
「ChatGPTとClaude、どっちがいいですか」と聞かれることがあります。ただ、実際の業務で効いてくるのは回答の巧さではなく、手元の資料をどうつなぐかのほうです。そして、この部分の作りは両者でかなり違いました。
この記事では、OpenAIとAnthropicの公式ヘルプに書かれている内容だけを並べ、業務別にどちらを開くかを整理します。内容は各社の公式ヘルプセンターで確認したものです。なお、同じ観点で公式の一次情報を確認できなかったサービスは本記事では扱っていません。
結論:比べるのは賢さではなく、資料の置き方
先に全体像を示します。どちらも「プロジェクト」という単位で、関連する資料と指示とチャットをまとめる仕組みを持っています。ただし、その中での文脈の伝わり方が決定的に違いました。そこを知らずに乗り換えると、片方で毎回説明し直すことになります。
両方とも「プロジェクト」を持っている
OpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトは関連するチャット・ファイル・指示をまとめて保持し、ChatGPTはその文脈を、執筆・リサーチ・計画といった継続的な作業を支えるために使えると説明しています。Anthropicの公式ヘルプも、プロジェクトの利点はチャットに文脈を与えられることだとし、関連するドキュメント・テキスト・コードなどをプロジェクトのナレッジベースにアップロードすると、Claudeがそのプロジェクト内の個々のチャットの背景を理解するために使う、と説明しています。つまり、発想としては同じです。違いは、その中の挙動にあります。
決定的な差は、チャット間の文脈
Anthropicの公式ヘルプには、はっきりした注記があります。プロジェクト内のチャット間では、情報がプロジェクトナレッジに追加されない限り、文脈は共有されないというものです。つまり、あるチャットで話した内容は、同じプロジェクトの別のチャットには自動では引き継がれません。引き継ぎたければ、ナレッジベースに明示的に置く必要があります。一方でOpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトはそのチャットとファイルを将来の応答の文脈として使えるとしています。この一行の差が、使い方そのものを変えます。
公式ヘルプから読み取れる違い
同じ「プロジェクト」でも、中の伝わり方が違う。
資料をどこに置くか
まず、資料の受け皿から見ていきます。ここは呼び名も置き方も違い、できることの範囲が変わります。業務で使うなら最初に押さえておきたい部分で、追加の方法だけでなく、削除したときや同じ名前のファイルを上げ直したときの挙動まで公式に書かれています。
ChatGPTはプロジェクトのソースに追加する
OpenAIの公式ヘルプによると、参照資料の追加方法はPDF・スプレッドシート・ドキュメント・画像のアップロード、またはテキストの貼り付けです。ChatGPTは追加されたものを使って、より情報に基づいた回答を提供できるとされています。アップロードできるファイル数はプランによって変わります。追加後はプロジェクトのソース一覧から開いて、プレビュー・ダウンロード・削除ができます。ここで実務上の注意がひとつあり、共有プロジェクトでファイルを削除すると、全員からそのファイルが消えます。あとから追加し直すことはできますが、独断で消す前に一声かけたほうが安全です。
同名ファイルの扱いまで決まっている
細かい挙動も公式に書かれています。既存のプロジェクトファイルと同じ名前のファイルをアップロードした場合、Upload anyway を選んで追加するか、Skip を選んでそのファイルを飛ばすかを選べます。さらに、複数ファイルを一度にアップロードしている場合、Skip は衝突したファイルだけを飛ばし、残りのファイルはアップロードが続きます。版を重ねる資料を扱うと、この画面は頻繁に出ます。「最新版」「最終版」のような名前を使い回していると、どちらが残っているか分からなくなるので、日付を入れた命名にしておくと事故が減ります。
Claudeはプロジェクトナレッジに置く
Anthropicの公式ヘルプによると、プロジェクトナレッジはプロジェクトのメインページの右側にあります。ここにアップロードしたものは、そのプロジェクト内のすべてのチャットで使われます。追加は「+」ボタンから行い、関連するドキュメント・テキストファイル・コードのスニペットをアップロードします。Claudeはこの情報を処理し、プロジェクト内のチャットで文脈として使う、と説明されています。もうひとつ知っておきたいのが、プロジェクトに付ける名前と説明についての注記です。Claudeはその名前と説明にアクセスしないと明記されています。つまり、プロジェクト名に文脈を込めても伝わりません。
チャットをまたいで文脈は続くのか
ここが本記事でいちばん重要な部分です。同じ「プロジェクト」という言葉でも、作りが違うため運用の仕方が変わります。どちらが優れているという話ではなく、向く仕事の形が違う、という差で、乗り換えるときにいちばん戸惑うのもこの部分でした。
