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隣の部屋がうるさい。防音グッズを買う前に、どこへ言えばいいかを整理しました

夜のワンルームでベッドに座り、壁のほうを見ている人のイメージ

隣の部屋の音がうるさい。夜中に起こされる。壁を叩きたくなる。

この状態で検索すると、出てくるのはほとんどが防音グッズと防音工事の話です。防音シート、吸音材、100均でできる対策。実際に調べてみると、上位10件のうち9件が防音業者か、防音グッズを売っているお店か、不動産系のサイトでした。

どれも親切に書かれていますが、立場を考えると自然なことでもあります。「何かを買う」以外の選択肢は、売っている側からは書きにくい。

この記事では、法令と公的な資料にあたって、どの窓口が何を扱っているのかを整理します。順番が大事な話なので、結論から言うと「管理会社に、記録を添えて、2回目をきちんと出す」が中心になります。

役所に言っても動かないのは、あなたのせいではありません

まずここから。自治体に電話して、あまり取り合ってもらえなかった経験がある人向けの話です。

騒音を規制する法律はあります。ただ、隣人の生活音はその対象に入っていません。

騒音規制法の第1条は、この法律が何を規制するのかをこう書いています。

「この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的とする。」

工場、事業場、建設工事、自動車。隣の部屋のテレビや足音は、ここに入っていません。 法律の本文を通して検索しても、「生活騒音」という語は一度も出てきませんでした。

統計のほうが、もっとはっきり言っています

環境省が毎年まとめている騒音規制法等施行状況調査の令和6年度分を見ると、全国の自治体が受けた騒音の苦情は19,886件。その内訳を見てください。

発生源 件数 割合
建設作業 8,166件 41.1%
工場・事業場 4,723件 23.8%
営業 1,848件 9.3%
家庭生活 1,197件 6.0%

4割が建設作業で、家庭生活は6.0%です。 しかも前年度より155件(11.5%)減っています。

行政の騒音の窓口は、工場と工事を相手にするためにできています。隣人の生活音がうまく扱われないのは、担当者の冷たさではなく、そもそもそういう設計になっていないからです。

ついでに言うと、同じ調査で令和6年度の改善勧告は0件、改善命令も0件でした。法律に基づく強い措置は、工場に対してさえほとんど使われていないのです。

だから、自治体に相談する意味がないわけではありません。あとで触れるとおり、条例で生活騒音を扱っている自治体はあります。ただ、最初に賭ける先としては弱い、ということです。

「何デシベルから違法」という線は、ありません

「45デシベルを超えたら違法」。こういう数字を見たことがあるかもしれません。

元になっているのは、環境省の騒音に係る環境基準(平成10年9月30日環告64、最終改正 平成24年3月30日環告54)です。実際の数値は下のとおりです。

地域の類型 昼間(6時〜22時) 夜間(22時〜翌6時)
AA(療養施設等が集まる地域) 50デシベル以下 40デシベル以下
A・B(住居が中心の地域) 55デシベル以下 45デシベル以下
C(住居と商業・工業が混在) 60デシベル以下 50デシベル以下

よく見る「夜は45デシベル」は、この表のA・B地域の夜間から来ています。数字自体は実在します。

ただ、使われ方が違います。 同じ告示を読むと、こうなっているからです。

  • 類型を当てはめる地域は、都道府県知事(市の区域内なら市長)が指定する
  • 評価は等価騒音レベルで、時間の区分ごとの全時間を通じた値で行う
  • 測定場所からは「著しい騒音を発生する工場及び事業場、建設作業の場所、飛行場並びに鉄道の敷地内並びにこれらに準ずる場所」を除外する

つまりこれは、地域全体の環境をこの水準に保ちましょうという行政の目標です。ある瞬間に隣の部屋で45デシベルが出たから違法、という使い方をする数字ではありません。

スマホの騒音計アプリで測った数値も同じです。記録としては意味がありますが(あとで触れます)、「超えたから勝ち」という性質のものではない、と思っておいたほうが落胆しません。

では何が基準になるのか。隣人同士の騒音が法的に問題になるかどうかは、どの程度まで我慢すべきかという考え方で判断されます。ただ、これは条文に数値で書かれているものではなく、裁判所が個別の事情を見て判断してきた考え方です。この記事では、確認できない判決の中身は書きません。

