
求人票を100件見ても決まらない。どれも似たような条件が並んでいて、違いが分からない。応募してみたら、面接で聞いた話が求人票と違っていた。
求人票が読みにくいのには理由があります。求人票は応募者を集めるための書類で、あなたに適用される条件を示す書類ではないからです。役割を理解したうえで読むと、読み取れる情報が変わります。
この記事では、給与欄・仕事内容欄・応募要件の読み方、書かれていないことから読み取る方法、そして応募前に確認すべき5項目を解説します。内定後の条件確認は内定を承諾する前にで扱っています。
求人票は「募集の条件」であって「契約の条件」ではない
2つの書類の役割
求人票に書かれているのは、「この範囲で採用を予定している」という募集の条件です。実際にあなたに適用される条件は、選考を経て示される労働条件通知書で確定します。
この違いを理解していないと、求人票の条件をそのまま自分の条件だと考えてしまいます。給与欄に幅がある場合、下限に近い提示になることは普通にあります。
企業側の募集経路は複数ある
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によると、企業が転職者を募集した方法は、ハローワーク等の公的機関57.3%、求人サイト・求人情報専門誌等43.2%、縁故27.6%、自社のウェブサイト26.6%、民間の職業紹介機関24.8%です(複数回答)。
同じ企業が複数の経路で募集していることも多く、経路によって記載内容が違うことがあります。これは後の章で扱います。
給与欄の読み方
幅の下限を基準に考える
「月給25万円〜45万円」のように幅で書かれている場合、上限は経験が十分にある人向けの金額です。自分が当てはまるのは、多くの場合、下限から中央の間だと見ておくのが安全です。
上限を基準に比較すると、現職が実際より低く見えます。複数社を比べるときは、すべて下限で揃えて比べると実態に近くなります。
幅が極端に広い場合(月給25万円〜60万円など)は、複数の等級や職位をまとめて1つの求人にしている可能性があります。この場合、自分がどの等級で想定されているかを面接で確認しないと、提示額の予想がまったく立ちません。
固定残業代の有無を必ず見る
| 記載 | 読み取ること |
|---|---|
| 月給30万円(固定残業代6万円・30時間分を含む) | 基本給は24万円。30時間の残業が前提の設計 |
| 月給30万円(別途残業代支給) | 基本給30万円。残業した分は別に支払われる |
| 月給30万円(時間外手当含む) | 時間数が書かれていない。応募前に確認が必要 |
| 年収400万円〜(賞与含む) | 月額が分からない。賞与の支給実績を確認する |
3行目と4行目は情報が不足しています。時間数が書かれていない固定残業代と、月額が分からない年収表記は、応募前に確認すべき項目です。
時給に割り戻して比べる
固定残業代が含まれる場合は、労働時間で割り戻してください。月給30万円に30時間分の固定残業代が含まれるなら、想定される労働時間は月190時間。1時間あたり約1,579円です。
一方、月給28万円で固定残業代なしなら、160時間で約1,750円。提示額が2万円低いほうが、時間あたりでは170円ほど高くなります。金額だけでは比較になりません。
仕事内容欄から読み取れること
業務の粒度で組織の規模が分かる
仕事内容の書き方には、組織の性質が表れます。業務が細かく分かれて書かれているなら分業が進んだ組織、幅広く書かれているなら一人の担当範囲が広い組織です。
「顧客への提案から受注後の導入支援、請求処理まで」と書かれていれば、担当範囲は広く、一人で一通りの経験が積めます。一方「新規顧客への提案」だけなら、分業されている可能性が高くなります。どちらが良いかは、自分が何を得たいかによります。
「等」「など」が多い場合
「営業活動、資料作成、顧客対応等」のように「等」が多用されている場合、業務の範囲が確定していないか、書ききれないほど多いかのどちらかです。
この場合、面接で「実際に時間を使っている業務の上位3つ」を聞いてください。求人票の記載順と、実際の時間配分は一致しないことがあります。
とくに、魅力的に見える業務が先頭に書かれ、実際の時間の大半は別の作業だった、という食い違いはよくあります。「企画立案」と書かれていても、実務の8割が資料作成と調整だということは珍しくありません。時間配分を聞くだけで、この差は事前に分かります。
募集の背景が書かれているか
「増員募集」「欠員補充」「新規事業立ち上げ」といった背景が書かれている求人は、情報量が多いと言えます。背景によって、入社後の状況が大きく変わるからです。
増員なら教える人がいる可能性が高く、欠員補充なら前任者が抜けた後の引き継ぎになります。新規事業なら手順が固まっていません。書かれていない場合は、面接で聞く価値があります。
応募要件の「必須」と「歓迎」
必須要件は満たす、歓迎要件は満たさなくてよい
応募要件は通常、必須(MUST)と歓迎(WANT)に分かれています。必須を満たしていなければ書類選考を通りにくく、歓迎は満たしていれば有利になる程度です。
歓迎要件をすべて満たそうとして応募をためらう人がいますが、その必要はありません。歓迎要件は、企業が「あればなお良い」と考えている項目を並べたものです。
