
3時間の会議をまるごとAIに文字起こしさせようとして、うまくいかなかったことはないでしょうか。公式ヘルプを読むと、長時間の会議には区切るための操作が用意されていました。知らないと、1本で通そうとして詰まります。
この記事では、GoogleのMeetヘルプ、MicrosoftのWordヘルプ、OpenAIのAudio API FAQに書かれている内容だけを並べます。内容は各公式ページで確認したものです。仕様と上限は更新されるため、運用を決める前には原典で最新の記載をご確認ください。
結論:1本で通すより、区切る
先に結論を置きます。長時間の会議で文字起こしがうまくいかないとき、原因は精度ではなく長さに関する条件にあることが多い。そして公式には、長さに対処するための操作がきちんと書かれています。まずそれを知るところからです。
一時停止はできないが、区切ることはできる
Googleの公式ヘルプに、こうあります。文字起こしを一時停止することはできませんが、会議中に文字起こしを停止して、別の新しい文字起こしを開始することは可能です。続けて、文字起こしを開始するたびに、別の文字起こしファイルが作成されますとも書かれています。つまり、停止して開始し直すことが、公式に用意された区切り方だということになります。一時停止のボタンを探して見つからず、諦めてしまった人は多いはずです。探すべきは一時停止ではなく、停止と再開でした。
区切ると、あとの作業も楽になる
区切るのは、制約への対処というだけではありません。議題ごとにファイルが分かれていれば、あとで読み返すときに探しやすくなります。3時間分が1本のファイルに入っていると、目的の発言を見つけるまでが長い。議題が変わるタイミングで止めて、開始し直す。これだけで、あとから使える記録になります。会議の運営としても、区切りのアナウンスが入るので議事の進行が締まります。長い会議を前提にした機能ではなく、長い会議を区切るための機能として捉えると、使い方が変わります。
長時間で詰まる場所
どれも精度の問題ではない。
区切り方は、公式に用意されている
まず操作から確認します。どこを押せばよいか、誰が押せるのか、そして止めたあとにどうなるのか。すべて公式ヘルプに手順として書かれていました。前の節で触れた内容を、実際の画面の流れに沿って追っていきます。
開始と停止の場所
Googleの公式ヘルプによると、開始の手順はこうです。パソコンを使用して、Google Meetで会議に参加するか、会議を開始します。右下の会議ツールのアイコンから「文字起こしを開始」をクリックします。ポップアップ画面で「開始」をクリックします。そして、会議の文字起こしがオンになっている場合、会議の参加者全員の画面の右上に文字起こしのアイコンが表示されますとされています。止めるときは、右下の会議ツールのアイコンから「文字起こしを停止」をクリックし、ポップアップで「停止」を選びます。参加者全員に状態が見えるので、こっそり記録することはできません。
押せる人が、設定で変わる
誰が操作できるかも書かれています。「主催者向けの管理機能」がオフになっている場合、主催者のドメイン内のユーザーは誰でも文字起こしをオンにすることができます。主催者向けの管理機能がオンになっている場合は、主催者と共同主催者のみが文字起こしを有効にできます。つまり、区切る運用をするなら、誰が止めて開始し直すのかを先に決めておく必要があります。管理機能がオンの環境で、主催者が席を外している間は誰も区切れません。議題の切り替えを担当する人と、操作する人を合わせておくとスムーズです。
全員が退出すると、自動で止まる
もうひとつ、知っておきたい挙動があります。すべての参加者が会議から退出すると、文字起こしは自動的に停止します。これは安全側の動きですが、注意も必要です。長い会議で休憩を挟み、全員がいったん退出した場合、その時点で文字起こしが終わります。再開するには、あらためて開始の操作が要る。休憩のあと、誰も気づかずに記録なしで議論が進むという事故は、ここから起きます。休憩を挟む会議では、再開の合図とセットで文字起こしの開始を確認する運用にしてください。
記録が始まらない条件を、先に潰す
操作は正しいのに記録されない、という場合があります。公式ヘルプには、そもそも記録できる条件が明記されていました。設定ではなく容量の問題なので、当日になって気づいても間に合いません。事前に潰しておく項目です。
両方のドライブに容量が要る
公式ヘルプには、こう書かれています。会議の文字起こしは、次の両方のドライブに十分な容量がある場合にのみ記録できます。Workspace組織のGoogleドライブ。会議の主催者のドライブ。2つの条件が両方満たされている必要があります。自分のドライブに空きがあっても、組織全体の容量が逼迫していれば記録されない。逆も同じです。長い会議ほど、生成されるファイルも大きくなります。重要な会議の前には、主催者のドライブの空きを確認しておく。これだけで防げる事故です。