数値の線を探すより、次の章からの話のほうが実際には効きます。

本筋は管理会社です。お願いではなく、契約の話

自宅で電話をしながら真剣な表情をしている人のイメージ

ここがこの記事の中心です。

賃貸に住んでいる人にとって、いちばん強い足場は契約です。民法第601条は、賃貸借をこう定義しています。

「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。」

貸す側は、使わせる義務を負って家賃を受け取っています。住めない状態を放置されたら、それは契約の問題です。管理会社に言うのは、親切を期待する行為ではありません。

契約書のほうにも、はっきり書いてあります

国土交通省が公表している賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)を見てください。第8条第3項が「乙は、本物件の使用に当たり、別表第1に掲げる行為を行ってはならない」としていて、その別表第1にこうあります。

別表第1
「四 大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと。」

うるさくしないことは、お願いではなく借主の義務として書かれています。 隣人も、あなたと同じようにこの義務を負っている(はずの)立場です。

ひとつ注意があります。これは「標準」契約書で、国が示しているひな形です。実際にあなたが結んでいる契約書が同じとは限りません。手元の契約書の「禁止又は制限される行為」や「使用上の注意」を実際に開いて確認してください。 多くの契約書に似た条項がありますが、文言は違います。

どの窓口が、何を扱うのか

ここまでを整理すると、こうなります。

どこが何を扱うのか ○=扱える ×=扱えない

管理会社・貸主(まずここ) ○ 契約違反として注意・指導ができる ○ 住めない状態を直す義務の相手(民法601条) ○ 最終的には契約の解除まで × すぐに退去させることはできない × 記録がないと動きにくい

自治体の窓口 ○ 条例で生活騒音を扱う自治体がある ○ 相談先の案内はしてもらえる × 国の騒音規制法は工場・工事・自動車が対象 × 苦情19,886件のうち家庭生活は6.0% × 令和6年度の改善勧告・改善命令は0件

警察(#9110/110番) ○ 危険や身の不安があるときは110番 ○ 来てもらった事実が記録として残る × 軽犯罪法は「公務員の制止をきかずに」が条件 × 1回の通報ですぐ犯罪になるわけではない

民事(調停・訴訟) ○ 損害賠償や差止めを求められる ○ 記録がそのまま証拠になる × 費用と時間がかかる × どこまで我慢すべきかが個別に判断される

どの窓口でも、先に効くのは「いつ・どんな音が・どれくらい続いたか」の記録です。 出典:騒音規制法第1条、環境省「令和6年度騒音規制法等施行状況調査」、民法601条、軽犯罪法第1条第14号。

それでも、すぐには追い出せません

管理会社に言ったのに、隣人がまだ住んでいる。「対応してくれない」と感じる場面です。

ここも、契約書を読むと理由が分かります。標準契約書の第10条第2項は、借主が第8条の義務(さっきの「大音量で…」を含みます)に違反した場合の解除について、こう定めています。

「甲は、乙が次に掲げる義務に違反した場合において、甲が相当の期間を定めて当該義務の履行を催告したにもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されずに当該義務違反により本契約を継続することが困難であると認められるに至つたときは、本契約を解除することができる。」

3つそろって、はじめて解除です。

  1. 相当の期間を定めて、やめるよう催告した
  2. その期間内に、やめなかった
  3. その違反のせいで、契約を続けるのが困難だと認められる状態になった

1回注意して終わりではないのです。逆に言えば、1回目の注意は「3つのうちの1つ目」を始めた状態にすぎません。だから「言ったのに変わらない」で止めてしまうと、手続きがそこで止まります。

ちなみに、無催告でいきなり解除できる行為も定められていますが、それは別表第1の六号から八号、つまり反社会的勢力に関する行為です(第10条第4項)。騒音はそこには入っていません。

この構造を知っているかどうかで、2回目の連絡の意味が変わります。 2回目は蒸し返しではなく、手続きを前に進める行為です。

警察を呼ぶと、どうなるか

「騒音は軽犯罪法違反です」と書いてあるページがあります。条文を読むと、条件が付いています。

軽犯罪法第1条第14号です。

「十四 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」

「公務員の制止をきかずに」が先に付いています。 大きな音を出しただけでは、この条文には当たりません。警察官が来て止めるよう言い、それでもやめなかった場合です。

これは落胆する話に見えて、実は警察を呼ぶ意味があることの説明でもあります。制止という段階を踏まないと先に進まないのなら、その一歩目は誰かが呼ばないと始まらないからです。

