
「睡眠の質を上げる」で検索すると、枕、マットレス、サプリ、アプリの話がまず出てきます。どれも間違いではありませんが、順番が逆です。お金をかける前にやることがあって、そこを飛ばして寝具を買い替えても、思ったほど変わらないことが多い。
この記事では、厚生労働省が2024年2月に公表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」に書かれている内容だけを使って、睡眠の質を上げる方法を「お金のかからない順」に並べ直しました。0円でできること、数百円から数千円でできること、そのあとにお金をかけるなら何か。この順番で試せば、無駄な出費をせずに、自分に効くものだけが残ります。
特定の商品をすすめる記事ではありません。数字はすべて、2026年9月7日時点で厚生労働省の公式資料を確認したものです。
なぜ睡眠を「資産」として扱うのか
このメディアでは、睡眠を「見えない資産」の最初の項目に置いています。理由は単純で、20代のうちに一番安く手に入って、一番長く効く資産だからです。
20〜50代の35〜50%が、6時間も眠れていない
厚生労働省の睡眠ガイド2023は、令和元年の国民健康・栄養調査の結果として、働く世代である20〜59歳の各年代で、睡眠時間が6時間未満の人が約35〜50%を占めること、5時間未満に限っても約5〜12%いることを挙げています。
つまり、20代の3人に1人以上は、後述する「最低ライン」を下回っています。周りの同僚も同じように寝不足なので、「そういうものだ」と思いやすいのですが、これは平均が低いだけで、基準が低いわけではありません。
睡眠不足は、体にも仕事にも「利息」がつく
同じガイドは、睡眠時間が極端に短いと、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクが高まることが近年の研究で明らかになってきている、と書いています。日本人の男性労働者を対象にした追跡調査も紹介されていて、睡眠時間が1日6時間未満の人は、7時間以上8時間未満の人と比べて、心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患の発症リスクが4.95倍だったとされています。
これは「将来の話」に聞こえますが、短期でも効いています。ガイドの冒頭には、睡眠不足が日中の眠気や疲労に加えて、注意力や判断力の低下に関連する作業効率の低下を招くと書かれています。20代のうちに身につけたいスキルや経験は、起きている時間の集中力で決まります。睡眠を削って作った時間は、その集中力を削って払っているようなものです。
「寝だめ」では返済できない
平日に削った分を休日に取り戻す「寝だめ」について、ガイドははっきり書いています。眠りを「ためる」ことはできず、休日の起床時刻が大きく遅れると、時差ボケと同じ状態(社会的時差ボケ)になって健康を損なう危険がある、と。休日に長時間の睡眠が必要なら、それは平日の睡眠が足りていないサインです。
資産にたとえるなら、寝だめは「借金の利息だけを週末にまとめて払っている」状態です。元本は減りません。だから、平日の睡眠時間そのものを守る設計が必要になります。
先に基準を知る:6時間以上、そして「睡眠休養感」
何かを整える前に、目標の数字を知っておきます。ガイドが成人に示している基準は2つです。
量:6時間以上を目安に、7時間前後がいちばんリスクが低い
ガイドは、成人ではおおよそ6〜8時間が適正な睡眠時間と考えられ、1日の睡眠時間を少なくとも6時間以上確保するよう努めることを推奨しています。また、複数の調査研究から、7時間前後の睡眠時間の人が生活習慣病やうつ病の発症、死亡に至るリスクが最も低い、とも書かれています。
個人差はあります。ガイドも、6時間未満で足りる人も8時間以上必要な人もいると明記していて、日中の眠気や休養感に応じて自分に必要な時間を探る必要がある、としています。ただ、脳波を使った研究では25歳で夜間に実際に眠れる時間は約7時間とされていて、20代なら「7時間眠れる設計」を基準に置くのが妥当です。
質:「睡眠休養感」があるかどうか
ガイドが量と並べて重視しているのが「睡眠休養感」、つまり睡眠で休養がとれている感覚です。睡眠時間が量の指標なら、睡眠休養感は質の指標だと定義されています。国民健康・栄養調査では、睡眠で休養がとれている人の割合は20歳以上の成人で7割程度と低く、年々減少傾向にあるそうです。最新の令和5年調査を見ると、20〜29歳で「休養がとれている」と答えた人は73.6%で、4人に1人以上が休めていないと感じています。
