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IT未経験からの転職|「IT業界」を職種まで絞ると、準備するものが1つに決まる

分岐する線路。IT業界への職種変更を検討しているイメージ

IT業界に移りたい。ただ何から始めればいいか分からない。プログラミングを学ぶべきなのか、それ以外の道があるのか、学んだところで採ってもらえるのか。

まず整理が必要です。IT業界は職種の集合であって、1つの仕事ではありません。そして企業が処遇を決めるとき最重視するのは「経験・能力・知識」で53.7%、免許・資格は10.7%です。学習の証明だけでは、最も見られている部分に届きません。

この記事では、職種の分解、未経験から入りやすい順序、前職経験の評価される部分、学習の位置づけ、スクールの判定、年収の設計、入る前の確認項目までを扱います。書類の書き方は異業種転職の職務経歴書と合わせて読んでください。

「IT業界」は職種の集合であって、1つの仕事ではない

まず職種を特定する

「IT業界に転職したい」という状態のままでは、応募先も準備する内容も決まりません。開発、インフラ、サポート、営業、企画。それぞれ必要な経験が違います。最初にやるのは職種の特定です。

特定の仕方は、前職の経験との距離で決めます。距離が近い職種から検討するほうが、通る確率が上がります。いきなり最も距離の遠い職種を選ぶと、準備期間が長期化します。

未経験の意味が職種で変わる

開発職の未経験は「コードを書いた実務がない」ですが、IT営業の未経験は「業界知識がない」だけです。後者は、営業経験があれば未経験の範囲が狭くなります。同じ「未経験」でも、埋めるべき距離が違います。

この違いが分かると、準備の内容が変わります。開発なら制作物、IT営業なら業界知識。用意するものが1つに絞れると、準備期間も短くなります。

企業側の採用理由

事業所が中途採用を行う理由は、「経験を活かし即戦力になるため」60.7%、「離職者の補充のため」53.6%が上位です(厚生労働省 令和2年転職者実態調査)。未経験採用はこの枠組みの外側にあります。

未経験で採る場合、企業側は教育の負担を引き受けることになります。そのため「覚える速さ」と「続ける見込み」が判断の中心になります。ここに答える準備が必要です。

未経験から入りやすい職種の順序

距離の近い順に並べる

職種 主な業務 前職経験の使い方
IT営業 提案、見積、既存顧客の対応 営業経験がそのまま使える。最も距離が近い
カスタマーサポート 問い合わせ対応、手順の案内 接客・電話応対の経験が直接対応
インフラ運用・監視 稼働の監視、一次対応、手順書の実行 手順の正確な実行が中心。未経験可の求人が多い
テスト・品質管理 動作確認、不具合の記録と報告 正確性と記録の丁寧さが評価される
開発(プログラマ) 設計に基づく実装、修正 最も距離が遠い。制作物が必要

並び順は、必要な学習量の少ない順です。開発職を第一希望にすると、準備期間が最も長くなります。目的が「IT業界に入ること」なら、上の職種から検討するほうが早く到達できます。

入ってから移る経路がある

IT業界では、入社後に職種を変える例が珍しくありません。運用から開発へ、サポートから企画へという移動があります。業界の中にいると、社内の異動で移れる可能性が出てきます。

引き止めの提示で最も多いのは「配置転換をする」で37.0%です(同調査 表12)。会社側も異動を手として持っているため、業界に入ってから職種を変える経路は現実的です。判定は社内異動という選択肢で扱っています。

「未経験可」の中身を読む

求人票の「未経験可」は、条件が付いていることがあります。学習歴が必要、夜勤がある、契約社員からの開始など。職種名と「未経験可」の表記だけで判断しないでください。

2024年4月から、就業場所と業務内容の「変更の範囲」が労働条件の明示事項に追加されています(労働基準法施行規則の改正)。将来的な担当の範囲も、書面で確認できます。読み方は求人票の読み方で扱っています。

