
面接の終わりに「何か質問はありますか」と聞かれる。用意してきた質問を1つか2つ出して、面接が終わる。多くの人にとって、逆質問は意欲を示すための儀式になっています。
ですが、この時間の使い方は間違っています。逆質問は、入社するかどうかを判断する材料を取る、最後の機会です。好印象を狙う質問を並べると、判断に必要な情報が取れないまま選考が終わります。
この記事では、なぜ判断材料が必要なのかを公的統計で確認したうえで、そのまま使える質問10個、面接の段階別の使い分け、答えが曖昧だったときの読み方までを解説します。内定が出たあとの比べ方は内定が2つ出て決められないで扱っています。
逆質問の目的を取り違えている
評価される質問を探すと、情報が取れない
逆質問の例文を集めた記事は数多くありますが、その多くは「評価される質問」という基準で選ばれています。意欲が伝わる、企業研究の深さが伝わる、という観点です。
意欲を示すこと自体は悪くありません。ただし、意欲を示す質問と、判断材料になる質問は、同じではありません。「御社で活躍されている方に共通する点は何ですか」は意欲を示しますが、入社するかどうかの判断には使えません。
面接は相互の選考である
採用面接は、企業が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が企業を選ぶ場です。この前提が抜けると、選ばれることだけを考えて、選ぶための情報を集め損ねます。
実際、企業側も応募者の評価に苦労しています。厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」では、転職者を採用する際の問題として「応募者の能力評価に関する客観的な基準がないこと」を挙げた事業所が38.8%ありました。互いに相手を測りかねている場だと考えるほうが、実態に近いと言えます。
質問の数より、答えの検証可能性
逆質問は数を用意する必要はありません。重要なのは、返ってきた答えが検証できる形かどうかです。「風通しはいいですか」には「いいです」としか返ってきませんが、「直近1年で、現場からの提案が制度として採用された例はありますか」には事実が返ってきます。
事実が返ってくる質問を3つ用意するほうが、印象のよい質問を10個用意するより、判断に役立ちます。
転職した人の45.9%が「ここが終点」と思えていない
入社後の実態
判断材料を取ることが重要な理由は、数字にも表れています。同じ調査で、転職した人に今後の転職希望を聞いた結果は、「今の職場で今後も働きたい」52.7%、「わからない」24.9%、「機会があれば転職したい」21.0%でした。
つまり転職を実行した人でも、45.9%は「ここが終点」と思えていないということです。この中には、入社前に確認できたはずの情報を確認しなかったケースが含まれていると考えられます。
選んだ理由の1位は「仕事の内容・職種」
同じ調査で、転職者が現在の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)の1位は「仕事の内容・職種に満足がいくから」41.0%、2位が「自分の技能・能力が活かせるから」36.0%です。
この2つは、面接で聞かなければ分からない情報です。求人票の「業務内容」欄は、範囲が広く書かれていることが多く、実際に何をどこまで任されるかは読み取れません。選択の決め手になる情報ほど、逆質問でしか取れないという構造があります。
判断材料を取る質問10個
そのまま使える質問リスト
| 確認したいこと | そのまま使える質問 | 答えから読むこと |
|---|---|---|
| 最初の担当業務 | 入社後3か月と6か月では、それぞれどの業務を担当することを想定されていますか | 受け入れ設計があるか。曖昧なら現場任せ |
| 裁量の範囲 | この職種では、どこまでを本人が判断し、どこから上長の承認が必要でしょうか | 任される範囲。3年後の経歴に直結する |
| 配属の確定 | 配属先は確定していますか。変更の範囲はどのように決まりますか | 入社後に想定と違う部署へ行く可能性 |
| 評価の基準 | この職種の方は、どのような基準で評価されていますか | 基準が読めるか。読めないと昇給も読めない |
| 教育の実績 | 未経験で入られた方には、どのような教育を行っていますか | 計画的な育成があるか。人数と期間が出るか |
| 定着の実態 | 直近で入社された方は、現在どの業務を担当されていますか | 入社後の道筋。答えられないなら定着が浅い |
| 労働時間の実態 | この部署の直近の所定外労働は、平均でどのくらいでしょうか | 数字が出るか。出ないなら管理されていない |
| 固定残業の運用 | 固定残業代の時間分は、実際どのくらい使われていますか | 提示額の実質。使い切っているかで変わる |
| 現場の声 | 配属予定の部署の方とお話しする機会をいただけますか | 依頼への反応。断られた理由も材料になる |
| 評価された点 | 私のこれまでの経験のうち、どの部分を評価いただいたのでしょうか | 相手の期待。曖昧なら入社後の評価も曖昧 |
10個すべてを1回の面接で聞く必要はありません。すべてに共通するのは、答えが事実の形で返ってくることです。意見や印象ではなく、人数・期間・手続きが返ってくるように設計されています。