出典:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査報告」睡眠の状況(20〜29歳・男女計)。2026年9月7日確認。
この記事で「睡眠の質を上げる」と言うときは、この睡眠休養感を上げることを指します。朝起きたときに「休めた」と感じられるか。これが自分で測れる唯一の指標で、しかも無料です。
20代は「床の上にいる時間」が短い
もうひとつ、20代に特有の事情があります。ガイドによると、夜間に床の上で過ごす時間(床上時間)は20〜30歳代では7時間程度で、若い世代は床上時間の不足に伴って睡眠不足になりやすい、とされています。高齢世代の問題が「眠れない」なら、20代の問題は「寝床に入るのが遅い」です。だから、寝具より先に、寝床に入る時刻を動かすほうが効きます。
0円でできること(根拠がいちばん厚い)
ここからが本題です。お金がかからない順に並べていますが、同時に、ガイドの中で根拠が厚い順でもあります。まずこの章の6つを2週間続けてから、次に進んでください。
①朝、光を浴びる。夜、光を減らす
ガイドが最初に挙げているのが光です。起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠と覚醒のリズムが整う。日中に光を多く浴びると夜間のメラトニン(睡眠を促すホルモン)の分泌量が増え、入眠が促される。この効果は1,000ルクス以上の照度の光を日中に浴びることで得られる、と書かれています。
具体的には、起きたらまずカーテンを開けて窓際に立つ。通勤で外を歩く時間を少し長くする。在宅勤務なら、午前中に一度ベランダに出る。これだけで条件を満たします。
夜は逆です。ガイドによると、就寝の約2時間前からメラトニンの分泌が始まり、それ以降に照明やスマートフォンの強い光を浴びると分泌が抑えられ、入眠が妨げられます。寝る2時間前になったら、部屋の照明を落とし、画面の明るさを下げる。これも0円です。
②寝室にスマートフォンを持ち込まない
ガイドは、寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながる、と推奨事項に明記しています。理由は2つあって、LEDの画面には体内時計への影響が強い短波長光(ブルーライト)が多く含まれること、そして寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒時間を増やして睡眠の効率を下げることです。
ここで20代に知っておいてほしいのが、ガイドのQ&Aにある一文です。10歳代の眼のレンズの光透過性は70歳代より5倍近く高く、光の影響は若い人ほど大きいと考えられる、と書かれています。若いから平気なのではなく、若いからこそ光に敏感なのです。また、スマートフォンはパソコンより近い距離で画面を直視するため、眼に入る光の量は多いとされています。
対策はシンプルで、充電器を寝室の外に置くこと。目覚ましは数百円の時計に任せます(これは次の章に入れました)。「暖色系に調光すれば大丈夫か」という質問にも、ガイドは、現在のLED照明は調光してもブルーライトが多く含まれるため明るすぎないように調節し、就寝時には照明は消すように、と答えています。
③カフェインは「量」と「時刻」の両方を決める
ガイドの嗜好品の章は、カフェインについてかなり具体的な数字を出しています。1日の摂取量が400mg(コーヒー700cc程度)を超えると夜眠りにくくなる可能性があること、そして夕方以降の摂取は夜間の睡眠に影響しやすいこと、の2点です。
時刻の根拠がおもしろいので、そのまま紹介します。日本人のカフェインの血中半減期は3〜7時間とばらつきがあり、半減期が5時間の場合、朝9時に400mgを一度に摂取すると、14時に200mg相当、19時に100mg相当が体内に残る。19時に100mgを摂取すると、24時になっても50mg分が残っている、という計算です。さらに、18〜65歳を対象にした系統的レビューでは、107mgを超えるカフェインは就寝の約9時間前でも、217.5mgを超えると約13時間前の摂取でも夜間の睡眠に影響したとされています。
実務的な線引きはこうなります。缶コーヒーやエナジードリンクを夕方に飲む習慣があるなら、それを麦茶やそば茶、黒豆茶、カフェインを含まないハーブティーに替える。ガイド自身が、茶葉を使っていない飲み物への置き換えを提案しています。コーヒー代が減るので、これは0円どころかプラスです。
④寝酒をやめる
「眠れないから一杯」は、ガイドが明確に推奨しない習慣です。アルコールは一時的には寝つきを促し、睡眠前半の深い睡眠を増やすものの、後半の眠りの質は顕著に悪化し、飲酒量が増えるほど中途覚醒が増える、と書かれています。連用すると依存や耐性ができて、飲まないと眠れない状態に至る可能性もあります。
