
AIに頼むたびに、同じ前置きを書いていませんか。「数字は3桁区切りで」「結論から書いて」「専門用語は使わないで」。毎回書いているなら、それは置き場所が足りていないサインです。公式ヘルプには、置ける場所がきちんと用意されていました。
この記事では、OpenAIの公式ヘルプと、MicrosoftのExcel向けヘルプに書かれている内容だけを並べ、置き場所ごとの性質と書き方を整理します。内容は各社の公式ページで確認したものです。仕様は更新されるため、運用を決める前には原典で最新の記載をご確認ください。
結論:前置きには、3つの置き場所がある
先に全体像を置きます。公式の記載を並べると、指示の置き場所はアカウント・ファイル・その場の3層に整理できました。どこに置くかで、誰にどこまで効くかが変わります。毎回書いてしまうのは、上の2層を使っていないからです。
3つの層は、効く範囲が違う
1層目がアカウントに保存する指示です。Microsoftの公式ヘルプは、Excelの個人用設定について個人用設定を行うと、アカウントに保存され、すべてのブックとCopilot in Excelセッションに適用されますと説明しています。自分が触るものすべてに効く代わりに、他の人には効きません。2層目がファイルに保存するルールです。同じくMicrosoftのヘルプには、Excelのブックルールについてこのルールワークシートはブックと保持されるため、ルールはExcelのCopilotによって適用されます。ブックを共有すると、ルールも共有されますと書かれています。3層目が、その場で書く指示です。
どちらに置くかで、チームの手間が変わる
この違いは実務で効きます。たとえば「通貨は小数点以下2桁で」という取り決めを、自分のアカウント設定に書くと、自分の作業はすべて揃います。でも、同じファイルを同僚が開いたときには効きません。一方、ファイル側のルールに書いておけば、共有相手は、別途設定する必要はありませんと公式に明記されているとおり、開いた人にも適用されます。「自分だけの好み」はアカウントへ、「この資料の決まりごと」はファイルへ。この振り分けができると、同じ説明を人数分くり返さずに済みます。以降の節で、それぞれの条件を見ていきます。
置き場所と、効く範囲
毎回書いているものは、たいてい上の2つに移せる。
アカウントに置く指示
1層目から見ます。ここはどのサービスにも似た仕組みがあり、置き場所と有効化の手順が公式にきちんと書かれています。最初に設定してしまえば、あとは意識しなくて済む層なので、投資の効率がいちばん良い場所でもあります。
ChatGPTのカスタム指示
OpenAIの公式ヘルプは、この機能をこう説明しています。カスタム指示を使うと、ChatGPTに応答で考慮してほしいことを何でも共有できます。あなたのカスタム指示は、すべてのチャットに即座に適用されます。対象範囲も書かれていて、カスタム指示は、Web、デスクトップ、iOS、Androidのすべてのプランで利用できますとされています。設定の場所はプラットフォームで違います。iOSとAndroidは、設定から「Customize ChatGPT」を選択。Webとデスクトップは、設定から「Personalization」を選択。どちらも「Enable customization」がオンになっていることを確認してから、Custom Instructionsの欄に入力します。
Excelの個人用設定
Microsoftにも同じ層があります。公式ヘルプによると、設定の場所はCopilotウィンドウで、右上隅にある「…」の設定メニューを選択し、「個人用設定」を選択します。そして個人用設定ダイアログで、設定を入力します。複数の設定を追加できます。それぞれを短く具体的にしてくださいとされています。保存後の反映についても明記があり、「保存」を選択します。設定は次のプロンプトで有効になります。ここはChatGPT側と違って分かりやすく、保存したら次の指示から効くと読めます。設定は複数書けるので、思いついた順に足していけます。
何を置くべきかも、公式が示している
置く内容についても案内があります。Microsoftの公式ヘルプは、個人用設定は、1つのタスクに対する1回限りの指示ではなく、希望する結果を設定する場合に最適ですとしたうえで、役に立つ設定を8つの分類で挙げています。数値と通貨の書式。日付と単位の規則。表のスタイルとレイアウト。数式の基本設定。グラフとピボットテーブル。条件付き書式。詳細レベル。トーンと言葉遣い。この並びは、そのままチェックリストとして使えます。自分が毎回書いている前置きが、このどれかに当てはまるなら、設定に移せる可能性が高いということです。
文字数の上限が、プランで違う
アカウントに置く指示には、量の制限があります。ここは具体的な数字が公表されていて、しかもプランによって3倍以上の差がありました。長く書き込む運用を考えているなら、契約を決める前に知っておきたい部分です。
1,500文字と5,000文字
