金は、転職後にいちばん満足しにくい項目だということです。
なぜ賃金の満足度は上がりにくいのか
理由は比較の対象が変わり続けるからです。入社時に前職より30万円上がれば嬉しいのですが、1年も経てばそれが基準になり、次は同僚や同年代との比較が始まります。金額は他人と比べやすく、比べた瞬間に満足が目減りします。
一方、仕事の中身は他人と比べにくい性質を持っています。自分が面白いと思えるか、任された範囲を自分で回せているか、という自分基準の評価になりやすいため、満足が持続します。2社で迷ったとき、比較しやすい項目ほど、選んだあとに後悔を生みやすいという逆転が起きます。
それでも年収が重い場面はある
公平のために書いておくと、年収を最優先すべき場面もあります。奨学金の返済が重い、家族の医療費がある、数年以内に大きな支出が確定している。こうした場合、金額は生活の制約そのものなので、他の項目より重く扱うのが合理的です。
重要なのは、年収を重く見るなら「なぜ重いのか」を金額で説明できることです。「月5万円上がれば返済が2年早く終わる」のように具体化できるなら、それは立派な判断基準です。説明できないまま金額の大小だけを見ているなら、それは基準ではなく反射です。
比べられないものを同じ土俵に乗せる3ステップ
ステップ1:条件を「戻せるか」で2つに分ける
まず、2社で違っている条件をすべて書き出し、「あとから変えられるか」で仕分けます。年収は次の昇給や転職で変えられます。通勤時間は引っ越しで変えられます。一方、20代の3年間をどの仕事に使ったかは戻せません。任される業務の範囲も、入社後に自分で大きく変えるのは難しいのが実情です。
この仕分けをすると、多くの場合、比較項目の半分以上が「あとから変えられる」側に入ります。変えられる項目だけで迷っているなら、どちらを選んでも取り返しはつきます。決断の重さを自分で軽くできるので、まずここを確認してください。
ステップ2:戻せない項目だけを、同じ質問に翻訳する
戻せない項目は、そのままでは比べられません。そこで、すべてを同じ1つの質問に翻訳します。使う質問は「この会社で3年働いたあと、自分の職務経歴書に何が書けるか」です。
A社なら「既存顧客の深耕と、月次の売上管理」。B社なら「新規サービスの立ち上げに、要件定義から関わった」。このように、3年後の職務経歴書の1行に書き直すと、年収も通勤時間も出てこなくなり、残るのは経験の中身だけになります。ここで差がはっきり出るなら、それが選択の理由です。
書き方に詰まる場合は、次の3つの穴埋めを使ってください。「誰に対して(顧客の種類・社内の相手)」「何を(扱う商材・業務の範囲)」「どこまで自分で(提案まで/実行まで/数字の責任まで)」の3つです。職種別に当てはめると、次のようになります。
| 職種 | 薄い書き方(差が出ない) | 3つの穴埋めを使った書き方 |
|---|---|---|
| 営業 | 法人営業を担当 | 中小企業の経営者に対して、業務システムの入替提案を、初回接触から受注・導入後の定着まで一人で担当 |
| 事務・管理 | 経理業務全般 | 月次決算を、仕訳の入力から試算表の作成、税理士への説明まで担当。年次は補助 |
| 販売・接客 | 店舗スタッフ | 来店客への接客に加え、日次の在庫発注と、アルバイト5名のシフト作成・新人教育を担当 |
| 企画・管理部門 | 社内の企画業務 | 3部署にまたがる申請フローを、現場のヒアリングから設計・ツール選定・運用開始まで担当 |
右列のように書けるかどうかが、そのまま次の転職での評価につながります。2社の求人票と面接メモを見ながら、それぞれ右列の形で1行書いてみてください。片方が「誰に対して」しか埋まらず、もう片方は「どこまで自分で」まで埋まるなら、3年後の差はその通りに開きます。埋められない項目があるなら、それは面接で聞き漏らした点なので、承諾前に質問してください。
ステップ3:それでも並んだら、失う側で比べる
3年後の職務経歴書が同じくらい魅力的で決まらない場合は、比べる向きを逆にします。「A社を断ったとき、何を失うか」「B社を断ったとき、何を失うか」を書き出してください。
人は得るものより失うものに強く反応するため、こちらのほうが判断が速く出ます。書き出したときに、片方だけ「これは惜しい」と強く感じる項目があれば、そこが本当の優先順位です。得るもので迷ったら、失うもので決める。これは2社の比較に限らず、選択肢が並んだときに使える方法です。
3ステップを1枚にまとめた表
