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業務委託の報酬から10.21%引かれる人と、引かれない人がいます|源泉徴収を条文で切り分ける

カフェのような場所でノートパソコンに向かって作業している人

業務委託で3万円の仕事をした。入金を見たら、26,937円だった。

差額の3,063円は何なのか。請求書には書いていない。相手に聞くのも気が引ける。

逆のパターンもあります。同じように業務委託で受けているのに、こちらは満額振り込まれている。同じ働き方なのに、どうして扱いが違うのか。

この記事では、所得税法204条と205条、それと施行令320条を読んで、引かれる場合と引かれない場合の線を引きます。

先に言っておくと、分かれ目は「正社員かフリーランスか」でも「契約書の名前」でもありません。仕事の種類と、払う側が誰か。この2つです。

引かれるかどうかは、2つの関門で決まります

最初に全体の形を押さえます。源泉徴収されるかどうかは、2つの関門を両方とも通ったときだけ「される」になります。

関門1 その報酬は、所得税法204条1項が挙げている8つの種類に入っているか。
関門2 その報酬を払う側は、源泉徴収をしなければならない立場の人か。

関門1で外れれば、引かれません。関門1を通っても、関門2で外れればやはり引かれない、という形です。

「業務委託だから引かれる」という決まりは、どこにも書かれていませんでした。むしろ逆で、引かれるのは限られた種類の報酬だけです。

順番に見ていきます。

関門1:所得税法204条の列挙に入っているか

クリップボードに挟んだ請求書の用紙にペンで記入しようとしている手元

出発点は所得税法第204条第1項です。

「居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。」

「次に掲げる」という書き方に注目してください。ここから先は、列挙です。挙げられていないものは入りません。

8つの号を、副業で関係しそうなものに絞って並べます。

号 中身(条文の言葉)
1号 原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み又はデザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む。)又は工業所有権の使用料及び講演料並びにこれらに類するもので政令で定める報酬又は料金
2号 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるもの
4号 職業野球の選手、職業拳闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人その他これらに類する者で政令で定めるもの
5号 映画、演劇その他政令で定める芸能又はラジオ放送若しくはテレビジョン放送に係る出演若しくは演出又は企画の報酬又は料金
6号 キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設で接待を業務とするホステスその他の者の報酬又は料金
7号・8号 役務の提供を約することにより一時に取得する契約金/広告宣伝のための賞金、馬主が受ける競馬の賞金

(3号は診療報酬なので省きました。)

ここで一度、自分の仕事を当てはめてみてください。

記事を書いて納品している → 1号の「原稿」です。入ります。
バナーやサムネイルを作っている → 1号の「デザインの報酬」に当たり得ます。
セミナーで話して謝礼を受け取った → 1号の「講演料」です。

一方、プログラミング、動画編集、ウェブサイトの制作、事務代行、データ入力、カスタマーサポート。こうした言葉は、204条1項の各号に出てきません。次の章で見る施行令にも、やはり見当たりませんでした。

ただし、名前ではなく中身で判断されるという点には注意が必要です。国税庁は「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」でこう書いています。

「謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になります。」

請求書に何と書いたかではなく、何をした対価かで見る、ということです。

1号の範囲は、施行令320条まで見ないと分かりません

204条1項1号の末尾に「これらに類するもので政令で定める報酬又は料金」とあります。この政令が所得税法施行令第320条です。第1項を読みます。

「法第二百四条第一項第一号に規定する政令で定める報酬又は料金は、テープ若しくはワイヤーの吹込み、脚本、脚色、翻訳、通訳、校正、書籍の装てい、速記、版下(…)若しくは雑誌、広告その他の印刷物に掲載するための写真の報酬若しくは料金、技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるものの使用料、技芸、スポーツその他これらに類するものの教授若しくは指導若しくは知識の教授の報酬若しくは料金又は金融商品取引法第二十八条第六項に規定する投資助言業務に係る報酬若しくは料金とする。」

副業で出てきそうなものを拾い出すと、こうなります。

  • 翻訳・通訳・校正 … 入っています
  • 雑誌や広告など、印刷物に掲載するための写真 … 入っています
  • 技芸・スポーツの教授や指導、知識の教授 … 入っています(レッスン、家庭教師、各種の講座など)
  • 脚本・脚色・速記 … 入っています

逆に、ここにも「プログラミング」「動画編集」「ウェブ制作」「事務代行」は出てきません。

この記事で言えるのは「条文と政令の言葉の中に、それらの名前は見当たらない」ということまでです。

個別の仕事が「デザインの報酬」や「原稿」に当たるかどうかは、中身で判断されます。自分のケースで迷ったら、支払う側がどう扱っているかを聞くか、税務署に確認してください。この記事で線を引き切ることはできません。

