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ノーコードのサイト制作を副業で受ける|月額の利用料は誰が払うか、支払いオーナーの落とし穴

同じWebサイトをパソコン・タブレット・スマートフォンで表示して確認している机

コードを書かずにWebサイトを作れるサービスが増えました。プログラミングの副業というと学習期間の長さが壁になりますが、この分野は操作を覚えれば数週間で案件に入れます。実際、デザインができる人が制作まで引き受ける流れは珍しくなくなりました。

ただ、この分野にはWordPressの回にも自動化の回にもなかった論点があります。サービスの利用料が、毎月かかることです。しかも契約はサイトごと。誰の名義で契約するかを決めずに作り始めると、納品した後もこちらのカードから引き落とされ続けます。

この記事では、ノーコードのサイト制作を副業で受けるときの構造を分解します。扱うのは、料金のかかり方、支払いの名義、引き渡しの手順、権限の選び方、見積もりの書き方、作業時間、コーディング案件との比較、つまずく場所です。「月いくら稼げました」という結果報告はしません。

料金と権限の記述は、国内で広く使われているサービスのひとつであるStudioの公式ページと公式ヘルプを一次情報にしています。相場はクラウドワークスが発注側に公開しているページです。サービスによって仕組みは違うので、使うサービスの規定は必ずご自身で確認してください。

ノーコード制作は、制作費のほかに毎月お金がかかる

まず、案件の形を整理します。ノーコードのサイト制作は、受注の形が2つに分かれます。

作って渡すだけの案件と、運用まで続く案件

1つは、作って引き渡して終わりの案件です。会社のサイトを1本作り、その後は相手が自分で更新する。制作費だけをもらって完了します。

もう1つは、作った後も更新を任される案件です。月額の保守として受けるか、更新のたびに都度もらうか。どちらにしても、こちらがアカウントに入り続ける状態になります。

この2つは、見積もりも、引き渡しの手順も変わります。どちらなのかを、提案の段階で確認してください。「作ってもらえますか」という依頼文だけでは、どちらか分かりません。

コードを書く案件と違うのは、月額が乗ること

自分で書いたコードをレンタルサーバーに置く形なら、かかるのはサーバー代とドメイン代です。相手が契約していることが多く、こちらは触りません。

ノーコードのサービスは違います。作ったサイトを公開し続けるかぎり、サービスの利用料が毎月かかります。そして、その契約をどちらの名義で結ぶかという問題が必ず発生します。

ここを決めずに進めると、納品した後もこちらのカードから引き落とされます。金額としては月数千円でも、止めるには相手に動いてもらう必要があるという構造が厄介です。理由は後述します。

だから、契約の話を先にする

提案の段階で聞くのは2つです。アカウントはどちらの名義で作るか。利用料はどちらが払うか。

相手がサービスを知らない場合は、こちらから説明します。「このサービスは公開し続けるかぎり月額の利用料がかかります。御社の名義でご契約いただき、私は編集の権限をいただく形が安全です」。この一言が言えるかどうかで、後の面倒がほとんど消えます。

相手の社内で誰の名義にするかが決まらない場合もあります。そのときは、決まるまで制作を進めて、公開だけ待つ形にします。契約が決まらないことを理由に着手を止める必要はありません。止めるべきは公開と、有料プランへの切り替えだけです。

料金はサイト単位。プランで何が変わるか

料金の仕組みを、公式の記述で確認します。Studioの料金ページには「料金のお支払いはサイト単位で」と書かれています。

公式ヘルプが明記している支払いの単位

公式ヘルプはさらに踏み込んで、「Studioのプラン料金は、アカウント単位ではなく契約プロジェクトごとの支払いです」としています。そして「ひとつのプロジェクトで作成・公開できるWebサイトは1つのみです」とも書かれています。

つまり、1サイト=1契約です。3社分のサイトを作れば、3つの契約が並びます。同じヘルプには、あるアカウントが4つのプロジェクトに参加していて、そのうち支払いオーナーになっている2つ分だけが請求される、という例も載っています。

「他プロジェクト分の料金を負担することはありません」と明記されているので、参加しているだけで請求されることはありません。請求されるのは、支払いオーナーになっているプロジェクトの分だけです。

