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スクリプトは「読む台本」ではない
テレアポのトークスクリプトを作ると、最初はたいてい失敗します。原因はほぼ1つで、読み上げる前提で書いてしまうことです。
読み上げる前提で書くと、文章が長くなります。書き言葉で書くので、声に出すと不自然になります。そして相手が想定外の返しをした瞬間に、どこに戻ればいいか分からなくなります。
スクリプトの役割は、台本ではありません。次に何を言うかを迷わないための、順番の地図です。
台本と地図の違い
| 台本として作る | 地図として作る | |
|---|---|---|
| 書き方 | 話す内容を文章で全部書く | 言うべきことを箇条書きで置き、言い回しは例として1つ添える |
| 量 | A4で2枚以上になる | A4で1枚に収まる |
| 想定外のとき | どこに戻るか分からない | 今どのブロックにいるかが分かる |
| 新人が使うと | 読んでいることが相手に伝わる | 順番だけ守って自分の言葉で話せる |
| 改訂 | 全文を書き直すので手が止まる | 1ブロックだけ差し替えられる |
読み上げているかどうかは、相手に伝わります。声の抑揚が文章のリズムになるからです。そして読んでいると分かった時点で、相手は聞くのをやめます。
それでも文章で書く場面がある
例外が2つあります。1つは最初の名乗り。ここは毎回同じで、迷う余地がありません。文章で書いて、そのまま覚えてしまうほうが速いです。
もう1つは法令上必要な文言がある場合。録音の告知や、必要な開示事項がある商材では、言い漏らしが許されないので文章で持ちます。
この2つ以外は、箇条書きで足ります。
書く前に決める3つ
スクリプトを書き始める前に、3つ決めてください。ここが曖昧なまま書くと、途中で何度も方向が変わります。
1. 誰に向けて話すか
受付に話す内容と、担当者に話す内容は別物です。1つのスクリプトに両方を詰め込まないでください。
受付向けは「どこに回すか」を判断してもらうための情報。担当者向けは「自社に関係があるか」を判断してもらうための情報です。目的が違うので、構造も違います。
受付を通る部分についてはテレアポの受付突破で扱っているので、この記事では担当者に代わった後を中心に書きます。
2. この電話で何を取るか
ゴールを1つに決めます。よくあるのは次の4つです。
| ゴール | 向く商材 | スクリプトの重心 |
|---|---|---|
| 訪問・オンライン商談の日程 | 単価が高く、説明に時間がかかる | 会う価値を1つだけ示す |
| 資料を送る許可 | 資料で伝わる。検討期間が長い | 送る資料の中身を具体的に言う |
| 担当部署の確認 | 組織が大きく、窓口が分からない | 提案の中身を入れず、聞くことに徹する |
| 現状のヒアリングだけ | 市場を調べたい段階 | 売り込まない。聞く項目を3つに絞る |
複数を狙わないでください。「できれば商談、無理なら資料」と考えていると、話の途中で軸がぶれます。相手にはそれが伝わります。
資料送付を狙うなら、資料送付だけを狙う。商談の話は、相手から出たときにだけ乗る。この形にすると、スクリプトが短くなります。
3. どこまで話さないかを決める
意外と重要なのがこれです。言わないことを先に決めておくと、話が膨らみません。
電話で価格を言うか。他社との比較に触れるか。導入までの期間を言うか。事例の社名を出すか。
これらは、言わないと決めたほうが電話は短くなり、次につながります。聞かれたときだけ答える、という形にしておきます。
価格を電話で言わないほうがよい理由
価格は、相手が何と比べるかによって高くも安くもなります。比較の対象が決まっていない段階で数字だけを出すと、相手は自分の中の何かと勝手に比べます。多くの場合、それは実際の比較対象より安いものです。聞かれたら「使い方によって幅があるので、状況を伺ってからお伝えします」で構いません。
構造を5ブロックに固定する
担当者に代わった後のスクリプトは、5つのブロックで足ります。
5ブロックの構造。右の列を先に決めると、話が膨らまない。
3番目で相手に話してもらう
この構造の要点は、3番目のブロックで相手が話す時間を作ることです。
1から5まで全部こちらが話す設計にすると、相手は聞く側に固定されます。聞く側に固定された人は、区切りのいいところで断ります。
3番目で質問を置いて、相手が話し始めたら、そこは伸ばして構いません。相手が話している間、電話は切られません。
各ブロックの役割を一言で持つ
ブロックが膨らむのは、役割が曖昧だからです。1つずつ、一言で言える役割を持たせます。