OpenAIの公式FAQに、はっきり書かれています。FreeとGoのユーザーは、カスタム指示に最大1,500文字まで保存できます。Plus、Pro、Enterprise、Business、Educationのユーザーは、最大5,000文字まで保存できます。3倍以上の差です。1,500文字というのは、日本語なら原稿用紙4枚弱。役割、文体、禁止事項、出力形式まで書こうとすると、意外と足りません。一方5,000文字あれば、業務の前提をかなり詳しく書き込めます。プランを検討するとき、モデルの性能だけでなく、この上限も比較の材料になります。毎回前置きを書いている時間が長い人ほど、ここの差が効いてきます。
上限があるなら、優先順位をつける
上限がある以上、何を書くかの選別が要ります。実務的には、毎回書いているものから順に入れるのが合理的です。前の節で見たMicrosoftの8分類を借りるなら、書式・単位・表の見た目・詳細レベル・言葉遣い。このあたりは繰り返し発生します。逆に、案件ごとに変わる前提や、その日だけの条件は入れないほうがいい。入れてしまうと、関係ない場面でも効いてしまいます。「すべてのチャットに即座に適用される」と公式が書いているとおり、範囲を絞る仕組みではないからです。常に真であることだけを書く。これが選別の基準になります。
APIには同じ機能がない
もうひとつ、開発に関わる人向けの記載があります。公式ヘルプには、カスタム指示のAPIは提供されません。同様の効果には、Chat Completions APIのシステムメッセージを使用してくださいと書かれています。つまり、画面から設定した指示が、そのままAPI経由の呼び出しに引き継がれるわけではありません。社内ツールを作るときは、システムメッセージ側に同じ内容を書く必要があるということです。画面で試してうまくいった指示を、そのままAPIに移せると思っていると設計が狂います。ここは早めに知っておくと手戻りが減ります。
「いつから効くか」は、2通り書かれている
ここは丁寧に扱う必要がある部分です。設定を更新したとき、どこまで反映されるのか。公式ヘルプの中に、書き方の粒度が違う記述が2か所ありました。どちらか一方だけを引くと誤解を生むので、両方を引いたうえで実務としての読み方を示します。
「既存の会話を含むすべてのチャットに即座に適用」
まず、有効化の手順を説明している節です。ここにはこう書かれています。カスタム指示の設定の更新は、既存の会話を含むすべてのチャットに即座に適用されます。冒頭の説明にも、あなたのカスタム指示は、すべてのチャットに即座に適用されますとあります。この2つを読む限り、設定を変えたら、いま開いている会話でも新しい指示が効く、と読めます。実際、途中で文体の指示を足して、その会話の続きから反映された経験がある人は多いはずです。設定変更のために新しい会話を始め直す必要はない、というのがここからの理解になります。
「更新は将来の会話にのみ反映される」
一方、同じページのFAQにはこう書かれています。はい、指示の更新は将来の会話にのみ反映されます。過去の会話からカスタム指示を取り除くには、それらの会話をチャット履歴から消去できます。これは「指示を更新したら、過去の会話に残っている指示の内容も消えるのか」という質問に対する回答です。文脈を踏まえると、すでに生成済みのやりとりは書き換わらないという話だと読めます。設定そのものは即座に切り替わるけれど、過去に返ってきた応答が遡って直ることはない。2つの記述は、指しているものが違うと理解するのが素直です。
実務としての読み方
では、どう運用すればよいか。安全側に寄せるなら、指示を大きく変えたときは、新しい会話を始めるのが確実です。古い前提を引きずった応答が混ざる余地をなくせます。そして、過去の会話に指示の内容が残っているのが気になる場合は、公式が案内しているとおりその会話自体を履歴から消すことになります。削除の単位が「会話」であって「指示」ではない、という点は覚えておいてください。なお、共有については別の記載があり、あなたの指示は、共有リンクの閲覧者には共有されませんとされています。リンクを渡しても、設定の中身までは見えません。
ファイルに貼り付くルール
2層目です。ここが本記事でいちばん伝えたい部分で、アカウント設定だけでは解決できない場面を埋めてくれます。チームで同じ資料を扱う人には特に効くので、いまは1人で使っている段階でも知っておく価値があります。
ブックと一緒に持ち運ばれる
Microsoftの公式ヘルプは、Excelのブックルールをこう説明しています。ルールを使用すると、Excel の Copilot に特定のブックを処理する方法を教えます。これにより、書式設定規則、カスタム関数、レイアウトのニーズが確立されます。定義されると、Copilot in Excel の結果はそのブックのルールに従います。そして保存場所についてはこうです。Copilot in Excel のルールは、ブックの専用ワークシート内にあります。このルールワークシートはブックと保持されるため、ルールはExcelのCopilotによって適用されます。設定ではなく、ファイルの中に入っているという点が決定的です。