日本人を含むアジア人は、アルコールを分解する酵素の活性が低い人が多く、少量でも影響を受けやすいという記述もあります。飲むなら「眠るため」ではなく「楽しむため」に、早い時間に少量。これも支出が減る側の対策です。
⑤起きる時刻をそろえる。寝だめは1時間まで
ガイドは、規則正しい生活習慣が主観的な睡眠の質を高め、日中の眠気を改善する一方で、不規則な就寝時刻は体内時計の遅れや乱れを招く、としています。守るべきは就寝時刻より起床時刻です。起きる時刻が動くと、朝の光を浴びる時刻も、メラトニンが出始める時刻も、全部ずれるからです。
休日の寝だめについては、40〜64歳を対象にした調査の結果として、平日6時間以上寝ている人に限り休日の1時間程度の寝だめは寿命短縮リスクを下げるが、休日に2時間以上の寝だめ習慣がある人はリスクが軽減されない、と紹介されています。目安は「休日も平日プラス1時間まで」です。
⑥眠くないのに寝床に入らない
意外に思うかもしれませんが、ガイドは「無理に寝ようとしない」ことを推奨事項にしています。眠気が訪れていないのに無理に眠ろうとすると脳の興奮がむしろ高まり、寝つきを悪化させることがある。なかなか寝つけないときは一旦寝床を離れ、静かで暗めの場所で眠気が来るまで過ごしてから戻る、という手順です。
あわせて、寝床に就く前に少なくとも1時間は家事や仕事、勉強に追われずリラックスする時間を確保することが有効、とも書かれています。寝る1時間前に「今日の仕事は終わり」と決める。これが0円の中で一番むずかしく、一番効く項目かもしれません。
数百円〜数千円でできること
0円の6つを2週間続けたら、次はわずかな出費で環境を整えます。ここもガイドの推奨事項に沿っています。
⑦就寝の1〜2時間前に、ぬるめの湯につかる
ガイドは、就寝の約1〜2時間前に入浴して身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなる、と書いています。仕組みは深部体温です。入浴で手足の血管が広がり、入浴後に熱が放散されて深部体温が下がり始めると、入眠しやすい状態になる。実生活での研究でも、就寝の約1〜2時間前に入浴した場合は、しなかった場合より速やかな入眠が得られたとされています。
注意点もQ&Aにあります。極端に湯温が高いと交感神経の活動が高まり、かえって入眠を妨げる可能性がある、と。「熱い風呂に長く」ではなく「ぬるめにゆっくり」です。厚生労働省の健康情報サイト(e-ヘルスネット)は、目安として40℃の湯に10〜15分、就寝の1〜2時間前が最も効果的としています。費用はガス代と水道代の差額程度で、シャワーだけの人が湯船をためても、月に数百円から千円台の増加でしょう。
⑧夏は涼しく、冬は18℃以上。寝床の中を暖かく
温度についてガイドは、夏の寝室の室温上昇時に睡眠時間が短縮し睡眠効率が低下することが報告されているため、夏はエアコンで涼しく維持することが重要、としています。冬については、寝室の温度が下がっても十分な寝具で寝床内が暖かければ睡眠への影響は少ないと考えられる一方で、心疾患や脳卒中の予防の観点からWHOの住環境ガイドラインは冬の室温を18℃以上に保つことを推奨している、と紹介しています。
20代の一人暮らしで多いのが、電気代を気にして夏の夜にエアコンを切ることです。睡眠時間が削られる損失と電気代を比べると、エアコンを付けて寝るほうが「資産」としては得です。冬は暖房より先に、掛け布団と敷きパッドで寝床の中を暖かくする。こちらは数千円で済みます。
⑨音と光を、物理的に遮る
ガイドは、寝室内で測定した騒音が睡眠効率の低下や中途覚醒時間の延長と関連したことを挙げ、できるだけ静かな環境で眠ることを推奨しています。欧州WHOガイドラインが夜間の屋外騒音を40dB未満とすることを推奨している、という記述もあります。
賃貸の20代が窓や壁を替えるのは現実的ではないので、耳栓と遮光カーテンが実務的な選択肢です。どちらも数百円から数千円で、①②の「暗くする」を確実にしてくれます。スマートフォンを寝室から出すために、目覚まし時計も1つ用意します。
⑩朝食を抜かない。寝る前に食べない。塩を減らす
食事は光と同じくらい体内時計に効く、というのがガイドの説明です。1週間程度、朝食を抜くと体内時計が後退(遅寝・遅起き化)することが報告されていて、朝食の欠食が睡眠休養感の低下と関連することも最近の研究で示されています。逆に、就寝前の夜食や間食も体内時計を後退させ、翌朝の休養感と主観的な睡眠の質を下げるとされています。