Claudeは明示的に置かないと共有されない
Anthropicの公式ヘルプには、注記として明確に書かれています。プロジェクト内のチャット間では、情報がプロジェクトナレッジに追加されない限り、文脈は共有されない。これは制約であると同時に、設計思想でもあります。会話で出た内容が勝手に持ち越されないので、何が文脈として効いているかが、ナレッジベースを見れば分かるということです。長く使うプロジェクトほど、これは利点になります。逆に、会話の流れをそのまま次に引き継ぎたい使い方には向きません。前のチャットの結論を使いたければ、その結論をナレッジに入れる、という一手間が要ります。
ChatGPTはチャットも文脈に使える
OpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトは、そのチャットとファイルを将来の応答の文脈として使うことができるとしています。さらに、ChatGPTが生成したもののうち再利用したいもの、たとえば要約・決定のメモ・下書き・分析については、その応答をプロジェクトのソースとして保存できると案内されています。手順は、プロジェクトのチャットで残したい応答のメニューを開き、プロジェクトに保存する操作を選ぶ、というものです。保存したものは後からプロジェクトのソースで見つけられ、将来のプロジェクトチャットで再利用できます。つまり、会話の成果をその場で資産に変える動線があるということです。
既存のチャットを移せるか
すでに始めてしまった会話の扱いにも違いがあります。OpenAIの公式ヘルプは、チャットをプロジェクトにドラッグするか、チャットのメニューから「プロジェクトに移動」を選ぶことで移動できるとしています。移動後のチャットは、プロジェクトの指示とファイルの文脈を引き継ぎます。ただし例外があり、GPTで作成したチャットはプロジェクトに移動できません。移動のメニューが出ない場合は対象外の可能性があるので、プロジェクト内で新しくチャットを始めるよう案内されています。戻すことも可能で、メニューから「プロジェクトから削除」を選ぶとチャット履歴に戻ります。
指示がどこまで効くか
プロジェクトごとに振る舞いを変えられるかどうかは、複数の案件を並行して回す人ほど効いてきます。両者とも仕組みは持っていますが、公式での書かれ方に違いがあり、全体設定との優先関係が明記されているかどうかが、運用の確実さを分けます。
ChatGPTはグローバルの指示を上書きする
OpenAIの公式ヘルプによると、その他のメニューからプロジェクト設定を選ぶと、プロジェクト用の指示を追加できます。公式が挙げている例は「マーケティングのメンターのように振る舞って。簡潔に。箇条書きで。不明点は質問して」といったものです。そして重要なのが次の一文です。プロジェクトの指示はそのプロジェクト内にのみ適用され、グローバルのカスタム指示を上書きします。つまり、全体設定で「丁寧語で長めに」としていても、プロジェクト側で「簡潔に」と書けばそちらが勝ちます。案件ごとに文体や粒度を変えたい場合、これは強力です。
Claudeはプロジェクト内の全チャットに効く
Anthropicの公式ヘルプも、プロジェクト指示を設定できるとしています。「プロジェクト指示を設定」をクリックし、Claudeにどう振る舞い、どう応答してほしいかを書いて保存します。そしてClaudeはその指示を、プロジェクト内のすべてのチャットで使います。書かれている範囲では、グローバル設定との優先関係についての記述は見当たりませんでした。ここは公式に明記がない部分なので、実際の挙動を自分の環境で確かめてから運用に組み込むのが安全です。本記事では、公式に書かれていないことは断定しない方針で扱っています。
容量が足りなくなったとき
資料を入れ続けると、いつか入りきらなくなります。ここにはClaude側に明確な記述があります。有料のClaudeプランを使っている場合、プロジェクトナレッジがコンテキストウィンドウの上限に近づくと、Claudeが自動的にRAGモードを有効にして、プロジェクトの容量を拡張します。つまり、上限に当たると止まるのではなく、扱い方が切り替わる設計です。利用者が何か操作する必要はありません。一方で、無料プランについて同じ記述はないため、大量の資料を扱うなら有料プランが前提になると読めます。
外部の場所とつながるか
資料が社内の別の場所にある、というのは普通のことです。いちいちダウンロードして上げ直すのは手間なので、直接つなげるかどうかは実務では大きい差になります。ただし、つなげたあとの挙動にも注意点があります。
ChatGPTはリンクをソースにできる
OpenAIの公式ヘルプは、対応アプリからリンクを貼ることで、それをプロジェクトのソースとして追加できるとしています。これにより、ChatGPTが、あなたの仕事がすでに存在している場所と同じ最新の文脈から作業できる、と説明されています。手順は、プロジェクトのソース領域で「ソースを追加」を選び、SlackのチャンネルやGoogle Driveのファイルまたはフォルダへのリンクを貼る。求められたらアプリを接続してアクセスを承認する、という流れです。プロジェクトチャットの中では、ツールメニューからアプリを選ぶか、アプリ名で呼び出して使えます。アプリがプロジェクトの外を検索する前に、ChatGPTが確認を求めることがあるとも書かれています。