プランごとの金額

公式ページに載っている金額を並べます表示はいずれも1か月あたり)。

プラン 年払い 月払い
Free 0円 0円
Mini 590円 1,290円
Personal 1,190円 1,720円
Business 3,980円 5,460円
Business Plus 9,980円 12,900円

この上にEnterpriseがあり、こちらは問い合わせとされています。年払いと月払いで倍近く変わるプランもあるので、見積もりに書くときは、どちらの前提かを明示してください。

プランで変わるのは、ページ数と機能

金額だけ見ても選べません。公式ページが機能例として挙げているものを拾うと、Freeはページ数50P・CMSモデル3件・ストレージ5GB・フォーム回答数100件・バージョン管理1日間。Miniはページ数2Pと「404」ページで、追加機能として独自ドメイン接続/公開、GA・GTM連携、有料プラン専用サポートが挙げられています。

Personalはページ数150P・CMSモデル5件・フォーム回答数1000件・バージョン管理30日間、追加機能にサイト全体のパスワード制限。Businessはバージョン管理120日間・CMSモデル10件・API連携1件・リダイレクト機能。Business Plusはバージョン管理360日間・CMSモデル30件・API連携無制限・同時接続数1,000件保証・アクティビティログ30日間・優先サポート対応です。

見積もりを作るとき、相手の要件がどのプランに当たるかを先に確認してください。ページ数、フォームの回答数、更新するコンテンツの種類。この3つでだいたい決まります。

プランの選定そのものが、提案の材料になる

相手は、どのプランが必要かを判断できません。ページが10枚でフォームが1つなら下のプランで足りますし、お知らせを毎週更新するならCMSの件数を見る必要があります。

ここを整理して出せると、単なる作業者に見えません。「ご要件だとこのプランで足ります。年払いなら月◯円です」と書いた見積もりは、金額の根拠がある見積もりになります。逆に、必要のない上位プランを勧めると、後で不信につながります。

迷ったら、下のプランから始めて必要になったら上げる、と伝えてください。公式には、プランのアップグレードもダウングレードも手順が用意されています。最初から上を選ばせないほうが、長く付き合えます。実際に運用してみないと、フォームの回答数もページ数も読めません。

支払いオーナーは1人だけ。そして自分では降りられない

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

公式が定義している支払いオーナー

公式ヘルプは、支払いオーナーを「プロジェクト内で発生する支払いを行う権限を持つメンバー」とし、「プロジェクトに1人のみ存在します」と書いています。さらに「プロジェクトを有料プランにアップグレードしたオーナーが自動的に支払いオーナーとなります」とも明記されています。

つまり、制作中にこちらがアップグレードすれば、こちらが支払いオーナーになります。手続きをした覚えがなくても、アップグレードした時点で自動的にそうなります。

降りるには、相手に動いてもらうしかない

そして決定的なのがこの記述です。「お支払いオーナーの変更は、現在のお支払いオーナーが行うことはできません。次にお支払いオーナーとなるオーナーアカウントで操作する必要があります」。

自分で自分を外せません。相手が自分のカードを登録して操作してくれるまで、請求はこちらに来続けます。相手が忙しい、担当が替わった、連絡が途切れた。どれが起きても、こちらには止める手段がありません。

公式には「ご請求は請求時点のお支払いオーナー登録カードに対して行われます」とも書かれています。契約日を起点に自動更新されるので、放っておけば次の請求が来ます。

だから、アップグレードは相手にしてもらう

対策は単純です。有料プランへの切り替えは、相手のアカウントで行ってもらう。制作はFreeのまま進め、公開の直前に相手にアップグレードしてもらう。この順番にするだけで、この問題は起きません。

どうしてもこちらで先に契約する必要があるなら、引き渡しの期限を決めます。「◯月◯日までに支払いオーナーの変更をお願いします。それ以降の利用料は実費でご請求します」。SNS運用代行の回で書いた終了時の手順と同じで、先に合意しておくことが自分を守ります。