実務的な使い分けを挙げます。

  • いますぐ危ない、身の不安がある(怒鳴り声、物が壊れる音、ドアを叩かれる)→ 110番
  • 緊急ではないが相談したい → #9110(警察相談専用電話)

そして、来てもらったという事実そのものが記録になります。日時を控えておいてください。

なお同じ軽犯罪法の第4条には、「この法律の適用にあたつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない」とあります。相手を罰することを目的に積み上げる話ではない、という前提は持っておいたほうがいいでしょう。

やってはいけないこと

  • 壁を叩き返す。こちらが騒音を出した側になります。相手が録音していれば立場が入れ替わります
  • 直接相手の部屋へ行く。トラブルが対人に変わります。隣人の素性が分からない状態で会いに行く理由はありません
  • 張り紙や投函で名指しする。相手に伝わる以上に、周囲との関係が壊れます

遠回りに見えますが、記録と管理会社のほうが結局は早いです。

言う前に、記録をつくる

机の上のノートにペンでメモを書き込んでいる手元のイメージ

ここがいちばん効く部分なので、具体的に書きます。

管理会社が動きにくいのは、意地悪だからではなく、「うるさいと言っている人がいる」だけでは相手に何も言えないからです。相手の部屋に注意を入れるというのは、その人に義務違反があると判断するということです。言われた側が「そんなことはしていない」と返したら、そこで止まります。

記録はそれを越えるためのものです。手間はかかりますが、1回あたりは1分で終わります。

何を書くか(1行でいい)

スマホのメモアプリでかまいません。1回につき、この4つだけ書きます。

① 日付と時刻(始まりと終わり)
「10/3 23:10〜23:48」のように、何分続いたかが分かる形で。

② 音の種類
「低音の効いた音楽」「床を走る音」「扉を強く閉める音」など。「うるさい」とだけ書かない。

③ どこから聞こえるか
「寝室の東側の壁」「天井」など。上の階なのか隣なのかで、相手が変わります。

④ 自分への影響
「目が覚めて寝つけず、翌日の勤務に支障」。ここが抜けている記録が多いです。

実際に書くと、こうなります。

10/1(水)22:40〜23:15 低音の重い音楽、寝室の東壁から → 入眠できず
10/3(金)23:10〜23:48 同じ音楽と複数人の話し声 → 一度起きた。翌朝6時起床できず遅刻
10/4(土)01:20〜01:35 床をドンと踏む音が断続的 → 目が覚めた
10/6(月)23:55〜翌0:30 話し声と笑い声 → 入眠できず

4行あるだけで、「金曜と土曜の深夜に集中している」「複数人がいる日がある」というパターンが見えます。管理会社にとっては、これが相手に話をする材料になります。

音も録っておく

スマホのボイスメモで、30秒でいいので録ってください。コツは3つです。

  1. 録音の冒頭で、日付と時刻を自分の声で言う。「10月3日23時12分、寝室で録音します」。これだけでファイルの信頼性が変わります
  2. 部屋のどこで録ったかも言う。「ベッドの枕元、東側の壁から30センチ」
  3. ファイルを消さない。スマホを替えるときに消える事故が多いので、クラウドか自分宛のメールに送っておく

騒音計アプリの数値も、あれば添えて構いません。前に書いたとおり「何デシベルだから違法」とはなりませんが、同じ場所・同じ方法で測った数値が並ぶと、変化や継続が伝わります。アプリの機種や設定で値は変わるので、数値だけを主役にしないことです。

どれくらい続けるか

2週間を目安にしてください。深夜帯の出来事が4〜5回たまれば、十分に話ができます。

毎日起きているなら1週間でも足りるでしょう。逆に、月に1回あるかないかであれば、記録を続けながら様子を見るという判断もあります。その場合でも、書き始めておくことには意味があるはずです。あとから思い出して書くのは、ほぼ不可能だからです。