共有相手は、設定しなくていい
この構造の効果が、次の一文に表れています。ブックを共有すると、ルールも共有されます。共有相手は、別途設定する必要はありません。ここが、アカウント設定との決定的な違いです。「うちの部署の集計表は、負の数を赤かっこで表示する」といった決まりを、全員に設定させる必要がなくなります。ファイルを渡せば、決まりも一緒に渡る。新しく参加した人への説明も、テンプレートを渡すだけで済みます。運用ルールを文書で配って読んでもらう、という手間が減る構造です。
作り方は3通りある
作成の手順も書かれています。いちばん簡単なのは、Excel の Copilot ウィンドウを開き、プロンプトフィールドの「作業コンテンツの追加」メニューを開きます。「ブックルールの作成」を選択しますという方法です。これで「ルール」というタイトルのワークシートが、推奨ルールを含むテンプレートとともに生成されます。ほかにも、「ルール」というタイトルのワークシートを手動で作成して独自のコンテンツを追加したり、ブック間でルールワークシートをコピーしたり、Copilotにルールワークシートの作成を依頼したりできますとされています。ブック間でコピーできる点は、社内で横展開するときに便利です。
ルールが読まれない条件
ルールを作ったのに効かない、という状態には、公式に書かれた条件があります。どれも単純な条件ですが、知らないと原因にたどり着けません。ここは作ったあとに必ず確認したい項目として、3つにまとめておきます。
非表示だと、使われない
いちばん引っかかりやすいのがこれです。公式ヘルプには、要件としてこう書かれています。Copilotが使用するには、ルールワークシートがブックに表示されている必要があります。非表示のルールワークシートはExcelのCopilotでは使用されません。ルールのシートは、資料としては見せたくないことが多いので、非表示にしたくなります。でも、非表示にした瞬間に読まれなくなる。見せたくないという気持ちと、機能させたいという目的が、まっすぐ衝突します。共有する資料なら、ルールのシートも含めて渡す前提で作るのが現実的です。
タイトルと、書く列が決まっている
形式の条件も2つあります。ルールは列Aに一覧表示され、そしてルールワークシートには「ルール」というタイトルが必要です。つまり、シート名を分かりやすく変えたり、見やすさのために列Bから書き始めたりすると、想定どおりに読まれない可能性があります。自分なりに整えたくなる部分ほど、条件から外れやすいというのは、資料づくりではよくある話です。テンプレートを生成する方法から作れば、この条件は自動的に満たされます。迷ったら、公式の手順で作ったものに書き足す。これがいちばん確実です。
動作が変わる可能性も明記されている
もうひとつ、公式が先に断っている点があります。Excel の Copilot と使用可能なモデルは急速に進化しています。ルールの動作は、モデル間や Excel の Copilot 機能の拡張に伴って異なる可能性があります。つまり、今日うまく効いたルールが、将来も同じように効くとは限らない、と公式自身が書いています。だからこそ、ルールは短く、具体的に、検証しやすい形で書いておくほうがいいということになります。長い文章で細かく指定するほど、挙動が変わったときに原因を切り分けにくくなります。次の節で、その書き方を見ます。
書き方は、公式に例がある
最後に、実際にどう書くかです。ありがたいことに、Microsoftの公式ヘルプには具体的な文例がいくつも並んでいます。そのままコピーして使えますし、自分の業務に合わせて書き換えるときの型を学ぶ材料にもなります。
1セルに1つ、見出しでまとめる
まずルールの書き方です。公式はCopilot in Excel のルールは、指示が短く、具体的で、整理されている場合に最適に機能しますとしたうえで、4つのヒントを挙げています。1つのセルに1つのルールまたはアイデアを一覧表示します。## NUMBERS や ## CHARTS などの見出しセルを使用して、関連するルールをグループ化して、スキャンと編集が容易になるようにします。短い例を含めます。望ましい結果を示す方が、それを説明するよりも効果的です。そして現在のブックにルールを集中させてください。3つ目の「示すほうが説明より効果的」は、プロンプト全般に通じる考え方です。
公式が挙げている文例
個人用設定のほうには、そのまま使える例が並んでいます。いくつか引きます。「通貨の書式には、必ず $ プレフィックスと小数点以下2桁を付けてください」「赤とかっこで負の数を表示します」「日付の形式は DD-MMM-YYYY を使用します」「縞模様の行と太字の見出しを、作成するすべてのテーブルに適用します」「レポートの下部ではなく上部に集計行を配置します」「数式では、構造化参照と名前付き範囲を優先します」「他に何か要求しない限り、既定では集合縦棒グラフを使用します」「詳細な表の前に、重要なポイントの簡単な要約からすべての分析を開始します」「小数点以下を要求しない限り、すべての結果を整数に四捨五入します」。どれも1文で、判断の余地が小さいのが特徴です。