なお1号には「著作権(著作隣接権を含む。)の使用料」も入っています。買い切りの制作費ではなく、作ったものの利用に対して継続的に支払われる形なら、こちらに当たることがあります。

関門2:払う側が誰か

ここが、見落とされやすいところです。

関門1を通っていても、払う側によっては源泉徴収されません。根拠は204条2項2号です。

「前項の規定は、次に掲げるものについては、適用しない。
二 前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの」

条文のままだと読みにくいので、国税庁の「報酬・料金等の源泉徴収義務者」の説明を引きます。

「ただし、その報酬・料金等の支払者が個人であって、その個人が給与等の支払者でないときまたは給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに対する給与の支払者であるときは、ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はありません。」

整理すると、こうなります。

払う側 関門2を通るか
会社(法人) 通る。源泉徴収の対象になる
個人事業主で、人を雇って給与を払っている 通る。源泉徴収の対象になる
個人で、給与を払っていない 通らない。源泉徴収しなくてよい(ホステス等への支払いを除く)

同じ原稿料でも、会社から受ければ引かれ、ひとりで活動している個人から直接受ければ引かれない。働き方は同じなのに扱いが変わるのは、ここが理由です。

国税庁は、同じページで念を押しています。「給与等(青色専従者給与を含みます。)の支払がある個人は、たとえその給与等について納付すべき税額がない場合であっても、源泉徴収の対象となる報酬・料金等を支払う際に、所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません」。

10.21%という数字は、どこから出てくるのか

ここは検索でもよく調べられているところです。「10.21」という半端な数字の根拠を、2本の法律に分けて説明します。

まず所得税法第205条第1号。

「その金額に百分の十(同一人に対し一回に支払われる金額が百万円を超える場合には、その超える部分の金額については、百分の二十)の税率を乗じて計算した金額」

所得税としては10%です。20%ではありません。

そこに、もう1本が重なります。東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(復興財確法)の第28条第2項です。

「前項の規定により徴収すべき復興特別所得税の額は、……所得税に関する法令の規定により徴収して納付すべき所得税の額……に百分の二・一の税率を乗じて計算した金額とする。」

所得税の額に2.1%を掛けたものが、上乗せされます。

10% × 1.021 = 10.21%。これが数字の正体です。

同法第9条により、この復興特別所得税は「平成二十五年から令和十九年までの各年分の所得税に係る基準所得税額」に課されるものとされています。期間の決まった上乗せ、ということです。

なお、国税庁のページには「令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税」という書き方が出てきます。今後、上乗せの種類が増えることが案内されています。数字が変わる可能性があるので、実際の計算のときは国税庁のページで最新の率を確認してください。

100万円を超える部分は20.42%

205条第1号には括弧書きがありました。「同一人に対し一回に支払われる金額が百万円を超える場合には、その超える部分の金額については、百分の二十」。

全体が20%になるのではありません。超えた部分だけが20%(上乗せ後は20.42%)になります。

国税庁の「原稿料や講演料等を支払ったとき」が、式と例を示しています。

支払金額(=A) 税額
100万円以下 A × 10.21%
100万円超 (A − 100万円)× 20.42% + 102,100円

同じページの例がそのまま分かりやすいので、図にしました。150万円の原稿料を1回で支払う場合です。

税率は報酬の全体にかかるのではなく、層ごとにかかります 例:150万円の報酬を1回で支払う場合 100万円を超える部分 50万円 100万円以下の部分 100万円 ×20.42% 102,100円 ×10.21% 102,100円 源泉徴収される額の合計 204,200円 1円未満の端数は切り捨て。出典:所得税法205条、復興財確法28条、国税庁No.2795

「同一人に対し一回に支払われる金額」なので、見るのは1回の支払いです。年間の合計ではありません。月に30万円ずつ受けている人は、毎回10.21%のほうで計算されます。

何に対して掛けるのか(消費税・交通費・端数)

率が分かっても、何に掛けるかで答えが変わります。3つ押さえておきます。

消費税

国税庁の同じページに書かれています。

「報酬・料金等の額の中に消費税および地方消費税の額が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象としますが、請求書等において報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。」

請求書の書き方で、引かれる額が変わります。3万円の仕事で考えてみます。

  • 「33,000円(税込)」とだけ書いた場合 … 33,000円 × 10.21% = 3,369円
  • 「報酬 30,000円/消費税 3,000円」と分けて書いた場合 … 30,000円 × 10.21% = 3,063円

