この記事の内容
断り文句は4つの型に分かれる
テレアポの切り返しを調べると、フレーズ集が出てきます。「結構です」にはこう返す、「間に合っています」にはこう返す。数十個並んでいることもあります。
覚えても使えません。理由は単純で、同じ言葉でも、相手が何を言おうとしているかが違うから。「結構です」の一言に、まったく違う4つの状態が混ざっています。
断り文句を言葉ではなく、背後にある状態で分けると、4つの型になります。型が分かれば対応が決まるので、フレーズを丸暗記する必要がなくなります。
断りの4つの型と、型に入らない1つ。言葉ではなく状態で分類する。
先に、型に入らないものから説明します。ここを間違えると、あとは全部意味がなくなります。
切り返してはいけない断り
「今後いっさい連絡しないでください」と言われたら、切り返しません。その場で終えて、記録に残します。
これは根性論ではなく、実務上そうすべき理由が3つあります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 相手は判断を終えている | 他の4つの型と違い、検討した結果として断っている。情報を足しても変わらない |
| 社名が記録される | 明確な拒否を無視した会社として残る。担当者が変わっても残る |
| 営業代行ならクライアントの看板が傷む | 自社の名前で電話していない以上、損害は依頼元に及ぶ |
法律が示している考え方
法人向けのテレアポには、特定商取引法の電話勧誘販売の規制は原則かかりません。条文でそう定められています。
(適用除外) 第二十六条 前三節の規定は、次の販売又は役務の提供で 訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に 該当するものについては、適用しない。 一 売買契約又は役務提供契約で、 (中略)購入者若しくは 役務の提供を受ける者が営業のために 若しくは営業として締結するものに係る 販売又は役務の提供
特定商取引法 第26条第1項第1号。読みやすさのため改行を入れています。
相手が営業のために契約する場合、つまり事業者間の取引であれば、規制の対象外です。ただし、その規制の中身を見ておく価値があります。
(契約を締結しない旨の意思を表示した者に 対する勧誘の禁止) 第十七条 販売業者又は役務提供事業者は、 電話勧誘販売に係る売買契約又は 役務提供契約を締結しない旨の意思を 表示した者に対し、 当該売買契約又は当該役務提供契約の 締結について勧誘をしてはならない。
特定商取引法 第17条。読みやすさのため改行を入れています。
断る意思を表示した相手への再勧誘を禁じています。法人相手には適用されませんが、国がこの線を引いているという事実は、実務の基準として使えます。
相手が個人事業主の場合は、適用除外にならないことがある
第26条の除外は「営業のために若しくは営業として締結する」場合に限られます。個人事業主への電話で、契約の内容が事業と関係ない、あるいは事業との関連が薄い場合、除外に当たらず規制がかかる可能性があります。法人か個人事業主かをリストで分けておく意味は、ここにもあります。
記録に残す
拒否された事実は、次の3項目で残します。
- 拒否の文言。「連絡しないで」なのか「今回は見送る」なのかで、扱いが変わります
- 日付。いつ言われたかが分からないと、判断のしようがありません
- 誰が言ったか。受付なのか担当者なのか。受付の判断と担当者の判断は別です
この記録がないと、半年後に同じ会社へ架電したときに、また同じことを繰り返します。そして2回目の拒否は、1回目よりはるかに強い言葉になります。
記録の置き場所は、営業リストと同じ行にしてください。別のファイルに分けると、架電の直前に参照されません。架電する人が、電話をかける前に必ず目に入る場所に置く。これが条件です。
反射の断り:「結構です」
1つ目の型です。名乗った直後、用件を言う前に返ってくる「結構です」がこれに当たります。
相手はまだ何も聞いていません。判断した結果ではなく、営業電話だと分かった時点で出てくる反射です。
見分け方
判定の手がかりはタイミングです。用件を言い終わる前に返ってきたなら、ほぼ反射です。相手は内容を聞いていないので、判断のしようがありません。
ほかにも手がかりが3つ。声のトーンが会話のものではなく定型の応答になっている、かぶせるように言われる、理由が添えられていない。これが揃っていれば反射と考えて構いません。
どう返すか
説得しません。かわりに、用件を一文で伝えて、その場で終える形にします。