ルールは、数式で動かせる
最後に、あまり知られていない機能を紹介します。公式ヘルプには、ルールは数式によって実行できます。これにより、ルールはブックの状態に対応できますと書かれています。例も2つ挙げられています。1つはドロップダウンを使用した動作の切り替えで、ドロップダウンのセルでアクティブなルールを変えられます。もう1つがデータに反応させる使い方で、データがまだ入力されているかどうかによってルールを変えられます。そしてブックが再計算されると、Copilotは次のプロンプトで数式出力を読み取ります。静的な文章ではなく、状況で切り替わる指示が書けるということです。
まとめ
毎回同じ前置きを書いているなら、置き場所を使い分けていない可能性があります。1層目はアカウントで、Microsoftの公式ヘルプは個人用設定についてアカウントに保存され、すべてのブックとCopilot in Excelセッションに適用されますとしています。OpenAIのカスタム指示も同じ層で、すべてのチャットに即座に適用されますとされ、Web、デスクトップ、iOS、Androidのすべてのプランで利用できます。ただし量に制限があり、FreeとGoは1,500文字、Plus・Pro・Enterprise・Business・Educationは5,000文字です。
2層目がファイルです。Excelのブックルールはブックの専用ワークシート内にあり、ブックと保持されます。そしてブックを共有すると、ルールも共有されます。共有相手は、別途設定する必要はありません。ここがアカウント設定との決定的な差で、チームの決まりごとを置く場所になります。ただし条件があり、ルールは列Aに一覧表示され、ワークシートには「ルール」というタイトルが必要で、非表示のルールワークシートはExcelのCopilotでは使用されません。
書き方は公式に示されています。1つのセルに1つのルール、## NUMBERS のような見出しセルでグループ化、短い例を含める。望ましい結果を示す方が、それを説明するよりも効果的、そして現在のブックにルールを集中させる。さらにルールは数式によって実行でき、ブックが再計算されると、Copilotは次のプロンプトで数式出力を読み取ります。自分の好みはアカウントへ、資料の決まりはファイルへ、今回だけの条件はその場へ。この振り分けだけで、前置きを書く回数は大きく減ります。
よくある質問(FAQ)
カスタム指示に書ける文字数は決まっていますか
OpenAIの公式FAQには、FreeとGoのユーザーは最大1,500文字、Plus、Pro、Enterprise、Business、Educationのユーザーは最大5,000文字まで保存できる、と書かれています。プランによって3倍以上の差があります。
設定を変えたら、いま開いている会話にも効きますか
公式ヘルプの有効化の節には、カスタム指示の設定の更新は既存の会話を含むすべてのチャットに即座に適用される、と書かれています。一方FAQには、指示の更新は将来の会話にのみ反映される、過去の会話から取り除くにはその会話を履歴から消去する、とあります。指示を大きく変えたときは新しい会話を始めるのが確実です。
同僚にも同じルールを適用させたいのですが
Excelのブックルールであれば、公式ヘルプに、ブックを共有するとルールも共有され、共有相手は別途設定する必要はない、と書かれています。アカウントに保存する個人用設定は自分のすべてのブックに適用されるものなので、他の人には効きません。
ルールを作ったのに反映されません
公式ヘルプには、ルールは列Aに一覧表示されること、ワークシートに「ルール」というタイトルが必要であること、そしてCopilotが使用するにはルールワークシートがブックに表示されている必要があり、非表示のルールワークシートは使用されないことが書かれています。
ルールの文章は、どのくらい細かく書けばよいですか
公式ヘルプは、指示が短く、具体的で、整理されている場合に最適に機能するとしています。1つのセルに1つのルール、見出しセルでのグループ化、短い例を含めること、そして望ましい結果を示す方が説明するより効果的であることが挙げられています。
画面で設定した指示は、APIでも効きますか
OpenAIの公式ヘルプには、カスタム指示のAPIは提供されない、同様の効果にはChat Completions APIのシステムメッセージを使用する、と書かれています。画面の設定がAPI経由の呼び出しに引き継がれるわけではありません。
原典で条件を確認する
上限や仕様は更新されます。設定する前に、Excel での Copilot ブックのルール(Microsoft Support)で最新の記載をご確認ください。