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最初に読むのは、決裁者でも担当者でもない
フォーム営業の文面を考えるとき、多くの人は「読んでほしい相手」を思い浮かべて書きます。採用の責任者、情報システムの担当者、経営者。
その人は、最初には読みません。
ここを取り違えたまま文面を作ると、どれだけ提案が良くても届きません。
問い合わせフォームの送信先は、たいてい代表のメールアドレスか、総務・情報システムの共有アドレスです。そこにいる人が中身を見て、どこに回すかを判断します。回されなければ、想定した相手には届きません。
これはテレアポの受付と同じ構造でしょう。振り分ける人が判断できる情報を先に置く。それがフォーム営業の文面設計の出発点になります。
文面が通る3つの関門。見ている場所がそれぞれ違う。
1行目で9割が決まる
フォームには件名欄がないことが多く、あっても短く切られます。そのため本文の1行目が件名の役割を持ちます。
1行目に入れる3つ
| 要素 | 書き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 何の話か | 名詞で言い切る。「採用」「請求処理」「セキュリティ」 | 振り分ける人が、どの部署の話か判断できる |
| 誰宛か | 部署名か機能。「採用ご担当者様」「請求書処理をご担当の方」 | 回す先が決まる |
| 提案であること | 「ご提案」「ご案内」と明示する | 隠すと、後で問い合わせだと誤認させたことになる |
悪い例 お世話になっております。 突然のご連絡失礼いたします。 直した例 中途採用の母集団形成についてのご提案です。 採用ご担当部署の方にお読みいただけますと幸いです。
1行目の直し方。上は2行使って情報がゼロになっている。
提案だと明示する理由
営業だと分からないように書く手法がありますが、使わないでください。フォーム営業には特定電子メール法が適用されませんが、隠して開かせたという事実は残ります。
それに、振り分ける人が「これは何の問い合わせか」を判断できないと、どこにも回されずに止まってしまう。隠すことで、通る確率がむしろ下がるわけです。
法令の適用関係についてはフォーム営業は違法なのかで条文まで整理しています。
本文の構造を6ブロックに固定する
毎回ゼロから書くと、書く時間もかかり、質もばらつきます。順番を固定して、埋める内容だけ変える形にします。
- 1行目。何の話か、誰宛か、提案であること
- 名乗り。社名と氏名。1行
- なぜこの会社に送ったか。1行から2行
- 何ができるか。2行から3行
- 取ってほしい行動。1つだけ
- 断る導線と署名。
なぜ順番を固定するのか
理由が2つあります。
1つは、書く時間が減ること。毎回の作業が「埋める」だけになるので、1社あたり数分で終わります。フォーム営業は件数が要る施策なので、ここが重くなると続きません。
もう1つが本題で、改善できるようになることです。構造が毎回違うと、返信が来たときに何が効いたのか分かりません。構造を固定して中身だけ変えれば、変えた箇所と結果が対応します。
型を作るのは楽をするためではなく、比べられるようにするためです。
3番目が最も効く
「なぜこの会社に送ったか」を書けるかどうかで、一斉送信かどうかが判別されます。
書き方は、相手のサイトで見た事実を1つ挙げるだけで足ります。採用ページで複数職種を募集していた。プレスリリースで新拠点の開設を出していた。サービスページに特定の業種向けと書かれていた。この程度で構いません。
逆に言えば、ここを書けない相手は、送る理由がない相手です。文面を作る作業が、リストの精査を兼ねることになります。
「御社の事業に感銘を受け」は書かない
何を見たのか分からない褒め言葉は、一斉送信の印だと受け取られます。書くなら、具体的にどのページの何を見たかまで。感想ではなく、事実を書いてください。
5番目は必ず1つに絞る
資料を送るか、話を聞いてもらうか、どちらかにします。2つ以上置くと、相手は選ぶという作業が発生して、その場で判断が止まります。
そして、返信の手間を最小にしてください。「ご都合のよい日時をお知らせください」は、相手に予定表を開かせる依頼になります。「資料希望とだけご返信ください」なら、4文字で済む。この差は小さくありません。
目的別の3つの型
何を求めるかで、文面の重心が変わります。3つに分けておくと、毎回迷いません。
型1:資料を送る許可をもらう
最も通りやすい型です。相手の負担が小さく、断るのも簡単だから。
使いどころ