承知いたしました。ありがとうございます。 一点だけお伝えして切らせていただきます。 中途採用の募集方法についてのご案内で、 資料をお送りできるものがございます。 もし必要になることがあれば、 そのときにご連絡いただければと思います。 失礼いたします。
反射の断りへの対応。粘らず、用件だけ置いて終える。
なぜこれが効くのか
反射で断った相手は、断ったこと自体をすぐ忘れます。争っていないので、悪い印象も残りません。
そして「何の電話だったか」だけが残ります。数か月後に同じテーマで社内に課題が出たとき、思い出される可能性が残る。これが、粘って嫌われた場合との差です。
ここで食い下がると、反射の断りが明確な拒否に変わります。1つ目の型を4つ目でも5つ目でもない状態に留めておくのが、この対応の目的です。
現状維持の断り:「間に合っています」
2つ目の型です。「もう他社と取引がある」「社内で対応している」も同じ型です。
この型の相手は、今のやり方で回っています。困っていないので、比べる理由がありません。ここで「弊社のほうが安いです」と返すと、比較の土俵に乗せようとしていることが伝わり、警戒されます。
見分け方
用件を聞いたうえで返ってくること、そして理由が添えられていることが手がかりです。「すでに他社さんにお願いしていて」「社内で回しているので」といった形になります。
反射との違いは、相手が自社の状況を説明している点にあります。説明があるということは、こちらの話を一度は処理したということです。ここに次の会話の余地が残ります。
どう返すか
比較を持ちかけず、今の状態を確認する質問を1つだけ置きます。
承知いたしました。すでにご対応されているのですね。 差し支えなければ一点だけ伺えますか。 現在は求人媒体と人材紹介と、 どちらを中心に進めていらっしゃいますか。
現状維持の断りへの対応。売り込まず、状態を聞く。
二択で聞く
「どのようにされていますか」ではなく、選択肢を出します。漠然とした質問は、答えるのに考える負荷がかかるため「特に決まっていません」で終わります。
二択なら、相手は選ぶだけで答えられる。そして返ってきた答えが、そのまま次の質問の材料になります。
ここで売り込まない
相手が状況を話し始めたとき、そこに自社の商材が刺さる余地が見えることがあります。それでも、その電話では売り込まないでください。
この型の相手にとって、いまの会話は情報提供であって商談ではありません。商談に切り替えた瞬間に、最初の「間に合っています」に戻ります。
やるべきなのは、話を聞ききって次の接点を作ること。「近いテーマで事例をまとめたものがあるので、お送りしてもよろしいですか」で足ります。
時期の断り:「今は忙しい」
3つ目の型です。「今期は予算がない」「来年度に検討する」も同じ型に入ります。
この型は、関心がゼロではありません。優先順位が低いだけです。だから、他の型と違って将来につながります。
見分け方
断りの中に時間を表す語が入っているかが手がかりです。今は、今期は、来年度は。この語があれば、相手は「やらない」ではなく「今はやらない」と言っています。
ただし、時間の語があっても中身が伴わない場合があります。次の節で触れる「検討します」がその典型です。時期を確認する質問に答えが返ってくるかどうかで、本物かどうかが分かります。
どう返すか
いつなら、を具体的に決めます。ここを曖昧にすると、そのまま消えます。
承知いたしました。お忙しいところ失礼いたしました。 来期のご予算を組まれる時期は、 だいたいいつ頃になりますでしょうか。 でしたら、その1か月ほど前に 改めてご連絡さしあげてもよろしいでしょうか。
時期の断りへの対応。相手の暦に合わせて、次の接点を確定させる。
相手の暦に合わせる
「3か月後にご連絡します」は、こちらの都合でしかありません。相手の予算編成や期の区切りに合わせると、連絡する理由がこちら側ではなく相手側にできます。
そして、聞いた時期は必ず記録します。記録していないと、次の架電で「以前お伺いした時期になりましたので」と言えません。その一言が言えるかどうかで、2回目の入り方が変わります。
「検討します」は時期の断りではない
「検討します」は、この型に見えて中身がありません。何を、いつまでに、誰が検討するのかが決まっていないからです。この言葉が出たら、時期を確認する質問をしてください。答えが返ってこなければ、実質は1つ目か2つ目の型です。
権限の断り:「私では決められない」
4つ目の型です。「上に確認します」「担当が別です」も同じです。
この型は説得の問題ではありません。話す相手が違うだけなので、どれだけうまく話しても、その人は決められません。