管理会社への伝え方。2回目からが本番です

記録がそろったら連絡します。ここも具体的に。

1回目:電話ではなくメールで

電話だと記録が残りません。メールか、管理会社のWebフォームを使ってください。電話で話した場合も、そのあと「先ほどお電話した件です」とメールを送っておきます。

書く内容は5つです。

1. 部屋番号と氏名(誰からの連絡か)
2. いつから困っているか(「9月下旬から」のように)
3. 記録(上の4行をそのまま貼る)
4. 生活への影響(睡眠、勤務への支障)
5. 何をしてほしいか(ここが抜けがち)

5つ目が大事です。「困っています」で終わると、相手は「承知しました」で終われてしまいます。「掲示板への貼り紙ではなく、該当のお部屋に直接お伝えいただけますか」のように、具体的に書いてください。

文面の例を置いておきます。

お世話になっております。◯◯マンション◯◯号室の(氏名)です。

9月下旬から、深夜の騒音で睡眠に支障が出ており、ご相談です。

10/1(水)22:40〜23:15 低音の音楽、寝室の東壁から
10/3(金)23:10〜23:48 同じ音楽と複数人の話し声。翌朝起きられず遅刻しました
10/4(土)01:20〜01:35 床を踏む音
10/6(月)23:55〜翌0:30 話し声と笑い声

音の方向から、東隣の◯◯号室かと思われますが、確証はありません。
録音データもありますので、必要でしたらお送りします。

全戸への掲示ではなく、該当のお部屋に直接お伝えいただけますでしょうか。
その後の状況も記録を続けておきます。

よろしくお願いいたします。

最後の一文を入れておくと、次の連絡が自然になります。これが効きます。

2回目:ここで手続きが進みます

1回目の連絡から2週間ほど様子を見て、変わらなければ2回目です。前の章で見たとおり、契約を解除するには「催告したのに直らなかった」という経過が必要です。2回目の連絡は、その経過をつくる行為です。

2回目に書き足すことは3つ。

  1. 1回目の連絡日を明記する(「10月8日にご連絡した件ですが」)
  2. その後の記録(改善がなかったことが分かる形で)
  3. 貸主への取り次ぎを求める(「貸主様にもご報告いただけますでしょうか」)

3つ目を入れる理由があります。管理会社は貸主の代理で動いていて、契約を解除できるのは貸主だからです。担当者レベルで止まっているケースがあるので、一段上に上げる意思を示しておきます。

3回目以降、動かないとき

管理会社が明らかに放置している場合、相手は隣人ではなく貸主に変わります。民法601条の義務を負っているのは貸主だからです。賃貸借契約書に貸主の氏名と住所が書かれています。

このあたりから、無料で使える相談先も検討してください。

  • 自治体の住宅相談窓口・消費生活センター(相談は無料。自治体によっては条例で生活騒音を扱っています。お住まいの自治体の窓口で確認してください)
  • 法テラス(収入などの条件を満たせば、無料法律相談や費用の立替えの制度があります)

いきなり弁護士に依頼すると費用が重くなります。順番としては、記録 → 管理会社 → 貸主 → 公的な相談窓口です。

防音グッズに期待しすぎない

最後に、検索すると最初に出てくる話について。

防音グッズが無意味という話ではありません。ただ、効く方向があります。

吸音材や防音カーテンは、もともと自分が出す音を外へ漏らしにくくする、あるいは部屋の中の反響を抑えるための製品です。隣の部屋から壁や床を伝わって入ってくる音、とくに低音や足音のような固体を伝わる音に対しては、貼れる範囲の素材でできることは限られます。

それに、賃貸では壁に直接貼れないことが多いはずです。原状回復の扱いについては退去費用、払わなくていいものは決まっているにまとめました。騒音をしのぐために貼ったものが、退去時に自分の負担になるという結末は避けたいところです。

現実的に効果が見込めるのは、自分側の環境を変えるほうです。

  • 寝る場所を壁から離す。ベッドを反対側の壁に寄せるだけで変わることがあります
  • 耳栓やホワイトノイズ。根本解決ではありませんが、睡眠を確保するのは別の問題として重要です
  • 本棚やクローゼットを音の出る壁側に置く。質量のあるものが間に入ると、多少は変わります

いずれも「隣をやめさせる」話とは別のトラックで、記録と管理会社への連絡は並行して進めてください。買い物で解決した気になって、手続きが止まるのがいちばんもったいない形です。