同期しない、という注意書き
ただし、そのまま期待すると外す部分があります。公式ヘルプには注記があり、Google Driveのアプリは、プロジェクト内で追加された場合に同期をサポートしませんとされています。アプリを使って関連ファイルを検索しアクセスすることはできますが、取得のために事前にコンテンツが同期されることはありません。つまり、つないでおけば常に最新が反映されている、という状態にはならないということです。更新が頻繁な資料を根拠に使う場合は、この違いを知っておかないと古い内容で作業することになります。
Claude側の記述
Anthropicの公式ヘルプで今回参照した範囲には、プロジェクトナレッジについて、ドキュメント・テキストファイル・コードのスニペットをアップロードする方法が書かれていました。外部サービスのリンクをプロジェクトのナレッジとして追加する、という記述は、参照した2本の記事の中には見当たりませんでした。したがって本記事では、Claude側に同等の機能があるともないとも書きません。公式に記載がない事項を推測で埋めないためです。自社の運用で必要になる場合は、最新のヘルプで直接確認してください。
共有と、プランの条件
チームで使うなら、共有の条件は先に確認しておく項目です。ここは数字と対象プランが公式に書かれているので、資料を作らなくても社内の説明にそのまま使えます。片づけ方にも差があるので、あわせて見ておきます。
Claudeは無料でも5プロジェクトまで
Anthropicの公式ヘルプは、プロジェクトは無料のClaudeアカウントを含むすべてのユーザーが利用でき、無料ユーザーは最大5つのプロジェクトを作成できるとしています。まず試してみる、という段階では十分な数です。共有については、TeamまたはEnterpriseプランの場合、管理者がプロジェクトの共有をオフにしていない限り、組織内の他のユーザーと共有できるとされています。作成時には公開範囲も選べ、自分と招待したメンバーだけが閲覧・利用できる「非公開」か、管理者が有効にしていれば組織全体が閲覧・利用できる設定のどちらかを選びます。
ChatGPTの共有は対象プランが広い
OpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトの共有は、ChatGPT Free、Go、Plus、Pro、Business、Enterprise、Edu で、ウェブとモバイルアプリの両方において利用できるとしています。無料プランを含んでいるのが特徴です。共有の目的についても説明があり、チームや他の人とプロジェクトを共有して、進行中の作業のための「生きた文脈のハブ」を作れるとしています。ChatGPTは共有プロジェクト内のあらゆるもの、チャット・アップロードしたファイル・カスタム指示から引き出せるため、回答がグループの内部知識に基づいたものになり、他の人が中断したところから続けられる、と書かれています。
片づけ方にも差がある
長く使うと、プロジェクトが溜まります。Anthropicの公式ヘルプは、アーカイブという仕組みを説明しています。アーカイブしてもプロジェクトの共有権限はリセットされず、メンバーも外れません。メンバー・権限レベル・プロジェクトナレッジはすべて保持され、解除すると元どおりに復元されます。誰かのアクセスを取り消したい場合は、共有設定で削除する必要があります。そしてもうひとつ、運用上の注意があります。アーカイブしたプロジェクトは削除できません。削除するには、いったんアーカイブを解除する必要があります。整理のつもりでアーカイブしてから消そうとすると、順番で詰まります。
業務別にどちらを開くか
ここまで見てきた違いを、選び方に落とします。優劣ではなく、扱う仕事の形で決めるのが実務的です。軸は3つあり、どれもここまでに確認した公式の記述から導けるものなので、社内で説明するときにも根拠を添えられます。
資料が固定か、会話で育つか
1つ目の軸です。参照する資料が最初から決まっていて、それに基づいて何度も質問するタイプの仕事なら、Claudeのプロジェクトナレッジは見通しが良いと言えます。チャット間で文脈が共有されないと明記されているぶん、何が効いているかがナレッジベースを見れば分かるからです。逆に、会話を重ねながら材料が増えていくタイプの仕事なら、応答をソースとして保存でき、チャットも文脈に使えるChatGPTのほうが自然に回ります。「調べながら決めていく」仕事と「決まった資料を何度も引く」仕事では、向く作りが違います。
資料がどこにあるか