1番目は切られないこと。相手に「今は無理」と言う機会を先に渡して、続けてよいかを確定させます。
2番目は関係があると分かってもらうこと。自社の説明ではなく、相手の会社の話をします。
3番目は相手の状況を1つ知ること。複数聞こうとしないでください。1つで足ります。
4番目は聞いたことに答えること。用意した提案を全部言う場ではありません。
5番目は次を決めること。今日の結論を出す場ではないので、次の接点だけを確定させます。
書いた内容がこの役割から外れていたら、そこは削ってよい部分です。
合計1分を目安にする
3番目を除いた1・2・4・5の合計が1分前後に収まるように書きます。これを超えると、相手は「長い」と判断します。
1分という数字に厳密な根拠はありませんが、目安を決めておかないとブロックが際限なく膨らむので、上限として置いています。
分岐は2つまでしか持てない
スクリプトを作り込むと、分岐を増やしたくなります。「こう言われたらこう返す」を網羅したくなる。
これをやると、使えなくなります。
通話中に選べる選択肢は2つまで
電話中は、相手の話を聞きながら、次に何を言うかを考えています。この状態で3つ以上の分岐から選ぶのは、現実的ではありません。
だから、各ブロックの分岐は2つまでにします。
| ブロック | 分岐の持ち方 |
|---|---|
| 1 名乗り | 分岐なし。今話せるか、話せないかで、続けるか切るかだけ |
| 2 用件 | 分岐なし。ここは言い切る |
| 3 確認 | 二択の質問なので、返答は2つ。それぞれに次の質問を1つ用意する |
| 4 提案 | 3の返答に応じて2パターン。それ以上は作らない |
| 5 クローズ | 前向き・断りの2つ。断りの型ごとの対応は別紙にする |
網羅したくなったら、別紙にする
断り文句への対応など、パターンが多いものはスクリプト本体に入れず、別紙に分けます。
本体は通話中に見るもの。別紙は事前に読んで頭に入れておくもの。役割が違います。
断りの型ごとの返し方はテレアポの切り返しで整理しているので、そちらを別紙として使う形でも構いません。
A4で1枚に収める
分岐を絞る理由は、量の制約にも直結します。1枚に収まらないスクリプトは、通話中に参照されません。
2枚目に書いた内容は、実際の電話では使われません。使われないなら、書く意味がありません。
実際に書いてみる
採用支援の商材を例に、5ブロックを書きます。ゴールは「資料を送る許可をもらう」に設定しています。
【1 名乗り】 株式会社◯◯の(名前)と申します。 2〜3分だけお時間いただいてもよろしいでしょうか。 【2 用件】 中途採用の母集団形成について、 ご案内でお電話しました。 御社の採用ページで営業職と技術職を 同時に募集されているのを拝見しています。 【3 確認】 ・現在は求人媒体と人材紹介、 どちらを中心に進めていらっしゃいますか (媒体中心なら) ・媒体からの応募数は、今の水準で足りていますか (紹介中心なら) ・紹介経由だと単価が上がりますが、 そのあたりはどうされていますか 【4 提案】 (応募数が足りない場合) ・媒体の運用は変えずに、応募数を増やす部分だけを お手伝いしている形があります (単価が課題の場合) ・紹介の比率を下げる形での進め方があります 【5 クローズ】 ・同じ規模の企業での事例を3社分まとめた資料があります。 お送りしてもよろしいでしょうか。 ・今は必要ないということでしたら、 その旨だけお知らせいただければ、以後は控えます。
5ブロックの例。3と4だけが分岐し、それも2つまで。
書き方の細かい点
1と5は文章で、2から4は箇条書き。1は毎回同じなので文章、5は言い回しを間違えたくないので文章にしています。
質問の先頭に中黒を置く。通話中に目で追うとき、記号があると位置を見失いません。
分岐の条件を括弧で書く。「媒体中心なら」のように、条件が先に来る形にします。返答を聞いてから条件を探す動きになるので、この順が速いです。
書いてはいけない言い回し
スクリプトに入りがちで、実際には効かない言い回しがあります。
| 書きがちな言い回し | なぜ効かないか |
|---|---|
| お忙しいところ恐れ入ります | 1番目で時間を確認するので重複する。秒数の無駄になる |
| 少しだけお時間よろしいでしょうか | 「少し」が曖昧。2〜3分と数字で言うほうが判断できる |
| ご興味はありますか | 話を聞く前に興味があるはずがない。「ありません」しか返らない |
| 何かお困りのことはありませんか | 漠然としていて、答えるのに考える負荷がかかる |
| ぜひ一度お会いして | 会う理由になっていない。会って何が分かるかを書く |