使えるエディションが決まっている
契約の条件も書かれています。文字起こしが利用可能なGoogle Workspaceのエディションとして、Business Standard、Business Plus、Enterprise Starter、Enterprise Standard、Enterprise Plus、Teaching and Learning Upgrade、Education Plus、Workspace Individualが挙げられています。また、既定値についても記載があり、会議の文字起こしは、Google Workspace for Educationの生徒用ライセンスではデフォルトでオフになっていますが、それ以外のすべてのWorkspaceエディションではデフォルトでオンになっていますとされています。自社のエディションが一覧にあるかを、まず確認してください。
端末と言語にも条件がある
細かいようで効いてくる条件が2つあります。1つは端末で、文字起こし機能は、パソコン、ノートパソコン、Androidデバイスでのみご利用いただけますとされています。もう1つが言語で、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語が挙げられています。さらに、記録される範囲についても注記があり、文字起こしには、会議で話された言葉のみが含まれます。チャットメッセージの文字起こしを記録するには、ビデオ会議を録画しますと書かれています。チャットで出た決定事項は、文字起こしには入りません。
待たされるのは、仕様のうち
長い会議のあと、文字起こしがすぐ見当たらないことがあります。壊れたのかと心配になりますが、公式ヘルプはこの点にもきちんと触れていました。結論から言うと、待つのが正解である、とはっきり書かれていました。
処理に時間がかかると明記されている
公式ヘルプのヒントに、こうあります。長時間の会議の文字起こしの処理には時間がかかります。自動送信メールが届くまで、しばらくお待ちください。短い一文ですが、これを知っているかどうかで会議後の動きが変わります。終了直後にドライブを開いて見つからず、記録に失敗したと判断して慌てる必要はありません。長ければ長いほど待つ、というのが公式の説明です。そして、完了はメールで知らされます。ドライブを何度も開いて確認するより、メールを待つほうが確実ということになります。
メールが届く相手も決まっている
誰に届くのかも書かれています。会議が終了すると、会議の文字起こしへのリンクが記載されたメールが、次の宛先に送信されます。主催者。すべての共同主催者。文字起こしをオンにしたユーザー。この3者です。つまり、参加者全員には届きません。議事録を配る役割の人がこの3者に入っていないと、リンクを受け取れません。前の節で見たとおり、主催者向けの管理機能がオンだと主催者と共同主催者しか開始できないので、議事録の担当者を共同主催者にしておくのが素直な運用になります。会議を作る時点で決めておく項目です。
自動で始める設定もある
開始を忘れないための仕組みも用意されています。公式には、主催者は、会議の開始時に特定の機能を自動的に開始するように設定できますとあり、手順として会議を作成するときに、ビデオ通話オプションのアイコンから「会議の記録」をクリックし、「会議を文字起こし」を選択しますと書かれています。ただし条件があり、これらの機能が有効になっていても、主催者または共同主催者がウェブ上で会議に参加するまでは機能は開始されませんとされています。主催者が遅れて入る会議では、その間が記録されません。定例で使うなら、この点を織り込んでおいてください。
録音をあとから文字起こしする道
会議中に記録できなかった場合や、別の場で録った音声を起こしたい場合は、アップロードする方法があります。ここには月あたりの分数の上限があり、しかもライセンスによって桁が変わるほど大きく違っていました。先に数字を見ておきます。
月あたりの分数が、100倍違う
Microsoftの公式ヘルプに、2つの数字が並んでいます。Microsoft 365サブスクリプションを持つユーザーは、アップロードされた音声を1か月あたり最大300分までトランスクリプトを作成できます。そして、Microsoft Copilotライセンスを持つユーザーは、アップロードされた音声を1か月あたり最大30,000分まで文字起こしできます。300分と30,000分。100倍の差です。300分は5時間なので、1時間の会議なら月5本で使い切ります。長時間の会議を日常的に起こす運用を考えているなら、この数字が計画の前提になります。ライセンスの比較で、ここを見る人は多くありません。
形式とブラウザの条件