必須要件の書き方で判断する
| 必須要件の書き方 | 読み取ること |
|---|---|
| ◯◯の実務経験3年以上 | 年数で線を引いている。未経験は通りにくい |
| ◯◯の経験(年数不問) | 経験の有無だけを見ている。短くても応募価値あり |
| 業種未経験可、職種経験必須 | 職種の経験が評価軸。業界は問わない |
| 学歴・経験不問 | 人物重視か、応募が集まりにくい職種のどちらか |
3行目は、異業種から移る人にとって最も応募しやすい形です。同じ職種の経験があれば、業界が違っても評価の土俵に乗れます。異業種転職の考え方は未経験の異業種転職で後悔する人の共通点で扱っています。
「未経験歓迎」の2種類
未経験歓迎の求人には、育成の仕組みがある場合と、採用が追いつかず条件を下げている場合の2種類があります。求人票だけでは見分けられません。
見分けるには面接で聞きます。「未経験で入られた方は直近で何名いますか」「その方は今どんな業務を担当されていますか」。人数とその後の担当業務が具体的に返ってくるなら、育成の実績があります。
書かれていないことから読む
記載がない項目に意味がある
書かれていないこと自体が悪いわけではありません。紙面の制約で書けないことも多くあります。重要なのは、記載がない項目を「不明」として認識し、面接で確認することです。
読むときは、あるものを読むだけでなく、自分が知りたい項目の一覧を先に作ってから照らすのが効率的です。先に一覧がないと、書かれている情報に引きずられ、何が足りないかに気づけません。
一覧は上の4項目に、自分の軸3つを加えた7項目で足ります。求人票を読みながら、埋まった項目と埋まらなかった項目を分けていけば、そのまま面接の質問リストになります。
更新日を見る
求人票には掲載日や更新日が表示されていることがあります。長期間掲載され続けている求人は、採用が決まっていない可能性があります。
理由は2つ考えられます。応募が集まらない条件になっているか、採用基準が高いか。どちらも悪いとは限りませんが、面接で「この募集はいつから出されていますか」と聞くと、状況が分かります。
同じ企業の求人を複数の経路で見る
経路によって記載が違う
同じ企業が、求人サイト、自社の採用ページ、エージェント経由で募集していることがあります。この3つで記載内容が違うことは珍しくありません。
特に自社の採用ページは、文字数の制約が少ないため情報量が多い傾向があります。気になる企業があれば、求人サイトの情報だけで判断せず、採用ページも見てください。
記載が違う場合、どちらが正しいかは面接で確認します。多くは更新の時期がずれているだけですが、条件面で差がある場合は重要です。「求人サイトでは◯◯と拝見しましたが、採用ページでは△△となっています」と事実確認の形で聞いてください。
エージェント経由でしか出ない情報
エージェント経由の求人では、公開求人に書かれていない情報が得られることがあります。募集の背景、選考の通過基準、前任者が辞めた理由など、公開情報にしにくい内容です。
ただし、企業側でエージェントを使っているのは24.8%にとどまります。エージェントだけを見ていると、4分の3の企業が視界に入りません。使い方は転職エージェントに「迷っている」と相談していいのかで扱っています。
ハローワークの求人も見る
企業側の募集方法で最も多いのはハローワーク等の公的機関で57.3%です。求人サイトだけを見ていると、この層が丸ごと抜けます。特に規模の小さい会社や地域の会社は、ここに集まります。
ハローワークインターネットサービスは、窓口に行かなくても検索できます。地域と職種で絞って見るだけでも、その地域の相場観がつかめます。
記載の形式は求人サイトと違い、賃金の内訳や就業時間、加入保険が定型の項目として並びます。読みやすさでは劣りますが、項目の抜けが少ないという利点があります。求人サイトで気になった企業が公的機関にも出していれば、両方を照らすと情報が補えます。
また、地域を絞った検索は相場を知るうえでも有効です。同じ職種でも、地域によって提示額の水準は変わります。転居を伴う転職を検討している場合は、移り先の地域で同職種を検索して、水準の差を先に把握しておいてください。
応募前に確認する5項目
チェックリスト
| 項目 | 確認すること | 不明なら |
|---|---|---|
| 給与の構成 | 固定残業代の有無と時間数。賞与の支給実績 | 面接の早い段階では聞かず、二次以降で |
| 担当業務の粒度 | 一人の担当範囲が広いか、分業されているか | 「時間を使っている業務の上位3つ」を聞く |
| 必須要件との距離 | 必須を満たしているか。歓迎は満たさなくてよい | 満たしていなければ見送りも選択肢 |
| 配属先 | 確定しているか。変更の範囲はどうか | 2024年4月から変更の範囲は明示事項 |
| 募集の背景 | 増員・欠員補充・新規立ち上げのどれか | 面接で聞く。前任者の在籍期間も |
5項目のうち、応募前に求人票だけで判断できるのは3番目(必須要件)だけです。残り4つは面接で確認する前提で、応募して構いません。すべてが分かってから応募しようとすると、応募できる求人がなくなります。