どちらの名義で契約するかで、納品後が変わる 制作者がアップグレードした場合 制作者が支払いオーナーになる ↓ 納品しても請求は制作者へ ↓ 自分では外せない 相手の操作を待つしかない 相手がアップグレードした場合 相手が支払いオーナーになる ↓ 請求は最初から相手へ ↓ 制作者は編集の権限だけ 抜けるときも自分で退出できる 制作はFreeで進め、公開の直前に相手にアップグレードしてもらう
契約の名義で、納品後の負担が変わる

公式が示している引き渡しの手順

引き渡しには、公式が手順を出しています。感覚でやらず、これに沿ってください。

4つのステップ

公式ヘルプの「作成したプロジェクトをクライアントへ引き渡したい」には、こう書かれています。まず、クライアントがユーザーアカウントを作成する。次に、引き渡すプロジェクトにクライアントのアカウントをオーナー権限で招待する。

そして、招待したアカウントの権限をオーナー、または支払いオーナーに変更する。最後に、引き渡し元のアカウントがプロジェクトから退出する。この4段階です。

公式は「継続して運用に関わる場合は、メンバーとして引き続きプロジェクトに参加し続けることも可能です」とも書いています。保守まで受けるなら、退出せずに編集者として残るという選択ができます。

有料プランなら、支払いオーナーの変更が必須

同じページに「プロジェクトが有料プランを契約中でお支払いをクライアントが行う場合には、クライアント自身が支払いオーナーになる必要があります」と書かれています。

オーナー権限を渡しただけでは、支払いは移りません。オーナーと支払いオーナーは別の話です。ここを混同したまま「引き渡しました」と報告すると、翌月に自分のカードから引き落とされて気づくことになります。

無料のまま引き渡す場合は、この手順は要りません。相手が後からアップグレードすれば、その時点で相手が支払いオーナーになります。有料にするのは相手、という原則を守れば、順番を間違えません。

アカウントとプロジェクトは別で管理されている

公式は前提として「Studioでは、アカウントとプロジェクトはそれぞれ別で管理され、プロジェクトは他のユーザーアカウントに共有し複数人で管理できます」と説明しています。

だから、アカウントごと渡す必要はありません。ログイン情報を教える、という発想になりがちですが、その必要はない。プロジェクト単位で権限を渡せる仕組みが用意されています。これはSNS運用代行の回で書いた権限の話とまったく同じ構造です。

ログイン情報を教えてしまうと、誰の操作か分からなくなり、パスワードを変えられれば作業もできなくなります。用意されている仕組みがあるなら、そちらを使う。これは相手を疑う話ではなく、両方の記録を残すための手続きです。

引き渡しの日を、納品の日と分けて書く

実務では、制作が終わった日と、相手がアカウントを作って操作してくれる日がずれます。相手の社内で誰の名義にするかを決める時間もかかります。

だから見積もりには、制作の完了日と引き渡しの完了日を分けて書きます。「サイトの制作は◯月◯日まで。引き渡しはご担当者のアカウント作成後、1営業日で完了します」。相手の作業が必要なことを、日程の形で伝えるのが効きます。

アカウントの作成手順も、こちらから案内を送ってください。公式の登録ページのURLと、作成後に教えてほしい情報を1通にまとめる。相手に調べさせないほうが、結果的に早く進みます。ここで止まる案件が、いちばん多い。

3つのロールと、渡す権限の選び方

権限の種類も、公式が定義しています。

オーナー・支払いオーナー・編集者

公式ヘルプによると、オーナーは「プロジェクト全体の管理をするロール」で、エディタ・各種ダッシュボード・メンバー招待・プランや支払いの管理まで制限なく操作できます。人数の制限はなく、複数人を設定できます。

支払いオーナーは「プロジェクトの支払い管理を担当するロール」で、有料プロジェクトにのみ存在し、1プロジェクトにつき1名のみ。編集者は「プロジェクトのコンテンツ制作や一部の管理ができるロール」で、プラン変更や支払い履歴の閲覧はできません。

保守まで受ける場合、こちらに必要なのは編集者の権限です。プランの変更ができない立場でいるほうが、事故を起こせません。多くもらうほど良い、ということはありません。

オーナーを複数にしておく提案

公式は「複数人でプロジェクトを管理する場合、オーナーを複数設定しておくことを推奨します」とし、理由として「万が一、オーナーがログインできなくなった場合でも、他のオーナーがプロジェクト管理を継続できます」と説明しています。