見分け方
断りの主語が自分以外になっているかどうかで分かります。「私では」「上が」「担当が」。この形になっていれば権限の型です。
紛らわしいのは、権限がないふりをして断る場合です。ただし、見分けようとする必要はありません。どちらであっても対応は同じで、決める部署を聞いて転送できる形を渡すところまでです。ふりをしていた相手なら、そこで話が止まります。それで構いません。
どう返すか
この型で最もまずいのは、目の前の相手に説明を続けることです。相手は決裁者に伝える役になりますが、こちらの説明を正確に伝えられるとは限りません。
やるべきことは2つです。
- 誰が決めるのかを聞く。部署なのか役職なのかまで。個人名は不要です
- 伝えるための材料を渡す。口頭で伝えてもらうのではなく、転送できる形にする
承知いたしました。ありがとうございます。 ご判断はどちらの部署でされることが多いですか。 でしたら、そのままお渡しいただける形で 資料をお送りしてもよろしいでしょうか。 1枚にまとめたものをご用意しています。
権限の断りへの対応。伝言を頼まず、転送できる形にする。
1枚にまとめる理由
社内で転送されるとき、長い資料は読まれません。効くのは資料の出来ではなく、目の前の相手が決裁者に転送しやすいかどうか。ここがすべてです。
この型では、資料の出来より「転送できる形になっているか」が効きます。ファイル1つ、1枚、件名で内容が分かる。この3つを満たしていれば十分です。
取り次いでもらえない場合
「こちらで判断します」「担当は言えません」と返ってくることもあります。この場合、それ以上聞きません。
代わりに、資料を送る先だけ確保します。「代表のお問い合わせ窓口宛にお送りしてもよろしいですか」で足ります。届きさえすれば、社内で回る可能性が残ります。
1枚に何を書くか
転送される前提なので、書く内容も変わります。決裁者は、こちらの会社を知りません。そして、この1枚しか見ません。
入れるのは4つです。誰向けの何か。今のやり方と比べて何が変わるか。導入までに何が必要か。そして、連絡先。
逆に、入れないほうがよいものもあります。会社沿革、受賞歴、細かい機能一覧。これらは1枚の面積を食うわりに、判断材料になりません。決裁者が知りたいのは「自社に関係があるか」だけです。
そして、渡した相手が説明を求められたときに困らないよう、1枚の冒頭に一文で要旨を書いておきます。その一文をそのまま口頭で言えれば、伝言の精度が下がりません。
やってはいけない3つの切り返し
広く紹介されている手法のうち、使わないほうがよいものを挙げます。
1. 断りを質問で返す
「結構です」に対して「何が結構なのでしょうか」と返す手法です。相手の言葉尻を捉えているので、詰問に聞こえます。
短期的には会話が続くことがあります。ただし続いた会話の中身が悪くなる。身構えた相手から、良い情報は出てきません。
2. 断られる前提で選択肢を出す
「今週と来週、どちらがご都合よろしいですか」と、断る余地を残さない形で聞く手法です。
アポイントの日程調整では有効ですが、断られた直後に使うと、断りを無視したことになります。この型は、相手が前向きなときにだけ使ってください。
3. 上位者を引き合いに出す
「同業の◯◯社さんにもご利用いただいていて」と、他社名を出す手法です。
効くこともありますが、社名を出す許可を取っているかどうかが問題になります。取っていない社名を出すのは、その会社に対する裏切りです。許可を取った事例だけを、正確に使ってください。
切り返しを改善する記録の取り方
最後に、切り返しを上達させる方法です。フレーズを増やすのではなく、型の判定精度を上げます。
記録するのは4項目だけ
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 断りの言葉 | 相手が言ったとおりに。要約しない |
| 判定した型 | 反射・現状維持・時期・権限・明確な拒否の5つから選ぶ |
| 返した内容 | どう返したか。型に対応した形だったか |
| その後 | 会話が続いたか、終わったか、次の接点ができたか |
項目を増やすと記録が続きません。この4つで足りますし、増やしたところで見返す人はいません。
その場で書けるようにしておく
架電の直後に書かないと、記憶は型に引きずられます。「たぶん現状維持だった」と後から補正してしまい、記録が判定の答え合わせに使えなくなります。
だから、記録は通話中か、切った直後の10秒で終わる形にしておきます。型は5つから選ぶだけ、その後も3択程度にしておけば、手が止まりません。断りの言葉だけは、聞こえたとおりに書き写してください。ここを要約すると、あとで判定を見直せなくなります。