商材の説明に資料が要る場合、つまり文章だけでは伝わらない商材で使います。初回の接点としては、これを既定にして構いません。
逆に向かないのは、商材が単純で資料を作るほどでもない場合です。そのときは型2に寄せたほうが、相手の負担がさらに下がります。
中途採用の母集団形成についてのご提案です。 採用ご担当部署の方にお読みいただけますと幸いです。 株式会社◯◯の(名前)と申します。 御社の採用ページで、営業職と技術職を 同時に募集されているのを拝見しました。 弊社では、求人媒体の運用は変えずに 応募数を増やす部分だけをお手伝いしています。 同じ規模の企業での事例を3社分まとめた資料がございます。 ご関心があれば「資料希望」とだけご返信ください。 不要であればご返信は不要です。以後の連絡は控えます。 (署名)
型1。約330字。最も汎用性が高い。
型2:情報提供として送る
すぐに商談にならない商材や、検討期間が長い商材で使う型です。売り込まずに、役立つ情報だけ渡します。
使いどころ
制度改正や法令対応のように、相手が「いずれやらなければならない」と分かっているテーマと相性がよい型です。今すぐの必要はなくても、情報だけは受け取ってもらえます。
注意点が1つ。この型で渡した資料は、そのまま商談にはつながりません。名前と関心を覚えてもらうための型だと理解して使ってください。すぐに数字を求めると、型の選択を間違えます。
請求書の電子化についての情報提供です。 経理業務をご担当の方にお読みいただけますと幸いです。 株式会社◯◯の(名前)と申します。 制度改正への対応で、同じ規模の企業が どこでつまずいたかを10社分まとめました。 弊社サービスの案内ではなく、対応の手順と 見落としやすい点をまとめた資料です。 必要であればお送りします。 ご不要であればご返信は不要です。 (署名)
型2。約260字。売り込まないと明示するのが要点。
この型では、「弊社サービスの案内ではなく」と明示します。書かないと、資料を受け取った時点で営業が始まると警戒されます。そして書いたなら、本当に案内を入れないでください。
型3:担当者を教えてもらう
大きな組織で、どこに話を持っていけばよいか分からない場合の型です。提案ではなく、案内の依頼にします。
使いどころ
従業員数が多く、部署が細かく分かれている相手に効きます。逆に、数十人規模の会社では不要です。フォームの送信先が、そのまま判断できる人につながっていることが多いからです。
相手の規模で型を使い分けると、返信率が変わります。リストに従業員数の列があるなら、そこで分岐させてください。
社内システムのご担当部署をお教えいただけますでしょうか。 株式会社◯◯の(名前)と申します。 セキュリティ対策の見直しについてご提案がございますが、 御社のどちらの部署にご連絡すべきか分からず、 こちらからご連絡いたしました。 担当部署をお教えいただけますと幸いです。 ご対応が難しいようでしたら、その旨だけでも お知らせいただけますと助かります。 (署名)
型3。約210字。提案の中身は入れない。
この型では提案の中身を入れません。入れると、振り分ける人がその場で不要だと判断してしまいます。聞いているのは連絡先だけ、という形にします。
フォームの入力欄に合わせる
文面が良くても、入力欄の使い方でつまずくことがあります。
問い合わせ種別
プルダウンに「お取引のご提案」「協業のご相談」があれば、それを選びます。該当するものがないのに別の種別を選ぶのはやめてください。担当部署に届かず、選択を偽ったことだけが残ります。
「その他」しかない場合は、それを選んで1行目に用件を明記します。種別の選択肢そのものが無いフォームなら、迷う必要はありません。
文字数制限
500字や1,000字で切られることがあります。上限が書かれていなくても、400字から600字に収めるのが現実的です。
制限に引っかかった場合、削るのは4番目の「何ができるか」です。詳細は資料や次のやりとりに回せます。1行目と3番目は削りません。ここを削ると、通る確率が落ちます。
氏名・電話番号の欄
必須になっていることが多い項目です。正確に入れてください。
ここに架空の情報を入れると、相手が折り返せません。フォーム営業の目的は届けることなので、連絡が取れない状態にする意味がありません。
URLの欄
自社サイトのURLを入れる欄がある場合、必ず入れてください。相手が最初に確認するのは、送ってきた会社が実在するかどうかです。
ここが空欄だと、署名にURLを書いていても、それが本物かどうか確かめる手間が増えます。手間が増えた分だけ、確認されずに終わります。