| ステップ | やること | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 1 仕分け | 違っている条件を「戻せる/戻せない」で分ける | 戻せる:年収、通勤、役職名/戻せない:任される業務、3年分の経験 |
| 2 翻訳 | 戻せない項目を「3年後の職務経歴書の1行」に書き直す | A社:既存顧客の深耕と月次の売上管理/B社:新規サービスの要件定義から関与 |
| 3 反転 | 並んだら「断ったときに失うもの」で比べる | A社を断つと失う:安定した顧客基盤での実績/B社を断つと失う:0から作る経験 |
内定承諾の期限は、たいてい交渉できる
「1週間以内」は会社側の希望であって、決まりではない
内定通知に承諾期限が書かれていると、それが動かせないものに見えます。ですが、期限は採用側が採用計画から逆算して置いた目安であって、法律で決まった日数ではありません。もう1社の選考結果を待ちたい、という理由での延長は、採用の現場では日常的に起きています。
採用する側の立場で言えば、迷っている候補者に無理やり承諾させても、入社後に早期離職されるほうが損失は大きくなります。だから多くの場合、数日から2週間程度の延長には応じます。応じられない場合も、その理由(他候補との兼ね合い、配属先の都合)を説明してもらえるはずです。
延長を頼むときの伝え方
頼み方には順序があります。避けたいのは「他社と迷っています」とだけ伝えることで、これは相手に「第一志望ではない」という情報だけを渡してしまいます。次の3点をこの順で伝えてください。
- 入社意欲があることを先に言う(お世辞ではなく、具体的にどこに惹かれたかを1つ挙げる)
- いつまで待ってほしいかを日付で言う(「もう少し」ではなく、具体的な年月日で区切る)
- その日までに何が確定するかを言う(「もう1社の最終面接の結果が出るため」)
3点を揃えると、相手は「自社に来る可能性が高い候補者が、期日を切って調整しようとしている」と受け取ります。日付と理由がない依頼は、単に決めきれていないという印象になります。
実際の文面は、これくらいの長さで足ります。
内定のご連絡をいただき、ありがとうございます。先日お伺いした、入社後に新サービスの立ち上げに要件定義から関わらせていただけるという点に、強く惹かれております。
大変恐縮ですが、ご返答の期限を1週間後まで延ばしていただくことは可能でしょうか。現在選考が進んでいる他社の最終面接の結果が来週前半に出る予定です。両社を比較したうえで、責任を持ってお返事したいと考えております。
ご事情があれば遠慮なくお知らせください。よろしくお願いいたします。
ポイントは、惹かれた点を具体的に1つだけ挙げること、日付を2つ(回答日と、他社の結果が出る日)書くことです。他社名は書く必要がありません。「ご事情があれば遠慮なく」の一文を入れておくと、延長できない場合に相手が理由を言いやすくなり、その理由自体が判断材料になります。
電話で伝える場合も内容は同じですが、その場で口頭のやり取りだけにせず、通話後にメールで同じ内容を送ってください。期限の変更は、あとで双方の記憶が食い違いやすい項目です。
転職活動の期間は、思ったより短い
同じ厚生労働省の調査では、転職活動を始めてから前の勤め先を離職するまでの期間が集計されています。「1か月以上3か月未満」が28.8%で最も多く、「転職活動期間なし」が23.6%、「1か月未満」が18.3%、「3か月以上6か月未満」が15.7%です。
つまり全体の7割前後が3か月以内に決着しているということです。内定が出てから数日延ばすことは、この全体像の中では誤差の範囲です。焦って決めるより、期日を切って比べたほうが、結果的に早く終わります。
直感を使ってよい場面と、使ってはいけない場面
使ってよいのは「情報が出揃ったあと」だけ
「最後は直感」という助言をよく見かけます。これは半分正しく、条件がひとつ付きます。直感が働くのは、判断材料が出揃ったあとだけです。両社の面接を終え、任される業務を聞き、働く人に会った状態で残る「なんとなくこちら」は、言語化されていないだけで根拠のある反応です。
逆に、片方の会社の情報がまだ薄い段階で感じる「なんとなく不安」は、直感ではなく情報不足です。この2つは本人にはよく似て感じられます。見分け方は簡単で、その感覚の理由を3つ挙げられるかどうかです。挙げられないなら、まだ聞くべきことが残っています。
使ってはいけないのは「面接官の印象」だけで決めるとき