受け付ける条件も明記されています。トランスクリプトは現在、.wav、.mp4、.m4a、.mp3形式をサポートしています。スマートフォンの録音アプリが別の形式で保存している場合は、変換が必要になります。そしてもう1つ、見落としやすい条件があります。トランスクリプトは、新しいMicrosoft EdgeとChromeでのみ機能します。普段使っているブラウザが別のものなら、この作業のときだけ切り替えることになります。「自分の環境では出てこない」の原因が、ブラウザであることがあります。あわせて、Microsoft 365にサインインしていることも条件です。
処理中の扱い
時間の目安も書かれています。インターネットの速度によっては、トランスクリプトにオーディオファイルの長さくらいまでの時間がかかる場合があります。3時間の録音なら、3時間近くかかる可能性があるということです。そして操作上の注意として、文字起こしが行われている間は必ず「トランスクリプト」ウィンドウを開いたままにしておいてくださいとされています。ただし完全に拘束されるわけではなく、他の作業を行ったり、ブラウザーのタブやアプリケーションを切り替えたりして、後で戻ってくださいと続きます。閉じなければよい、という条件です。
APIに渡す場合の上限
社内の仕組みに組み込む場合は、APIを使うことになります。ここにも上限があり、長い音声を扱うときの前提が公式FAQに書かれていました。開発を始める前に知っておくと、あとからの設計の手戻りを避けられます。
1回に送れるサイズ
OpenAIの公式FAQには、大きな音声ファイルの扱いについてこう書かれています。legacy/whisper-1のAudio API文字起こしアップロードでは、最大リクエストサイズは25 MiBです。そして続きがあります。新しいgpt-4oの文字起こしルートは、長さやトークンの上限など、異なる検証を使う場合があります。そのため、ユーザーからの長い音声入力を扱うときは、モデル固有のドキュメントを確認してください。つまり、モデルによって効いてくる上限の種類が違うということです。サイズで切れば済むとは限らず、長さで切る必要がある場合もあります。
リンクは渡せない
もう1つ、設計に影響する条件があります。音声ファイルへのリンクをAudio APIに送ることはできますか。という問いへの答えは、いいえ。サポートされている音声形式のファイルを送る必要がありますです。クラウドストレージに置いた音声のURLを渡して処理させる、という作りはできません。ファイルそのものを送る前提で設計する必要があります。長い会議の音声は容量が大きいので、前の節の上限とあわせて、どこで分割するかを最初に決めておくことになります。あとから作り直すと手戻りが大きい部分です。
ストリーミングという選択肢
まとめて送る以外の方法も書かれています。公式FAQによると、ストリーミングの方法は2つあり、すでに完了した録音の文字起こしをストリーミングする場合と、進行中の音声のストリームを扱いOpenAIでターン検出を行う場合がありますとされています。会議をその場で文字にしたいなら後者です。ただし注記があり、whisper-1モデルではストリーミングはサポートされていません。使うモデルによって、取れる方式が変わります。先にモデルを決めてから方式を選ぶのが順番としては自然です。なお、Audio APIはtranscriptionsとtranslationsの2つの音声認識エンドポイントを持つとされています。
保存先が変わっている
最後に、できあがった文字起こしがどこに入るのかを確認します。ここは2026年に変更が入っており、過去の記録を探している人がつまずく可能性があります。公式に移行についての説明が出ていたので、そのまま引いておきます。
主催者のドライブに、会議ごとに分かれて入る
公式ヘルプによると、保存先はこうです。会議の文字起こしは、会議の主催者のGoogleドライブの「Google Meet」フォルダに保存されます。このフォルダ内には、会議ごとにサブフォルダが作成され、会議の文字起こしが保存されます。前の節で見たとおり、区切るたびに別ファイルが作られるので、1つの会議のサブフォルダの中に、区切った数だけファイルが並ぶことになります。議題ごとに区切っておけば、この並びがそのまま目次の代わりになります。ファイル名に議題を付け直しておくと、さらに探しやすくなります。
古いフォルダの名前が変わる
変更点も明記されています。2026年7月以降、既存の「Meet Recordings」フォルダ(以前の会議の文字起こしが含まれています)の名前が「Legacy Meet Recordings」に自動的に変更されます。このフォルダは、新しい「Google Meet」フォルダ内に移動されます。そして、以前の文字起こしは引き続き利用でき、新しい文字起こしは新しい会議固有のサブフォルダに保存されますとされています。過去の記録が消えたわけではなく、名前と場所が変わっただけです。社内のマニュアルや手順書に「Meet Recordingsフォルダを開く」と書いてあるなら、更新が必要になります。