差は306円です。1件なら小さいですが、件数が増えれば効いてきます。請求書では、報酬と消費税を分けて書いておくほうが有利です。

なお国税庁は、この取扱いについて「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始後も、上記の取扱いは変更ありません」と注記しています。

交通費・宿泊費

こちらについても、同じページに記載がありました。

「旅費や宿泊費などの支払も原則的には報酬・料金等に含まれます。しかし、通常必要な範囲の金額で、報酬・料金等の支払者が直接ホテルや旅行会社等に支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。」

自分で立て替えて請求すると源泉徴収の対象に入り、先方が直接手配して払えば入らない。手配のしかたの違いです。

端数

「求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます」とされています。先ほどの3,369円(33,000 × 0.1021 = 3,369.3)は、切り捨てて3,369円です。

ついでに2つ

国税庁は、原稿料について「懸賞応募作品などの入選者に対する賞金や新聞、雑誌などの投稿欄への投稿の謝金などは、原則として原稿料に含まれますが、一人に対して支払う賞金や謝金の金額が、1回50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよい」としています。

また「原稿料には、試験問題の出題料や答案の採点料などは含まれません」という一文も添えられていました。

引かれた分は、どこへ行くのか

机の上に重ねられた領収書や書類、ペンとクリップ

引かれた10.21%は、取られっぱなしではありません。

204条1項は「所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない」としています。あなたの所得税として、先に納められているわけです。

そして所得税法第120条第1項第4号が、確定申告での扱いを決めています。

「……各種所得につき源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額……がある場合には、前号に掲げる所得税の額からその源泉徴収税額を控除した金額」

その年の所得税を計算し、そこから「すでに引かれていた分」を差し引く。引かれすぎていれば戻り、足りなければ足して納める。確定申告は、精算の場ということです。

ここで大事なのは、引かれているから申告しなくていい、ではないという点です。10.21%は仮の前払いで、本当の税額は所得と控除から決まるものです。経費が多ければ、戻ってくる可能性が高くなります。

副業の確定申告がいくらから必要かについては、副業の確定申告、20万円ルールって結局どういうこと?で整理しています。所得の区分については副業の所得は「事業所得」と「雑所得」のどっち?をどうぞ。

「源泉徴収票をください」と言っても出てこない理由

確定申告の時期に、こう言われることがあります。「業務委託なので源泉徴収票は出せません」。

これは意地悪ではなく、条文どおりです。

所得税法第226条第1項を読みます。

「居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等……の支払をする者は、……源泉徴収票二通を作成し、……一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。」

交付の義務があるのは給与等についてです。2項が退職手当等、3項が公的年金等。報酬・料金(204条1項)は、226条のどこにも出てきません。

では、報酬についての書類は何か。所得税法第225条第1項第3号です。

「居住者又は内国法人に対し国内において第二百四条第一項各号……に掲げる報酬、料金、契約金若しくは賞金……につき支払をする者」は、調書を「翌年一月三十一日まで……に、税務署長に提出しなければならない。」

支払調書です。そして条文が書いているのは、税務署長への提出であって、本人への交付ではありません。

国税庁の「『報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書』の提出範囲と提出枚数等」も、提出先を所轄税務署としたうえで、本人に渡す場合については「支払調書の写しを受給者に交付する場合には、マイナンバーを記載して交付することはできませんので、ご注意ください」という条件つきの書き方をしています。

つまり、支払調書が手元に来ないことは、ふつうに起こり得ます。来ないからといって、申告できないわけではありません。確定申告で必要なのは、1年間に受け取った金額と、引かれた源泉徴収税額です。自分の記録から積み上げられます。

記録のつけ方は次の章に書きます。

引かれていないとき、引かれすぎているとき

2つのケースに分けます。

引かれていないとき

まず、2つの関門を思い出してください。引かれていない理由は、たいてい次のどれかです。

  • 関門1で外れている(列挙にない種類の仕事)
  • 関門2で外れている(払う側が、給与を払っていない個人)
  • 支払う側が源泉徴収を失念している

前の2つなら、引かれないのが正しい扱いです。その場合、所得税は確定申告でまとめて納めることになります。引かれていない分だけ、申告のときの納付額は大きくなるはずです。手元にあるお金を全部使ってしまわないよう、気をつけてください。

3つめの場合は、本来は支払う側の義務です。こちらから指摘するかどうかは状況によりますが、いずれにしても自分の申告では「実際に引かれた額」で計算します。

引かれすぎているとき

計算のしかたで多く引かれているケースもあります。よくあるのは、消費税込みの金額に10.21%を掛けられている場合です。第7章のとおり、請求書で報酬と消費税を明確に区分していれば、報酬の額だけを対象にして差し支えないとされています。