逆に、サイトが無い、あるいは作りかけの状態なら、フォーム営業はまだ早い段階だと考えたほうがよいです。相手は確認できないものに返信しません。
会社名の欄
営業代行の場合、誰の名前で送るかを先に決めておきます。代行会社の名前か、依頼元の名前か。
依頼元の名前で送るなら、その旨を依頼元と合意しておく必要があります。相手から折り返しの電話が来たときに、依頼元が把握していないと混乱します。
使わないほうがよい書き方
「お世話になっております」で始める
初回の連絡では、取引があると誤認させる言い方になります。後で初回だと分かったとき、印象が悪くなります。
そして何より、1行目が情報ゼロになります。フォーム営業では、この1行が最も高価な場所です。
長い自己紹介から入る
創業年、事業内容、実績。これらは相手にとって、まだ読む理由がない情報です。
名乗りは社名と氏名だけで足ります。詳しい情報は、相手が関心を持ってから渡します。
数字を根拠なく置く
「導入企業500社」「コスト30%削減」。こうした数字は、根拠を示せる場合にだけ使ってください。自社で測っていない数字を、他社の記事から借りてくるのは論外です。
示せない数字を置くと、返信が来たときに最初の質問が「その数字の根拠は」になります。そこから信頼を積み直すのは、書かなかった場合より難しくなります。
質問で始めて、答えさせようとする
「御社では採用にお困りではありませんか」のような問いかけで始める書き方があります。
これは相手に考える作業をさせる形なので、フォームでは向きません。電話と違い、相手はその場で答える必要がないからです。考えるのが面倒になった時点で閉じられます。
問いかけを使うなら、本文の後半、関心を持った相手に対してだけにしてください。
複数の窓口に同じ内容を送る
1社に複数のフォームがある場合、全部に送ると社内で重複が可視化されます。1社1通が原則。どのフォームに送るかは、用件に最も近い窓口を選んでください。窓口が分からなければ、代表の問い合わせフォーム1本にします。
送ったあとにやること
文面の話は送信で終わりません。ここを設計していないと、改善もできません。
記録する4項目
| 項目 | 記録する理由 |
|---|---|
| 送信日 | 再送の判断に使う。間隔を空けたか確認できる |
| 使った型 | 型1から型3のどれか。型ごとの結果を比べられる |
| 問い合わせ種別 | 「提案」を選べた会社と「その他」しかなかった会社で差が出る |
| 結果 | 返信あり・自動返信のみ・反応なしの3つ |
記録は送信と同時に書く
あとでまとめて入力しようとすると、まず続きません。フォーム送信の画面を閉じる前に、その場で1行追加する運用にしてください。
項目を4つに絞っているのは、この「その場で書ける」を成立させるためです。増やした項目は、忙しい週に真っ先に空欄になります。
自動返信は「届いた」の証拠になる
フォーム送信後に自動返信メールが来る場合、少なくとも送信自体は成功しています。自動返信すら来ない場合は、送信エラーかアドレスの設定の問題を疑います。
反応なしと送信失敗は、別の問題です。ここを分けずに数えると、文面の改善をしても数字が動きません。
返信が来たときの初動
「資料希望」と返ってきたら、その日のうちに送ってください。関心が続いている時間は短いので、翌日以降になると温度が下がります。
このとき、資料と一緒に長い説明を書かないこと。相手が求めたのは資料であって、追加の説明ではありません。送付の連絡は3行で足ります。
そして、資料を送ったあとに何をするかを、送る前に決めておいてください。何も決めていないと、送ったまま終わります。1週間後に一度だけ確認の連絡を入れる、といった形で構いません。
再送の扱い
「以後の連絡は控えます」と書いたなら、再送しません。書いたことを守らないのは、意思表示を無視したのと同じです。
再送する運用にするなら、その一文を書かないでください。書くか、再送するか、どちらかです。
文面を改善する手順
最後に、文面を良くしていく方法です。全文を書き換えると、何が効いたか分からなくなります。
1つずつ変える
変える順番は、影響の大きいところからです。
- 1行目。ここが最も影響が大きい。名詞の選び方、宛先の書き方を変えて比べる
- 3番目のブロック。なぜこの会社に送ったか。事実の選び方を変える
- 5番目のブロック。取ってほしい行動。資料送付と情報提供で、どちらが返信を得られるか
4番目の「何ができるか」を最初に直したくなりますが、そこまで読まれていない可能性が高い場所です。読まれる前の部分から直してください。
比べられる件数を送る
10通ずつで差が出たように見えても、偶然の範囲です。1つの型につき数十通は必要になります。