週に1度、判定を見直す
たまった記録を見て、型の判定が正しかったかを確認します。反射だと思って軽く終えたが、実は時期の断りだった。こういうズレが必ず出ます。
ズレが見つかったら、判定の手がかりを書き足します。たとえば「用件を言う前なら反射、言った後なら別の型」といった形です。フレーズ集ではなく、判定基準を育てていくのが正しい積み上げ方です。
成功例より失敗例を残す
うまくいった切り返しは覚えていますが、失敗したものは忘れます。記録に残すべきなのは失敗のほうです。
とくに「切り返して会話が終わった」ケースは、型の判定を間違えた可能性が高い場面です。ここを集めると、判定基準が早く育ちます。
断られた理由をリストに残す意味については、テレアポの受付突破でも書いています。受付の段階と担当者の段階では、残す項目が違います。
まとめ
- 断り文句はフレーズで覚えない。背後にある状態で4つの型に分ける。反射、現状維持、時期、権限
- 「今後いっさい連絡しないで」は型ではない。切り返さず、記録して引く。法人向けに特定商取引法の電話勧誘規制はかからないが、同法第17条が引いている線は実務の基準として使える
- 相手が個人事業主で、契約が事業と関係ない場合は適用除外に当たらない可能性がある。リストで法人と個人事業主を分けておく
- 反射の「結構です」には粘らない。用件を一文で置いて終える。争わなければ印象が残らず、何の電話だったかだけが残る
- 現状維持の「間に合っています」には比較を持ちかけない。二択で状態を聞く。その電話では売り込まない
- 時期の断りは将来につながる。相手の暦に合わせて次の接点を確定させ、必ず記録する
- 権限の断りは説得の問題ではない。決める部署を聞き、転送できる1枚を送る
- 上達させるのはフレーズの数ではなく、型の判定精度。失敗例を集めて判定基準を育てる
切り返しがうまい人は、返す言葉の引き出しが多いのではありません。相手が今どの状態にいるかを、早く正確に見分けています。
よくある質問
「結構です」と言われたら、どう返すのが正解ですか
用件を言う前に返ってきたなら、それは反射の断りです。粘らず、用件を一文だけ伝えてその場で終えてください。争わないので印象が悪くならず、何の電話だったかだけが残ります。用件を伝えた後で返ってきた「結構です」は別の型なので、そちらは相手の状態を確認する質問に進みます。
「間に合っています」に価格で対抗するのは有効ですか
おすすめしません。この型の相手は今のやり方で回っているので、比べる理由がありません。価格を出すと比較の土俵に乗せようとしていることが伝わり、警戒されます。現在どうしているかを二択で聞いて、状態を把握するところまでに留めてください。
「検討します」と言われたときは、時期の断りとして扱っていいですか
中身を確認してからにしてください。何を、いつまでに、誰が検討するのかが決まっていないなら、実質は反射か現状維持の断りです。時期を確認する質問をして、答えが返ってくれば時期の断り、返ってこなければ別の型として扱います。
法人へのテレアポに法律の規制はありますか
特定商取引法の電話勧誘販売の規制は、相手が営業のために契約する場合は適用されません。第26条第1項第1号で除外されています。ただし相手が個人事業主で、契約の内容が事業と関係ない場合は除外に当たらない可能性があります。リストで法人と個人事業主を分けておいてください。
「もう連絡しないでください」と言われた会社に、半年後なら架電していいですか
やめてください。他の型と違い、相手は検討した結果として断っています。明確な拒否を無視した会社として社名が記録され、担当者が変わっても残ります。営業代行なら、傷むのは依頼元の看板です。拒否の文言、日付、誰が言ったかを記録して、恒久的に対象から外してください。
切り返しがうまくなるには、フレーズを何個覚えればいいですか
フレーズの数は関係ありません。上達させるのは、相手が今どの型にいるかを見分ける精度です。断りの言葉、判定した型、返した内容、その後どうなったか。この4項目を記録して、週に1度、判定が正しかったかを見直してください。とくに切り返して会話が終わったケースは、型を間違えた可能性が高い場面です。
他社の導入事例を出すのは効果がありますか
効くこともありますが、社名を出す許可を取っているかどうかが問題になります。取っていない社名を電話で出すのは、その会社に対する裏切りです。許可を取った事例だけを、内容を正確に伝える形で使ってください。業種と規模だけを伝えて社名を伏せる形なら、許可がなくても使えます。