次の請求から分けて書く、というのが現実的な対応です。過去の分については、確定申告で精算されるので、最終的な税額としては調整されます。

どちらの場合も、記録を残す

確定申告で必要になるのは、次の3つです。

  • 入金日
  • 支払われた金額(源泉徴収される前の、請求額)
  • 引かれた源泉徴収税額

振込の入金額だけを記録していると、「引かれる前の金額」が後から分からなくなります。請求書の控えと振込の記録を、セットで残してください。

契約前と入金後に確かめること

実際に動く手順です。

契約の前(5分)

1. 自分の仕事が列挙に入るかを見る。
204条1項の各号と施行令320条1項を開いて、自分の仕事に近い言葉があるかを探します。原稿、デザイン、講演、翻訳、通訳、校正、印刷物用の写真、技芸・知識の教授。このあたりが副業で当たりやすいところです。

2. 相手が法人か個人かを見る。
法人なら関門2は通ります。個人なら、源泉徴収されない可能性がある、ということです。契約書や請求先の名義を見れば分かります。

3. 見積りの段階で聞いておく。
「源泉徴収の対象になりますか」と一言確認しておくと、入金額の予想がずれません。聞きにくければ「お振込は源泉徴収後の金額になりますか」でも同じことです。

請求書を書くとき(3分)

4. 報酬と消費税を分けて書く。
「報酬 30,000円/消費税 3,000円/合計 33,000円」。これだけで、源泉徴収の対象を報酬部分にできる余地が生まれます。

5. 源泉徴収税額の欄を自分で書いておく。
「源泉徴収税額 3,063円/お振込額 29,937円」まで書いておくと、相手の計算間違いが起きにくくなります。

入金を見たとき(2分)

6. 差額を計算して確かめる。
請求額と入金額の差を出し、請求額(または報酬部分)の10.21%と一致するかを見ます。合わなければ、消費税込みで計算されているか、別の控除(振込手数料など)が混ざっています。

7. 1行ずつ記録する。
日付・相手・請求額・源泉徴収税額・入金額。表計算ソフトでもノートでもかまいません。1年分たまれば、それが申告の材料になります。

まとめ

もう一度、全体の形です。引かれるかどうかは、2つの関門で決まりました。

関門1は、所得税法204条1項の列挙に入っているか。原稿、デザイン、講演、士業の報酬、モデルや外交員、芸能、ホステス等、契約金、広告宣伝の賞金。施行令320条1項が、ここに翻訳・通訳・校正・印刷物用の写真・技芸や知識の教授などを加えています。プログラミングや動画編集といった言葉は、条文にも政令にも出てきません。

関門2は、払う側が誰か。国税庁は「支払者が個人であって、その個人が給与等の支払者でないとき」などは「源泉徴収する必要はありません」としています。法人からの依頼では引かれ、給与を払っていない個人からの依頼では引かれない。同じ仕事でも扱いが変わります。

率は10.21%。所得税法205条の10%に、復興財確法28条2項の2.1%が乗った結果です。100万円を超える部分は20.42%になりますが、超えた部分だけです。

掛ける相手にも決まりがあります。請求書で報酬と消費税が明確に区分されていれば、報酬の額のみを対象として差し支えない。旅費・宿泊費は原則含みますが、支払者が直接ホテル等に払った分は含めなくてよい。端数は1円未満を切り捨てます。

引かれた分は、所得税法120条1項4号により、確定申告で精算されます。前払いなので、申告が要らなくなるわけではありません。

源泉徴収票のほうは、所得税法226条により給与等について交付される書類でした。報酬には出ません。報酬については225条の支払調書がありますが、条文が定めているのは税務署長への提出です。手元に来ないことは起こり得ます。

だから、記録は自分で残す。請求額・源泉徴収税額・入金額を1行ずつ。これが結局いちばん効きます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 業務委託なら必ず源泉徴収されるのですか?

されません。所得税法204条1項は「次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金」と書いたうえで8つの号を挙げており、列挙に入るものだけが対象です。契約の名前が業務委託かどうかは関係ありません。さらに同条2項2号により、支払う側が個人で給与等の支払者でない場合などは対象外になります。国税庁も「支払者が個人であって、その個人が給与等の支払者でないときまたは給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに対する給与の支払者であるときは、ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除き、源泉徴収する必要はありません」としています。

Q2. 10.21%という数字の根拠はどこですか?