3つ目と4つ目は、相手に考えさせる質問です。電話では答えるまでの時間が沈黙になるので、考えさせる質問は避けます。二択で聞けば、選ぶだけで答えられます。
自社の商材に置き換えるときの手順
- 5のゴールから書く。何を取りたいかが決まると、逆算で必要な情報が見える
- 3の質問を決める。4の提案を出し分けるために、何を聞く必要があるかで決まる
- 4を2パターン書く。3の返答それぞれに対応させる
- 2を書く。3の質問につながる導入にする
- 最後に1を書く。ここは定型なので最後で足りる
1から順に書かないでください。ゴールが決まっていない状態で導入を書くと、全体がつながりません。
声に出して直す
書き終えたら、必ず声に出します。画面で読んで問題ないものが、声に出すと使えないことがよくあります。
声に出すと分かること
| 見つかる問題 | 直し方 |
|---|---|
| 一文が長くて息が続かない | 2文に割る。接続助詞でつながっている箇所が候補 |
| 同じ音が続いて聞き取りにくい | 語を入れ替える。漢語を和語にすると解ける場合が多い |
| 書き言葉で不自然 | 「〜における」「〜に関しまして」を削る |
| 敬語が過剰で回りくどい | 二重敬語を1つにする。「お伺いさせていただく」→「伺います」 |
| 間が作れない | 質問の前に一拍置ける形にする |
時間を測る
3番目を飛ばして、1・2・4・5を通して読んだ時間を測ってください。1分を大きく超えるなら、2番目か4番目が長すぎます。
削る順番は、4、2、1、5です。5は短いので削れませんし、1は定型で削ると失礼になります。
録音して聞く
自分で話しているときは、自分の話し方が分かりません。録音して聞くと、早口かどうか、抑揚が単調かどうかが分かります。
通話の録音については、告知の仕方や録音データの扱いに注意点があります。営業電話の録音は同意なしでいいのかで条文まで整理しているので、実際の通話を録音するならそちらを先に確認してください。
練習の段階なら、相手がいないので自分の声を録るだけです。ここは気にせずやって構いません。
改訂の回し方
スクリプトは作って終わりではありません。ただし、思いつきで変えると何が効いたか分からなくなります。
変えるのは1か所ずつ
2番目の用件を変えたなら、次の50件はそれで回します。同時に4番目も変えると、どちらが効いたか分かりません。
1か所を変えて、比べられる件数を送る。これを繰り返します。
根拠にする数字
| ブロック | 効いたかを見る数字 |
|---|---|
| 1 名乗り | 「今は忙しい」で切られた割合 |
| 2 用件 | 3の質問に答えてもらえた割合 |
| 3 確認 | 相手が2文以上話した割合 |
| 4 提案 | 5で前向きな返答が出た割合 |
| 5 クローズ | ゴールを取れた割合 |
ブロックごとに見る数字を変えるのが要点です。最終的なアポ率だけを見ていると、どこが悪いのか特定できません。
変えない判断も記録する
検討した結果、変えないと決めることもあります。そのときも「検討して変えなかった」と残してください。
記録がないと、同じ議論が翌月にもう一度起きます。
改訂の頻度
月に1回で十分です。週ごとに変えると、担当者が今どのバージョンを使っているか分からなくなります。
そして改訂したら版を記録してください。日付を入れるだけで構いません。後から「この時期の数字はどの版か」を追えるようにします。
複数人で使うときの設計
1人で使うスクリプトと、複数人で使うスクリプトは、作りが違います。
言い回しを固定しない
複数人に同じ言い回しを強制すると、合わない人が出ます。声の高さも話す速さも違うので、同じ文が全員に合うことはありません。
固定するのは順番と、各ブロックで言うべき内容です。言い回しは例として示すに留めて、自分の言葉に直すことを許可します。
ただし、決めておく語はある
| 固定するもの | 理由 |
|---|---|
| 社名の言い方 | 聞き取りにくい社名は、言い方を統一する |
| 商材の呼び方 | 人によって呼び名が違うと、後の会話で混乱する |
| 断られたときの締め方 | ここで人によって差が出ると、会社の印象がばらつく |
| 言わないと決めた事項 | 価格や比較など。1人が言うと基準が崩れる |
新しく入った人向けの順番
いきなり全ブロックを使わせないでください。1と2だけを固定で言い、3以降は先輩が代わる、という形から始めます。
1と2が安定してから3を足し、3が安定してから4と5を足す。この順にすると、失敗する場所が限定されるので直しやすくなります。
使っているかを確認する