これは、そのまま相手への提案に使えます。担当者が1人しかオーナーになっていない会社は多い。退職や異動でその人が抜けると、サイトを触れる人がいなくなります。公式が推奨している形として伝えられるので、提案の説得力があります。

細かい制限が要るなら、上のプランが必要

公式には、編集者の権限をさらに細かく制限する仕組みの説明もあります。ひとつは編集者権限のメンバーへの高度な権限制限で、Businessプラン以上と書かれています。もうひとつはワークスペースの権限制限機能で、こちらは有料のプランが必要とされています。

相手から「この人には一部だけ触らせたい」という要望が出たら、プランの話になります。要望とプランが結びついていることを説明できると、提案として通ります。できません、で終わらせないことです。

見積もりに書く4項目

ここまでを踏まえて、見積もりに書く項目を整理します。

  • 制作費:ページ数と、原稿・写真の支給の有無で変わる
  • 月額の利用料:どのプランで、年払いか月払いか、誰が払うか
  • 引き渡しの方法:アカウント作成から支払いオーナーの変更までの手順
  • 納品後の関わり方:退出するのか、編集者として残るのか

2つ目を書かない見積もりが多い

制作費だけ書いた見積もりを出すと、相手は「これで全部」だと思います。公開した翌月に利用料の請求が来て、聞いていないという話になる。

金額そのものより、説明していなかったことのほうが問題になります。月額がかかること、それは自分たちが契約するものだということ。この2つを見積もりに1行ずつ書くだけで防げます。

書き方も決めておきます。「別途、サービス利用料が月額◯円かかります(御社名義でのご契約となります)」。金額と名義を同じ行に書くのがコツです。分けて書くと、名義の部分だけ読み飛ばされます。

4つ目を決めておくと、その後が読める

作って終わりなのか、更新まで続くのか。ここを決めておくと、こちらの時間の読み方が変わります。保守まで受けるなら月額で見積もり、単発なら制作費だけにする。

更新の頻度も聞いておきます。月に1回なのか、年に数回なのか。頻度が読めないまま月額で受けると、month by monthで赤字になります。「月2回までの更新を含みます」と上限を書くのが安全です。

更新の依頼の受け口も決めてください。メールなのか、チャットなのか。複数の担当者からばらばらに来ると、どれが承認済みの依頼か分からなくなります。窓口を1人に絞ってもらうのを、契約の条件にする。これは相手の社内の整理にもなります。

1サイトにかかる時間と手取り

制作時間に公的な統計はありません。以下は10ページ程度の会社サイト(原稿と写真は支給される想定)を置いた本メディアの想定モデルで、統計ではありません。

工程 時間 やること
要件とプランの確認 120分 ページ数、フォーム、更新の頻度を聞く
デザインの設計 360分 トップと下層の型を作る
制作 720分 10ページ分を作る
表示の確認 180分 スマートフォンとパソコンで確認
引き渡しと説明 120分 権限の移管、更新方法の説明

25時間で、時間あたり約3,432円

合計は25時間です。クラウドワークスの相場では、WordPressを使ったHPの作成(デザイン+コーディング)が100,000円から、納期の目安は14日前後とされています。ノーコードの制作を同じ価格帯で受けたとして計算します。

100,000円(税抜)なら、税込110,000円からシステム利用料と消費税が引かれて手取りは85,800円。25時間で割ると時間あたり約3,432円です。相場の下限で受けてもこの水準になるのは、コードを書く工程が丸ごと消えているからです。

時間を食うのは制作ではなく、確認と説明

表を見ると、制作そのものは720分で全体の半分以下です。残りは要件の確認、表示の確認、引き渡しの説明に消えています。

ここを圧縮しようとすると、事故が増えます。要件の確認を飛ばせばプランの選定を間違え、表示の確認を飛ばせばスマートフォンで崩れ、引き渡しの説明を飛ばせば翌月に請求が来ます。削るなら制作の工程で、型を使い回して速くするほうです。