今日からできること

3つあります。順番そのものが大事です。

ひとつめ、1分。今夜からメモを始める。

スマホのメモアプリに1行でいいので書きます。日付と時刻(始まりと終わり)、音の種類、どこから、自分への影響。 「うるさい」とだけ書かないことだけ気をつけてください。あとから思い出して書くのはほぼ無理なので、完璧でなくていいので今夜から始めるのが効きます。

ふたつめ、5分。自分の賃貸借契約書を開く。

「禁止又は制限される行為」や「使用上の注意」に、大音量に関する条項があるはずです。国交省の標準契約書では別表第1の第4号に「大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと」とありますが、あなたの契約書の文言を確認してください。連絡するときに、その条項番号を引けると話が早くなります。あわせて貸主の氏名と住所も見ておきましょう。

みっつめ、10分。2週間後に出すメールの下書きをつくる。

記録がたまる前に、枠だけ作っておきます。部屋番号と氏名、いつから困っているか、記録を貼る場所、生活への影響、そして「該当のお部屋に直接お伝えいただけますか」という依頼。記録がたまったら貼り付けて送るだけにしておくと、疲れている日でも出せます。

送ったら日付を控えてください。2回目を出すときに必要になるからです。

まとめ

役所が動かないのには理由があります。騒音規制法が対象にしているのは工場・事業場・建設工事・自動車で、隣人の生活音は入っていません。実際、自治体が受けた騒音の苦情19,886件のうち、家庭生活は1,197件、6.0%でした。

「何デシベルから違法」という線もありません。よく見る45デシベルは環境省の環境基準のA・B地域の夜間の値ですが、あれは都道府県知事が指定した地域ごとに、等価騒音レベルで評価する行政の目標です。

本筋は契約です。民法601条で貸主は使用収益させる義務を負っていますし、国交省の標準契約書では大音量が借主の禁止行為として明記されています。管理会社に言うのはお願いではありません。

そして、2回目を出すことに意味があります。標準契約書で解除が認められるのは、①相当の期間を定めて催告し、②直らず、③契約の継続が困難と認められるに至ったとき。1回目はそのうちの1つ目を始めただけです。

警察は使えます。ただし軽犯罪法が当たるのは「公務員の制止をきかずに」大きな音を出した場合です。危険を感じるなら110番、そうでなければ#9110。壁を叩き返すことと、直接乗り込むことだけはやめておきましょう。

防音グッズは、自分が出す音には効きます。隣から来る音に過大な期待をして、手続きを止めないことです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 役所に相談したのに動いてくれません。なぜですか?

国の騒音規制法が対象にしているのが、隣人の生活音ではないからです。同法第1条は「工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音」と「自動車騒音」を規制の対象としており、法律の本文に「生活騒音」という語は出てきません。環境省の令和6年度の調査でも、全国の自治体が受けた騒音の苦情19,886件のうち建設作業が8,166件(41.1%)、工場・事業場が4,723件(23.8%)を占め、家庭生活は1,197件(6.0%)でした。ただし、条例で生活騒音を扱っている自治体はあるので、お住まいの自治体の窓口で確認する価値はあります。

Q2. 何デシベルを超えたら違法になりますか?

そうした数値の線はありません。よく見る「夜間45デシベル」は環境省の「騒音に係る環境基準」のA・B地域(住居が中心の地域)の夜間の値ですが、この基準は都道府県知事(市の区域内なら市長)が指定した地域の類型ごとに定められ、等価騒音レベルで時間区分の全時間を通じて評価するものです。地域全体の環境を保つための行政目標であって、ある瞬間に隣室で何デシベル出たから違法、という使い方をする数値ではありません。スマホの騒音計アプリの数値は記録としては有用ですが、それだけで違法性が決まるものではないと考えてください。

Q3. 管理会社に言ったのに、隣人がまだ住んでいます。対応していないのでは?

必ずしもそうとは限りません。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では、借主が第8条の義務(別表第1の「大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと」を含みます)に違反した場合の解除について、「相当の期間を定めて当該義務の履行を催告したにもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されずに当該義務違反により本契約を継続することが困難であると認められるに至つたとき」としています。催告、期間内の不履行、継続困難という3つがそろって初めて解除できる構造です。1回目の連絡はその最初の段階にあたるので、2回目の連絡を出すことに意味があります。

Q4. 騒音は軽犯罪法違反になると聞きました。警察を呼べば解決しますか?