配っただけでは、使われているかどうか分かりません。数か月経つと、各自が自己流に変えていることがあります。
自己流そのものは悪くありません。問題は、変えた内容が共有されないことです。うまくいっている変更なら、全員に展開する価値があります。
月に1回、各自が実際に何と言っているかを聞く機会を作ってください。録音があれば聞く、無ければ隣で聞く。「守っているか」を確認するためではなく、「良い変更を拾う」ために聞きます。目的を取り違えると、監視になって誰も本当のことを言わなくなります。
スクリプトの置き場所
通話中に見るものなので、画面に出しておける形にします。印刷して手元に置くか、通話用の画面と並べて表示できるようにするか。
別のフォルダを開かないと見られない状態だと、結局は使われません。
まとめ
- スクリプトは台本ではなく「次に何を言うかを迷わないための順番の地図」。読み上げる前提で書くと、読んでいることが相手に伝わる
- 書く前に3つ決める。誰に向けて話すか、この電話で何を取るか、どこまで話さないか
- ゴールは1つに絞る。「できれば商談、無理なら資料」と考えていると軸がぶれる
- 言わないことを先に決める。価格・他社比較・導入期間・事例の社名は、聞かれたときだけ答える
- 構造は5ブロック。名乗り、用件、確認、提案、クローズ。3番目で相手に話してもらう時間を作る
- 分岐は各ブロック2つまで。通話中に3つ以上から選ぶのは現実的でない。網羅したくなったら別紙にする
- A4で1枚に収める。2枚目は実際の通話では使われない
- 書く順番は5→3→4→2→1。ゴールから逆算する
- 書き終えたら声に出す。1・2・4・5を通して1分を大きく超えるなら、2か4が長い
- 改訂は1か所ずつ。ブロックごとに見る数字を変える。アポ率だけを見ても、どこが悪いか特定できない
- 複数人で使うなら言い回しは固定せず、順番と内容を固定する。ただし社名の言い方と、言わないと決めた事項は固定する
良いスクリプトは、書いた人が読んでも面白くありません。順番と、言わないことだけが書かれているからです。読んで納得感のある文章になっていたら、それは台本になっている可能性があります。
よくある質問
スクリプトを読み上げてはいけないのですか
読み上げていることは相手に伝わります。声の抑揚が文章のリズムになるためで、読んでいると分かった時点で相手は聞くのをやめます。例外は最初の名乗りと、法令上必要な文言がある場合です。この2つは毎回同じで迷う余地がないので、文章で持って構いません。それ以外は箇条書きで足ります。
分岐を増やして、あらゆる返答に備えたほうが安心ではないですか
通話中は相手の話を聞きながら次を考えているので、3つ以上の分岐から選ぶのは現実的ではありません。各ブロックの分岐は2つまでにしてください。断り文句への対応などパターンが多いものは、スクリプト本体ではなく別紙に分けます。本体は通話中に見るもの、別紙は事前に読んでおくものです。
どの順番で書けばいいですか
クローズから逆算します。ゴールを決め、次に確認の質問を決め、提案を2パターン書き、用件を書き、最後に名乗りを書く。1から順に書くと、ゴールが決まっていない状態で導入を書くことになり、全体がつながりません。
電話で価格を聞かれたらどうしますか
「使い方によって幅があるので、状況を伺ってからお伝えします」で構いません。価格は相手が何と比べるかによって高くも安くもなります。比較の対象が決まっていない段階で数字だけを出すと、相手は自分の中の何かと勝手に比べます。多くの場合、それは実際の比較対象より安いものです。
スクリプトの効果をどう測ればいいですか
ブロックごとに見る数字を変えてください。名乗りは「今は忙しい」で切られた割合、用件は確認の質問に答えてもらえた割合、確認は相手が2文以上話した割合、提案は前向きな返答が出た割合、クローズはゴールを取れた割合です。最終的なアポ率だけを見ていると、どこが悪いのか特定できません。
複数人で使うとき、言い回しは統一すべきですか
統一しないでください。声の高さも話す速さも違うので、同じ文が全員に合うことはありません。固定するのは順番と、各ブロックで言うべき内容です。ただし社名の言い方、商材の呼び方、断られたときの締め方、そして言わないと決めた事項は固定してください。ここがばらつくと会社の印象が揺れます。
新しく入った人には、どう使わせればいいですか
いきなり全ブロックを使わせないでください。名乗りと用件だけを固定で言い、確認以降は先輩が代わる形から始めます。この2つが安定してから確認を足し、確認が安定してから提案とクローズを足す。この順にすると、失敗する場所が限定されるので直しやすくなります。