特に表示の確認の180分は、削ると必ず跳ね返ります。スマートフォンでの見え方は、パソコンの画面を縮めただけでは分かりません。実機で見る時間を工程に入れておく。ここは資料デザインの回で書いた、投影して初めて読めないと分かる話と同じです。

2本目からは型が効く

トップと下層の型は、次の案件でも土台に使えます。会社ごとに色と写真と文言を差し替えるので、デザインの設計が360分から150分程度に縮みます。資料デザインの回と同じ構造です。

同じ100,000円の案件が21時間程度になり、時間あたりは約4,085円に上がります。続けるほど時間あたりが上がる分野だと言えます。

型と一緒に、説明の文書も使い回せます。引き渡しの手順書、更新のやり方をまとめた1枚。2本目からは、これを渡すだけで説明の時間が半分になります。1本目で作っておく価値があります。

コーディングの案件と、どちらで受けるか

ノーコードで受けるか、コードを書いて受けるか。相場の面から比べます。

依頼の種類 相場と単位 納期目安
WordPressを使ったHPの作成(デザイン+コーディング) 100,000円〜(一式) 14日前後
デザイン・コーディング(TOP・下層の2ページ) 200,000円〜(一式) 30日前後
サイトコーディング(レスポンシブ無し) 30,000円〜/ページ 7日前後

金額の上限は、コードを書く側が高い

2行目のとおり、デザインから作る案件は2ページで200,000円からです。単価の上限を上げたいなら、コードを書く技能のほうが伸びしろがあります。ノーコードは、サービスができる範囲を超えられません。

ただし、この200,000円には30日前後という納期の目安がついています。1件あたりの拘束期間も長いということです。本業がある20代にとって、30日の案件を抱えるのは負担が大きい。金額だけでなく、期間で見る必要があります。

一方、3行目の1ページ30,000円からという数字を見ると、ノーコードで10ページを100,000円で受けるのは、1ページあたりでは安い。ページ数が多い案件ほど、ノーコードの利点が出ます。

選ぶ基準は、相手が自分で更新するかどうか

金額ではなく、納品後で考えるほうが実務的です。相手が自分で文章や写真を差し替えたいなら、ノーコードのほうが向いています。管理画面が分かりやすく、崩れにくい。

逆に、独自の機能が要る、外部のシステムとつなぐ、細かい表示の調整が多い。こういう案件はコードを書く側です。できないことを引き受けるのが、この分野でいちばん危険です。

判断の目安は、要望が「見た目」なのか「仕組み」なのかです。見た目の要望はたいてい実現できます。会員登録、決済、在庫の連動といった仕組みの要望は、サービスの対応範囲を調べてからでないと答えられません。その場で「できます」と言わないこと。

両方できると、提案の幅が出る

理想は、どちらの相場も知っていて、相手の要件で振り分けられる状態です。「この規模ならノーコードで十分です」と言えるのは、コードを書く場合の見積もりも出せる人だけです。

20代のうちにノーコードから入って、必要になったところでコードを覚える。この順番は合理的だと思います。先に案件を取れる状態を作ってから、技能を足す。学習だけの期間が短くて済みます。

ノーコードで案件を受けていると、コードが必要な場面が自然に出てきます。この表示だけ調整したい、この処理だけ足したい。必要になってから学ぶほうが、身につきます。何のために学ぶかが分かっている状態で始められるからです。

つまずく場所は5つに決まっている

この分野でつまずくのは、ほぼ5つです。先に決めておけば防げます。

つまずく場所 先に決めておくこと
自分の名義で契約してしまう アップグレードは相手のアカウントで
月額を見積もりに書かない プランと金額と支払い者を1行ずつ
オーナーを渡して終わりにする 支払いオーナーの変更まで確認
できないことを引き受ける 要件がサービスの範囲内かを先に確認
更新の頻度を決めない 月◯回まで、と上限を書く

1・自分の名義で契約してしまう

いちばん多い失敗です。制作中に公開の確認をしたくて、つい自分でアップグレードしてしまう。公式の定義どおり、その時点でこちらが支払いオーナーになります。

確認のためなら、公開前の状態で共有する方法がないかを先に調べてください。アップグレードは、公開する日まで引っ張る。これを手順として決めておきます。

公開の日が決まったら、相手に作業を依頼します。「◯日に公開しますので、前日までにアップグレードをお願いします」。こちらのカードを一度も登録しないまま納品まで進むのが理想の形です。登録しなければ、請求されようがありません。