面接で会った人の感じがよかった、という理由は要注意です。面接官が配属先の上司とは限らず、入社後に日常的に接する相手でないことも多いためです。印象を判断材料にするなら、会った人がその後どう関わるのかを確認してからにしてください。
確認の仕方は単純で、「配属予定の部署の方とお話しする機会はいただけますか」と聞くだけです。断られることはほとんどありませんし、この依頼自体が入社意欲の表明になります。断られた場合、その理由は判断材料になります。
迷いが消えないまま決めてよい
最後にひとつ。両社を十分に見て、3ステップで比べ、それでも5割5分対4割5分くらいの差しかつかないことはよくあります。そのときは、迷いが残ったまま決めてかまいません。差が小さいということは、どちらを選んでも大きくは外さないということだからです。
完全に納得してから決めようとすると、期限までに決まりません。納得とは迷いがゼロになることではなく、自分がどの基準で決めたかを説明できる状態のことです。基準が言えるなら、それは納得した決断です。
引き止めが来たときの扱い方
カウンターオファーは「別の内定」として扱う
退職を伝えたら、現職から条件を上げる提案が来ることがあります。これを「引き止め」として感情で処理すると判断を誤ります。提示された条件は、実質的にもう1つの内定です。3社目の内定が出たと考えて、同じ3ステップで比べてください。
比べるときに確認すべきなのは、提示が口頭か書面か、いつから適用されるか、そして「あなたが辞めると言わなければその条件は出ていたのか」という点です。3つ目は口に出す必要はありませんが、自分の中では答えを出しておいてください。
辞める理由が条件でなかったなら、条件では解決しない
引き止めで年収が上がっても、転職を考えた理由が「任される仕事の幅」や「意思決定の遅さ」だった場合、その理由は何も変わっていません。数か月後に同じ不満が戻ってきます。
逆に、辞める理由が本当に金額だけだったなら、引き止めを受け入れるのは合理的な選択です。自分が最初に書き出した「辞めたい理由」を見返して、提示された条件がそれを解決しているかだけを見てください。解決していないなら、金額が上がっても答えは変わりません。
決める前の最終チェック
労働条件通知書で確認する5項目
承諾の返事をする前に、書面で確認しておく項目があります。口頭の説明と書面が食い違うことは実際にあり、入社後に「聞いていた話と違う」となる原因の多くはここです。
| 確認する項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 賃金の内訳 | 提示額に固定残業代が含まれるか。含まれるなら何時間分か。超えた分は別途支払われるか |
| 就業場所と業務内容 | 配属先が確定しているか、入社後に決まるのか。「変更の範囲」の記載も見る |
| 労働時間 | 始業・終業時刻、休憩、所定外労働の有無。裁量労働制やみなし残業の適用があるか |
| 試用期間 | 期間の長さと、その間の賃金・条件が本採用後と違うか |
| 契約期間 | 期間の定めがあるか。ある場合は更新の有無と判断基準 |
これらは労働条件の明示として書面などで示されるべき事項です。内定段階でまだ受け取っていない場合は、「労働条件通知書をいただけますか」と依頼してかまいません。依頼して嫌がられる会社は、その反応自体が判断材料になります。
固定残業代は、割り戻して時給で比べる
5項目のうち、2社の比較でいちばん差が出るのが賃金の内訳です。月給が同じでも、固定残業代が含まれているかどうかで実質は大きく変わります。次の計算で揃えてください。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 月給の提示額 | 30万円 | 28万円 |
| 固定残業代 | 含む(30時間分・6万円) | 含まない |
| 基本給にあたる部分 | 24万円 | 28万円 |
| 想定される月の労働時間 | 160時間+30時間=190時間 | 160時間 |
| 1時間あたり | 約1,579円 | 約1,750円 |
提示額ではA社が2万円高いのに、時間で割り戻すとB社のほうが1時間あたり170円ほど高くなります。固定残業代は「その時間まで働く前提」で設計された金額なので、時間を含めて比べないと実態が見えません。
確認すべきは3点です。何時間分が含まれるか、超えた分は別途支払われると書いてあるか、その時間を実際に使っている人が多いか。3つ目は面接で「固定残業代の時間分は、実際どのくらい使われていますか」と聞けば答えが返ってきます。ほとんど使っていないという回答なら、実質的にその分が上乗せされている状態です。