条文には条件が付いています。軽犯罪法第1条第14号は「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」としており、大きな音を出しただけでは当たりません。警察官が制止したうえで、それでもやめなかった場合です。裏を返せば、その制止という段階を踏むために警察を呼ぶ意味はあります。危険や身の不安を感じるときは110番、緊急でない相談は#9110(警察相談専用電話)を使ってください。来てもらった日時は記録しておきます。

Q5. 壁を叩き返すのはだめですか?

やめたほうがいいです。叩いた時点でこちらも音を出した側になり、相手が記録していれば立場が入れ替わります。管理会社に相談したときにも「お互いさま」として扱われやすくなり、それまでの記録の価値が下がります。同じ理由で、直接相手の部屋を訪ねることや、張り紙で名指しすることも避けてください。遠回りに見えても、記録を取って管理会社に文書で伝えるほうが結果的に早く進みます。

Q6. 記録は何をどれくらい取ればいいですか?

1回につき4つを1行で書けば十分です。日付と時刻(始まりと終わり)、音の種類(「うるさい」ではなく「低音の音楽」「床を走る音」のように)、どこから聞こえるか(壁の方角や天井)、そして自分への影響(寝つけなかった、翌日の勤務に支障が出た)です。期間は2週間を目安に、深夜帯の出来事が4〜5回たまれば話ができます。あわせてスマホのボイスメモで30秒ほど録音し、冒頭で日付・時刻・録音場所を自分の声で言っておくと記録としての質が上がります。ファイルは機種変更で消えないよう、クラウドか自分宛のメールに保存してください。

Q7. 管理会社へのメールには何を書けばいいですか?

部屋番号と氏名、いつから困っているか、記録、生活への影響、そして何をしてほしいかの5つです。5つ目が抜けると「承知しました」で終わってしまうので、「全戸への掲示ではなく、該当のお部屋に直接お伝えいただけますでしょうか」のように具体的に書いてください。電話だけで済ませず、必ず文面を残します。電話で話した場合も、あとから「先ほどお電話した件です」とメールを送っておくと日付が残ります。末尾に「その後の状況も記録を続けて、改めてご連絡します」と添えておくと、2回目の連絡が自然になります。

Q8. 管理会社が動かないとき、次はどこに言えばいいですか?

貸主です。民法第601条が定めるとおり、賃貸借では貸す側が「使用及び収益を相手方にさせること」を約束して家賃を受け取っており、その義務を負っているのは管理会社ではなく貸主だからです。賃貸借契約書に貸主の氏名と住所が記載されています。管理会社への2回目の連絡の際に「貸主様にもご報告いただけますでしょうか」と添えておくと、担当者レベルで止まるのを防げます。並行して、自治体の住宅相談窓口や消費生活センター、条件を満たせば法テラスの無料法律相談も検討してください。

Q9. 防音グッズを買えば解決しますか?

期待しすぎないほうがいいでしょう。吸音材や防音カーテンは、もともと自分が出す音を漏らしにくくしたり、部屋の中の反響を抑えたりするための製品です。隣から壁や床を伝わって入ってくる音、とくに低音や足音のような固体を伝わる音に対しては、貼れる範囲の素材でできることは限られます。賃貸では壁に直接貼れないことも多く、貼ったものが退去時の自分の負担になる可能性もあります。寝る場所を壁から離す、耳栓やホワイトノイズで睡眠を確保するといった自分側の調整は有効ですが、記録と管理会社への連絡は並行して進めてください。

Q10. 自分が加害者にならないか不安です。どこまでなら許されますか?

明確な数値の線がない以上、「ここまでならよい」と言い切れる基準はありません。ただ、国土交通省の賃貸住宅標準契約書が借主の禁止行為として挙げているのは「大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと」です。音量の大きい機器を夜間に使わない、洗濯機や掃除機を深夜に回さない、床に物を落とさないよう気をつける、といったあたりを押さえておけば、通常の生活音の範囲は過度に心配しなくてよいでしょう。気になる場合は、自分の契約書の禁止事項の条項を一度読んでおくことをおすすめします。

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