2つ目は置き場所です。資料がSlackやGoogle Driveにあり、そこから動かしたくないなら、リンクをソースとして追加できるChatGPTが直接的です。ただし前述のとおり、Google Driveアプリはプロジェクト内で追加した場合に同期をサポートしないと明記されているので、最新性が重要な資料では注意が要ります。手元のファイルをまとめて上げる運用なら、どちらでも成立します。「どこに置いてあるか」を先に確認すると、判断が早いというのがここでの要点です。
誰と使うか
3つ目が共有です。無料の範囲でまず試すなら、Claudeは無料アカウントでも最大5プロジェクトを作れます。チームで共有する場合、ClaudeはTeamまたはEnterpriseプランが条件で、管理者が共有をオフにしていないことも前提になります。一方ChatGPTのプロジェクト共有は、Freeを含む幅広いプランで利用できるとされています。社外の協力者と一時的に共有したい、といった場面では、この差が効いてきます。自分ひとりで使うのか、チームで使うのか、社外も含むのか。ここを決めてから条件を照らし合わせてください。
まとめ
ChatGPTとClaudeを仕事で使い分けるとき、比べるべきは回答の巧さではなく、手元の資料をどうつなぐかです。どちらも「プロジェクト」という単位を持っていますが、中の作りが違います。いちばん大きいのは文脈の伝わり方で、Anthropicの公式ヘルプはプロジェクト内のチャット間では、ナレッジに追加しない限り文脈は共有されないと明記しています。一方でOpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトがそのチャットとファイルを将来の応答の文脈として使えるとしています。
資料の置き方にも差があります。ChatGPTはSlackやGoogle Driveのリンクをソースとして追加でき、応答自体をソースとして保存できます。ただしGoogle Driveアプリはプロジェクト内で追加した場合に同期しません。Claudeは、有料プランでナレッジが上限に近づくと自動でRAGモードが有効になり容量を拡張すると明記されています。指示については、ChatGPTのプロジェクト指示がグローバルのカスタム指示を上書きする点が明確です。
共有は、ClaudeがTeamまたはEnterpriseプラン、ChatGPTがFreeを含む幅広いプランで利用できるとされています。Claudeは無料でも最大5プロジェクト作れます。資料が固定か会話で育つか、資料がどこにあるか、誰と使うか。この3つを先に決めれば、どちらを開くかは自然に決まります。
よくある質問(FAQ)
同じプロジェクトなら、前のチャットの話は引き継がれますか
サービスによって違います。Anthropicの公式ヘルプは、プロジェクト内のチャット間では、情報がプロジェクトナレッジに追加されない限り文脈は共有されない、と明記しています。一方OpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトがそのチャットとファイルを将来の応答の文脈として使うことができる、としています。
全体設定とプロジェクトの指示が食い違ったらどうなりますか
OpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトの指示はそのプロジェクト内にのみ適用され、グローバルのカスタム指示を上書きする、と明記しています。Claude側については、今回参照した記事に優先関係の記述が見当たらなかったため、実際の挙動を自分の環境で確認することをおすすめします。
共有プロジェクトのファイルを消すとどうなりますか
OpenAIの公式ヘルプによると、共有プロジェクトでファイルを削除すると、全員からそのファイルが削除されます。ただし、あとから再度追加することはできる、とされています。
Google Driveにある資料をつないでおけば、常に最新が反映されますか
いいえ。公式ヘルプには、Google Driveのアプリはプロジェクト内で追加された場合に同期をサポートしない、と注記されています。アプリを使って関連ファイルを検索しアクセスすることはできますが、取得のために事前にコンテンツが同期されることはありません。
無料でどこまで試せますか
Anthropicの公式ヘルプは、プロジェクトは無料アカウントを含むすべてのユーザーが利用でき、無料ユーザーは最大5つまで作成できるとしています。OpenAIの公式ヘルプは、プロジェクトの共有がChatGPT Free、Go、Plus、Pro、Business、Enterprise、Edu で利用できるとしています。
使わなくなったプロジェクトはどう片づけますか
Anthropicの公式ヘルプによると、アーカイブしても共有権限はリセットされず、メンバー・権限・プロジェクトナレッジはすべて保持されます。注意点として、アーカイブしたプロジェクトは削除できず、削除するにはいったんアーカイブを解除する必要があります。
各社の公式ヘルプで条件を確かめる
機能と対象プランは更新されます。運用を決める前に、Projects in ChatGPT(OpenAI公式ヘルプセンター)で最新の記載を確認してください。