もうひとつ、20代にはあまり知られていない項目があります。日中に摂った食塩の過剰分は睡眠中に排泄されるため夜間の排尿回数が増え、減塩を心がけると夜中に目覚める頻度の減少が期待できる、というものです。夜中にトイレで起きる人は、寝具より先に夕食の塩分を疑ってみてください。
⑪中強度の運動を、就寝の2〜4時間前までに
ガイドは、中〜高強度の運動が主観的な睡眠の質、入眠までの時間、睡眠時間、睡眠効率を改善すると書いています。中強度とは、息が弾み汗をかく程度で、屋外でのウォーキングや軽い筋力トレーニング、掃除機をかける程度の活動が該当するそうです。ウォーキングやジョギングのような有酸素運動は寝つきを良くし、深い睡眠や睡眠時間を増やし、睡眠休養感も高めるとされています。
タイミングは、日中が基本。夕方や夜でも、就寝の約2〜4時間前までなら睡眠改善に有効と報告されています。頻度は週1回より複数回のほうが効果的ですが、まずは習慣にすることが大切、とも。理想は1日60分程度の身体活動ですが、60分未満でも定期的な運動習慣から始めてよい、と明記されています。ジムに入る前に、帰宅の一駅分を歩くところからで十分です。
お金をかけるなら、この順番で
ここまでの11項目をやってもまだ休養感が低いなら、ようやくお金をかける段階です。ただし、ガイドが書いている範囲で言えることは限られています。
寝具は「リラックスできるもの」が基準
ガイドの推奨事項では、寝具について「リラックスできる寝衣・寝具で眠ることが良い睡眠につながる」とだけ書かれています。特定の素材や硬さを勧める記述はありません。つまり、高いものが良いという根拠はガイドにはなく、自分がリラックスできるかどうかが基準です。
順番としては、枕、そのあとにマットレスです。理由は費用の差と、試しやすさの差です。買い替えの判断材料にするために、この記事の最後にある「睡眠の家計簿」で、0円と数百円の項目を試した後の休養感を先に記録しておいてください。それがないと、寝具を替えた効果なのか、生活を変えた効果なのか区別がつきません。
睡眠計測の機器は「まだ発展途上」とガイドが書いている
スマートウォッチやアプリで睡眠を測ることについて、ガイドには正直な記述があります。近年、自宅で簡便に睡眠時間を計測する機器の開発が活発に進められているが、現時点では安価で購入可能な機器の計測精度は十分とは言い難いかもしれない、と。自分で睡眠を管理できる時代が近づいている、という前向きな書き方ではありますが、数字を信じすぎないほうがよい段階です。
20代がやるべきは、機器の数字より「朝、休めたと感じたか」を毎日記録することです。ガイドも、睡眠休養感は自身の健康度を反映する自覚的な指標の一つ、と位置づけています。
2週間で試す「睡眠の家計簿」
ここまでの内容を、実際に使える形にまとめます。左から順に、費用が安いものから試してください。「根拠」の列は、すべて厚生労働省の睡眠ガイド2023の記述です。
| 順 | やること | 費用 | ガイドの根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 起きたらカーテンを開けて光を浴びる | 0円 | 1,000ルクス以上の光で体内時計が整う |
| 2 | 寝る2時間前から照明と画面を暗くする | 0円 | 就寝約2時間前からメラトニン分泌が始まる |
| 3 | スマートフォンを寝室に持ち込まない | 0円 | 推奨事項。若いほど光の影響が大きい |
| 4 | カフェインは1日400mgまで、夕方で止める | 0円 | 半減期3〜7時間。夕方以降は影響しやすい |
| 5 | 寝酒をやめる | 0円 | 睡眠後半の質が顕著に悪化 |
| 6 | 起床時刻をそろえる。寝だめは1時間まで | 0円 | 2時間以上の寝だめはリスク軽減なし |
| 7 | 眠くなるまで寝床に入らない。寝る1時間前は仕事をしない | 0円 | 無理に眠ろうとすると脳の興奮が高まる |
| 8 | 就寝1〜2時間前にぬるめの入浴 | 数百円 | 深部体温の低下で入眠しやすくなる |
| 9 | 夏は冷房、冬は室温18℃以上と寝具 | 数百〜数千円 | 夏の室温上昇で睡眠効率が低下 |
| 10 | 耳栓・遮光カーテン・目覚まし時計 | 数百〜数千円 | 騒音が睡眠効率の低下と関連 |
| 11 | 朝食を食べる。夜食をやめる。減塩 | 0円〜 | 朝食欠食で体内時計が後退。塩分で夜間頻尿 |
| 12 | 中強度の運動を就寝2〜4時間前までに | 0円〜 | 入眠時間・睡眠効率・休養感が改善 |
| 13 | 枕→マットレスの順に見直す | 数千〜数万円 | 基準は「リラックスできる寝具」 |