この10個は、どれも自分の判断軸に対応しています。たとえば「仕事の中身」を軸に置いているなら1番目と2番目、「働き方」を軸にしているなら7番目と8番目が効きます。軸が3つに絞れていれば、聞くべき質問も自動的に絞れます。軸の作り方は転職の軸は何個必要かで扱っています。
逆に言えば、どの質問を選べばいいか分からない場合は、軸がまだ決まっていない可能性があります。その場合は面接の前に、自分が何を確認したいのかを1行で書き出してください。書けないまま面接に臨むと、相手の説明を受け取るだけで終わります。
最後の1つが、実は最も効く
10個目の「どの部分を評価いただいたか」は、最終面接や内定後に聞くと効果的です。相手の言葉で自分の評価点を確認できるため、入社後に何を期待されているかが明確になります。
加えて、この質問には副次的な効果があります。答えが具体的でない場合、相手も明確な期待を持っていないという情報が得られます。期待が曖昧なまま入社すると、入社後の評価も曖昧になりやすいので、判断材料として重要です。
面接の段階別に、何を誰に聞くか
段階によって答えられる人が違う
同じ質問でも、聞く相手によって答えの精度が変わります。人事に現場の実務を聞いても一般論しか返ってきませんし、現場の管理職に制度の詳細を聞いても正確とは限りません。
段階が進むほど、聞ける内容は具体的になります。一次で制度を、二次で実務を、最終で期待値と条件を確認する。この順序で組み立てると、無駄がありません。
1回の面接で聞くのは2つまで
逆質問の時間は通常5分程度です。質問を5つ用意しても、答えを聞く時間がありません。1回につき2つに絞り、返ってきた答えに対して1つ掘り下げるほうが、情報の密度は上がります。
掘り下げ方は簡単です。「差し支えなければ、直近の例を1つ教えていただけますか」。抽象的な答えが返ってきたときに、これを添えるだけで具体化します。
聞いてはいけない質問と、その理由
調べれば分かることは聞かない
事業内容、企業理念、主力製品。これらは公開情報なので、面接で聞くと準備不足と受け取られます。調べたうえで、そこから生まれた疑問を聞くのが正しい使い方です。
「御社の主力製品は何ですか」ではなく「公開されている資料では◯◯が主力と拝見しましたが、今後は△△の比重が上がるという理解でよろしいでしょうか」。後者なら、調べたうえでの確認になります。
「ありません」と答えない
質問がないと答えるのは、判断材料を取る機会を自ら放棄することです。聞くことが思いつかない場合でも、前掲のリストから1つ選べば足ります。
特に、入社後3か月・6か月の担当業務は、どの職種・どの段階でも聞く価値があります。迷ったらこれを聞いてください。答えの具体性から、その会社の受け入れ体制が読み取れます。
条件面は、聞く時期を選ぶ
給与、休日、残業時間といった条件面の質問は、聞いてはいけないわけではありません。ただし一次面接の早い段階で条件だけを聞くと、条件で選んでいる印象になります。
順序としては、業務内容と裁量を先に聞き、条件面は二次面接以降または内定後に確認します。労働条件通知書で確認すべき項目は内定を承諾する前にで扱っています。
答えが曖昧だったときの読み方
曖昧さにも種類がある
質問に対して具体的な答えが返ってこないとき、その理由は3つに分かれます。読み分けが必要です。
| 返ってきた答え | 考えられる理由 | どう扱うか |
|---|---|---|
| 「担当者によります」 | 基準が属人的で、制度になっていない | 入社後の評価も読めない。慎重に |
| 「確認して後日お伝えします」 | その場の相手が把握していないだけ | 問題なし。後日の回答を待つ |
| 「柔軟に対応しています」 | 運用が定まっていない可能性 | 具体例を1つ聞いて確かめる |
| 質問を避ける/話題を変える | 答えにくい事情がある | 別の相手に同じ質問をして照合 |
2行目は問題ありません。後日回答するという反応は、むしろ誠実です。問題になるのは1行目と4行目で、どちらも入社後に同じ曖昧さに直面する可能性を示しています。
同じ質問を別の相手にする
最も有効な検証は、同じ質問を、段階の違う面接で繰り返すことです。人事と現場の管理職で答えが食い違うなら、社内で認識が揃っていないということになります。
食い違い自体が悪いわけではありません。ただし、入社後に自分が関わるのは現場の側なので、現場の答えのほうを実態として受け取るのが安全です。
繰り返すときは、前に聞いたことを明かす必要はありません。同じ質問をそのまま出せば足ります。仮に「それは前回もお答えしましたね」と言われても、「実際に担当される立場からも伺いたいと思いまして」と添えれば自然です。
特に照合する価値が高いのは、所定外労働の実態と、入社後の担当業務の2つです。この2つは人事と現場で認識が分かれやすく、しかも入社後の生活を最も左右します。1つの答えだけで判断しないでください。
質問のしかたで印象を落とさないために
詰問にしない
判断材料を取ることが目的でも、聞き方が詰問調になると関係が悪くなります。違いは、前置きがあるかどうかです。
「残業は実際どのくらいですか」ではなく、「入社後の働き方を具体的に想像しておきたいので伺いたいのですが、この部署の直近の所定外労働は平均でどのくらいでしょうか」。前置きがあると、確認の意図が伝わります。