断る側の連絡は早く、短く
1社に決めたら、もう1社へはその日のうちに連絡します。理由を長く説明する必要はありません。検討した結果、他社に決めたこと、時間をもらった礼、この2点で足ります。
断り方を丁寧にしておく実利もあります。数年後に同じ会社や同じ担当者と関わる可能性は、思っているより高いものです。断る場面の振る舞いは、選考中のどの場面より記憶に残ります。
まとめ
- 転職した人が現在の勤め先を選んだ理由は、1位が「仕事の内容・職種」41.0%、「賃金が高いから」は10項目中7位の12.2%(厚生労働省 令和2年転職者実態調査)
- 転職後の満足度は「仕事内容・職種」が60.5ポイントで最高、「賃金」が19.5ポイントで最低。年収は足切りに使い、選択は仕事の中身で行う
- 比べられないものは3ステップで揃える。①戻せる/戻せないで仕分ける ②戻せない項目を「3年後の職務経歴書の1行」に翻訳する ③並んだら「断って失うもの」で比べる
- 承諾期限は交渉できる。入社意欲・日付・その日までに確定することの3点をこの順で伝える
- 転職活動は7割前後が3か月以内に決着している。数日の延長は誤差の範囲
- 直感が使えるのは情報が出揃ったあとだけ。理由を3つ挙げられないなら、それは情報不足
- 引き止めは3つ目の内定として同じ手順で比べる。辞めたい理由が条件でなかったなら、条件では解決しない
- 承諾前に労働条件通知書で5項目(賃金の内訳・就業場所と業務・労働時間・試用期間・契約期間)を確認する
- 固定残業代が含まれる提示は、労働時間で割り戻して1時間あたりで比べる。提示額が高いほうが実質は低いことがある
よくある質問(FAQ)
内定を2つもらいましたが、どちらも決め手に欠けます。どうすればいいですか。
決め手が出ないのは、比較項目の大半が「あとから変えられるもの」だからである可能性が高いです。年収・通勤・役職名を一度すべて外し、「この会社で3年働いたら職務経歴書に何が書けるか」だけで比べてみてください。それでも並ぶなら、どちらを選んでも大きくは外しません。断ったときに失うもので比べて、惜しいと感じた側を選んでください。
年収が50万円違います。それでも仕事の中身で選ぶべきですか。
50万円の差が生活の何を変えるかを、具体的に書けるかどうかで判断してください。返済が何年早く終わる、家賃をいくら上げられる、と書けるなら、それは正当な判断基準です。書けないまま「高いほうがいい」と感じているだけなら、統計上は満足度がいちばん上がりにくい項目を基準にしていることになります。
承諾期限の延長を頼むと、内定を取り消されませんか。
延長の依頼だけを理由に内定が取り消されることは、通常ありません。採用する側にとっても、迷ったまま入社されて早期に辞められるほうが損失が大きいためです。依頼するときは、入社意欲を先に伝え、いつまで待ってほしいかを日付で示し、その日までに何が確定するかを添えてください。この3点があれば、多くの場合は調整されます。
現職から引き止められて、年収を上げると言われました。残るべきですか。
まず、自分が最初に書き出した「辞めたい理由」を見返してください。理由が金額だったなら、提示を受け入れるのは合理的です。理由が仕事の幅や意思決定の遅さだったなら、金額が上がっても数か月後に同じ不満が戻ります。提示が口頭か書面か、いつから適用されるかも確認してください。
面接官の印象がよかったほうを選ぶのは間違いですか。
間違いではありませんが、その人が入社後にどう関わるかを確認してからにしてください。面接官が配属先の上司とは限りません。「配属予定の部署の方とお話しする機会をいただけますか」と依頼すれば、多くの場合は設定されます。依頼が断られた場合は、その理由自体が判断材料になります。
迷ったまま承諾しても大丈夫でしょうか。
十分に情報を集めたうえで差が小さいなら、迷いが残ったまま決めて問題ありません。差が小さいということは、どちらでも大きくは外さないという意味だからです。納得とは迷いがゼロになることではなく、自分がどの基準で決めたかを説明できる状態を指します。基準が言えるなら、それは納得した決断です。
転職は、人生の経営判断です
会社を選ぶのではなく、「自分」という会社の次の一手を決める。条件の大小ではなく、3年後に何が書けるかで選んだ決断だけが、次の選択肢を広げます。まずは2社の条件を「戻せる・戻せない」で仕分けるところから始めてください。
出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(表19・表21-1・表21-2・表22)