2・月額を見積もりに書かない

制作費だけを提示すると、相手は総額だと受け取ります。後から利用料の話をすると、隠していたように見える。

金額の大小ではなく、最初に言ったかどうかで印象が決まります。見積もりの備考に1行入れておけば、それで済む話です。

口頭で伝えただけにしないことも大事です。打ち合わせで話しても、決裁する人には伝わっていません。見積書という、後から読み返される書類に残す。これは金額の話をするときの原則です。ドメイン代が別にかかる場合も、同じように書いておきます。

3・オーナーを渡して終わりにする

オーナー権限を渡すと、引き渡した気になります。ですが公式は、有料プランでクライアントが支払う場合は「クライアント自身が支払いオーナーになる必要があります」と明記しています。

引き渡しの完了条件を、支払いオーナーが相手に変わったことの確認に置いてください。相手の画面で確認してもらい、その返信をもって完了とする。ここまでやって初めて引き渡しです。

自分のダッシュボードでも確認できます。公式によると、支払いオーナーになっているアカウントには[カード情報を変更する]と表示されます。この表示が消えていれば、こちらは支払いオーナーではありません。両側で確認すると確実です。

4・できないことを引き受ける

ノーコードのサービスには、できる範囲があります。契約の後で「これはできません」と言うと、信用を失います。

要件を聞いた段階で、迷うものは持ち帰ってください。公式のヘルプで調べ、できるかどうかを確認してから返事をする。その場で答えないことが、この分野では正解です。

調べても分からなければ、サービスの問い合わせ窓口に聞きます。有料プランには専用のサポートがつくと公式ページに書かれています。分からないことを、分からないまま見積もりに乗せない。1日待ってもらうほうが、後で揉めるよりはるかに安く済みます。

5・更新の頻度を決めない

保守まで受けるとき、頻度を決めないと月額が割に合わなくなります。「ちょっとした変更」が週に何度も来ることがあります。

上限を書いてください。「月2回までの更新を含みます。それを超える場合は1回あたり◯円で承ります」。上限があると、相手もまとめて依頼するようになります。お互いにとって楽な形です。

作業の定義も書いておきます。文章の差し替えは1回、ページの追加は別料金、写真の加工は含まない。何が1回に数えられるかを決めるのは、修正の回数を決めるときと同じ考え方です。ここを曖昧にすると、月額が実質的に無制限の保守になります。

30代につながるのは、他人の契約を設計できること

このメディアは、20代の副業を「30代に何が残るか」で選ぶ立場で書いています。ノーコード制作で残るのは、特定のサービスの操作ではありません。

誰の名義で、誰が払うかを設計する力

残るのは、契約の名義と支払いの流れを、先に設計する力です。誰のアカウントで契約し、誰が払い、終わるときにどう戻すか。

30代になると、この判断をする場面が増えます。部署でツールを導入する、外注先にアカウントを渡す、退職者の権限を整理する。担当者の個人名義で契約されたまま放置されているサービスは、どの会社にもあります。それを整理できる人は重宝されます。

整理の順番も、この仕事で身につきます。何が契約されているかを洗い出し、名義を確認し、法人の名義に寄せ、権限を複数人に持たせる。一度やった手順は、対象が変わっても使えます。サイトでもツールでも同じです。

止められない契約の怖さを、体で知っていること

自分では降りられない支払いオーナーを一度経験すると、契約の設計に慎重になります。これは知識ではなく、経験として残ります。

新しいサービスを見たときに、まず「どうやって解約するか」「誰が払う設定になるか」を確認する癖がつく。始め方より、終わり方から確認するという習慣は、仕事全般で効きます。

これは契約に限りません。案件を受けるときの「どうなったら終わりか」、人に仕事を頼むときの「いつ返してもらうか」。終わりを先に決める人は、途中で困りません。ノーコード制作は、それを小さな規模で練習できる仕事です。