件数が確保できないなら、型を減らします。3つの型を同時に試すより、1つの型を磨くほうが早く結果が出ます。
何通で判断してよいか
正確な統計を出す話ではありません。方向が見えればよいので、目安を置きます。
1つの型につき50通を送って、返信が0件なら文面かリストのどちらかに問題があります。1件か2件なら、まだ差を判断できません。5件を超えたあたりから、型ごとの比較に意味が出てきます。
ここで焦って型を変えると、何が効いたか分からなくなります。件数がたまるまでは、同じ型を送り続けてください。
リストの問題か、文面の問題かを分ける
反応がないとき、多くの人は文面を疑います。ですが、リストが原因であることも同じくらいあります。
分ける手がかりは2つです。1つは、業種や規模でまとめて集計すること。特定の業種だけ返信があるなら、リストの絞り方に改善余地があります。
もう1つは、返信の中身です。次に書きます。
返信の中身を残す
断りの返信も残してください。「そういうサービスは使っていません」と「今は必要ありません」では、意味が違います。
前者はターゲットがずれている可能性を示し、後者は時期の問題を示します。リストの問題か文面の問題かを分けるのに、この違いが効きます。
まとめ
- 最初に読むのは振り分ける人。総務や情報システムの担当者が、どこに回すかを判断している
- フォームには件名欄がないことが多いので、本文の1行目が件名の役割を持つ。何の話か、誰宛か、提案であることの3つを入れる
- 営業だと分からないように書かない。隠すと振り分けられず、通る確率がむしろ下がる
- 本文は6ブロックに固定する。なかでも「なぜこの会社に送ったか」が一斉送信かどうかを分ける
- ここを書けない相手は、送る理由がない相手。文面を作る作業が、リストの精査を兼ねる
- 目的別に3つの型を持つ。資料送付、情報提供、担当者の照会。型3では提案の中身を入れない
- 問い合わせ種別は、該当しないものを選ばない。文字数は400字から600字。削るなら「何ができるか」から
- 改善は1つずつ。読まれる前の部分(1行目、3番目)から直す。自動返信の有無で、届いたかどうかを分けて数える
フォーム営業の文面で差がつくのは、提案の巧みさではありません。振り分ける人が判断できる形になっているかどうか。そこだけです。
よくある質問
1行目に何を書けばいいですか
何の話か、誰宛か、提案であることの3つです。「中途採用の母集団形成についてのご提案です」のように、名詞で言い切ってください。最初に読むのは振り分ける人で、その人は1行目だけを見てどこに回すかを決めます。「お世話になっております」から始めると、この1行が情報ゼロになります。
営業だと分からないように書いたほうが読まれませんか
逆です。振り分ける人が「これは何の問い合わせか」を判断できないと、どこにも回されずに止まります。隠すことで通る確率が下がります。さらに、隠して開かせたという事実は残るので、その後の関係にも響きます。
文字数はどのくらいが適切ですか
上限が明記されていないフォームでも、400字から600字に収めるのが現実的です。制限に引っかかった場合に削るのは「何ができるか」のブロックで、詳細は資料や次のやりとりに回せます。1行目と「なぜこの会社に送ったか」は削らないでください。
問い合わせ種別に「営業」の選択肢がない場合はどうしますか
「その他」があればそれを選び、1行目に用件を明記してください。該当するものがないのに別の種別を選ぶのはやめてください。担当部署に届かないうえ、選択を偽ったことだけが残ります。
「なぜこの会社に送ったか」が書けないときはどうすればいいですか
その相手は、送る理由がない相手かもしれません。文面を作る作業が、リストの精査を兼ねていると考えてください。無理に書くと「御社の事業に感銘を受け」のような、何を見たのか分からない褒め言葉になります。それは一斉送信の印として受け取られます。
返信が来ないとき、同じ会社に再送していいですか
「以後の連絡は控えます」と書いたなら、再送しません。書いたことを守らないのは、意思表示を無視したのと同じです。再送する運用にするなら、その一文を書かないでください。書くか再送するか、どちらかです。
反応がないとき、まず何を直せばいいですか
1行目です。次に「なぜこの会社に送ったか」。この2つは読まれる前の部分なので、影響が最も大きくなります。「何ができるか」を直したくなりますが、そこまで読まれていない可能性が高い場所です。また、自動返信すら来ていない場合は文面ではなく送信の問題なので、先にそちらを分けて数えてください。