応募の基準は「必須要件」と「軸との一致」
応募するかどうかの基準は2つで足ります。必須要件を満たしているか、そして自分の軸3つのうち1つ以上と重なっているか。この2つを満たすなら、他が不明でも応募して問題ありません。
軸の作り方は転職の軸は何個必要かで扱っています。軸が決まっていれば、求人を見る時間は大幅に減ります。
逆に、応募するかどうかで毎回迷う場合は、軸がまだ絞れていない可能性があります。「良さそうだが決め手がない」という感覚が続くなら、求人を見る手を止めて、先に軸を3つ決めてください。基準がないまま数を見ても、選択肢が増えるだけで判断は進みません。
求人を見る時間を決める
求人票を眺め続けても判断は進みません。1日30分、1週間で10件までのように上限を決めてください。見る量を増やすより、絞った数件を深く調べるほうが判断は進みます。
実際、転職した人が選んだ理由の1位は「仕事の内容・職種に満足がいくから」41.0%で、これは求人票の記載だけでは判断できない項目です。求人票は応募先を絞るための道具であって、決めるための道具ではありません。
まとめ
- 求人票は「募集の条件」であって「契約の条件」ではない。適用される条件は労働条件通知書で確定する
- 給与欄が幅で書かれている場合、当てはまるのは下限から中央の間。複数社を比べるときは下限で揃える
- 固定残業代が含まれる場合は労働時間で割り戻す。提示額が低いほうが時間あたりでは高いことがある
- 仕事内容の粒度で組織の性質が分かる。細かく分かれていれば分業、幅広ければ一人の担当範囲が広い
- 応募要件は必須を満たせばよく、歓迎は満たさなくてよい。「業種未経験可・職種経験必須」は異業種から移る人に最も応募しやすい形
- 書かれていない項目に意味がある。平均残業時間、配属先、昇給・賞与の実績、募集の背景は、記載がなければ面接で聞く
- 企業の募集方法はハローワーク等57.3%、求人サイト43.2%、縁故27.6%、自社サイト26.6%、エージェント24.8%(厚生労働省 令和2年転職者実態調査)
- 同じ企業でも経路で記載が違う。自社の採用ページは情報量が多い傾向がある
- 応募の基準は2つだけでよい。必須要件を満たしているか、そして自分の軸3つのうち1つ以上と重なっているか。他の項目が不明のままでも応募して構わない
- 求人を見る時間に上限を決める。転職者が選んだ理由の1位「仕事の内容・職種」41.0%は、求人票だけでは判断できない
- 長期間掲載され続けている求人は、応募が集まらない条件か採用基準が高いかのどちらか。「この募集はいつから出されていますか」で状況が分かる
よくある質問(FAQ)
給与欄の幅は、どこを基準に考えればいいですか。
下限から中央の間だと見ておくのが安全です。上限は経験が十分にある人向けの金額で、上限を基準に比べると現職が実際より低く見えます。複数社を比較するときは、すべて下限で揃えると実態に近くなります。
歓迎要件を満たしていません。応募していいですか。
問題ありません。歓迎要件は「あればなお良い」項目なので、満たしていなくても書類選考の可否には直結しません。判断すべきは必須要件を満たしているかどうかです。必須を満たし、自分の軸3つのうち1つ以上と重なるなら、他が不明でも応募して構いません。
「未経験歓迎」の求人は信用していいですか。
2種類あるため、求人票だけでは判断できません。育成の仕組みがある場合と、採用が追いつかず条件を下げている場合です。面接で「未経験で入られた方は直近で何名いますか」「その方は今どんな業務を担当されていますか」と聞いてください。人数とその後の担当業務が具体的に返ってくるなら、育成の実績があります。
残業時間が書かれていない求人は避けるべきですか。
避ける必要はありませんが、不明項目として認識し、面接で確認してください。「この部署の直近の所定外労働は平均でどのくらいでしょうか」と聞いて、数字が出るかを見ます。数字が出ないなら管理されていない可能性があり、それ自体が判断材料になります。
求人サイトだけ見ていれば十分ですか。
不十分です。企業側の募集方法で最も多いのはハローワーク等の公的機関で57.3%、求人サイトは43.2%です。特に規模の小さい会社や地域の会社は公的機関に集まります。気になる企業がある場合は、自社の採用ページも確認してください。経路によって記載内容や募集職種が違うことがあります。
求人を何件見れば決められますか。
件数では決まりません。転職者が現在の勤め先を選んだ理由の1位は「仕事の内容・職種に満足がいくから」41.0%で、これは求人票の記載だけでは判断できない項目です。求人票は応募先を絞るための道具なので、1日30分・週10件のように上限を決め、絞った数件を面接で深く確認するほうが判断は進みます。
転職は、人生の経営判断です
求人票は決めるための書類ではなく、絞るための書類です。必須要件と自分の軸の2つだけで絞り、残りは面接で確認する。この順序にすると、見る量は減り、判断は速くなります。
出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(表5・表21-1)/「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」