相手に説明して、動いてもらう力

この仕事では、相手に作業をしてもらう場面が必ずあります。アカウントを作ってもらう、アップグレードしてもらう、権限を変更してもらう。

手順を分かりやすく伝え、期限を決め、完了を確認する。自分でやるより、人に動いてもらうほうが難しい。30代でチームを持ったときに効くのは、この部分です。作業の速さではありません。

コツは、相手の手数を減らすことです。手順を3つ以内にまとめ、URLを添え、期限を書く。相手が考える余地をなくすほど、早く動いてもらえます。これは指示の出し方そのもので、30代で最初につまずく人が多い部分でもあります。

まとめ

  • ノーコード制作は制作費のほかに月額の利用料がかかる。Studioの公式ページは「料金のお支払いはサイト単位で」とし、公式ヘルプは「アカウント単位ではなく契約プロジェクトごとの支払い」「ひとつのプロジェクトで作成・公開できるWebサイトは1つのみ」と明記
  • プラン(1か月あたり・年払い/月払い)はFree 0円、Mini 590円/1,290円、Personal 1,190円/1,720円、Business 3,980円/5,460円、Business Plus 9,980円/12,900円。上位にEnterprise(問い合わせ)
  • 支払いオーナーは1プロジェクトに1名のみ。有料プランにアップグレードしたオーナーが自動的に支払いオーナーになる
  • そして「お支払いオーナーの変更は、現在のお支払いオーナーが行うことはできません」。自分では降りられないので、アップグレードは相手のアカウントでしてもらう
  • 引き渡しは公式の4手順(相手がアカウント作成→オーナー権限で招待→オーナーまたは支払いオーナーに変更→引き渡し元が退出)。保守まで受けるなら退出せず編集者として残る
  • 想定モデルは10ページで25時間。100,000円の案件なら手取り85,800円、時間あたり約3,432円。2本目からは型が効いて約4,085円
  • 単価の上限はコードを書く側が高い(デザイン・コーディング2ページで200,000円〜)。相手が自分で更新するかどうかで選ぶ

よくある質問(FAQ)

プログラミングの知識がなくても受けられますか。

サービスの操作を覚えれば制作自体はできます。ただ、この記事で書いたとおり、つまずくのは操作ではなく契約と権限のほうです。料金が誰に請求されるか、引き渡しに何が必要か。公式のヘルプを読んで手順どおりに進められることが、実質的な条件になります。

月額の利用料は、自分が払って制作費に含めてはいけませんか。

その形も取れますが、勧めません。公式の記述どおり「お支払いオーナーの変更は、現在のお支払いオーナーが行うことはできません」。自分で降りられないため、相手が操作してくれるまで請求が続きます。相手の名義で契約してもらい、こちらは編集の権限だけをもらう形が安全です。

どのプランを勧めればいいですか。

ページ数、フォームの回答数、更新するコンテンツの種類の3つで決まります。公式ページの機能例では、Freeがページ数50P・CMSモデル3件・フォーム回答数100件、Personalがページ数150P・CMSモデル5件・フォーム回答数1000件、Businessがバージョン管理120日間・CMSモデル10件・API連携1件・リダイレクト機能などとされています。要件を聞いてから、必要な機能が入っている最も下のプランを提案してください。

納品後も更新を任されたら、どう受けますか。

編集者の権限をもらって残ります。公式の定義では、編集者はデザインエディタやCMS、フォームの操作ができ、プラン変更や支払い履歴の閲覧はできません。保守として受ける場合は「月2回までの更新を含みます」のように上限を書いてください。頻度を決めずに月額で受けると、割に合わなくなります。

副業として始めるとき、確定申告や会社への影響はどうなりますか。

この記事ではノーコード制作の中身だけを扱っています。副業全般の論点は姉妹メディア「20代の放課後」で扱っています。確定申告と20万円ルール、副業の始め方を参照してください。


契約する前に、引き渡しの手順を読んでおく

アカウントの作成、オーナー権限での招待、支払いオーナーの変更、引き渡し元の退出。公式ヘルプに手順が書かれています。受注の前に目を通しておくと、見積もりに何を書くべきかが分かります。

公式の引き渡し手順を見る

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