答えに対して評価を返さない
返ってきた答えに対して「それは少し厳しいですね」「思っていたより短いですね」と反応するのは避けてください。この場で判断を示す必要はありません。
聞く側の役割は、事実を受け取ってメモすることです。判断は面接の後、複数社の情報が揃ってから行います。その場で反応すると、交渉の材料を先に渡すことにもなります。
メモを取ってよい
面接でメモを取ることは、失礼にあたりません。むしろ、真剣に検討している姿勢として受け取られます。冒頭で「メモを取らせていただいてもよろしいでしょうか」と断れば十分です。
記憶だけで複数社を比較すると、印象の強い会社が有利になります。事実を並べて比べるために、メモは必ず取ってください。
書き留めるのは4つで足ります。入社後の担当業務、裁量の範囲、所定外労働の数字、そして答えが曖昧だった項目です。最後の1つを残しておくと、次の面接で何を確認すべきかが決まります。
面接直後に3分だけ時間を取って、聞いた内容を書き足してください。時間が経つと、印象だけが残って事実が薄れます。複数社を受けている場合は、社名と日付を必ず添えて、後から混ざらないようにしておきます。
まとめ
- 逆質問は意欲を示す儀式ではなく、入社の判断材料を取る最後の機会。評価される質問と、判断材料になる質問は同じではない
- 企業側も応募者を測りかねている。「応募者の能力評価に関する客観的な基準がない」と答えた事業所は38.8%(厚生労働省 令和2年転職者実態調査)
- 転職した人の45.9%は「ここが終点」と思えていない。選んだ理由の1位は「仕事の内容・職種」41.0%で、これは面接でしか確認できない情報
- 質問は事実が返る形で作る。「風通しはいいですか」ではなく「直近1年で現場の提案が制度になった例はありますか」
- 段階で使い分ける。一次は制度(教育・評価・配属の決まり方)、二次は実務(担当業務・裁量・所定外労働)、最終と内定後は期待値と条件
- 1回につき2つに絞り、返ってきた答えを1つ掘り下げる。「差し支えなければ直近の例を1つ」で具体化する
- 調べれば分かることは聞かない。「質問はありません」も避ける。迷ったら入社後3か月・6か月の担当業務を聞く
- 答えが曖昧なときは種類を読み分ける。「担当者によります」は基準が属人的、「確認して後日」は問題なし、質問を避けるなら別の相手に照合する
- 前置きを添えて詰問にしない。答えに評価を返さず、メモを取って後で比べる
- メモに残すのは4つ。入社後の担当業務、裁量の範囲、所定外労働の数字、そして答えが曖昧だった項目。最後の1つが、次の面接で確認すべきことを決める
よくある質問(FAQ)
逆質問は何個用意すればいいですか。
1回の面接につき2つで足ります。逆質問の時間は通常5分程度なので、5つ用意しても答えを聞く時間がありません。2つに絞り、返ってきた答えに対して「差し支えなければ直近の例を1つ教えていただけますか」と掘り下げるほうが、情報の密度は上がります。
聞くことが思いつきません。
迷ったら「入社後3か月と6か月では、それぞれどの業務を担当することを想定されていますか」を聞いてください。どの職種でも使え、答えの具体性からその会社の受け入れ体制が読み取れます。「質問はありません」と答えるのは、判断材料を取る機会を自ら放棄することになります。
残業時間や給与を聞くと、印象が悪くなりませんか。
聞くこと自体は問題ありませんが、時期と聞き方を選んでください。一次面接の早い段階で条件だけを聞くと、条件で選んでいる印象になります。業務内容と裁量を先に聞き、条件面は二次面接以降または内定後に確認します。聞くときは「入社後の働き方を具体的に想像しておきたいので」という前置きを添えてください。
「担当者によります」と言われました。どう受け取るべきですか。
基準が属人的で、制度として運用されていない可能性があります。入社後の評価も同じように読めないと考えてください。ただし断定はせず、同じ質問を別の段階の面接で繰り返して照合してください。人事と現場で答えが食い違う場合は、入社後に自分が関わる現場の答えを実態として受け取るのが安全です。
面接でメモを取ってもいいですか。
問題ありません。むしろ真剣に検討している姿勢として受け取られます。冒頭で「メモを取らせていただいてもよろしいでしょうか」と断れば十分です。記憶だけで複数社を比較すると印象の強い会社が有利になるため、事実を並べて比べるためにメモは必ず取ってください。
配属先の人と話したいと頼んでもいいですか。
頼んで構いません。断られることはほとんどなく、この依頼自体が入社意欲の表明になります。最終面接や内定後の段階が適しています。断られた場合も、その理由が判断材料になります。面接官が配属先の上司とは限らないため、印象で選ぶ前に実際に関わる相手を確認しておく価値があります。
転職は、人生の経営判断です
面接は選ばれる場であると同時に、選ぶ場です。次の面接では、事実が返ってくる質問を2つだけ用意してください。印象のよい質問を10個用意するより、判断は確実に進みます。
出典:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」(表21-1・表23・転職者を採用する際の問題)