同意を求める設定もある
運用に関わる設定として、もう1つ記載があります。管理者は、以下のような特定の会議機能を使用する前に、すべての参加者に明示的な同意を求めることができます。自動メモ生成。録画。音声文字変換。そして、この設定はデフォルトでオフになっていますが、管理者がオンにすることができますとされています。オンの場合、参加者は「開始」「参加」「続行」「退出」から選ぶ形になります。社外の方が入る会議で記録を取るなら、この設定は検討に値します。口頭で断るより、仕組みで残るほうが後々の確認が楽になります。
まとめ
長時間の会議を文字起こしさせるとき、最初に知るべきは区切り方でした。Googleの公式ヘルプは、文字起こしを一時停止することはできませんが、会議中に文字起こしを停止して、別の新しい文字起こしを開始することは可能ですとしたうえで、文字起こしを開始するたびに、別の文字起こしファイルが作成されますと書いています。議題ごとに区切れば、あとで探しやすい記録になります。ただし、すべての参加者が会議から退出すると、文字起こしは自動的に停止します。休憩には注意が要ります。
そもそも記録されない条件もあります。会議の文字起こしは、Workspace組織のGoogleドライブと、会議の主催者のドライブ、両方に十分な容量がある場合にのみ記録できます。また、文字起こし機能は、パソコン、ノートパソコン、Androidデバイスでのみ利用でき、文字起こしには、会議で話された言葉のみが含まれます。会議後については、長時間の会議の文字起こしの処理には時間がかかりますと明記されており、リンクは主催者、すべての共同主催者、文字起こしをオンにしたユーザーにメールで届きます。
録音をあとから起こす場合は、Microsoft 365サブスクリプションは1か月あたり最大300分、Microsoft Copilotライセンスは1か月あたり最大30,000分です。形式は.wav、.mp4、.m4a、.mp3で、新しいMicrosoft EdgeとChromeでのみ機能します。APIなら、legacy/whisper-1では最大リクエストサイズは25 MiBで、音声ファイルへのリンクを送ることはできません。区切る前提で設計する。それが長時間を扱うときの基本になります。
よくある質問(FAQ)
文字起こしを一時停止できますか
Googleの公式ヘルプには、文字起こしを一時停止することはできませんが、会議中に文字起こしを停止して、別の新しい文字起こしを開始することは可能です、と書かれています。また、文字起こしを開始するたびに、別の文字起こしファイルが作成されるとされています。
休憩のあと、記録が止まっていました
公式ヘルプには、すべての参加者が会議から退出すると、文字起こしは自動的に停止します、と書かれています。全員がいったん退出した場合は、再開後にあらためて開始の操作が必要になります。
操作したのに、文字起こしが記録されません
公式ヘルプには、会議の文字起こしは、Workspace組織のGoogleドライブと会議の主催者のドライブ、その両方に十分な容量がある場合にのみ記録できる、と書かれています。あわせて、利用可能なWorkspaceのエディションも一覧で示されています。
会議が終わったのに、文字起こしが見つかりません
公式ヘルプのヒントに、長時間の会議の文字起こしの処理には時間がかかります、自動送信メールが届くまでしばらくお待ちください、と書かれています。リンクは主催者、すべての共同主催者、文字起こしをオンにしたユーザーにメールで送信されます。
録音ファイルをアップロードして起こす場合、上限はありますか
Microsoftの公式ヘルプには、Microsoft 365サブスクリプションを持つユーザーは1か月あたり最大300分まで、Microsoft Copilotライセンスを持つユーザーは1か月あたり最大30,000分まで文字起こしできる、と書かれています。対応形式は.wav、.mp4、.m4a、.mp3です。
クラウドに置いた音声のURLをAPIに渡せますか
OpenAIの公式FAQには、音声ファイルへのリンクをAudio APIに送ることはできない、サポートされている音声形式のファイルを送る必要がある、と書かれています。また、legacy/whisper-1のアップロードでは最大リクエストサイズが25 MiBとされています。
自分の環境の条件を確かめる
上限と保存先は更新されます。運用を決める前に、Google Meet で文字起こしを使用する(Google Meet ヘルプ)で最新の記載をご確認ください。