前職の経験が評価される部分

4つに分けて棚卸しする

前職の経験をIT職種の言葉に翻訳する 前職での呼び方 クレーム対応をしていた IT職種での呼び方 障害時の一次対応と切り分け 業務マニュアルを作った 手順書の作成と 運用ルールの整備 他部署と調整していた 要件の確認と 関係部門との仕様調整 在庫の数字を毎日 確認していた データの整合確認と 差異の原因調査 ※ やっていないことは書かない。実際の業務を別の呼び方で書くだけ

翻訳の要点は、「誰に対して」ではなく「何を処理していたか」で書くことです。IT職種の業務は、手順・記録・切り分け・調整で構成されています。前職の業務も、この枠組みで書き直せます。

注意点は、翻訳であって誇張ではないことです。やっていないことを書くと面接で崩れます。実際にやった業務を、別の呼び方で書き直すだけに留めてください。面接では、翻訳前の具体的な場面を聞かれます。

最も評価されるのは「切り分け」

IT職種で共通して求められるのは、問題を切り分ける能力です。何が原因かを絞り込む手順を持っているか。これは業種を問わず発生していた業務です。

書き方の例を挙げます。「返品の連絡を受けたとき、商品側の不良か配送時の破損か出荷時の誤りかを、伝票と写真で切り分ける手順を運用していた」。原因の絞り込みを手順として書けると、職種が違っても評価されます。

学習歴の書き方

免許・資格を最重視した事業所は10.7%で、経験・能力・知識の53.7%には及びません(同調査 図1)。資格や受講歴だけを並べると、最も見られている部分が空欄になります。

学習歴は、成果物と接続して書きます。「基本情報技術者を取得し、学習内容を使って業務の集計作業を自動化した」。学んだことを何かに使った事実があると、学習が能力の証拠になります。

学習だけでは足りない理由

「学んだ」と「作った」の差

教材を終えたことと、動くものを作ったことは別です。採用側が見たいのは後者です。教材の演習は答えが用意されていますが、実物には用意されていません。

差が出るのは、詰まったときの対処です。何を調べ、誰に聞き、どう解決したか。この過程が語れると、入社後の学習速度が予測できます。教材の完了だけでは、この予測ができません。

成果物は小さくてよい

大きなものを作る必要はありません。自分の業務で困っていたことを1つ解決したもので十分です。集計の自動化、確認作業の簡略化、記録の仕組み。規模より、実際に使ったかどうかが重要です。

実務で使った成果物には強みがあります。要件を自分で決め、使い勝手を調整し、不具合を直しているためです。この一連の流れが、開発の工程と対応します。

提出できる形にする

成果物は、見せられる形にしておいてください。動作する状態、または画面の記録と説明文です。説明文に書くのは、何を解決したか、どう作ったか、詰まった箇所です。

現職の情報を含む場合は、そのまま提出できません。データを架空のものに置き換えたうえで提出してください。守秘義務に触れる提出は、それ自体が評価を下げます。

スクールを使うかどうかの判定

3つの基準で判定する

基準 使う価値がある場合 独学で足りる場合
詰まったときの対処 独学で1週間止まった経験がある 調べて自力で進められている
期限の管理 一人だと着手が後回しになる 週◯時間を自分で確保できている
費用の回収 受講料を年収の上昇で回収できる見込み 回収の見込みが立たない

3つのうち2つが当てはまるなら、費用を払う価値があります。逆に、独学で進められていて期限も守れているなら、費用の効果は小さいです。まず1か月独学してから判定するのが確実です。

「就職保証」の読み方

就職支援や保証が付いている場合、条件を必ず確認してください。紹介先の業種、雇用形態、想定年収、保証の適用条件。これらが明示されていない場合は、判断材料になりません。

特に、紹介先が特定の業態に偏っている場合があります。「IT業界に入れる」ことと「希望の職種に就ける」ことは別です。紹介の実績を職種別に聞いてください。

公的な制度の確認

教育訓練給付制度の対象講座であれば、受講料の一部が支給されます。転職準備でこの制度を利用した人は、準備活動を行った人のうち一定数にとどまります(同調査 表18の準備活動の内訳)。使える制度が使われていない状態です。