記録は、朝起きたときに「休めた/どちらでもない/休めていない」の3択と、前夜に何をしたかだけで十分です。2週間続けると、自分に効く項目が3つか4つに絞れます。それが、あなたの睡眠の「資産配分」です。
それでも眠れないときは、病気のサインかもしれない
最後に、ガイドが繰り返し書いている注意点です。睡眠環境や生活習慣、嗜好品を見直しても睡眠休養感が十分に得られない場合、閉塞性睡眠時無呼吸のような睡眠障害や、うつ病などの精神疾患が背景にあることがあり、医師に相談することを勧めています。不眠症はストレスをきっかけに発症することが多い、という記述もあります。
また、ガイドは睡眠には個人差があるとして、10時間を超える睡眠を必要とする人(ロングスリーパー)が一定数いて、そういう人がガイドに合わせて8時間に短くするとかえって睡眠不足を招く可能性がある、と書いています。この記事の数字は基準であって、あなたの正解ではありません。2週間試して休養感が上がらないなら、それは「やり方が悪い」のではなく「相談する段階」だと考えてください。医療費は、前回の記事で書いた高額療養費制度の範囲です。
まとめ
睡眠の質を上げる方法を、厚生労働省の睡眠ガイド2023の記述だけを使って、お金のかからない順に並べ直しました。
- 基準は「6時間以上、できれば7時間前後」と「朝に休めたと感じる睡眠休養感」。20〜50代の35〜50%は6時間未満で、20代の問題は眠れないことより寝床に入るのが遅いこと
- 0円でできる6つ(光・スマホ・カフェイン・寝酒・起床時刻・無理に寝ない)が、根拠がいちばん厚い。まずここを2週間
- 数百〜数千円でできる5つ(入浴・温度・音と光の遮断・食事・運動)で環境を整える
- 寝具はその後。基準は「リラックスできるか」で、高いほど良い根拠はガイドにはない。計測機器の精度はまだ十分でないとガイド自身が書いている
- 2週間やっても休養感が上がらなければ、睡眠障害や病気のサインとして医師に相談する
睡眠は、20代が持てる資産の中で、いちばん安く手に入って、いちばん長く効くものです。口座の残高を増やす前に、まず7時間眠れる設計を作ってください。
あわせて読みたい
- 寝ても疲れが取れないのはなぜ?
睡眠|「睡眠休養感」で見ると、長く寝ることが答えではない - 朝食を抜くと太る?痩せる?
食事・運動|公的資料が書いているのは体内時計の話だった - 「本が読めない」は意志の問題じゃない
読書|減っている理由と、0円で戻す順番
よくある質問(FAQ)
6時間眠っていれば大丈夫ですか?
ガイドは6時間以上を「少なくとも確保したい目安」としていて、リスクが最も低いのは7時間前後だと書いています。6時間は最低ラインであって、目標ではありません。日中に眠気があるか、朝に休めたと感じるかで、自分に必要な時間を探ってください。
コーヒーは何時までなら飲んでいいですか?
ガイドは「夕方以降は控える」としています。半減期が5時間の人なら、19時に100mg(コーヒー1杯弱)摂ると24時に50mgが残る計算です。カフェインの代謝には個人差が大きい(半減期3〜7時間)ので、寝つきが悪い人は昼過ぎで止めて2週間試してみてください。
寝る前のスマホは、ナイトモードにすればいいですか?
ガイドは、現在のLEDは調光してもブルーライトを多く含むため、明るすぎないように調節し、就寝時は照明を消すように、と答えています。画面の色を変えることより、寝室に持ち込まないことを推奨しています。
休日にまとめて寝るのはダメですか?
平日6時間以上眠れている人なら、休日に1時間程度長く寝るのは問題ないとされています。ただし2時間以上の寝だめは健康リスクの軽減につながらず、起床時刻が大きくずれると時差ボケと同じ状態になります。休日に長く寝ないと持たないなら、平日の睡眠を見直すサインです。
お酒を飲むとよく眠れる気がするのですが
寝つきが良くなるのは事実ですが、睡眠の後半の質が悪化し、飲む量が増えるほど途中で目が覚める回数が増えるとガイドは書いています。眠るための飲酒(寝酒)は推奨されていません。
枕やマットレスは何を選べばいいですか?
ガイドには「リラックスできる寝衣・寝具」という基準しかなく、素材や硬さ、価格についての推奨はありません。この記事では、0円と数百円の項目を2週間試して休養感を記録してから、枕、マットレスの順に見直すことをすすめています。
元の資料を一度読んでおく
この記事の根拠はすべて厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」です。成人版の推奨事項は数ページなので、自分の目で確認してみてください。