2本の法律が重なった結果です。所得税法205条第1号が「その金額に百分の十(同一人に対し一回に支払われる金額が百万円を超える場合には、その超える部分の金額については、百分の二十)の税率を乗じて計算した金額」としており、所得税としては10%です。そこに復興財確法28条2項が「徴収して納付すべき所得税の額に百分の二・一の税率を乗じて計算した金額」を上乗せします。10%×1.021で10.21%。100万円を超える部分は20%×1.021で20.42%になります。なお国税庁のページには「令和9年分以後は所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税」という記載があり、今後の変更が案内されています。

Q3. プログラミングや動画編集の報酬は対象になりますか?

所得税法204条1項の各号にも、施行令320条にも、これらの言葉は出てきません。この記事で言えるのはそこまでです。ただし国税庁は「謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になります」としており、判断は名目ではなく中身で行われます。たとえば制作物のデザイン部分が中心なら1号の「デザインの報酬」に当たり得ますし、著作物の利用に対して継続的に支払われる形なら「著作権の使用料」に当たり得ます。自分のケースで迷ったら、支払う側の扱いを聞くか、税務署に確認してください。

Q4. 同じ仕事なのに、引かれる取引先と引かれない取引先があります。

払う側の違いで起こります。所得税法204条2項2号は、1号から5号まで・7号・8号の報酬について、「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの」には源泉徴収の規定を適用しないとしています。法人からの支払いは対象になり、人を雇っていない個人からの支払いは対象外になる、という仕組みです。国税庁も同じ内容を平易に説明しています。どちらかが間違っているとは限りません。

Q5. 消費税込みの金額から引かれているのですが、これで合っていますか?

原則としては合っています。国税庁は「報酬・料金等の額の中に消費税および地方消費税の額が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象とします」としています。ただし続きがあり、「請求書等において報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません」とされています。次の請求書から報酬と消費税を分けて書いておくと、対象を報酬部分にできる余地が生まれます。なおこの取扱いは、インボイス制度の開始後も変更ないと注記されています。

Q6. 交通費を立て替えて請求しました。これも源泉徴収されますか?

原則として対象に入ります。国税庁は「旅費や宿泊費などの支払も原則的には報酬・料金等に含まれます」としています。ただし例外があり、「通常必要な範囲の金額で、報酬・料金等の支払者が直接ホテルや旅行会社等に支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています」。つまり、自分で立て替えて請求すると対象に入り、先方が直接手配して支払えば入りません。頻繁に遠方へ行く仕事なら、手配のしかたを相談してみる価値があります。

Q7. 源泉徴収票をもらえないと言われました。確定申告できますか?

できます。所得税法226条1項が交付を義務づけているのは給与等についてで、2項が退職手当等、3項が公的年金等です。204条1項の報酬・料金は、226条に出てきません。報酬については225条1項3号の支払調書がありますが、条文が定めているのは翌年1月31日までの税務署長への提出で、本人への交付ではありません。国税庁のページも、本人に渡す場合を「写しを受給者に交付する場合には」という条件つきで書いています。申告に必要なのは受け取った金額と引かれた源泉徴収税額なので、請求書の控えと振込の記録から積み上げてください。

Q8. 源泉徴収されているなら、確定申告はしなくていいのでは?

そうはなりません。10.21%は、その年の税額が確定する前に差し引かれている前払いです。所得税法120条1項4号は、確定申告で計算した所得税の額から「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」を控除すると定めています。つまり申告の場で精算されます。経費が多ければ払いすぎになっていて戻ることもありますし、他の所得と合わせた結果、足りずに納めることもあります。申告が必要かどうかの判断は別の話なので、20万円ルールの記事とあわせて確認してください。

Q9. 100万円を超える仕事を受けたら、全額が20.42%になりますか?

なりません。所得税法205条第1号の括弧書きは「同一人に対し一回に支払われる金額が百万円を超える場合には、その超える部分の金額については、百分の二十」としており、超えた部分だけが高い率になります。国税庁の式は「(A − 100万円)× 20.42% + 102,100円」。150万円なら、(150万円 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 204,200円です。また、見るのは「一回に支払われる金額」なので、年間の合計ではありません。月30万円ずつ受けている場合は、毎回10.21%のほうで計算されます。

Q10. 端数はどう処理されますか?計算が1円合いません。

国税庁は「求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます」としています。たとえば33,000円に10.21%を掛けると3,369.3円になりますが、切り捨てて3,369円です。それでも合わない場合は、消費税込みで計算されているか(報酬のみなら金額が変わります)、振込手数料が別途差し引かれているかを疑ってください。請求額・源泉徴収税額・振込手数料・入金額を1行に並べて書き出すと、どこで差が出ているかが見えます。

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