対象になるかは講座ごとに異なります。申込前に、ハローワークで対象講座かどうかを確認してください。受講開始後の申請では対象外になる場合があります。

年収は一度下がる前提で設計する

賃金変化の実態

転職による賃金変化は、増加39.0%・変わらない20.2%・減少40.1%です(同調査 表13)。3割以上減った人も10.9%います。未経験での職種変更は、減少側に入る確率が上がります。

理由は処遇の決め方です。最重視されるのは経験・能力・知識53.7%で、前職の賃金を最重視した事業所は0.4%です。前の年収は引き継がれません。

回復の見込みを計算する

下がる場合、戻るまでの目安は2〜3年です。業務を一通り回せるまでに1年、実績として説明できるものが出るまでにもう1年、処遇に反映されるのが次の評価時期。この積み上げになります。

耐久月数も先に出してください。月の固定費が22万円、貯蓄が120万円、転職後の手取りが18万円なら、不足は月4万円。120÷4で30か月、2年半は維持できます。年収の実態は転職で年収は上がるのかで扱っています。

最初の提示額の見方

提示額は内訳を分解してください。固定給、みなし残業、手当。特に固定残業代が含まれている場合、時間単価に割り戻すと実態が変わります。月給30万円に45時間分が含まれていれば、基本給部分は22万円台です。

交渉の余地は限られますが、初回評価の時期は相談できます。1年後の評価を半年後に前倒しできれば、回復が早まります。交渉の材料は転職の年収交渉で扱っています。

入る前に確認する4項目

①実際に担当する業務

職種名と実際の業務が一致しないことがあります。「エンジニア」で採用されて、実際は運用監視だけという場合です。入社後6か月で担当する業務を、具体的に確認してください。

確認の仕方は、直近で入った未経験者の例を聞くことです。「昨年入った未経験の方は、今どんな業務をされていますか」。制度ではなく実例を聞くと、実態が分かります。

②教育の中身

転職者に教育訓練を実施した事業所は74.5%で、内訳は計画的OJT79.4%、入職時ガイダンス46.6%、能力・知識の付与34.5%です(同調査)。未経験で入る場合、3番目があるかが重要です。

研修期間の長さ、その間の業務、指導者が付くかを確認してください。「OJTで覚えてもらう」だけの場合、実質的に自習になる可能性があります。

③夜勤・シフトの有無

インフラ運用や監視の職種では、夜勤やシフト勤務が含まれることがあります。求人票に明記されていない場合もあるため、確認してください。生活時間への影響が大きい項目です。

夜勤がある場合は、頻度と手当を数字で聞いてください。月何回、1回あたりいくらか。年収の提示額に夜勤手当が含まれている場合、夜勤が減ると年収も下がります。

④職種を変える経路

運用から開発へ移りたい場合、その経路が実際にあるかを確認してください。制度があるかではなく、直近3年で何人が移ったかです。実績がなければ、制度は運用されていません。

処遇を決める最大の要素は経験・能力・知識で53.7%なので、入ってから経験を積めば評価の対象は増えます。ただし職種を移れる仕組みがあるかは、会社ごとに違います。

まとめ

  • IT業界は職種の集合。開発・インフラ・サポート・営業・企画でそれぞれ必要な経験が違うため、最初に職種を特定する
  • 未経験の意味も職種で変わる。開発は「コードを書いた実務がない」、IT営業は「業界知識がない」だけ
  • 未経験採用は「経験を活かし即戦力」60.7%という枠組みの外側。判断の中心は覚える速さと続ける見込み
  • 距離の近い順はIT営業、カスタマーサポート、インフラ運用、テスト、開発。開発を第一希望にすると準備期間が最も長い
  • 入社後に職種を移る経路がある。引き止めの提示で最多は「配置転換」37.0%で、会社側も異動を手として持っている
  • 「未経験可」には条件が付くことがある。学習歴、夜勤、契約社員からの開始など
  • 前職経験の翻訳は「誰に対して」ではなく「何を処理していたか」で書く。クレーム対応は「障害時の一次対応と切り分け」
  • 最も評価されるのは切り分け。原因の絞り込みを手順として書けると、職種が違っても評価される
  • 免許・資格を最重視した事業所は10.7%。学習歴は成果物と接続して書く
  • 「学んだ」と「作った」は別。採用側が見たいのは、詰まったときに何を調べ誰に聞きどう解決したか
  • 成果物は小さくてよい。自分の業務の困りごとを1つ解決したもので十分。現職の情報は架空データに置き換える
  • スクールの判定基準は3つ。独学で1週間止まった経験/一人だと着手が後回しになる/受講料を回収できる見込み。2つ当てはまれば価値がある
  • 「就職保証」は紹介先の業種・雇用形態・想定年収・適用条件を確認する。職種別の紹介実績を聞く
  • 賃金変化は増加39.0%・減少40.1%。前職の賃金を最重視は0.4%で前の年収は引き継がれない。回復の目安は2〜3年
  • 入る前に確認するのは4項目。入社後6か月の業務・教育の中身(能力知識の付与は34.5%)・夜勤の頻度と手当・職種を移った直近3年の実績

よくある質問(FAQ)

IT未経験ですが何から始めればいいですか。

職種の特定からです。「IT業界に転職したい」のままでは応募先も準備内容も決まりません。開発、インフラ、サポート、営業、企画で必要な経験が違います。前職の経験との距離が近い職種から検討してください。営業経験があればIT営業、接客経験があればカスタマーサポートが最も距離が近く、開発職は最も遠いため準備期間が長くなります。

プログラミングを学べば転職できますか。

学習だけでは足りません。免許・資格を最重視した事業所は10.7%で、経験・能力・知識の53.7%には及びません。教材を終えたことと動くものを作ったことは別で、採用側が見たいのは後者です。詰まったときに何を調べ、誰に聞き、どう解決したかを語れる状態にしてください。成果物は小さくてよく、自分の業務の困りごとを1つ解決したもので十分です。

スクールに通うべきでしょうか。

まず1か月独学してから判定してください。基準は3つで、独学で1週間止まった経験がある、一人だと着手が後回しになる、受講料を年収の上昇で回収できる見込みがある、です。2つ当てはまれば費用を払う価値があります。就職保証が付いている場合は、紹介先の業種・雇用形態・想定年収・適用条件と、職種別の紹介実績を確認してください。教育訓練給付の対象講座かはハローワークで申込前に確認してください。

前職の経験は何も使えませんか。

使えます。IT職種の業務は手順・記録・切り分け・調整で構成されているため、前職の業務も同じ枠組みで書き直せます。クレーム対応は「障害時の一次対応と切り分け」、業務マニュアル作成は「手順書の作成と運用ルールの整備」、他部署との調整は「要件の確認と関係部門との仕様調整」です。最も評価されるのは原因の絞り込みを手順として持っていることです。

年収はどのくらい下がりますか。

個別の金額は会社によりますが、下がる前提で計算してください。賃金変化は増加39.0%・変わらない20.2%・減少40.1%で、3割以上減った人も10.9%います。前職の賃金を最重視した事業所は0.4%なので前の年収は引き継がれません。回復の目安は2〜3年です。貯蓄で何か月成り立つかを先に計算し、提示額は固定残業代を時間単価に割り戻して実態を確認してください。

運用から開発に移れますか。

経路としては存在しますが、会社ごとに違います。制度があるかではなく、直近3年で何人が実際に移ったかを確認してください。実績がなければ制度は運用されていません。あわせて、入社後6か月で担当する業務を具体的に確認してください。「エンジニア」採用で実際は運用監視だけという場合があるため、昨年入った未経験者が今どんな業務をしているかを聞くと実態が分かります。

転職は、人生の経営判断です

「IT業界に入りたい」を職種まで絞ると、準備するものが1つに決まります。学習の証明ではなく、詰まって解決した過程を語れる状態が、最も見られている53.7%に届きます。

出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(図1・表12・表13・表18・中途採用を行う理由・転職者に対する教育訓練の実施状況)/2024年4月施行の労働条件明示ルール

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